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第三章 柴イヌ、出世する
第四十四話 野伏のパフ
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「パフさんはあの魔獣さんたちが見えていますか?」
オレが指差した森の中をパフさんは目を凝らしてじっと見ています。
「んー、まだ見えないなあ。けど魔獣の気配は感じるね、それもかなりヤバい気配! ねえコテッちん、奴らに見つかる前に仲間の居る場所に戻ろ?」
「それは無理そうです。魔獣さんたちにオレたちはもう見つかっていますからね。ガッチリ四匹で囲まれていますよ!」
「そうなの!? てか、なんでコテッちんには見えるのさ! マジすごいんですけど」
「見た感じはオレの大キライなネコにそっくりな魔獣さんですね。しかもすっごく大きいブサネコです」
「うっそ! それって魔爪を持つ凶悪な猫魔獣のキャスパリーグじゃない? ちょーヤバい奴らだよッ!」
ほう。やはりネコでしたか! 悪いネコなら心置きなく懲らしめてやれますね。
もしオレとパフさんに襲いかかってきたら容赦はしません!
「レーガンさんに言われた通り、オレがパフさんを守りますんで心配いりません。てか奴らやる気満々ですよ! 腹立つわあ」
「あっ!……いま私にも見えた。ほんとにキャスパリーグだ! 素早く動いて毒のある魔爪で抉ってくる危ない奴らだよ? Sランカーでも一人で四匹は難しいよ。ましてやBランカーのコテッちん一人じゃ絶対倒せないよ、だから私も戦うよ!」
「フン、あんなネコどもオレ一人で十分です。だからパフさんはこの場所から動かないでくださいね」
「で、でもっ!」
見れば見るほど憎たらしい顔ですね。ネコのくせしてオレより大きいし、威嚇してくるのもムカつきます。
「おいネコども! お前たちはイヌのオレと本気で喧嘩するつもりか!」
「シャーッ! 喧嘩じゃないシャーッ、殺すっシャーッ!」
「何がシャーッだ、ネコならニャーと言え! てか殺すとか生意気ですね、お前たち全員死亡決定なっ!」
「シャーッ! お前犬人族か? 犬は大嫌いだシャーッ!」
「オレだってネコは大嫌いだっ! それからオレは柴イヌな、憶えておけッ」
「こ、コテッちん? 魔獣と話せるの?」
「はいパフさん。あの間抜け面したネコどもはオレたちを殺すとかほざいていますよ、笑っちゃいますよね! あっはは」
「ええっ? 笑い事じゃないよ!」
ところで化けネコどもの毛が針のように尖ってて痛そうです。
念のためイヌの牙をつけてお口をガードしておきますか──カチリ。
「シャーッ! とりあえずあの犬野郎から殺すっシャーッ! 全員同時に跳びかかって切り刻むっシャーッ!」
ぷっ、馬鹿な奴らめっ。お前らネコどもの性格はお見通しなんですよッ!
「性悪な化けネコなんかにイヌであるこのオレが騙されるわけないだろっ!」
すると案の定オレを殺すと息巻いているネコ以外の三匹は、パフさんに襲いかかってきました。ほんと性格悪いですね。
なのでオレはパフさんを抱きかかえて大きな木の上へと跳び移ります。
「コテッ!? きゃあーッ!」
オレは驚いているパフさんを木の枝に置くと、すぐ下で馬鹿のようにネコパンチを空振りさせているネコへと急降下しました。
「き、消えたっシャーッ?」
「こっちです! てかニャーと言え!」
オレを見上げた一匹の化けネコは、その瞬間にオレに首筋を噛み千切られて死亡です。
そのお隣にいた化けネコもオレに振り向いた途端、息を飲む間もなく首から血を噴いて死亡しました。
こいつら化けネコに比べると、ホークンの街にいたニャンキチはかなりまともなネコでしたねえ。
今ごろ何をしているのでしょう。元気にしているかなあ?
