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第二章 柴イヌと犬人族のお姫様
第十九話 狩りへ行こう!
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「シャキーン! うふふっ」
「シャキーン! うふふふっ」
リリアンさんがご機嫌なようです。新しく作った剣が完成したようで、ずっとああして剣を振り回しています。
「見て下さいコテツ殿! この両刃の煌めきといい、姿の重厚感といい、なのにミスリルで軽い! これは完璧な剣ですよっ!」
「よかったですね、リリアンさん!」
「はい! シャキーン! うふふっ」
「ちょっとリリアン、いつまでも馬鹿やってないで働きなさいよね! あんたギルドにいくら借金があると思っているのさ!」
「モニカ……いまはそういう現実的な話はやめてくれないかな? 私はね、この美しい剣とともに喜びに浸っていたいのだよっ! シャキーン!」
「いいから働いて借金返せっ! もう全身の縫った傷も大丈夫なんでしょ? あんたならソロで出来る依頼もあるから、その剣の試し斬りついでに行ってきなさいよ」
「あ、それいいかも。私、掲示板みてくるねーっ!」
どうやらリリアンさんは冒険者への依頼を選びに行ったようです。
依頼といえばオレは相変わらずオレの出来るCランクの依頼がなかなかなくて、やっぱり見ず知らずの魔物さんを倒すのは可哀想ですし……
そんなわけで狩りとして食べられる魔物の討伐依頼を受けたのはまだ一回だけという体たらくです。
その一回は大きなバッタの魔物さん狩りで、でも食べたら吐くほど不味くて一匹倒しただけで帰ってきちゃったんですよね。
モニカさんが言うにはそのバッタさんなら、あと五百匹も倒せばBランクに上がれるらしいのですが……あんな不味いのをそんなに食べたら、オレはその前に死ぬでしょう。
「コテツさん、コテツさん、ちょっと、ちょっと……」
ん? モニカさんがオレを手招きして呼んでます、なんでしょうか?
「コテツさん、本当はこういうの禁止なんですけど、コテツさんにはオーク討伐でお世話になったので特別に……食べられる魔物の依頼を確保しておきましたわ」
「えっ、オレの出来る依頼がついに?」
「ええ、今度のは美味しいお肉と評判の魔物ですわよ! この依頼書です、ご自分で本文を指でなぞって確認して下さいな」
「美味しいお肉!」
オレは文字は読めませんが、この文字は指でなぞると書いた人の声で話してくれるんです。めっちゃ便利!
【Cランク依頼です。我がポメル村はいまアックスビークにより家畜が補食被害に遭っています。その魔物駆除の依頼となります。魔物の群れの総数はおよそ三十羽。一羽につき三万キンネの報酬です。どうぞよろしくお願いします。村長】
なるほど! 声が聞けても全然意味がわからないことがわかりましたっ。ということでモニカさん、助けてくださいっ。
「えっとですね、ポメル村はホークンの街から西へ半日行った草原にある村です」
「走ればすぐですねっ!」
「はい、コテツさん限定ですけど。それでアックスビークという魔物は、文字通りくちばしが斧みたいに鋭い大きな鳥です。鳥ですが飛べなくて代わりに素早く走ります。普通はCランカー三人くらいの徒党で倒しますが、まあ、コテツさんならソロで十分かと」
「よくわかりましたっ! つまり大きな鳥さんを全部倒せばいいのですね!」
「あ、でも無理して全部倒さなくてもいいんですよ? 報酬は一羽ごとに出ますので」
「全部倒したらBランクになれますか?」
「三十羽ですから足りないですねえ、二百羽くらい倒さないと……まあ、コツコツやっていきましょう!」
「はいっ! 頑張りますっ」
ちょうどモニカさんとの話が終わったとき、リリアンさんが戻ってきました。
「えっ、コテツ殿も依頼を?」
「美味しいお肉の鳥さんです!」
「それは良かったですね! 私も依頼を決めてきました。迷宮五層での素材集めです」
「へえ迷宮にしたんだ。たしかに一番報酬単価は高いけど、十日以上の旅になるんじゃない? まあ私にとっては好都合ですけどっ!」
「ほうリリアン、何が好都合なのか詳しく聞かせて欲しのだが?」
「フーンだ、恋愛は早い者勝ちなのよ! そこはフェアにいきましょうよっ」
「チッ! た、確かにそうだが……」
ふむ、なぜかリリアンさんは歯軋りをし、モニカさんは舌なめずりをしながら二人でオレを見つめています。
あまり関わりたくない匂いなので、無視しておきましょう。
そんなことよりオレは、さっさとポメル村へ行くことにしました。
街の門まで見送りに来てくれたリリアンさんはいつも優しいです。
「コテツさん、忘れ物はないですか? 依頼書はちゃんと持ちましたか?」
「はいっ! ちゃんとメスブタとも一緒ですよっ」
「村までの道は大丈夫そうですか?」
「大丈夫ですっ! 依頼書を持ってきた村の人の匂いが道にまだ残っているので、辿って行けますっ!」
「そうですか……あ、そう言えば武器屋に作成依頼した犬の牙はいつ頃に完成だと?」
「この前に歯形をとったとき、あとハツカとかいってたような? ハツカがどのくらいの長さかわからないですが……」
「二十日ですね、なるほど。完成が楽しみですっ! じゃあ気をつけて」
「はいっ! 行ってきますっ!」
ポメル村にはアッというまに着きました。人間走りを覚えてからは恐ろしい速さです。
しかしこんなに速く走れるようになって大丈夫なのでしょうか?
