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第12話

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 午前中最後の授業が終わり、待ちに待った昼休みがやって来た。
 中田中に捕まる前に素早く席を立った俺は、登校途中にコンビニで買ったパンを片手にそのまま教室を後にする。
 一応あいつには昼休みは予定があるって言っておいたけど、急ぐに越した事はないだろう。
 教室を出る時に薫ちゃんと目が合ったけど、あえて無視だ。
 ごめんよ、今度一緒にご飯食べようね。
 心の中で謝りながら、俺は旧校舎に向けて足を速める。
 そもそも俺の通う高校は、四階建ての新校舎と三階建ての旧校舎に分かれている。
 校門に近い方が新校舎で、その後ろにあるのが旧校舎だ。
 一階と三階が渡り廊下で繋がっていて、そこを通れば誰でも校舎を行き来できる。
 新校舎は普通の教室があり、旧校舎には特別教室と使われていない空き教室がある。
 空き教室のいくつかは部活で使っている所があるけど、基本的には放置されている。
 その為に昼休みや放課後なんかはたまり場になっているかと言えば、実はそうでもない。
 もともと不良が少ないって事もあるのだろうけど、そう言う輩はむしろ人の多い所で騒ぐ。
 あれは、いったいどういう心理なのだろうか?
 自分の力を見せつけたいのか知らないけど、迷惑極まりないな。
 まぁ、この世界の不良はいわゆるギャルばかりだし、別に俺はギャルも好きだから気軽にパンツを見せてくれる彼女たちは眼福以外の何者でもないんだけど。
 あの子たちのパンツって、つるつるしたサテン生地だったりきわどいローライズだったり、けっこう個性があって見ごたえがあるんだよね。
 ちなみに、この世界の女子に見せても良いパンツの概念はない。
 正確に言えば全てのパンツは見せても良いパンツであり、スパッツを履いたりして隠す習慣がないのだ。
 逆に男は、ズボンをずらして見せパンをするなんて行為は絶対にしない。
 男子のパンツは性の対象だから、いくら不良くんでもおいそれと見せたりしないのだ。
 ……何の話をしてたんだっけ?
 ああ、そうだ。
 ともかくそう言う訳で、昼休みの旧校舎は人通りが全くない。
 昼休みの人気スポットである食堂や中庭に比べて人が居なさすぎるし、むしろここは穴場なんじゃないか?
 ここなら、人目を憚らず薫ちゃんとイチャイチャする事も簡単だろう。
「よし、今度は薫ちゃんも連れて来よう」
 そう心に決めながら、俺は階段を上って三階へと向かう。
 そしてたどり着いた俺は目的の教室へと真っ直ぐに向かった。
 他の階と違って、この階にある空き教室は一つだ。
 迷う事もなくそこに向かうと、菜々ちゃんはまだ来てなかった。
 教室に入ると、使われていないそこは完全に放置されていて少し埃っぽい。
「とりあえず窓を開けよう。それと、少し掃除するか」
 言うが早いか、俺は窓を開けて教室に常備されている箒で床を掃く。
 一通り床に積もった埃を集めてから塵取りでそれをゴミ箱に捨て、ついでに教卓の上の埃を払ってそこに腰掛ける。
 しかし、菜々ちゃんは一向に現れない。
「どうしたんだろ?」
 昼休みはまだ長いから大丈夫だけど、こうも遅いと少し心配だ。
 確認するためにメッセージを送ると、菜々ちゃんからはすぐに返信がくる。
『ごめんなさい。ちょっと友達に捕まっちゃってた。すぐに行くから待ってて』
 なるほど、そう言う事か。
 しかし、俺を待たせたからには少しお仕置きをしてやろうかな?
『じゃあ、五分以内に来てね。それと、パンツは脱いで』
『無理だよ。恥ずかしい』
『じゃあ、俺は教室に帰ってみんなに昨日の事を相談するね』
『……やります』
 俺、完全勝利。
 ついでにパンツを脱いだ写真をメールで送らせた後に、俺はタイマーで五分を測る。
 別に遅れても待ってるんだけど、五分を過ぎちゃったらもう一回お仕置きする口実ができるしね。
 と、タイマーが五分を少し過ぎたところで教室の扉が開いて菜々ちゃんは顔を出す。
 短いスカートを両手で押さえて顔を真っ赤にしながらも、走って来たのかハァハァと肩で息をしている。
 その姿は、何とも興奮をそそる。
「はぁ…、はぁ……。お待たせ」
「ホントに待ったよ。約束の五分も過ぎちゃったし」
「うそっ⁉ そんなぁ……」
 ガクッと肩を落とした菜々ちゃんに手招きすると、彼女は落ち込みながらも言う通りに俺の隣までやってくる。
「まぁ、時間が過ぎた罰ゲームは後でやるとして、とりあえずご飯食べよ」
「……まだ、食べてなかったの?」
「うん。だって、どうせだったら一緒に食べたいじゃん」
 まぁ、俺はパンなんだけど。
 まだもじもじしている菜々ちゃんを置いてパンを取り出すと、彼女は何か言いたそうに俺を見ている。
「あの、長瀬くん……」
「なに? どうかした?」
「えっと、お弁当作ってきたんだけど……」
 そう言って菜々ちゃんが取り出したのは、一包みのお弁当。
「要らなかったら、捨ててくれていいよ」
「捨てるはずないじゃん! ありがとう!」
 図らずも女の子の手作り弁当を手に入れた俺は、菜々ちゃんの気が変わる前に素早く奪いとる。
 そして、色とりどりのオカズが詰められたお弁当を美味しく頬張った。
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