星の涙、竜の慟哭

路傍 之石

文字の大きさ
上 下
13 / 18

過ちは繰り返すもの

しおりを挟む
 ちゅんちゅんと雀が鳴いている。

 身体を揺すられることも、声をかけられることも無い。

 ゆっくりと瞼を開く。

 この一ヵ月ですっかり見慣れた天蓋に一人で寝るには大きいすぎる寝台だ。

 ただ、天蓋の白いカーテンの隙間から覗くの景色は一変してた。

 立ち枯れた木々には薄い紅を含んだ白い花が無数に咲き誇っていた。

 枯れていた草花もまた、青々と茂っている。

 柔らかにそよぐ風に花弁が舞いちる。

 ぱたぱたという羽音と共に枕元に一羽の雀が舞い降りる。

 ちゅん太かと思いきや、この雀、青いぞ。

 「おはよーさん。お前、ちゅん太か?」

 朝の挨拶と共に訪ねてみると、当然ですとでも言うように「ちゅん!」と鳴いてくれる。

 綺麗だけど、青い雀ってどうなの?ザラかイオに染められでもしたのか?

 手を伸ばしてそっと撫でると、嬉しそうにすり寄ってくる。

 うん、やっぱちゅん太は可愛いな。

 掛け布団をそっと捲ると当然の如く服を着ていない。うん、肌の感触でそんな感じはしたんだ。

 そして事件が二つ。

 一つは身体の至る所に複数の薄く赤い痕。これはクレーム案件ですね。恥ずかしくてプールにいけないやつ。

 そしてもう一つはあれだ。うん。下の毛が青い。

 ウェイト。

 待ちたまえよ君たち。

 えー……。

 草臥れリーマンに苦情案件でしょ。

 脳内会議を繰り広げかけた所で外に人の気配を感じ、寝たふりモードへ速やかに移行する。

 「うちの女神様はまだ起きないのか?」

 「ムツキならまだ寝てるよ。今日で二日目だから、今までの記録を見るとそろそろ起きると思うんだけど」

 最初の声は少し軽そうな男の声。これはイオだな。答えるように続く、少し幼さを感じる声はザラだ。こいつ等こんなしゃべり方なのか。とりあえず人の事を女神様とかいう頓珍漢なイオは後で一発殴るポイントゲットだぜ。

 「あー、ムツキが起きたら俺達殺されるよな?結局無理やりって感じだったしさ」

 「わからない。ムツキはあの時「いいよ」って笑っていってくれたじゃないか」

 「王子様はお子様だな」

 はい審議。新ワードいただきました。王子様ってどういうことだ。比喩じゃなくてマジ王子?

 「僕は、ムツキを信じてるだけだ」

 「ムツキと最初にあった時「男と出来るかわからない」って真っ青になってたヤツがよく言うぜ」

 「それは一緒に過ごす時間が解決してくれたからね。イオティスこそ覚悟は出来たっていってたのに、今更死ぬのが恐くなったのかい?」

 「そりゃ目があるならまだまだ生きたいさ。お前ってムツキいないと俺に容赦ないよな。敵国の騎士に用はないってか」

 面白そうにザラを挑発してるけど、イオさん君も新ワードだよ。お前、騎士ってガラじゃないだろ。

 「僕は廃嫡されてるから、君の国の事情に興味は無いよ。別に敵対したいわけじゃないけど、まだ出会って一月とちょっとだ。君と違って多方面に愛想を振りまく人間じゃないだけだよ」

 ザラってば辛辣。なんか火花が飛び交ってるぞ。

 イオも挑発してる感じだったけど実はこいつら仲悪いのか?

 アト廃嫡って単語が聞こえたけどやっぱリアル王子……いや、リアル元王子なのか。これ以上険悪ムードになると出ていきにくいので馬鹿話でもしていて欲しいんだけど。
 
 仕方ない、出るか。

 掛け布団の中でも薄手の布を手繰り寄せ腰に巻き付ける。朝一で元気なアレを隠す。そう、俺は失敗を繰り返さない男。

 よし出るぞと気合を入れるとちゅん太が頭の上に飛び乗ってくる。

 そうか、お前も行くか。
 
 「話は聞かせてもらった!」

 ずさっと寝台の前に降り立ち仁王立ちになると、2人が同時に俺を見てくる。浮かぶ表情は、真剣で、2人とも静かに俺の言葉を待っている。

 そして腰に巻いた布がハラりと落ち、露わになる元気な朝の象徴。

 イオが噴出して、ザラが顔を赤くしてそっと目を逸らしてる。

 うん、繰り返さないはずだったんだけどなぁ。

 「見るなぁああああああああああああああああああああ!!」

 俺はそう叫ぶと床に落ちた布を手繰り寄せ、なんとか下半身を隠そうとする。

 ちゅん太は俺の叫び声にびっくりしたのか飛んで行ってしまう。

 イオがそんな俺を見て、とうとう盛大に笑い出し、ザラに殴られて吹き飛ぶのが見えた。

 ああ、人ってあんな吹き飛ぶんだナァ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...