星の涙、竜の慟哭

路傍 之石

文字の大きさ
上 下
15 / 18

初めましてから、やり直そう。

しおりを挟む
 椅子に座ると再び俺は両肘を机について司令官ポーズをとる。イオの奴は「まだそれやんの?」みたいな顔をするが、ザラは神妙な顔をしている。天然なのか付き合ってくれるてるだけなのか判断が難しいけど、付き合ってくれてる方だと恥ずかしいので、天然ということにしておこう。

 とは言え我ながらさすがに恥ずかしくなってきたので、司令官ポーズは止めにすることにした。

 よし。気合を入れなおして2人に顔を向ける。

 「それでさ、俺達色々あったじゃん」

 俺が頬をかきながら「色々」と口にした時点で、イオは少しビクっとして目をそらし、ザラも気まずそうに苦虫を噛み潰したような顔する。。

 正直、アレを「色々」で済ませていいかわからん所もある。

 たけど、痛くて泣き叫ぶのを無理やりってわけでも無かったし、俺も本気では抵抗できなかったうえ、最後は許容したみたいになってたからな。

 俺はぼろぼろに泣いてた気もするが、あいつ等だってほんと酷い顔してた。もう二度とあいつらのあんな顔を見たくない。

 だから、もうノーカンだノーカン。そもそも強い意志でノーカンにしとかないとこいつ等と向き合えないし、俺から踏み込んでかないと、たぶんしこりが残る。

 「まぁお互い言葉も分からないところから始まってさ、俺もあんな事になって大混乱だったけど、理由があるんだろ?ちゃんと話をしよう。お前たちとは「初めまして」からやり直したい」

 俺の言葉を受けて2人は驚いた顔をして、顔を見合わせてる。びっくりじゃないぞー。

 「僕も、ムツキとちゃんと話したい。ちゃんと分かり合いたい」

 「俺だって……俺だってお前と……」

 ザラは言葉を口にするとその両の瞳からぽろぽろと涙を零す。イオは必死に手の甲で瞼を拭うが、最後まで言い切れず顔を両手で隠してしまった。

 「もう、いいからさ、泣くなよ」

 「ムツキ……ごめん……」

 「うるせ、俺は泣いてねーからな」

 素直なザラに比べて意固地なイオの反応に、ザラと一緒に吹き出してしまう。

 「普段年上風吹かせてるのに何これ、ムツキもなんか言ってやって」

 「ザラ君容赦無さすぎ……涙を見せたくない男もいるんだぜ……けど、これは……っぷ…くくく」

 だめ、俺は思わず笑いだしてしまい、ザラもつられて笑い出す。

 「うるへー!笑ってんじゃねー!」

 顔を両手で覆ったまま叫ぶイオ。駄目、やっぱ普段の態度から想像出来ない姿すぎて可笑しい。

 「ちゅん!!」

 等々に俺の頭を定位置にしてるちゅん太が、一際大きな声で、鳴いた。

 「あ、こいつはちゅん太な」

 「ちゅんちゅん!」

 なんか主張してくる。いや待てちゅん太。お前の紹介を忘れてたわけじゃないんだ。落ち着け。こら、突くんじゃない。

 ほら、俺達シリアスな話してたからね?

 「その小鳥、ちゅん太?青くなってるね。やっぱりその仔は女神の守護獣だったんだ。だからいったじゃないか。あの小鳥は守護獣だって」

 「いやいや、俺はお前と違って女神に関する英才教育受けてないんだって。伝承に出てくる守護獣ってバカでかい肉食獣とかだったろ」

 イオも復活したのか顔を隠すのを辞めていた。両目が赤くなって置かないのは触れないのが漢の優しさってやつだ。

 そういえば2人の青という言葉に、あそこの体毛が青くなっていたことを思い出す。前髪を摘まんでそっと引張り視界に入れると、やはりというかなんというか、青い。

 「はい待った。青って言ったな?ひょっとして俺の髪って今、全体的に青いのか?」

 「うん、ムツキの髪も、目も、綺麗な青色になってるよ」

 なんか綺麗ってワードに複雑な気持ちになる。「カッコイイ」になって欲しい微妙な男心をザラはわかって欲しい。そういう所だぞザラ君!

 「あの後、ムツキが寝てる間に、髪や目の色が黒から青に変わっていったな。そもそも女神は最初から青い髪に青い瞳の美女!って聞いて超期待してたし、同期や先輩に「羨ましい死ね!」って言われながら送り出されたのに。最初のムツキは髪も目も青く無いしそもそも男で、むしろ騙されたって思ったぞ。女神なのに男とか詐欺。青少年の純朴な期待を返して欲しい」

 「ええい煩い。どうせお前のはただのエロ心だろ!こっちだって案内人に「金髪銀髪の美女じゃなかったの?」みたいに言われたぞ。「ヤられた」って言って目の前で尻押さえられて煽られた俺の気持ちがお前らにわかるか!」

 「良し。イオがムツキとするのは嫌なら今後は全部僕が引き受けるよ。これで解決だね」

 コラマテザラ。お前は何を言っている。

 「いやいやいやいや。お前だって最初は抵抗あったはずだろ!俺だって今ならムツキとは余裕で出来るし!ヤれるむしろ勃つ!」

 「おいコラ!お前らヤる前提で話を進めてるんじゃねー!」

 ザラはこれで解決!みたいに笑顔だが、俺とイオはヒートアップしてしまい肩で息をするはめになる。

 いかん。また盛大に話が色々それた。

 一個ずつだ。一個ずつ解決しなければ全てがスパゲッティのようにこんがらがってしまう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...