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第三章 柴イヌ、出世する
第四十六話 強運のおネエさま
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部屋の中にいた人たちは、おそらくドアが開いたことさえ気づかずに気絶してしまったでしょう。
それくらい素早くオレは手前の三人をイヌパンチで気絶させ、パフさんもおネエさまを気絶させていたのです。
けど……
「コテッちん、こいつボルトミじゃないよ! 知らない研究員だ」
「はい、おネエさまとは違う顔をしていますね。でもおネエさまの匂いをさせているのは間違いないです」
「そっか、とりあえずこいつら縛っておこう。それからこのボルトミの匂いをさせてる男を尋問してみるね。あっと、その前に隠形の魔法解いておかなくちゃ」
部屋にある檻の中にはじっとして立っているリザくんとゴブちゃんがいました。それに前に戦ったことのあるオークさんだかウルクさんだかに似たのもいます。
それから動物だか何だかわからないヌルヌルしたのもいますね。人間の子どもが布をかぶってオバケの真似をしているような感じです。
こいつらみんな眠っているのでしょうか? ピクリとも動きませんね。
「起きてよおじさん!──トンッ」
「ふ、ふがっ!?」
あの首をトンッするだけで気絶させたり起こしたりする技は便利ですね!
今度パフさんにやり方を教えてもらいましょう。
「おじさんにはこれから質問に答えてもらうけど、猿轡を外しても絶対に大声を出したり質問の答え以外の事を話さないでね。約束を破ったら即殺しちゃうからお願いね」
捕まったおじさんは顔色を青くして何度も頷いています。
これだけ怯えていたら約束を破ることはないでしょう。パフさんもなかなかの迫力ですね!
「おじさんは誰? 何でボルトミと同じ匂いをさせているの?」
「わ、私はおネエさまに拉致されて、ここで働かされている錬金術師です。……な、名前はトリム。匂いは香水のせいです」
「香水?」
「は、はい。おネエさまが自分の体臭と同じ匂いのする香水を作ってて、その実験で私に振りかけているんです」
「何のためにその香水を作ったの?」
「自分の体臭が大好きだからと言っていました。素晴らしい匂いなので商品にしたらきっと大ヒットするだろうと……」
なるほどおネエさまの匂いのする香水だったのですか。どうりで生きた匂いではないはずですね。
それにしても上手に作りましたねえ。俺もご主人様の匂いの香水を作って欲しいです! そしたらぬいぐるみのメスブタにかけてあげれば、小さなご主人様の完成ですね。
「絶対ヒットしないと思うけど……。んで、そのボルトミは今どこに居るの?」
「おネエさまは転移スクロールを使ってどこかへ行ってます。夕方頃に戻ると言っていましたので、もうじき戻るはずです」
「転移スクロールの出口の座標は?」
「座標は二ヵ所です。二階の自室か、この部屋です。今日がどちらかなのかは分かりませんが……」
「あらやだ、今日はこっちよ~ん! アタシの可愛い子供立ちぃ、さあこの怪しい侵入者たちを捕まえなさ~いッ!」
「ちょッ!! ぼ、ボルトミいっ!?」
突然部屋の隅におネエさまが現れました。どういうことなんでしょうか?
しかし考えている暇はなさそうです。檻の鍵が外れて中からリザくんたち全員が出てきました。しかも真っ直ぐにパフさんとオレの方へと向かって来ています。
「コテッちん! ヤバいっ逃げてッ!」
いや、ヤバいのはパフさんの方ですから。オレが逃げたらパフさんを守る番犬がいなくなってしまいますよ?