匂いも音も遠くの動くものを見ることも、あと噛む力とジャンプもです。「デキるオス」と喜んでいて果してよいものか……
きっと人間の姿になる病気のせいなのでしょうが、オレはこの病気でいつか死ぬかもしれません。
まあ、いまは狩りのことだけを考えましょうか。
オレはモニカさんに教わった通りに、村の偉い人に会ってアックスビークという鳥さんの匂いを嗅がせてもらうことにしました。
ふむふむ、なるほどこの匂い……沢山いますね! 同じ匂いがプンプンしてきます。
「えっ? 本当に匂いだけで見つけることが出来るのですか?」
「イヌなので当然です!」
村の偉い人は不思議そうにオレを見ていましたが、なんとなく不安そうな匂いもさせています。
「あのお、ギルドの派遣を疑う訳ではありませんが、Cランカーお一人だけでは危険なのでは?」
「鳥さんの狩りは初めてなのでわかりませんが、頑張りますっ!」
「そうですか……」
「鳥さんのお肉は美味しいですか?」
「えっ? あ、はい、なかなか美味しいですよ。大抵は燻製か塩漬けにして保存しますが、新鮮なのはさらに美味しいです……って、あの、ヨダレたれてますけど……」
「はい、想像しただけでヨダレがでますね!」
「そ、そうですか……あ、ちなみにアックスビークの肉はよろしければ村で買い取らせて頂きます。あと羽根やくちばしなどの加工素材になる物も」
「買い取るってなんでしょう?」
「えっ? お金をお支払いするという意味ですが……」
「ああ、つまり交換ですね! わかりましたっ」
「…………」
偉い人は話している間ずっと不安そうでした。でもそれよりなんだか嫌われているような、でもイヌ嫌いの人がオレに向けてくる匂いとも違くて……
そう、冷たい匂い?
オレはなぜだか急に初めてこの知らない場所にきた時の、ご主人様とはぐれてしまって独りぼっちで心細かった時の気持ちを思い出してしまいました。
鳥さんたちは簡単に見つかりましたが、とても凶暴な鳥さんたちで、オレに気づくとすぐに群れで一斉攻撃してくるという荒くれ者たちです。
「アギャー! ダレギャー! シギャー! クギャー!」
言葉も全然わからないのでお話しもできません。狩りをするより誰かとお話しをしたい気分だったのですが……まったくそんな雰囲気ではありませんね。
もうさっさと依頼を達成させて街に帰りたいです。なので狩り尽くしますっ!
見ず知らずの鳥さんたちごめんね、美味しいお肉にしますから許してねっ!
