クラフティリアへようこそ ~ものつくりチートでのんびり異世界生活~

樋川カイト

文字の大きさ
上 下
1 / 9

プロローグ

しおりを挟む
「あぁ、ついにこの瞬間が来てしまったか……。寂しいなぁ……」
 目の前に広がる壮大な景色を前にして、俺は一人寂しく呟いていた。
『クラフティリア・オンライン』
 それは今、世界中で流行っているVR没入型オンラインゲームのひとつだ。
 壮大なストーリーに現実ではとても見ることのできない美麗なグラフィックでかつては一世を風靡し、VR黎明期を支えたといっても過言ではない。
 かくいう俺も、クラフティリアの魅力に取り憑かれたプレイヤーの1人だ。
 特に俺の心を掴んだのは、自由度の高いクラフトシステムだった。
 その自由度の高さは現在に至るまで他の追随を許さず、そのおかげで俺は他のゲームに一切浮気することはなかった。
 薬や料理、武器や防具、あるいは家具から家そのものまで。
 ともかく思い付くありとあらゆる物を作ることができるクラフトシステムは、アップデートを繰り返す度により洗練されたものへと成長していった。
 最終的には「クラフティリアで作れない物はない」なんていう名言まで飛び出すほど、それくらいクラフトシステムは多くのプレイヤーを魅了して離さなかった。
 しかし、そんなゲームにも終わりの時が訪れる。
 次から次へと新しいゲームが発売される度にプレイヤーの人口は少しずつ減っていき、やがて避けられない過疎ゲームの宿命がやって来た。
『サービス終了のお知らせ』
 運営からのそんなお知らせを目にした時、俺は文字通り心臓が止まってしまうかと思った。
 もはやクラフティリアは俺の生活の一部になっていて、クラフティリアのない生活なんて想像もできなかった。
 なにかの間違いかと思って何度も確認したけど、どれだけ見てもサービス終了の事実は変わらない。
 もはや俺にできるのは、ただ終わりを受け入れることだけだった。
 そうして、サービス終了の告知から半年。
 俺は空き時間のほとんどをクラフティリアへと捧げた。
 寝て目覚めても、仕事以外の時間はほとんどクラフティリアに入り浸り、ゲーム内で出会った仲間たちとともにクラフトに明け暮れた。
 作っても作っても、次から次へと作りたい物が増えていく。
 そんな永遠に終わらないような楽しい時間も、今日でお別れだ。
「じゃあな、シューゴ。楽しかったぜ」
「またいつか、別の場所で遊ぼうね!」
 そんな言葉とともに1人また1人とログアウトしていく仲間たちを見送って、ついに周りからは誰も居なくなってしまった。
 俺もログアウトしないとと思いつつ、だけどどうしても名残惜しい。
 こうなったらもう、サーバーが閉じるその瞬間までこの景色を眺めているのも良いかもしれない。
 そう考えてボーッと景色を眺めていると、ふいに俺の元へ一通の通知が届いた。
「なんだ、これ? 運営から、さっさとログアウトしろって催促でも来たか?」
 不思議に思って通知を開くと、そこにはただこう書かれていた。
『あなたを、新しい世界へとご招待します』
「新しい世界? いったいどういう……」
 その通知を見た瞬間、視界が真っ白に染まる。
 同時に激しい頭痛に襲われた俺は、ゆっくりと意識を手放していった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...