「シャーッ! に、二匹死んだっシャーッ! 一体何が起きたっシャーッ!」
「別に何も起きていないですけど?」
オレは一番威張っている化けネコの後ろに回ると、首筋近くに顔を寄せてそう答えてあげました。
「イヌがネコより強いのは当たり前なので、こうなる結果は最初からわかっていたことですね。違いますか?」
「シャッ!? な、なんでそこにお前は居るっシャーッ!!」
ガブリッ──はい終了です。
「こ、コテッちんっ! 一匹逃げたよッ! そいつ逃がすと仲間を呼んできて不味いかもだよッ!」
「逃げたネコは逃がしてやりましょう。戦う気のない奴を殺すのは可哀想ですからね」
「け、けど……」
「仲間を連れて来たらまた戦えばいいんてすよ。心配いりません!」
「そ、そっかあ。コテッちんは強くて……。優しいんだね」
するとレーガンさんたち四人の匂いが、オレたちに近づいてくるのがわかりました。とても急いでいるようです。
「おーいパフーっ、無事かあーッ!」
「あっ、バウワーさんだ! バウワーさーん、こっちは無事だよおーッ!」
パフさんは合流した四人に何が起きたかを説明しています。
その間オレはごっつぁんですさんから水をもらって口をすすぎ、気持ち悪い化けネコの血をキレイにしました。
「まあコテツ君ならそれくらいやってのけるだろうな」
「レーガンさんは驚かないんだ。あたいなんかめっちゃ驚いたのにい!」
「正直コテツ君の実力はトップクラスのSランカーと同等かそれ以上だからね。もしかしたら俺より強いかもだ」
「ウソっ!?」
「レーガン殿、それは過大評価というものです。確かにキャスパリーグは恐ろしい魔獣ですが、三匹倒したくらいでその評価を与えるのはどうかと」
「まあミネルバ。とりあえず二人が無事で良かったじゃねえか。偵察の戻りがあまりにも遅せえから心配したぜ」
「ごめんねバウワーさん。今回はコテッちんのおかげで命拾いしたよお」
その後オレたちはまた森の真ん中を目指して歩き始めました。パフさんは一段と用心深くしているようです。
けど、おネエさまの匂いのする所からは離れていっているんですけどね。
「……ねえコテッちん。さっき言ってた事って本当なの?」
「何がですか?」
「ボルトミの研究所がこっちの方角じゃないって事……」
「別の方から匂いがするのは本当ですよ。もっとあっちの方です」
「それって、信じてもいいのかな?」
「どうですかねえ? おネエさまの匂いは確かにしていますが、探しているところとは限りませんし」
「ハァ、なんか野伏としての自信なくしちゃうなあ。なんでコテッちんにはそんな事がわかっちゃうの?」
「それはオレがイヌだからですね」
「もうっ! からかわないでよ、コテッちんの意地悪……。キライ!」
はて? オレの何が意地悪なのでしょうかね。嫌われる理由もさっぱりです。
でもパフさんからは怒った匂いはしてきませんし、むしろとても好意的ないい匂いがしていますが。
「けど、コテッちんの言う事を信じた方がいいって、あたいの直感は言ってるんだよね。夜営地を確保したら戻ってレーガンさんと相談しよっか?」
その日の夜にレーガンさんたちはパフさんと話し合いをしていました。
ミネルバさんはオレのことを信じていなかったようですが、結局オレが嗅ぎつけたおネエさまの匂いを目指すことに決まったみたいです。
「コテッちん、見張りご苦労様。あたいと交代の時間だよお」
「了解ですパフさん──ガリガリ」
「って、なに食べているのさ!?」
「さっき食べた肉の骨ですよ、おやつには最高なんです。パフさんも食べますか?」
「あ、あたいはいいや。ありがとねん」
「そうですか。あっ、そうだパフさん! オレとお友だちになりませんか?」
「えっ? うん! それは嬉しいなあ、友だちになろうコテッちん」
パフさんはとても優しくていい人です。どことなく顔がコーギーにも似ていて、とても好感がもてます。
「あらためてそう言われると、なんか照れちゃうな、エヘヘ」
「では、お友だちの儀式をしましょう!」
「儀式? それってどうするの?」
「お互いの匂いを嗅ぎあって、色々な情報を共有しあうのです」
「に、匂いを嗅ぎあうのぉ!?」
「そうです。まずはオレからいきますね!」
オレはいつものように股間の間に鼻を突っ込んで、パフさんの匂いを嗅ぎました。
クンカクンカ……
「ちょーッ! こ、コテッちんっ、い、いきなりこんなの駄目だよぉッ!」
ふむふむ、なるほど……クンカクンカ。
「あ、あっ、あっん、だ、駄目だって!」
駄目とパフさんは言っていますが、匂いからは嫌がっている匂いはしてきません。
健康状態は良いようですね。肉より野菜が好きなようです。あと見た目よりずっと長く生きてますね。それともう治っていますが昔にたくさん怪我をしています。オレとの相性もいいみたい。
「ハァハァ……。こ、コテッちん……」
だいたいパフさんの情報はわかりました。なので今度はオレのことをパフさんに知ってもらいましょう。
それにしてもパフさんは何でこんなにくったりしているのでしょうかね?