オレは次々と鳥さんを倒していきました。半分くらいまで減るとボスが群れを連れて逃げ出し始めたので、散らばった鳥さんたちを片付けながら追いかけます。
なるほど逃げ足は速いですね! だけど追いつけない速さではないです。
結局オレは全部の鳥さんを倒して、急いで村へと戻ることにしました。
「えっ? もうアックスビークを倒した!? それも群れ全部?」
「はい! なので早く回収してくださいっ! 早くしないと動物たちに鳥さんの肉を食い荒らされますっ」
「わ、わかりました……」
初め半信半疑という顔をしていた村の偉い人も、沢山の鳥さんの死骸を見たら急に顔色を変えて、人も沢山呼んで急いで鳥さんたちを回収しはじめたようです。
「ご苦労様でした。全部で五十三羽、思ったより多かったんですね。こちらが肉とその他の部位の買い取りについてのリストです。報酬金と合わせた金額を後日ギルドにお持ち致します」
回収を手伝ったオレはもう腹ペコで、新鮮なお肉を一杯ご馳走してもらったのだけれど……どうしてだろう、いつもみたいに幸福感を満たしてくれる匂いがしてきません。
美味しいのに美味しくないです。
「村の人たちは全然イジワルじゃなかったのにな……」
──帰ろう。
沢山のお肉のお土産を持ってオレは街へと走り出します。早く、帰りたいです。
「ただいま帰りましたっ!」
「あらコテツさん、お帰りなさい。今回もまたずいぶんと早かったですわね」
ああ、モニカさん! 懐かしいですっ、逢いたかったですッ!
オレは感情が溢れるままにモニカさんに抱きついて、モニカさんの胸に鼻を擦りつけました。
「すぅはぁ~、モニカさんの匂いがします」
「えっ? ちょっ、コテツさん? ええっ、いきなりここで? ああ、もう、可愛すぎますわッ! 私も抱き締めちゃうッ!」
「ギャーーッ!」
ん? 鳥さんの声がなぜここに?
「こ、こ、コテツ殿っ! 何しているんですかッ!? イヤですっ、モニカから離れて下さいっ! こんなのイヤですーーッ!」
あ、リリアンさんの声でしたか。オレはリリアンさんに逢えて、なんだかすごくホッとして、やっぱり感情のままにリリアンさんへ抱きつきました。
「すぅはぁ~、リリアンさんの匂いがします」
「こ、コテツ殿? えっ? ど、どうしたんですか? あ、あうっ! そ、そんなに強く擦りつけ……はうっ! い、いいですとも! や、やっと私への放置プレイが終了するのですねッ!」
「ちょっと、どきなさいよリリアンっ! 私が最初なんだからねっ! さあコテツさん、私の部屋で続きをっ」
「だまれ変態女っ! それを言うなら私が先だッ!」
あっ、そっか──
いつの間にかここがオレの家になっていたんですね。ご主人様と過ごした家はもうないけれど……
この新しい家でコテツはご主人様を待っています。
「シャキーン! うふふふっ」
リリアンさんがご機嫌なようです。新しく作った剣が完成したようで、ずっとああして剣を振り回しています。
「見て下さいコテツ殿! この両刃の煌めきといい、姿の重厚感といい、なのにミスリルで軽い! これは完璧な剣ですよっ!」
「よかったですね、リリアンさん!」
「はい! シャキーン! うふふっ」
「ちょっとリリアン、いつまでも馬鹿やってないで働きなさいよね! あんたギルドにいくら借金があると思っているのさ!」
「モニカ……いまはそういう現実的な話はやめてくれないかな? 私はね、この美しい剣とともに喜びに浸っていたいのだよっ! シャキーン!」
「いいから働いて借金返せっ! もう全身の縫った傷も大丈夫なんでしょ? あんたならソロで出来る依頼もあるから、その剣の試し斬りついでに行ってきなさいよ」
「あ、それいいかも。私、掲示板みてくるねーっ!」
どうやらリリアンさんは冒険者への依頼を選びに行ったようです。
依頼といえばオレは相変わらずオレの出来るCランクの依頼がなかなかなくて、やっぱり見ず知らずの魔物さんを倒すのは可哀想ですし……
そんなわけで狩りとして食べられる魔物の討伐依頼を受けたのはまだ一回だけという体たらくです。
その一回は大きなバッタの魔物さん狩りで、でも食べたら吐くほど不味くて一匹倒しただけで帰ってきちゃったんですよね。
モニカさんが言うにはそのバッタさんなら、あと五百匹も倒せばBランクに上がれるらしいのですが……あんな不味いのをそんなに食べたら、オレはその前に死ぬでしょう。
「コテツさん、コテツさん、ちょっと、ちょっと……」
ん? モニカさんがオレを手招きして呼んでます、なんでしょうか?
「コテツさん、本当はこういうの禁止なんですけど、コテツさんにはオーク討伐でお世話になったので特別に……食べられる魔物の依頼を確保しておきましたわ」
「えっ、オレの出来る依頼がついに?」
「ええ、今度のは美味しいお肉と評判の魔物ですわよ! この依頼書です、ご自分で本文を指でなぞって確認して下さいな」
「美味しいお肉!」
オレは文字は読めませんが、この文字は指でなぞると書いた人の声で話してくれるんです。めっちゃ便利!
【Cランク依頼です。我がポメル村はいまアックスビークにより家畜が補食被害に遭っています。その魔物駆除の依頼となります。魔物の群れの総数はおよそ三十羽。一羽につき三万キンネの報酬です。どうぞよろしくお願いします。村長】
なるほど! 声が聞けても全然意味がわからないことがわかりましたっ。ということでモニカさん、助けてくださいっ。
「えっとですね、ポメル村はホークンの街から西へ半日行った草原にある村です」
「走ればすぐですねっ!」
「はい、コテツさん限定ですけど。それでアックスビークという魔物は、文字通りくちばしが斧みたいに鋭い大きな鳥です。鳥ですが飛べなくて代わりに素早く走ります。普通はCランカー三人くらいの徒党で倒しますが、まあ、コテツさんならソロで十分かと」
「よくわかりましたっ! つまり大きな鳥さんを全部倒せばいいのですね!」
「あ、でも無理して全部倒さなくてもいいんですよ? 報酬は一羽ごとに出ますので」
「全部倒したらBランクになれますか?」
「三十羽ですから足りないですねえ、二百羽くらい倒さないと……まあ、コツコツやっていきましょう!」
「はいっ! 頑張りますっ」
ちょうどモニカさんとの話が終わったとき、リリアンさんが戻ってきました。
「えっ、コテツ殿も依頼を?」
「美味しいお肉の鳥さんです!」
「それは良かったですね! 私も依頼を決めてきました。迷宮五層での素材集めです」
「へえ迷宮にしたんだ。たしかに一番報酬単価は高いけど、十日以上の旅になるんじゃない? まあ私にとっては好都合ですけどっ!」
「ほうリリアン、何が好都合なのか詳しく聞かせて欲しのだが?」
「フーンだ、恋愛は早い者勝ちなのよ! そこはフェアにいきましょうよっ」
「チッ! た、確かにそうだが……」
ふむ、なぜかリリアンさんは歯軋りをし、モニカさんは舌なめずりをしながら二人でオレを見つめています。
あまり関わりたくない匂いなので、無視しておきましょう。
そんなことよりオレは、さっさとポメル村へ行くことにしました。
街の門まで見送りに来てくれたリリアンさんはいつも優しいです。
「コテツさん、忘れ物はないですか? 依頼書はちゃんと持ちましたか?」
「はいっ! ちゃんとメスブタとも一緒ですよっ」
「村までの道は大丈夫そうですか?」
「大丈夫ですっ! 依頼書を持ってきた村の人の匂いが道にまだ残っているので、辿って行けますっ!」
「そうですか……あ、そう言えば武器屋に作成依頼した犬の牙はいつ頃に完成だと?」
「この前に歯形をとったとき、あとハツカとかいってたような? ハツカがどのくらいの長さかわからないですが……」
「二十日ですね、なるほど。完成が楽しみですっ! じゃあ気をつけて」
「はいっ! 行ってきますっ!」
ポメル村にはアッというまに着きました。人間走りを覚えてからは恐ろしい速さです。
しかしこんなに速く走れるようになって大丈夫なのでしょうか?
匂いも音も遠くの動くものを見ることも、あと噛む力とジャンプもです。「デキるオス」と喜んでいて果してよいものか……
きっと人間の姿になる病気のせいなのでしょうが、オレはこの病気でいつか死ぬかもしれません。
まあ、いまは狩りのことだけを考えましょうか。
オレはモニカさんに教わった通りに、村の偉い人に会ってアックスビークという鳥さんの匂いを嗅がせてもらうことにしました。
ふむふむ、なるほどこの匂い……沢山いますね! 同じ匂いがプンプンしてきます。
「えっ? 本当に匂いだけで見つけることが出来るのですか?」
「イヌなので当然です!」
村の偉い人は不思議そうにオレを見ていましたが、なんとなく不安そうな匂いもさせています。
「あのお、ギルドの派遣を疑う訳ではありませんが、Cランカーお一人だけでは危険なのでは?」
「鳥さんの狩りは初めてなのでわかりませんが、頑張りますっ!」
「そうですか……」
「鳥さんのお肉は美味しいですか?」
「えっ? あ、はい、なかなか美味しいですよ。大抵は燻製か塩漬けにして保存しますが、新鮮なのはさらに美味しいです……って、あの、ヨダレたれてますけど……」
「はい、想像しただけでヨダレがでますね!」
「そ、そうですか……あ、ちなみにアックスビークの肉はよろしければ村で買い取らせて頂きます。あと羽根やくちばしなどの加工素材になる物も」
「買い取るってなんでしょう?」
「えっ? お金をお支払いするという意味ですが……」
「ああ、つまり交換ですね! わかりましたっ」
「…………」
偉い人は話している間ずっと不安そうでした。でもそれよりなんだか嫌われているような、でもイヌ嫌いの人がオレに向けてくる匂いとも違くて……
そう、冷たい匂い?
オレはなぜだか急に初めてこの知らない場所にきた時の、ご主人様とはぐれてしまって独りぼっちで心細かった時の気持ちを思い出してしまいました。
鳥さんたちは簡単に見つかりましたが、とても凶暴な鳥さんたちで、オレに気づくとすぐに群れで一斉攻撃してくるという荒くれ者たちです。
「アギャー! ダレギャー! シギャー! クギャー!」
言葉も全然わからないのでお話しもできません。狩りをするより誰かとお話しをしたい気分だったのですが……まったくそんな雰囲気ではありませんね。
もうさっさと依頼を達成させて街に帰りたいです。なので狩り尽くしますっ!
見ず知らずの鳥さんたちごめんね、美味しいお肉にしますから許してねっ!
オレは次々と鳥さんを倒していきました。半分くらいまで減るとボスが群れを連れて逃げ出し始めたので、散らばった鳥さんたちを片付けながら追いかけます。
なるほど逃げ足は速いですね! だけど追いつけない速さではないです。
結局オレは全部の鳥さんを倒して、急いで村へと戻ることにしました。
「えっ? もうアックスビークを倒した!? それも群れ全部?」
「はい! なので早く回収してくださいっ! 早くしないと動物たちに鳥さんの肉を食い荒らされますっ」
「わ、わかりました……」
初め半信半疑という顔をしていた村の偉い人も、沢山の鳥さんの死骸を見たら急に顔色を変えて、人も沢山呼んで急いで鳥さんたちを回収しはじめたようです。
「ご苦労様でした。全部で五十三羽、思ったより多かったんですね。こちらが肉とその他の部位の買い取りについてのリストです。報酬金と合わせた金額を後日ギルドにお持ち致します」
回収を手伝ったオレはもう腹ペコで、新鮮なお肉を一杯ご馳走してもらったのだけれど……どうしてだろう、いつもみたいに幸福感を満たしてくれる匂いがしてきません。
美味しいのに美味しくないです。
「村の人たちは全然イジワルじゃなかったのにな……」
──帰ろう。
沢山のお肉のお土産を持ってオレは街へと走り出します。早く、帰りたいです。
「ただいま帰りましたっ!」
「あらコテツさん、お帰りなさい。今回もまたずいぶんと早かったですわね」
ああ、モニカさん! 懐かしいですっ、逢いたかったですッ!
オレは感情が溢れるままにモニカさんに抱きついて、モニカさんの胸に鼻を擦りつけました。
「すぅはぁ~、モニカさんの匂いがします」
「えっ? ちょっ、コテツさん? ええっ、いきなりここで? ああ、もう、可愛すぎますわッ! 私も抱き締めちゃうッ!」
「ギャーーッ!」
ん? 鳥さんの声がなぜここに?
「こ、こ、コテツ殿っ! 何しているんですかッ!? イヤですっ、モニカから離れて下さいっ! こんなのイヤですーーッ!」
あ、リリアンさんの声でしたか。オレはリリアンさんに逢えて、なんだかすごくホッとして、やっぱり感情のままにリリアンさんへ抱きつきました。
「すぅはぁ~、リリアンさんの匂いがします」
「こ、コテツ殿? えっ? ど、どうしたんですか? あ、あうっ! そ、そんなに強く擦りつけ……はうっ! い、いいですとも! や、やっと私への放置プレイが終了するのですねッ!」
「ちょっと、どきなさいよリリアンっ! 私が最初なんだからねっ! さあコテツさん、私の部屋で続きをっ」
「だまれ変態女っ! それを言うなら私が先だッ!」
あっ、そっか──
いつの間にかここがオレの家になっていたんですね。ご主人様と過ごした家はもうないけれど……
この新しい家でコテツはご主人様を待っています。
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