オレはこっちに向かってきた三匹を躱して、パフさんに迫っている三匹にイヌパンチを食らわしてやりました。
「パフさん、オレの後ろにいてくださいね。この六匹はオレが倒しますんで」
「む、無理だよコテッちん! くそお、なんてタイミング悪くボルトミが帰って来ちゃったんだろ……。最悪の事態だよッ!」
「ごめんなさいねえ、アタシってば強運の持ち主なのよ~ん。アタシの都合のいいように運命が転がっていくの! ウフフ」
「心配ないですよパフさん。ワンコがいないので、オレは全力で戦えますから絶対負けません!」
「で、でもっ!」
「あら? あなたいつかの犬人族の姫といたイケメンちゃんじゃない? いや~ん、アタシってばますますラッキー! 名前は何て言ったかしら?」
「柴イヌのコテツです」
「そうそうそれよ! 犬のコテツちゃん! 今度会ったら絶対に研究材料にしたいと思ってたのよ。会えて嬉しいわあ」
パフさんは弓矢を持って自分も戦うと言っていますが、まあオレの後ろにいてくれる限りは好きにしてくれてかまいません。
とりあえず弱そうなゴブちゃん二匹から倒しますかね。
「あ、でも確かすごく強いのよねえ……念の為あと七匹いるホムンクルスたちも全部起こしてくるわ。リザくん、ゴブちゃん、オークたん、そしてスラ蔵。みんなそれまで頑張ってね~ん」
おネエさまはクネクネしながら部屋の外へと出て行ってしまいました。
でも逃げる気配はありませんね。とりあえずまだおネエさまを捕まえるチャンスはありそうです。
「パフさん、もう一度言いますけどオレより後ろにはこいつら絶対に通しませんので、そこから動いちゃだめですよ!」
「う、うん、わかった!」
オレはイヌの牙をつけるとデキるオス全開で鼻に皺を寄せました。
囲まれると戦いづらいので全員ぶっ飛ばして距離をとりましょう。
イヌパーンチッチッチッチッチッチッ!
一番ぶっ飛んだのはやっぱりゴブちゃん二匹ですね。次がリザくん二匹でその次がオークたん。スラ蔵さんは手応えなくそのままいます。なんか不気味なヤツですねえ。
てか、スラ蔵さんをパンチした時だけ、ヤケドしたみたいになったんですけど!?
まあいいです。ヒリヒリしますが気にするほどではありません。
やっぱり弱いゴブちゃんは後回しにして、オークたんからやりますか!
オークたんもやる気満々なようで、ものすごい筋肉でオレに殴りかかってきました。でも当たらなければ痛くはありません。むしろ隙だらけです。
そのブタさんみたいな鼻を噛み千切ってやりましょう!
「ギャアアッ!」
ウルクの指揮官さんに比べたら大したことありませんね。ほら首ががら空きですよ! 死んでくださいっ!
オークたんの首から吹き出した血飛沫を破って、リザくんの爪が伸びてきました。リザくんとは前にも戦っているんで、まったく驚かないですけどね!
なので爪を口で受け止めて、牙で叩き折ってやりましょう。
「キャキャ!?」
爪が折れて慌てているリザくんは放っておいて、その隣のリザくんの背中に飛び乗ったオレはうなじに噛みつきました。
リザくんの皮膚は硬いのです。なので千切るのはやめて首の骨を噛み砕いてやることとします。皮膚ごと押し潰す感じです!
ミシミシ……グシャリッ。
「キキャーッ!」
二匹目終了です。おっ? パフさんが立ち上がったゴブちゃんたちに弓矢を撃って牽制してくれていますね!
「ありがとうパフさんっ! なら今のうちにもう一匹のリザくんやっちゃいますねッ」
「うん! あたいもあいつら釘付けにしとくよッ!」
リザくんの尻尾攻撃も予想通りです。オレは振り抜かれた尻尾を余裕で避けると、リザくんの膝にイヌキックを入れました。
オレが新しく編み出した新技ですよ! くるりと回転して排泄のあとに土を蹴り上げる要領でキックするのです。
かなりな破壊力なのでリザくんの膝は折れているに違いありません。
痛そうにして膝をついているリザくんの後ろへと回ったオレは、無防備になったうなじに噛みつき首の骨を砕きました。
「キャキャキャーッ!……」
おや? ゴブちゃんのうちの一匹に何本も矢が刺さって死にそうになっていますね。
「パフさん、すごいじゃないですか!」
「でももう一匹がそっちに行ったよッ! てか、凄いのはコテッちんでしょっ! まだ数分しか経ってないのにもうホムンクルス三匹倒してるしッ!」
「四匹目もいま終了しましたっ!」
オレに飛びかかってきたゴブちゃんは、逆にオレに飛びかかられて首筋を噛み千切られて床に寝ています。
さて、あとはこの不気味なスラ蔵さんだけですね。
「コテッちん、多分そいつスライムをベースにして造ったホムンクルスだよ! そいつには物理攻撃はほぼ効かないし、噛みついたりしたら粘体から消化液を出されて溶けちゃうからね!」
「ええ! マジですかっ!?」
「マジマジっ!」
「じゃあどうやって倒せばいいのでしょうかねえ、困ったなあ」
「普通は魔法で倒すんだけど、あたいもコテッちんも攻撃魔法使えないからどうしようかねえ……」
それにしてもこのスラ蔵さんは、全然襲いかかってきませんね。一体何を考えているのでしょうか?