「パフさん大丈夫ですか? 次はパフさんの番ですよ、オレの匂いを嗅いでください!」
「えっ!?」
パフさんが匂いを嗅ぎやすいように、オレはお尻をくいっと突き出してあげました。
「どうぞっ!」
「ど、どうぞって……。ええっ? じ、じゃあちょっとだけ……。スン」
「ち、ちょっと、お待ちなさいッ!」
おや? さっきから這いつくばってオレたちをこっそり覗いていたミネルバさんが、いきなり怒って現れました。
変ですね? 今まで喜んで見ていたのに急に怒りだすなんて。
「あ、あ、あ、貴方たちっ! そこで一体なにをなさっているのッ! は、破廉恥にもほどがありますッ!」
「うわっ!? ち、違うんだよミネルバ! こ、これは破廉恥とかそういう事じゃなくて、友だちになる為の儀式? なんだってコテッちんが……。で、いいんだよね? たぶん……」
「しどろもどろなのが怪しいですね! というかさっきから見ていましたけど、貴女は歓喜の声をあげていたじゃないですか! ズルい……。じゃなくて不届き千万ですッ!」
「さっきから見てたの? じゃあミネルバは隠形の魔法まで使って覗いていたの!? それってちょっと酷くない?」
「の、覗いていたのではありませんっ! わ、私はコテツ殿を監視していたのですッ!」
「ほんとかなあ……」
「と、とにかくっ! パフ、貴女はこの女たらしにもっと警戒するべきです。いいですね、私は忠告いたしましたわよッ!」
ミネルバさんはぷりぷりと怒りながら帰って行きました。一体何がしたかったのかまったく意味不明です。
「ミネルバがごめんねコテッちん、嫌な思いしなかった?」
「オレは全然問題ありませんよ! それよりパフさんが怒られていたみたいですけど大丈夫ですか?」
「うん、あたいは大丈夫だよ。ところであたいたち、これで友だちになれたと思っていいの、かな?」
「はいっ、オレたちはもうお友だちです!」
するとパフさんは、はにかんだ笑顔をオレに見せてくれました。
「エヘヘ……」
なのでオレは儀式の締めくくりとして。
「!!」
パフさんの口をペロリと舐めたのでした。
オレが指差した森の中をパフさんは目を凝らしてじっと見ています。
「んー、まだ見えないなあ。けど魔獣の気配は感じるね、それもかなりヤバい気配! ねえコテッちん、奴らに見つかる前に仲間の居る場所に戻ろ?」
「それは無理そうです。魔獣さんたちにオレたちはもう見つかっていますからね。ガッチリ四匹で囲まれていますよ!」
「そうなの!? てか、なんでコテッちんには見えるのさ! マジすごいんですけど」
「見た感じはオレの大キライなネコにそっくりな魔獣さんですね。しかもすっごく大きいブサネコです」
「うっそ! それって魔爪を持つ凶悪な猫魔獣のキャスパリーグじゃない? ちょーヤバい奴らだよッ!」
ほう。やはりネコでしたか! 悪いネコなら心置きなく懲らしめてやれますね。
もしオレとパフさんに襲いかかってきたら容赦はしません!
「レーガンさんに言われた通り、オレがパフさんを守りますんで心配いりません。てか奴らやる気満々ですよ! 腹立つわあ」
「あっ!……いま私にも見えた。ほんとにキャスパリーグだ! 素早く動いて毒のある魔爪で抉ってくる危ない奴らだよ? Sランカーでも一人で四匹は難しいよ。ましてやBランカーのコテッちん一人じゃ絶対倒せないよ、だから私も戦うよ!」
「フン、あんなネコどもオレ一人で十分です。だからパフさんはこの場所から動かないでくださいね」
「で、でもっ!」
見れば見るほど憎たらしい顔ですね。ネコのくせしてオレより大きいし、威嚇してくるのもムカつきます。
「おいネコども! お前たちはイヌのオレと本気で喧嘩するつもりか!」
「シャーッ! 喧嘩じゃないシャーッ、殺すっシャーッ!」
「何がシャーッだ、ネコならニャーと言え! てか殺すとか生意気ですね、お前たち全員死亡決定なっ!」
「シャーッ! お前犬人族か? 犬は大嫌いだシャーッ!」
「オレだってネコは大嫌いだっ! それからオレは柴イヌな、憶えておけッ」
「こ、コテッちん? 魔獣と話せるの?」
「はいパフさん。あの間抜け面したネコどもはオレたちを殺すとかほざいていますよ、笑っちゃいますよね! あっはは」
「ええっ? 笑い事じゃないよ!」
ところで化けネコどもの毛が針のように尖ってて痛そうです。
念のためイヌの牙をつけてお口をガードしておきますか──カチリ。
「シャーッ! とりあえずあの犬野郎から殺すっシャーッ! 全員同時に跳びかかって切り刻むっシャーッ!」
ぷっ、馬鹿な奴らめっ。お前らネコどもの性格はお見通しなんですよッ!
