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プロローグ
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「あぁ、ついにこの瞬間が来てしまったか……。寂しいなぁ……」
目の前に広がる壮大な景色を前にして、俺は一人寂しく呟いていた。
『クラフティリア・オンライン』
それは今、世界中で流行っているVR没入型オンラインゲームのひとつだ。
壮大なストーリーに現実ではとても見ることのできない美麗なグラフィックでかつては一世を風靡し、VR黎明期を支えたといっても過言ではない。
かくいう俺も、クラフティリアの魅力に取り憑かれたプレイヤーの1人だ。
特に俺の心を掴んだのは、自由度の高いクラフトシステムだった。
その自由度の高さは現在に至るまで他の追随を許さず、そのおかげで俺は他のゲームに一切浮気することはなかった。
薬や料理、武器や防具、あるいは家具から家そのものまで。
ともかく思い付くありとあらゆる物を作ることができるクラフトシステムは、アップデートを繰り返す度により洗練されたものへと成長していった。
最終的には「クラフティリアで作れない物はない」なんていう名言まで飛び出すほど、それくらいクラフトシステムは多くのプレイヤーを魅了して離さなかった。
しかし、そんなゲームにも終わりの時が訪れる。
次から次へと新しいゲームが発売される度にプレイヤーの人口は少しずつ減っていき、やがて避けられない過疎ゲームの宿命がやって来た。
『サービス終了のお知らせ』
運営からのそんなお知らせを目にした時、俺は文字通り心臓が止まってしまうかと思った。
もはやクラフティリアは俺の生活の一部になっていて、クラフティリアのない生活なんて想像もできなかった。
なにかの間違いかと思って何度も確認したけど、どれだけ見てもサービス終了の事実は変わらない。
もはや俺にできるのは、ただ終わりを受け入れることだけだった。
そうして、サービス終了の告知から半年。
俺は空き時間のほとんどをクラフティリアへと捧げた。
寝て目覚めても、仕事以外の時間はほとんどクラフティリアに入り浸り、ゲーム内で出会った仲間たちとともにクラフトに明け暮れた。
作っても作っても、次から次へと作りたい物が増えていく。
そんな永遠に終わらないような楽しい時間も、今日でお別れだ。
「じゃあな、シューゴ。楽しかったぜ」
「またいつか、別の場所で遊ぼうね!」
そんな言葉とともに1人また1人とログアウトしていく仲間たちを見送って、ついに周りからは誰も居なくなってしまった。
俺もログアウトしないとと思いつつ、だけどどうしても名残惜しい。
こうなったらもう、サーバーが閉じるその瞬間までこの景色を眺めているのも良いかもしれない。
そう考えてボーッと景色を眺めていると、ふいに俺の元へ一通の通知が届いた。
「なんだ、これ? 運営から、さっさとログアウトしろって催促でも来たか?」
不思議に思って通知を開くと、そこにはただこう書かれていた。
『あなたを、新しい世界へとご招待します』
「新しい世界? いったいどういう……」
その通知を見た瞬間、視界が真っ白に染まる。
同時に激しい頭痛に襲われた俺は、ゆっくりと意識を手放していった。
目の前に広がる壮大な景色を前にして、俺は一人寂しく呟いていた。
『クラフティリア・オンライン』
それは今、世界中で流行っているVR没入型オンラインゲームのひとつだ。
壮大なストーリーに現実ではとても見ることのできない美麗なグラフィックでかつては一世を風靡し、VR黎明期を支えたといっても過言ではない。
かくいう俺も、クラフティリアの魅力に取り憑かれたプレイヤーの1人だ。
特に俺の心を掴んだのは、自由度の高いクラフトシステムだった。
その自由度の高さは現在に至るまで他の追随を許さず、そのおかげで俺は他のゲームに一切浮気することはなかった。
薬や料理、武器や防具、あるいは家具から家そのものまで。
ともかく思い付くありとあらゆる物を作ることができるクラフトシステムは、アップデートを繰り返す度により洗練されたものへと成長していった。
最終的には「クラフティリアで作れない物はない」なんていう名言まで飛び出すほど、それくらいクラフトシステムは多くのプレイヤーを魅了して離さなかった。
しかし、そんなゲームにも終わりの時が訪れる。
次から次へと新しいゲームが発売される度にプレイヤーの人口は少しずつ減っていき、やがて避けられない過疎ゲームの宿命がやって来た。
『サービス終了のお知らせ』
運営からのそんなお知らせを目にした時、俺は文字通り心臓が止まってしまうかと思った。
もはやクラフティリアは俺の生活の一部になっていて、クラフティリアのない生活なんて想像もできなかった。
なにかの間違いかと思って何度も確認したけど、どれだけ見てもサービス終了の事実は変わらない。
もはや俺にできるのは、ただ終わりを受け入れることだけだった。
そうして、サービス終了の告知から半年。
俺は空き時間のほとんどをクラフティリアへと捧げた。
寝て目覚めても、仕事以外の時間はほとんどクラフティリアに入り浸り、ゲーム内で出会った仲間たちとともにクラフトに明け暮れた。
作っても作っても、次から次へと作りたい物が増えていく。
そんな永遠に終わらないような楽しい時間も、今日でお別れだ。
「じゃあな、シューゴ。楽しかったぜ」
「またいつか、別の場所で遊ぼうね!」
そんな言葉とともに1人また1人とログアウトしていく仲間たちを見送って、ついに周りからは誰も居なくなってしまった。
俺もログアウトしないとと思いつつ、だけどどうしても名残惜しい。
こうなったらもう、サーバーが閉じるその瞬間までこの景色を眺めているのも良いかもしれない。
そう考えてボーッと景色を眺めていると、ふいに俺の元へ一通の通知が届いた。
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不思議に思って通知を開くと、そこにはただこう書かれていた。
『あなたを、新しい世界へとご招待します』
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その通知を見た瞬間、視界が真っ白に染まる。
同時に激しい頭痛に襲われた俺は、ゆっくりと意識を手放していった。
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