「ねえコテッちん。もしかしてこのスライムのヤツさ、攻撃されれば粘体で捕らえて溶かしてくるけど、自分からは攻撃してこないんじゃない?」
「そうなんですか? あ、そうだ! そこのおじさんに聞いてみましょうよ」
「コテッちん、頭イイネ! ねえおじさん、えっとトリムさんだっけ? そのスライムのホムンクルスって攻撃してくるの?」
「えっと……。俺が言ったって、おネエさまには内緒にして貰えますか?」
「うん、いいよ」
「実はそれ失敗作でして、攻撃能力がないのです。ですから放っておいたらずっとそのまま立っています」
なんと! じゃあスラ蔵さんは放置決定で問題ないですね。
それにもうじきおネエさまが戻ってくれば、また別の七匹と戦わなければならないのです。オレはそっちに備えておくことをパフさんにオススメしました。
「そうだね! コテッちんはドアから入ってきた奴に先制攻撃を仕掛けるのがいいと思うよ。ドアからだと一度に入ってくる事はできないから各個撃破でいこう! あたいはすり抜けて来た奴を弓矢で足止めしてみるよ」
「わかりました!」
でもそれにしてはおネエさまが戻ってくるのが遅いような……。あっ、レーガンさんたちの匂いがしてきました!
消臭の魔法とやらのせいか近くにくるまで匂いに気がつけなかったようです。
「パフさん、レーガンさんたちが来てくれたみたいです!」
「ほんとに!? やったあ、これで俄然あたいたちが有利になったね! あ、でも喜んでる場合じゃなかった……。ボルトミに逃げられたら作戦失敗だよお!」
「おネエさまはホムムクソスを子どもたちとか言いながら、平気で見捨てて逃げますからねえ。困った人です」
「コテッちん、ホムンクルスだよお。けどそうだね……。あたいもう一度隠形の魔法で姿を消して、ボルトミを捕縛してみるよ!」
するとその時、外でレーガンさんたちと七匹のホムムクソスが戦い始めた気配が伝わってきました。
なるほどそれでおネエさまは戻って来られなかったのですね!
「コテッちん、廊下で戦闘がっ!」
パフさんもそのことに気づいたようです。なのでオレも頷いて応えました。
さて、おネエさまに逃げられる前にどうやって捕まえましょうかねえ。
それくらい素早くオレは手前の三人をイヌパンチで気絶させ、パフさんもおネエさまを気絶させていたのです。
けど……
「コテッちん、こいつボルトミじゃないよ! 知らない研究員だ」
「はい、おネエさまとは違う顔をしていますね。でもおネエさまの匂いをさせているのは間違いないです」
「そっか、とりあえずこいつら縛っておこう。それからこのボルトミの匂いをさせてる男を尋問してみるね。あっと、その前に隠形の魔法解いておかなくちゃ」
部屋にある檻の中にはじっとして立っているリザくんとゴブちゃんがいました。それに前に戦ったことのあるオークさんだかウルクさんだかに似たのもいます。
それから動物だか何だかわからないヌルヌルしたのもいますね。人間の子どもが布をかぶってオバケの真似をしているような感じです。
こいつらみんな眠っているのでしょうか? ピクリとも動きませんね。
「起きてよおじさん!──トンッ」
「ふ、ふがっ!?」
あの首をトンッするだけで気絶させたり起こしたりする技は便利ですね!
今度パフさんにやり方を教えてもらいましょう。
「おじさんにはこれから質問に答えてもらうけど、猿轡を外しても絶対に大声を出したり質問の答え以外の事を話さないでね。約束を破ったら即殺しちゃうからお願いね」
捕まったおじさんは顔色を青くして何度も頷いています。
これだけ怯えていたら約束を破ることはないでしょう。パフさんもなかなかの迫力ですね!