「性悪な化けネコなんかにイヌであるこのオレが騙されるわけないだろっ!」
すると案の定オレを殺すと息巻いているネコ以外の三匹は、パフさんに襲いかかってきました。ほんと性格悪いですね。
なのでオレはパフさんを抱きかかえて大きな木の上へと跳び移ります。
「コテッ!? きゃあーッ!」
オレは驚いているパフさんを木の枝に置くと、すぐ下で馬鹿のようにネコパンチを空振りさせているネコへと急降下しました。
「き、消えたっシャーッ?」
「こっちです! てかニャーと言え!」
オレを見上げた一匹の化けネコは、その瞬間にオレに首筋を噛み千切られて死亡です。
そのお隣にいた化けネコもオレに振り向いた途端、息を飲む間もなく首から血を噴いて死亡しました。
こいつら化けネコに比べると、ホークンの街にいたニャンキチはかなりまともなネコでしたねえ。
今ごろ何をしているのでしょう。元気にしているかなあ?
「シャーッ! に、二匹死んだっシャーッ! 一体何が起きたっシャーッ!」
「別に何も起きていないですけど?」
オレは一番威張っている化けネコの後ろに回ると、首筋近くに顔を寄せてそう答えてあげました。
「イヌがネコより強いのは当たり前なので、こうなる結果は最初からわかっていたことですね。違いますか?」
「シャッ!? な、なんでそこにお前は居るっシャーッ!!」
ガブリッ──はい終了です。
「こ、コテッちんっ! 一匹逃げたよッ! そいつ逃がすと仲間を呼んできて不味いかもだよッ!」
「逃げたネコは逃がしてやりましょう。戦う気のない奴を殺すのは可哀想ですからね」
「け、けど……」
「仲間を連れて来たらまた戦えばいいんてすよ。心配いりません!」
「そ、そっかあ。コテッちんは強くて……。優しいんだね」
するとレーガンさんたち四人の匂いが、オレたちに近づいてくるのがわかりました。とても急いでいるようです。
「おーいパフーっ、無事かあーッ!」
「あっ、バウワーさんだ! バウワーさーん、こっちは無事だよおーッ!」
パフさんは合流した四人に何が起きたかを説明しています。
その間オレはごっつぁんですさんから水をもらって口をすすぎ、気持ち悪い化けネコの血をキレイにしました。
「まあコテツ君ならそれくらいやってのけるだろうな」
「レーガンさんは驚かないんだ。あたいなんかめっちゃ驚いたのにい!」
「正直コテツ君の実力はトップクラスのSランカーと同等かそれ以上だからね。もしかしたら俺より強いかもだ」
「ウソっ!?」
「レーガン殿、それは過大評価というものです。確かにキャスパリーグは恐ろしい魔獣ですが、三匹倒したくらいでその評価を与えるのはどうかと」
「まあミネルバ。とりあえず二人が無事で良かったじゃねえか。偵察の戻りがあまりにも遅せえから心配したぜ」
「ごめんねバウワーさん。今回はコテッちんのおかげで命拾いしたよお」
その後オレたちはまた森の真ん中を目指して歩き始めました。パフさんは一段と用心深くしているようです。
けど、おネエさまの匂いのする所からは離れていっているんですけどね。
「……ねえコテッちん。さっき言ってた事って本当なの?」
「何がですか?」
「ボルトミの研究所がこっちの方角じゃないって事……」
「別の方から匂いがするのは本当ですよ。もっとあっちの方です」
「それって、信じてもいいのかな?」
「どうですかねえ? おネエさまの匂いは確かにしていますが、探しているところとは限りませんし」
「ハァ、なんか野伏としての自信なくしちゃうなあ。なんでコテッちんにはそんな事がわかっちゃうの?」
「それはオレがイヌだからですね」
「もうっ! からかわないでよ、コテッちんの意地悪……。キライ!」
はて? オレの何が意地悪なのでしょうかね。嫌われる理由もさっぱりです。
でもパフさんからは怒った匂いはしてきませんし、むしろとても好意的ないい匂いがしていますが。
「けど、コテッちんの言う事を信じた方がいいって、あたいの直感は言ってるんだよね。夜営地を確保したら戻ってレーガンさんと相談しよっか?」
その日の夜にレーガンさんたちはパフさんと話し合いをしていました。
