星の涙、竜の慟哭

路傍 之石

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朔 竜の想いは夜の帳の中で果たされる

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 いつもの寝台エリアまで戻ると、ちゅん太は壁際に設置された、ちゅん太用の籠の中で眠っている。

 起こさないようにそっと眺めながら「元気でな」と心の中で別れを告げる。

 だって、たぶん、これで終わりだ。

 だから、ちゃんとザラとイオにも、さよならしないとな。

 机の上にはイオが用意してくれた白湯があった。一口だけ口にするけど、これで終わりだ。

 いつまでもだらだら起きてたら、未練でいっぱいになっていまう。

 またあの時みたいな醜態はさらしたくない。

 椅子に座らない俺に不審そうな顔をするザラにハグをして、背中をぽんぽんと叩く。

 「ザラ、今まで色々有難う。元気でな」

 次にイオにも同じようにハグをした後、イオの胸に拳を当てる。

 「イオも元気でな。駒取りのやつ、次は絶対俺が勝つからな」

 そう、俺の負け越しである。これも心残りと言えば心残り。

 突然の俺の行動に、2人は少し茫然とした後、顔を見合わせた。

 「じゃぁな、ここに居たのがお前たちで良かったよ」

 そう言って、俺は寝台に入ろうとして、またザラに押し倒された。

 え?またこのパターン?寂しいのか?ザラのやつしょうがないな、と振り返ったその瞬間。

 唇を塞がれた。

 サラの唇でだ。

 何が……起きてる?

 唇を割り、柔らかく濡れた何かが歯列をなぞる。

 思わず口を開くとソレは口内に入り込み、俺の舌を絡めとった。

 逃れようとするが、狭い口内の中、逃れる場所はなく。

 俺、ザラにキスされてるのか?

 激しい口づけに必死にザラの肩を掴む。
 
 やっと解放されたと思ったら、いつの間にか俺は背中からイオに背中を預ける体制になっていて、服の紐が解かれていた。

 お前たちなにやって……冗談かとも思ったけど、2人の顔は真剣で、熱を帯びてて、欲を感じさせられた。

 イオが俺の脚を広げると、そこにザラが顔を埋めようとしてて。

 だ、ダメだ。

 止めないと。

 「ザラ!イオ!駄目、こら!ダメだってば」

 必死に抵抗し始める俺にザラもイオも凄いびっくりした顔して2人で顔を見合わせる……ってびっくりするのは俺だよ!

 「ムツキ……ダメ?」

 泣きそうな、捨てられた子犬のような顔でザラが聞いてくる。

 「だ、ダメだ……」

 駄目だろ……こんなの……

 ザラはまた、俺にキスをしてきた。

 今度はそっと触れるだけの。

 「ダメ?」

 絆されそうになる。答えられなくて顔を背けてしまう。

 「■■■■■■」

 イオが、ザラに何か言い、言われたザラは小さく頷き、俺の頬に優しく口付けた。

 「ムツキ、ダメ、イイヨ」

 悲しそうに、けど柔らかい笑顔を浮かべ、ザラは行為を続けた。




 朔日の夜、俺は2人に抱かれた。

 最初はザラで、その次はイオで、またザラ、そしてまたイオと。

 2人は代わる代わる俺を抱き、俺の中に精を注いで、俺も何度も精を吐き出せられ、もう何度「ダメだ」と言っても何も答えてくれなかった。

 何回目だろうか、俺を抱き、揺さぶるザラが、泣いていた。泣きながら、俺を抱いていた。

 俺の腕を抑えるイオは、辛そうに俯き、目を伏せてた。

 なんでお前らがそんな顔するんだよ……

 最期は、最期は笑って終わりにしたかったんだ。

 畜生……俺は、俺はどうすればいい……?

 ふと、俺を抑えるイオの腕の力が抜けていることに気が付いた。

 今なら、まだ間に合うだろうか。

 右手を伸ばし、ザラの頬に触れ、その涙を拭う。そんな俺に驚いたのか、ザラは動くのを止めて俺を見る。

 左手を伸ばし、顔を背けてるイオの頬に触れ、軽くつねってやると、イオもまた驚いたように俺を見た。

 「そんな顔するなよ。もう「いいよ」。最後なんだ、笑ってくれ」

 俺はなんとか笑顔を作ろうとする。

 なぁ、お前たちも笑ってくれよ。いつもみたいに、笑ってくれよ……

 ザラは俺にあわせようとしてくれてるのか、なんとか笑顔を作ろうとしてくれている。。

 けど浮かんだ笑顔はやっぱりいつもの笑顔とはほど遠くて、それでも嬉しくかった俺は、いつもみたいに、ザラの髪をぐしゃぐしゃにするように撫でてやる。撫でられたザラの瞳からはぽろぽろと涙が溢れ、溢れ出る涙を隠すようにそのまま俯いてしまった。

 頬を伝い俺に落ちてくる涙が温かくて、それがなんだかとても悲しかった。

 イオを見上げると目が合った瞬間、目を背けられた。

 しかたないから殴ってやろうとしたら力が入らなくて、ぽすっとちょっと押すだけになってしまった。

 「イオ」

 呼びかけると、おずおずとこっちを向いてくれる。

 ザラと違って泣いてはいないけど、涙を堪えてる感じだ。

 2人で抜きあった後、イオがして見せたように片手を筒状にして上下に振り、なんとか笑顔を浮かべてみせると、イオはまた顔を背けたけど、あの時、俺がしたように親指を立ててグっと突き出してくれた。

 そうだ。俺達あんなことしたんだぜ?だからこんなの、へっちゃらだろ?

 「ザラ、■■■■」

 イオがザラに呼びかけると、ザラはおずおずと、労わるように行為を再開する。

 それからは、もう誰も口を開かなくて、俺はいつしか意識を手放した。
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