「おじさんは誰? 何でボルトミと同じ匂いをさせているの?」
「わ、私はおネエさまに拉致されて、ここで働かされている錬金術師です。……な、名前はトリム。匂いは香水のせいです」
「香水?」
「は、はい。おネエさまが自分の体臭と同じ匂いのする香水を作ってて、その実験で私に振りかけているんです」
「何のためにその香水を作ったの?」
「自分の体臭が大好きだからと言っていました。素晴らしい匂いなので商品にしたらきっと大ヒットするだろうと……」
なるほどおネエさまの匂いのする香水だったのですか。どうりで生きた匂いではないはずですね。
それにしても上手に作りましたねえ。俺もご主人様の匂いの香水を作って欲しいです! そしたらぬいぐるみのメスブタにかけてあげれば、小さなご主人様の完成ですね。
「絶対ヒットしないと思うけど……。んで、そのボルトミは今どこに居るの?」
「おネエさまは転移スクロールを使ってどこかへ行ってます。夕方頃に戻ると言っていましたので、もうじき戻るはずです」
「転移スクロールの出口の座標は?」
「座標は二ヵ所です。二階の自室か、この部屋です。今日がどちらかなのかは分かりませんが……」
「あらやだ、今日はこっちよ~ん! アタシの可愛い子供立ちぃ、さあこの怪しい侵入者たちを捕まえなさ~いッ!」
「ちょッ!! ぼ、ボルトミいっ!?」
突然部屋の隅におネエさまが現れました。どういうことなんでしょうか?
しかし考えている暇はなさそうです。檻の鍵が外れて中からリザくんたち全員が出てきました。しかも真っ直ぐにパフさんとオレの方へと向かって来ています。
「コテッちん! ヤバいっ逃げてッ!」
いや、ヤバいのはパフさんの方ですから。オレが逃げたらパフさんを守る番犬がいなくなってしまいますよ?
オレはこっちに向かってきた三匹を躱して、パフさんに迫っている三匹にイヌパンチを食らわしてやりました。
「パフさん、オレの後ろにいてくださいね。この六匹はオレが倒しますんで」
「む、無理だよコテッちん! くそお、なんてタイミング悪くボルトミが帰って来ちゃったんだろ……。最悪の事態だよッ!」
「ごめんなさいねえ、アタシってば強運の持ち主なのよ~ん。アタシの都合のいいように運命が転がっていくの! ウフフ」
「心配ないですよパフさん。ワンコがいないので、オレは全力で戦えますから絶対負けません!」
「で、でもっ!」
「あら? あなたいつかの犬人族の姫といたイケメンちゃんじゃない? いや~ん、アタシってばますますラッキー! 名前は何て言ったかしら?」
「柴イヌのコテツです」
「そうそうそれよ! 犬のコテツちゃん! 今度会ったら絶対に研究材料にしたいと思ってたのよ。会えて嬉しいわあ」
パフさんは弓矢を持って自分も戦うと言っていますが、まあオレの後ろにいてくれる限りは好きにしてくれてかまいません。
とりあえず弱そうなゴブちゃん二匹から倒しますかね。
「あ、でも確かすごく強いのよねえ……念の為あと七匹いるホムンクルスたちも全部起こしてくるわ。リザくん、ゴブちゃん、オークたん、そしてスラ蔵。みんなそれまで頑張ってね~ん」
おネエさまはクネクネしながら部屋の外へと出て行ってしまいました。
でも逃げる気配はありませんね。とりあえずまだおネエさまを捕まえるチャンスはありそうです。
「パフさん、もう一度言いますけどオレより後ろにはこいつら絶対に通しませんので、そこから動いちゃだめですよ!」
「う、うん、わかった!」
オレはイヌの牙をつけるとデキるオス全開で鼻に皺を寄せました。
囲まれると戦いづらいので全員ぶっ飛ばして距離をとりましょう。
イヌパーンチッチッチッチッチッチッ!
一番ぶっ飛んだのはやっぱりゴブちゃん二匹ですね。次がリザくん二匹でその次がオークたん。スラ蔵さんは手応えなくそのままいます。なんか不気味なヤツですねえ。
てか、スラ蔵さんをパンチした時だけ、ヤケドしたみたいになったんですけど!?
まあいいです。ヒリヒリしますが気にするほどではありません。
やっぱり弱いゴブちゃんは後回しにして、オークたんからやりますか!
オークたんもやる気満々なようで、ものすごい筋肉でオレに殴りかかってきました。でも当たらなければ痛くはありません。むしろ隙だらけです。
そのブタさんみたいな鼻を噛み千切ってやりましょう!
「ギャアアッ!」
ウルクの指揮官さんに比べたら大したことありませんね。ほら首ががら空きですよ! 死んでくださいっ!
オークたんの首から吹き出した血飛沫を破って、リザくんの爪が伸びてきました。リザくんとは前にも戦っているんで、まったく驚かないですけどね!
なので爪を口で受け止めて、牙で叩き折ってやりましょう。
「キャキャ!?」
爪が折れて慌てているリザくんは放っておいて、その隣のリザくんの背中に飛び乗ったオレはうなじに噛みつきました。
リザくんの皮膚は硬いのです。なので千切るのはやめて首の骨を噛み砕いてやることとします。皮膚ごと押し潰す感じです!