ミネルバさんはオレのことを信じていなかったようですが、結局オレが嗅ぎつけたおネエさまの匂いを目指すことに決まったみたいです。
「コテッちん、見張りご苦労様。あたいと交代の時間だよお」
「了解ですパフさん──ガリガリ」
「って、なに食べているのさ!?」
「さっき食べた肉の骨ですよ、おやつには最高なんです。パフさんも食べますか?」
「あ、あたいはいいや。ありがとねん」
「そうですか。あっ、そうだパフさん! オレとお友だちになりませんか?」
「えっ? うん! それは嬉しいなあ、友だちになろうコテッちん」
パフさんはとても優しくていい人です。どことなく顔がコーギーにも似ていて、とても好感がもてます。
「あらためてそう言われると、なんか照れちゃうな、エヘヘ」
「では、お友だちの儀式をしましょう!」
「儀式? それってどうするの?」
「お互いの匂いを嗅ぎあって、色々な情報を共有しあうのです」
「に、匂いを嗅ぎあうのぉ!?」
「そうです。まずはオレからいきますね!」
オレはいつものように股間の間に鼻を突っ込んで、パフさんの匂いを嗅ぎました。
クンカクンカ……
「ちょーッ! こ、コテッちんっ、い、いきなりこんなの駄目だよぉッ!」
ふむふむ、なるほど……クンカクンカ。
「あ、あっ、あっん、だ、駄目だって!」
駄目とパフさんは言っていますが、匂いからは嫌がっている匂いはしてきません。
健康状態は良いようですね。肉より野菜が好きなようです。あと見た目よりずっと長く生きてますね。それともう治っていますが昔にたくさん怪我をしています。オレとの相性もいいみたい。
「ハァハァ……。こ、コテッちん……」
だいたいパフさんの情報はわかりました。なので今度はオレのことをパフさんに知ってもらいましょう。
それにしてもパフさんは何でこんなにくったりしているのでしょうかね?
「パフさん大丈夫ですか? 次はパフさんの番ですよ、オレの匂いを嗅いでください!」
「えっ!?」
パフさんが匂いを嗅ぎやすいように、オレはお尻をくいっと突き出してあげました。
「どうぞっ!」
「ど、どうぞって……。ええっ? じ、じゃあちょっとだけ……。スン」
「ち、ちょっと、お待ちなさいッ!」
おや? さっきから這いつくばってオレたちをこっそり覗いていたミネルバさんが、いきなり怒って現れました。
変ですね? 今まで喜んで見ていたのに急に怒りだすなんて。
「あ、あ、あ、貴方たちっ! そこで一体なにをなさっているのッ! は、破廉恥にもほどがありますッ!」
「うわっ!? ち、違うんだよミネルバ! こ、これは破廉恥とかそういう事じゃなくて、友だちになる為の儀式? なんだってコテッちんが……。で、いいんだよね? たぶん……」
「しどろもどろなのが怪しいですね! というかさっきから見ていましたけど、貴女は歓喜の声をあげていたじゃないですか! ズルい……。じゃなくて不届き千万ですッ!」
「さっきから見てたの? じゃあミネルバは隠形の魔法まで使って覗いていたの!? それってちょっと酷くない?」
「の、覗いていたのではありませんっ! わ、私はコテツ殿を監視していたのですッ!」
「ほんとかなあ……」
「と、とにかくっ! パフ、貴女はこの女たらしにもっと警戒するべきです。いいですね、私は忠告いたしましたわよッ!」
ミネルバさんはぷりぷりと怒りながら帰って行きました。一体何がしたかったのかまったく意味不明です。
「ミネルバがごめんねコテッちん、嫌な思いしなかった?」
「オレは全然問題ありませんよ! それよりパフさんが怒られていたみたいですけど大丈夫ですか?」
「うん、あたいは大丈夫だよ。ところであたいたち、これで友だちになれたと思っていいの、かな?」
「はいっ、オレたちはもうお友だちです!」
するとパフさんは、はにかんだ笑顔をオレに見せてくれました。
「エヘヘ……」
なのでオレは儀式の締めくくりとして。
「!!」
パフさんの口をペロリと舐めたのでした。
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