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5.突撃隣の-情報収集大作戦
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小腹は空いたけど、夕飯にはちょっと早い。何よりこう兄が来るかもしれないから腹を満たすわけにも行かない。
お茶でも入れて開封済のお菓子を少しだけ摘まむことにした。昨日、空けたはいいが、一枚だけ食べて満足してしまったクッキーがあったはず。お茶は紅茶にしよう。薬缶に水をたっぷり注いで火にかける。食器棚に向かいティーポットとティーカップ、その隣のマグカップと睨みあう。今日はこっちでいいやとマグカップの取ってに指をひっかけ取り出しつつ、戸棚を開いてティーバックを取り出す。
クッキーの箱から一枚取り出し、口に運ぶ、口の中で砕けて溶けるクッキーの仄かな甘さを味わい、次に紅茶を一口。クッキーの粉のついた手を布巾で拭い、課題を進める。静かな部屋にカタカタとキーボートを叩く音が響いて若干の心地よさ感じる。
ピロンという電子音と共にスマホの画面に灯りが点った。音を消しておかなかった自分に自己嫌悪を抱きつつもスマホを開くと、大学で出来たダチからの通知だ。
「合コンやりたい」
「彼女いるからいかん」
「その2号」
「滅びろ。合コンいきたい」
「甲斐君は俺との熱いベーゼ写真を彼女に送ってフラれるべき」
「やめろ、してないし。未遂だろ」
「お前らなにやってんの?馬鹿なの?」
これ巻き込まれたらめんどいやつだ。返信はせずにそっと電源を落とし、ノートパソコンに向かう。ディスプレイの右下に表示されている時刻を見ると、21時を過ぎようとしてる。さすがに腹が減って辛い。こう兄、仕事早くあがれなかったのかな。
耳慣れない機械音がした。数秒思考が停止してると、もう一度機械音がした。
あ、これインターホンか。
慌てて玄関の鍵を外して扉を開けると、目の前にいたのはスーツ姿のこう兄だった。手には鞄と食材の入った大きなの袋をぶら下げてる。
「スマン。ちょっとトラブっていま帰ってきた。飯、もう食ったか?」
「おかえり。まだ、食べてないよ。腹減ってしにそう」
「今から米炊くから40分ぐらいしたら来てくれ。鍵は空けとくからインターホンは鳴らさなくていいよ」
「なんか手伝う?」
「大丈夫。飯が出来たら皿並べたりとかは手伝ってもらおうかな」
そういうと、こう兄は自分の部屋に帰っていった。
こう兄の作ってくれる晩御飯に想いを馳せ、時間を潰すためにノートパソコンに戻ることにする。
とはいっても進めていた課題はきりはいいし、のんびりネットサーフィンにでも興じていよう。
約束の時間よりちょい前、こう兄の部屋の扉の前に立つ。
そっとドアノブを回して扉を開くと、廊下の先からバターの香りが漂ってくる。美味しそうな香に溜まらず靴を脱いで上がりこむ。
「お邪魔しまーす」
「お、ゆきちゃんいらっしゃい。もうちょいで仕上がるから座って待ってて」
テーブルを見ると、レタスとプチトマトのサラダがでんっと置かれている。
台所ではこう兄が皿に盛りつけられたオムライスの上に、小鍋からお玉で掬ったソースをかけている。うん、無理にいっても邪魔になっちゃいそうだからここは大人しくしてよう。
すぐにオムライスにサラダ、スープが並べられていき、こう兄も席に着く。
ああ、美味しそうな香にお腹が大合唱をしてる。
「おまたせゆきちゃん、召し上がれ」
「いただきます!」
そっとスプーンをオムライスを掬うとチキンライスの香りが鼻孔を擽る。溜まらず口に運び……悶絶。
「ゆ、ゆきちゃん大丈夫?」
腹が減りすぎたのもあるかもだけど美味しすぎて悶えてしまい、言葉がなかなかでてこない。
「こう兄これ美味しすぎ。毎日こんなの作ってるの?」
「ゆきちゃんは大げさだな」
「いや!大げさじゃないって!カフェとか開けるんじゃない?」
オムライスを運ぶ手が止まらない。
「ああ、幸せ」
「そこまで喜んで貰えると作ったかいがあるよ」
「こう兄の家の子になりたい……」
「そのセリフはゆきちゃんがちびの頃にも聞いた気がするな」
食後はこう兄が珈琲を淹れてくれた。今日はハンドドリップなので、この前のような音はしない。こぽこぽという音とともに、珈琲の香が静かに部屋に広がっていく。しかもシュークリームまで出てきた。早くかぶりつきたくて、白いお皿の上に鎮座する薄茶色いふわふわをじーっと見つめてしまう。
コトンという音とともに俺の目の前にマグカップが置かれた。見上げるとこう兄が苦笑している。
「ゆきちゃんそういうとこ変わらないよな」
「変わってるし!人聞きが悪いし!俺も立派な大学生なんだからダチの前ではキリリとしてるし」
思わず口を尖らせて反論するが、相手がこう兄だとちびの頃みたいにお子様っぽくなってしまう事は……うん、自覚してるからいいことにしよう。
上から頭を押さえてぐしゃぐしゃと撫でられるが、こう兄もそれ、大学生男子にする事じゃないと思うぞ。言って止められたらヤダから言わないけどさ。
「料理は大学で一人暮らし初めてから嵌ったかな。けど自分のためだけに作るのが面倒くさくなって、今では誰か呼ぶときぐらいしか料理はしないかな」
「それって普段は何食べてんの?」
「そりゃ10秒チャージの液体とか、完全栄養食的な液体とかサプリメント?あとプロテインか」
ちょっとこう兄が変な事いいだしたんだけど。
「食事に時間とられないし便利だよ?職場ならすぐ仕事戻れるし、家なら他のことに時間使えるし」
「え……と?食事の時間嫌い?」
返事が無い。こう兄なんでそこで考える必要があるの!
「食事は嫌いじゃないな、うん。一人の食事に興味が無いかな」
「それは、どうなんだろう」
「自分が食べるだけなら適当でいいやを極めていった感じ?」
「感じ?じゃないよ!それダメ人間じゃない?」
もう突っ込まずにはいられなかった。こんな美味しいご飯を作れるのになんという無駄。
「うーん、それじゃさ、夜はうちにご飯食べに来ない?勿論お互い都合が会うときだけど」
「お、ゆきちゃん料理できんのか~?」
「母さんに仕込まれたからね。一通りは出来るよ。それでさ、また時々こう兄がご飯作ってよ。平日はこう兄忙しそうだから休みの日とかにさ」
本音はこう兄との時間をもっと増やすことだ。晩飯は2人分作るのはどうということはないしな。
「うーん、それじゃ試しに一ヵ月やってみる?」
「る!」
食い気味な返事にまたこう兄に笑われてしまった。嬉しいんだからしょうがないじゃないか。
そのまま手に諭吉を1枚握らされる。
「はい?」
「とりあえず今月分の食費な。余ったらお小遣いにしちゃっていいから。」
「いや、さすがに多くない?こう兄がうちに来れる日が少ないようだったら弁当でも作るよ」
「へー、ゆきちゃん弁当も作れるんだ。期待してる」
よし。これで本命の質問に行けるぞ。
「あ、それじゃさ、連絡先交換しとこうよ」
「ん?ああ、そうだな。今日みたいなことがあると連絡取れないと困るよな」
よっしゃー!
こう兄の連絡先ゲットしたぞー!
お茶でも入れて開封済のお菓子を少しだけ摘まむことにした。昨日、空けたはいいが、一枚だけ食べて満足してしまったクッキーがあったはず。お茶は紅茶にしよう。薬缶に水をたっぷり注いで火にかける。食器棚に向かいティーポットとティーカップ、その隣のマグカップと睨みあう。今日はこっちでいいやとマグカップの取ってに指をひっかけ取り出しつつ、戸棚を開いてティーバックを取り出す。
クッキーの箱から一枚取り出し、口に運ぶ、口の中で砕けて溶けるクッキーの仄かな甘さを味わい、次に紅茶を一口。クッキーの粉のついた手を布巾で拭い、課題を進める。静かな部屋にカタカタとキーボートを叩く音が響いて若干の心地よさ感じる。
ピロンという電子音と共にスマホの画面に灯りが点った。音を消しておかなかった自分に自己嫌悪を抱きつつもスマホを開くと、大学で出来たダチからの通知だ。
「合コンやりたい」
「彼女いるからいかん」
「その2号」
「滅びろ。合コンいきたい」
「甲斐君は俺との熱いベーゼ写真を彼女に送ってフラれるべき」
「やめろ、してないし。未遂だろ」
「お前らなにやってんの?馬鹿なの?」
これ巻き込まれたらめんどいやつだ。返信はせずにそっと電源を落とし、ノートパソコンに向かう。ディスプレイの右下に表示されている時刻を見ると、21時を過ぎようとしてる。さすがに腹が減って辛い。こう兄、仕事早くあがれなかったのかな。
耳慣れない機械音がした。数秒思考が停止してると、もう一度機械音がした。
あ、これインターホンか。
慌てて玄関の鍵を外して扉を開けると、目の前にいたのはスーツ姿のこう兄だった。手には鞄と食材の入った大きなの袋をぶら下げてる。
「スマン。ちょっとトラブっていま帰ってきた。飯、もう食ったか?」
「おかえり。まだ、食べてないよ。腹減ってしにそう」
「今から米炊くから40分ぐらいしたら来てくれ。鍵は空けとくからインターホンは鳴らさなくていいよ」
「なんか手伝う?」
「大丈夫。飯が出来たら皿並べたりとかは手伝ってもらおうかな」
そういうと、こう兄は自分の部屋に帰っていった。
こう兄の作ってくれる晩御飯に想いを馳せ、時間を潰すためにノートパソコンに戻ることにする。
とはいっても進めていた課題はきりはいいし、のんびりネットサーフィンにでも興じていよう。
約束の時間よりちょい前、こう兄の部屋の扉の前に立つ。
そっとドアノブを回して扉を開くと、廊下の先からバターの香りが漂ってくる。美味しそうな香に溜まらず靴を脱いで上がりこむ。
「お邪魔しまーす」
「お、ゆきちゃんいらっしゃい。もうちょいで仕上がるから座って待ってて」
テーブルを見ると、レタスとプチトマトのサラダがでんっと置かれている。
台所ではこう兄が皿に盛りつけられたオムライスの上に、小鍋からお玉で掬ったソースをかけている。うん、無理にいっても邪魔になっちゃいそうだからここは大人しくしてよう。
すぐにオムライスにサラダ、スープが並べられていき、こう兄も席に着く。
ああ、美味しそうな香にお腹が大合唱をしてる。
「おまたせゆきちゃん、召し上がれ」
「いただきます!」
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「ゆ、ゆきちゃん大丈夫?」
腹が減りすぎたのもあるかもだけど美味しすぎて悶えてしまい、言葉がなかなかでてこない。
「こう兄これ美味しすぎ。毎日こんなの作ってるの?」
「ゆきちゃんは大げさだな」
「いや!大げさじゃないって!カフェとか開けるんじゃない?」
オムライスを運ぶ手が止まらない。
「ああ、幸せ」
「そこまで喜んで貰えると作ったかいがあるよ」
「こう兄の家の子になりたい……」
「そのセリフはゆきちゃんがちびの頃にも聞いた気がするな」
食後はこう兄が珈琲を淹れてくれた。今日はハンドドリップなので、この前のような音はしない。こぽこぽという音とともに、珈琲の香が静かに部屋に広がっていく。しかもシュークリームまで出てきた。早くかぶりつきたくて、白いお皿の上に鎮座する薄茶色いふわふわをじーっと見つめてしまう。
コトンという音とともに俺の目の前にマグカップが置かれた。見上げるとこう兄が苦笑している。
「ゆきちゃんそういうとこ変わらないよな」
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思わず口を尖らせて反論するが、相手がこう兄だとちびの頃みたいにお子様っぽくなってしまう事は……うん、自覚してるからいいことにしよう。
上から頭を押さえてぐしゃぐしゃと撫でられるが、こう兄もそれ、大学生男子にする事じゃないと思うぞ。言って止められたらヤダから言わないけどさ。
「料理は大学で一人暮らし初めてから嵌ったかな。けど自分のためだけに作るのが面倒くさくなって、今では誰か呼ぶときぐらいしか料理はしないかな」
「それって普段は何食べてんの?」
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ちょっとこう兄が変な事いいだしたんだけど。
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「え……と?食事の時間嫌い?」
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「それは、どうなんだろう」
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「感じ?じゃないよ!それダメ人間じゃない?」
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「うーん、それじゃさ、夜はうちにご飯食べに来ない?勿論お互い都合が会うときだけど」
「お、ゆきちゃん料理できんのか~?」
「母さんに仕込まれたからね。一通りは出来るよ。それでさ、また時々こう兄がご飯作ってよ。平日はこう兄忙しそうだから休みの日とかにさ」
本音はこう兄との時間をもっと増やすことだ。晩飯は2人分作るのはどうということはないしな。
「うーん、それじゃ試しに一ヵ月やってみる?」
「る!」
食い気味な返事にまたこう兄に笑われてしまった。嬉しいんだからしょうがないじゃないか。
そのまま手に諭吉を1枚握らされる。
「はい?」
「とりあえず今月分の食費な。余ったらお小遣いにしちゃっていいから。」
「いや、さすがに多くない?こう兄がうちに来れる日が少ないようだったら弁当でも作るよ」
「へー、ゆきちゃん弁当も作れるんだ。期待してる」
よし。これで本命の質問に行けるぞ。
「あ、それじゃさ、連絡先交換しとこうよ」
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