ミシミシ……グシャリッ。
「キキャーッ!」
二匹目終了です。おっ? パフさんが立ち上がったゴブちゃんたちに弓矢を撃って牽制してくれていますね!
「ありがとうパフさんっ! なら今のうちにもう一匹のリザくんやっちゃいますねッ」
「うん! あたいもあいつら釘付けにしとくよッ!」
リザくんの尻尾攻撃も予想通りです。オレは振り抜かれた尻尾を余裕で避けると、リザくんの膝にイヌキックを入れました。
オレが新しく編み出した新技ですよ! くるりと回転して排泄のあとに土を蹴り上げる要領でキックするのです。
かなりな破壊力なのでリザくんの膝は折れているに違いありません。
痛そうにして膝をついているリザくんの後ろへと回ったオレは、無防備になったうなじに噛みつき首の骨を砕きました。
「キャキャキャーッ!……」
おや? ゴブちゃんのうちの一匹に何本も矢が刺さって死にそうになっていますね。
「パフさん、すごいじゃないですか!」
「でももう一匹がそっちに行ったよッ! てか、凄いのはコテッちんでしょっ! まだ数分しか経ってないのにもうホムンクルス三匹倒してるしッ!」
「四匹目もいま終了しましたっ!」
オレに飛びかかってきたゴブちゃんは、逆にオレに飛びかかられて首筋を噛み千切られて床に寝ています。
さて、あとはこの不気味なスラ蔵さんだけですね。
「コテッちん、多分そいつスライムをベースにして造ったホムンクルスだよ! そいつには物理攻撃はほぼ効かないし、噛みついたりしたら粘体から消化液を出されて溶けちゃうからね!」
「ええ! マジですかっ!?」
「マジマジっ!」
「じゃあどうやって倒せばいいのでしょうかねえ、困ったなあ」
「普通は魔法で倒すんだけど、あたいもコテッちんも攻撃魔法使えないからどうしようかねえ……」
それにしてもこのスラ蔵さんは、全然襲いかかってきませんね。一体何を考えているのでしょうか?
「ねえコテッちん。もしかしてこのスライムのヤツさ、攻撃されれば粘体で捕らえて溶かしてくるけど、自分からは攻撃してこないんじゃない?」
「そうなんですか? あ、そうだ! そこのおじさんに聞いてみましょうよ」
「コテッちん、頭イイネ! ねえおじさん、えっとトリムさんだっけ? そのスライムのホムンクルスって攻撃してくるの?」
「えっと……。俺が言ったって、おネエさまには内緒にして貰えますか?」
「うん、いいよ」
「実はそれ失敗作でして、攻撃能力がないのです。ですから放っておいたらずっとそのまま立っています」
なんと! じゃあスラ蔵さんは放置決定で問題ないですね。
それにもうじきおネエさまが戻ってくれば、また別の七匹と戦わなければならないのです。オレはそっちに備えておくことをパフさんにオススメしました。
「そうだね! コテッちんはドアから入ってきた奴に先制攻撃を仕掛けるのがいいと思うよ。ドアからだと一度に入ってくる事はできないから各個撃破でいこう! あたいはすり抜けて来た奴を弓矢で足止めしてみるよ」
「わかりました!」
でもそれにしてはおネエさまが戻ってくるのが遅いような……。あっ、レーガンさんたちの匂いがしてきました!
消臭の魔法とやらのせいか近くにくるまで匂いに気がつけなかったようです。
「パフさん、レーガンさんたちが来てくれたみたいです!」
「ほんとに!? やったあ、これで俄然あたいたちが有利になったね! あ、でも喜んでる場合じゃなかった……。ボルトミに逃げられたら作戦失敗だよお!」
「おネエさまはホムムクソスを子どもたちとか言いながら、平気で見捨てて逃げますからねえ。困った人です」
「コテッちん、ホムンクルスだよお。けどそうだね……。あたいもう一度隠形の魔法で姿を消して、ボルトミを捕縛してみるよ!」
するとその時、外でレーガンさんたちと七匹のホムムクソスが戦い始めた気配が伝わってきました。
なるほどそれでおネエさまは戻って来られなかったのですね!
「コテッちん、廊下で戦闘がっ!」
パフさんもそのことに気づいたようです。なのでオレも頷いて応えました。
さて、おネエさまに逃げられる前にどうやって捕まえましょうかねえ。
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