1 / 18
死にたくないんで異世界行くことになりました。
しおりを挟む
自覚したのは今年の3月。妙に身体がだるかった。
大学に入学してからは、体調の悪い日が増えていった。
なんとか大学の講義はこなしたけれども、夏休みに入る頃には完全に床に臥せることになった。
混濁する意識の中「俺、死ぬのかな」とか思ってた次の瞬間、俺は皮張りのソファーに座っていた。
ローテーブルを挟んだ向かいのソファーには草臥れたスーツを着た無精ひげの男が何やら書類を眺めてる。
「気がついた?名前言える?」
「む、睦月です。暦睦月」
あー睦月くんね、え?男の子?そうだっけ?どこだったかなーと手元の書類を捲っている。やがて目的の書類を見つけたのか男は手を止めると、俺の事をチラリと見た。
「状況分かってる?」
「いや、全然わからないです。自分、部屋で寝てたと思うんですが」
「えー、そこから?全然説明受けてないの?」
困ったなーと男は頭をぼりぼりと書いている。
思わず「困ったのは俺だよ」と心の中で突っ込む。
「仕方ない。簡単に説明しよう」
男はそういうと仕切り直しだとばかりに咳払いをし、居住まいをただす。
「暦睦月さん、貴方は19歳まで生きられません。誕生日が1月なのであと数か月で亡くなります。死因は衰弱死です。我々の依頼を受けていただき、一定の成果を上げていただければ身体の治療を行います」
説明が終ったとたん姿勢を崩してお茶を啜ってる。
突然の余命宣告に大混乱。
「いや、衰弱死ってなんで、依頼って何すりゃいいんだよ」
「君の魂がもともと別の世界の神様みたいなもんなんだよね。その世界が崩壊しそうになってるから、そこと繋がってる君の身体も朽ちようとしてるのさ。依頼というのは世界の救済だ。世界を救えばその身体の治療をしてあげるって話だね」
目が点である
この草臥れた男はただの大学生に何を言ってるんだ。
「あ、世界を救うって言っても基本的には切った張ったは無いぽいね。説明は別のヤツが行う予定だったので俺も詳しく聞かなかったんだけど、楽しいらしいよ?人によっては単純作業で飽きるとか言ってたかな。一定の成果が上がった段階でこちらから連絡するので、その時に戻るかどうするか決めてもらう。戻すときは君が意識を失った直前に戻せるから時間とかは気にしないでいい」
それでどうする?と煙草に火を付けながら問いかけてくる。
どうするも何も、このまま戻されてまた苦しい思いはしたくない。さりとてこの先がさらに苦しくないという保証がどこにもない。
色々問いただすと向こうの世界では世話をしてくれる人がいるらしい。その情報最初に必要なやつだろと思わず突っ込んでしまった。
切った張ったも無いって言うしとりあえずやるだけやるしかないんじゃない?
あ、はい、この書類に捺印ですか、はいっと。
手続きを終えると急激な睡魔に襲われる。
「手続き完了。次に目を覚ました時は向こう側だ。それじゃ楽しんでおいで」
意識が遠のく中、最後に聞こえた言葉は、
「おじさん羨ましくないなー」
うらやましくねーのかよ
大学に入学してからは、体調の悪い日が増えていった。
なんとか大学の講義はこなしたけれども、夏休みに入る頃には完全に床に臥せることになった。
混濁する意識の中「俺、死ぬのかな」とか思ってた次の瞬間、俺は皮張りのソファーに座っていた。
ローテーブルを挟んだ向かいのソファーには草臥れたスーツを着た無精ひげの男が何やら書類を眺めてる。
「気がついた?名前言える?」
「む、睦月です。暦睦月」
あー睦月くんね、え?男の子?そうだっけ?どこだったかなーと手元の書類を捲っている。やがて目的の書類を見つけたのか男は手を止めると、俺の事をチラリと見た。
「状況分かってる?」
「いや、全然わからないです。自分、部屋で寝てたと思うんですが」
「えー、そこから?全然説明受けてないの?」
困ったなーと男は頭をぼりぼりと書いている。
思わず「困ったのは俺だよ」と心の中で突っ込む。
「仕方ない。簡単に説明しよう」
男はそういうと仕切り直しだとばかりに咳払いをし、居住まいをただす。
「暦睦月さん、貴方は19歳まで生きられません。誕生日が1月なのであと数か月で亡くなります。死因は衰弱死です。我々の依頼を受けていただき、一定の成果を上げていただければ身体の治療を行います」
説明が終ったとたん姿勢を崩してお茶を啜ってる。
突然の余命宣告に大混乱。
「いや、衰弱死ってなんで、依頼って何すりゃいいんだよ」
「君の魂がもともと別の世界の神様みたいなもんなんだよね。その世界が崩壊しそうになってるから、そこと繋がってる君の身体も朽ちようとしてるのさ。依頼というのは世界の救済だ。世界を救えばその身体の治療をしてあげるって話だね」
目が点である
この草臥れた男はただの大学生に何を言ってるんだ。
「あ、世界を救うって言っても基本的には切った張ったは無いぽいね。説明は別のヤツが行う予定だったので俺も詳しく聞かなかったんだけど、楽しいらしいよ?人によっては単純作業で飽きるとか言ってたかな。一定の成果が上がった段階でこちらから連絡するので、その時に戻るかどうするか決めてもらう。戻すときは君が意識を失った直前に戻せるから時間とかは気にしないでいい」
それでどうする?と煙草に火を付けながら問いかけてくる。
どうするも何も、このまま戻されてまた苦しい思いはしたくない。さりとてこの先がさらに苦しくないという保証がどこにもない。
色々問いただすと向こうの世界では世話をしてくれる人がいるらしい。その情報最初に必要なやつだろと思わず突っ込んでしまった。
切った張ったも無いって言うしとりあえずやるだけやるしかないんじゃない?
あ、はい、この書類に捺印ですか、はいっと。
手続きを終えると急激な睡魔に襲われる。
「手続き完了。次に目を覚ました時は向こう側だ。それじゃ楽しんでおいで」
意識が遠のく中、最後に聞こえた言葉は、
「おじさん羨ましくないなー」
うらやましくねーのかよ
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる