124 / 185
眠りを誘う甘い芳香
#9
しおりを挟む
紅茶というのは香りを楽しんでから一口飲み、それから砂糖などを加えて好みの味に整えるものと聞いております。
私は元々甘い物を好まないのもあり、あまり砂糖を加える事はありません。
その上今回出されたお茶は質が良く、そのままで美味しく頂くことが出来ます。
「この紅茶はリュンヌから持ってきた物だよ。俺が一番好きなお茶を選んだんだけど、どうかな?」
お茶に関してシアン様が説明して下さいます。
「確かに美味しいわ、入れ方もお上手なのね」
ジャン様のお母様がそれに答えます。
シアン様が時折私とドゥイリオ様の方へ助けを求めような視線を向けてきますが……
「最近温室で育ててるタンポポが春には食べ頃でね、今度二人に何か料理して欲しいと思ってるんだ」
「タンポポってその辺に生えてるのにわざわざ温室で育ててるのか?」
「日光に当てすぎると美味しくなくなるからね、食べるのが目的だから温室の方が良いんだよ」
「色々あるんだな、リュンヌではどうなんだ?」
「さぁ、侯爵様は雑草なんて食べないと思うよ?」
シアン様が男爵を装って私達と会っていたことを「知らない」と仰ってから、ドゥイリオ様がこの調子です。
「こ、今度俺も食べてみたいなー……なんて」
「まさか! 侯爵様のお口には合いませんよ」
「俺も、薬草とか、興味があって……」
「ご冗談を、侯爵と言えばかなり高い地位のお方ですよね? まさか雑草に興味があるなんて爵位と見合いませんよ」
シアン様の目元に光るものが滲み始め、表情に悲壮感が出てきます。
「うっ……その……」
「どうなさいました?」
「す、すみませんでした……」
「こちらこそ失礼いたしました、雑草の話など退屈でしょう?」
「俺、嘘ついてました……」
「あら! ドゥイリオさんに嘘だなんて、侯爵様は勇気がおありね」
「そうですね、モウカハナに行ったことがあるそうですし」
その勇気がある例として、私の店が出るのは何故でしょうか?
「俺、でも本当に、男爵でもあって」
「侯爵様なのに男爵なんですの?」
「隣の男爵領が、継承者不在で当の男爵が亡くなって、一時的に俺が管理してるので、嘘ではなくて……」
「最初にそれ言えば良かったんじゃねぇか?」
「ミヌレさんに怒られるし、男爵領の統合の打診が、出るだろうから、それが嫌で……」
シアン様の頬に一筋の涙が流れます。
「ね、泣き虫でしょ?」
ドゥイリオ様のがクスクスと小さく笑いながら言います。
「もう、ドゥイリオさん意地悪はダメよ?」
「ごめんね、知らないなんて言うからつい」
「うぅ……ごめんなさい……大きな声で言えなくて」
「とりあえず僕は君をなんて呼べば良い?」
「今まで通りが良いけど、ここでは侯爵、かな……」
シアン様が両手で顔を覆って俯いてしまわれました。
「じゃあ侯爵、聞きたい事があるけど良い?」
「何かな?」
顔を手から離してドゥイリオ様の方を見ます。
「このテーブル席の人を誘った理由はなんなのかなって」
「あぁ、それなら」
パッと表情を明るくして話を始めました。
「まずマルキーナ様ご夫婦は、宿なのに色んな国の本を扱ってたからかな」
「あら! よく見てくれてたのね!」
「それとサーラ様のお店のパスタ、本当に美味しくて! 会ったこと無かったけど、誘うならココの人! って思ってたんだ」
どうやらシアン様はリモワの様々な店に行っているようですね。
楽しそうに話されている様子を見てか、ドゥイリオ様の様子も少し穏やかなものに変わります。
「ウチじゃないけど、買い占めはダメよ?」
「あぁ……それは本当にすみません……俺はやってないけど、その……」
「分かってるわよ、ドゥイリオさんのとこでもやってないでしょ?」
「俺んとこ……は、やりようがねぇか」
「それがね、食べきれないほど注文されて午後は閉店ってお店もあるそうよ」
「それは困る……このテーブルはともかく、他はどうなんだろうな」
そう言ってミケーノ様が背後のテーブルに視線をやります。
他はテーブルが六つほどあり、それぞれ四人から六人ほど座ってる方がいます。
「招待する人は外務局の人と相談して決めたけど、断った人もいるかな」
「聞いてねぇのか?」
「うん、俺の招待したかった人は皆さんで全部なんだ」
「この広い会場で五人はかなり少ないみたいだけど良かったの? 他の方は沢山呼んだみたいに見えるわ」
「そうかもね。今回は俺、ワガママ通したから」
何か事情があるようですが、シアン様は苦笑いをするだけで明確な回答をなさいません。
ドゥイリオ様は何かを察したのか、紅茶のカップを持ち上げて微笑みます。
「せっかくだし、この茶葉の話をもっと聞かせてよ。オランディで買うことはできるの?」
「そうね、やっぱりお高いのかしら?」
話題がお茶の話になったからか、シアン様の雰囲気が和らぎます。
他のテーブルの様子は気になりますが、ひとまずこの場を楽しむのも悪くないかもしれません。
何度かお茶のお代わりを頂いた頃、私達のテーブルへ最初に挨拶をしていたご婦人がやって来ました。
「ボイヤー侯爵、私をお客様を紹介して下さるかしら?」
扇子で口元を隠してますが、立っているせいか自然と見下すような視線になっています。
シアン様の表情が一瞬で冷えたように見えましたが、にこりと微笑んでみせます。
「あぁこれは公爵夫人。わざわざ僕のテーブルまでおいでくださるとは」
シアン様は立ち上がり、洗練された仕草でご婦人を手で指して私達に紹介なさいます。
「こちらはリュンヌ帝国貴族序列一位、公爵位ミヌレ家より、ガブリエラ・ド・ミヌレ様、公爵家の第一夫人です」
「私の事はどうぞミヌレ公妃とでもお呼びください」
テーブルに座っていた私達は小さく会釈を致します。
「それで夫人、あなたがご招待したお客様との会話はお済みですか?」
「まだだけど、こちらにどんな方がいらっしゃるのか知らないから見に来たのよ」
「それは大変なお心遣いを。こちらの皆様は夫人の事はご存知のようでしたよ、色々なお店で沢山の商品をお買い上げになったとか」
シアン様の笑顔に変化はありませんが、皮肉のように聞こえます。
「あらそう? 私はこちらのテーブルの皆様は見覚えがないわね」
「それならご令嬢ですか? 彼女も目立ちますから」
「ノリアなら、一番のお目当てが来なかったから拗ねてるわよ」
「それは残念です、せっかくの楽しいお茶会で僕の婚約者がそんな思いをしてるなんて」
シアン様の皮肉に気付いてるのか分かりませんが、ご婦人は意に介した様子もありません。
ビャンコ様くらい露骨にやらないと伝わらないのでしょうか。
「貴方のテーブルは興味がなかったんだけど」
ご婦人は扇子を閉じて、少し熱の篭った視線でミケーノ様をご覧になっています。
「あなた、お名前は?」
「俺? ミケーノ・サーラです」
「ミケーノ、ね」
そう言ってミケーノ様の背後に立ち、両肩にそっと手を置き口元を耳に寄せます。
「私ここに宿泊しておりますの、良かったら遊びにいらしてくださいね」
ミケーノ様の顔色が青くなります。
「夫人、他のお客様にご挨拶をしに戻られては? 彼は僕の客ですから」
「フン、まぁ良いわ」
そう言ってスカートを片手で小さく広げて見せ、優雅に一礼します。
「それでは皆様、ごきげんよう。楽しんでくださいませ」
そのまま綺麗な姿勢を崩さずに振り返り、違うテーブルへと移動されました。
それを見送ってから、シアン様が両手で顔を覆って俯きます。
「これ、これが嫌なの……恥ずかしい……」
「君はともかく、みんなあぁなの?」
「いや……あの人は特別にそう、かな」
「イヤミに気づかないのもすごいわねぇ」
「……久しぶりに鳥肌立ったぞ」
あのご婦人は相変わらずですね。
今日の変装は無意味と言われましたが、気付かれなかったところを見ると効果はあったようです。
お茶会が始まってから一時間ほど経ちました。
そろそろ座ってお茶を飲むだけの集まりも少し退屈になってきたような空気があります。
そろそろ閉会かと思っていた頃、同じ服を着た女性数名がトレイを持って会場に入ってきました。
そして各テーブルに新しいカップとポットを置いていきます。
配られているのを確認し、ご婦人が最初に挨拶をした場所へ立ちます。
「さぁ皆様、今回の集まりもそろそろお開きにしようかと思いますわ。最後に今お配りしたお茶をお召し上がりください、帝国の伝統的な茶葉ですのよ」
カップとポットを運んできた女性が、慣れた手つきでお茶を注いでいきます。
全員にお茶が配られてから、香りを確認し口にします。
……シアン様のお茶がとても美味しかったからでしょうか、非常に渋い物に思います。
テーブルの皆様も同じように思ったのか、砂糖壺から角砂糖を取り出し加えます。
私も同じように角砂糖を加え、再び紅茶を口にします。
今度は先程とは変わって、紅茶の香りと共に軽く滑らかな甘さが溶けるように広がります。
上質な砂糖なのでしょうか、ついもう一口と飲むうちにカップは空になりました。
「これ、砂糖か? あんまり味しねぇな」
隣でミケーノ様が感想を仰ってますが、何故か私とーー
───────
突然大きな音を立てて、招待客の一人がテーブルに倒れ込んだ。
「お、おい! キーノスどうした!?」
隣の客が声をかけるも全く反応がない。
その時テーブルから離れた位置にいた白い男が立ち上がり、テーブルに駆け寄りながら叫んだ。
「ミケさん!! テーブルの上確保! 特にキーちゃんのコップは絶対!!」
終わろうとしていたはずのお茶会の会場は、予想が出来ない混乱に包まれた。
私は元々甘い物を好まないのもあり、あまり砂糖を加える事はありません。
その上今回出されたお茶は質が良く、そのままで美味しく頂くことが出来ます。
「この紅茶はリュンヌから持ってきた物だよ。俺が一番好きなお茶を選んだんだけど、どうかな?」
お茶に関してシアン様が説明して下さいます。
「確かに美味しいわ、入れ方もお上手なのね」
ジャン様のお母様がそれに答えます。
シアン様が時折私とドゥイリオ様の方へ助けを求めような視線を向けてきますが……
「最近温室で育ててるタンポポが春には食べ頃でね、今度二人に何か料理して欲しいと思ってるんだ」
「タンポポってその辺に生えてるのにわざわざ温室で育ててるのか?」
「日光に当てすぎると美味しくなくなるからね、食べるのが目的だから温室の方が良いんだよ」
「色々あるんだな、リュンヌではどうなんだ?」
「さぁ、侯爵様は雑草なんて食べないと思うよ?」
シアン様が男爵を装って私達と会っていたことを「知らない」と仰ってから、ドゥイリオ様がこの調子です。
「こ、今度俺も食べてみたいなー……なんて」
「まさか! 侯爵様のお口には合いませんよ」
「俺も、薬草とか、興味があって……」
「ご冗談を、侯爵と言えばかなり高い地位のお方ですよね? まさか雑草に興味があるなんて爵位と見合いませんよ」
シアン様の目元に光るものが滲み始め、表情に悲壮感が出てきます。
「うっ……その……」
「どうなさいました?」
「す、すみませんでした……」
「こちらこそ失礼いたしました、雑草の話など退屈でしょう?」
「俺、嘘ついてました……」
「あら! ドゥイリオさんに嘘だなんて、侯爵様は勇気がおありね」
「そうですね、モウカハナに行ったことがあるそうですし」
その勇気がある例として、私の店が出るのは何故でしょうか?
「俺、でも本当に、男爵でもあって」
「侯爵様なのに男爵なんですの?」
「隣の男爵領が、継承者不在で当の男爵が亡くなって、一時的に俺が管理してるので、嘘ではなくて……」
「最初にそれ言えば良かったんじゃねぇか?」
「ミヌレさんに怒られるし、男爵領の統合の打診が、出るだろうから、それが嫌で……」
シアン様の頬に一筋の涙が流れます。
「ね、泣き虫でしょ?」
ドゥイリオ様のがクスクスと小さく笑いながら言います。
「もう、ドゥイリオさん意地悪はダメよ?」
「ごめんね、知らないなんて言うからつい」
「うぅ……ごめんなさい……大きな声で言えなくて」
「とりあえず僕は君をなんて呼べば良い?」
「今まで通りが良いけど、ここでは侯爵、かな……」
シアン様が両手で顔を覆って俯いてしまわれました。
「じゃあ侯爵、聞きたい事があるけど良い?」
「何かな?」
顔を手から離してドゥイリオ様の方を見ます。
「このテーブル席の人を誘った理由はなんなのかなって」
「あぁ、それなら」
パッと表情を明るくして話を始めました。
「まずマルキーナ様ご夫婦は、宿なのに色んな国の本を扱ってたからかな」
「あら! よく見てくれてたのね!」
「それとサーラ様のお店のパスタ、本当に美味しくて! 会ったこと無かったけど、誘うならココの人! って思ってたんだ」
どうやらシアン様はリモワの様々な店に行っているようですね。
楽しそうに話されている様子を見てか、ドゥイリオ様の様子も少し穏やかなものに変わります。
「ウチじゃないけど、買い占めはダメよ?」
「あぁ……それは本当にすみません……俺はやってないけど、その……」
「分かってるわよ、ドゥイリオさんのとこでもやってないでしょ?」
「俺んとこ……は、やりようがねぇか」
「それがね、食べきれないほど注文されて午後は閉店ってお店もあるそうよ」
「それは困る……このテーブルはともかく、他はどうなんだろうな」
そう言ってミケーノ様が背後のテーブルに視線をやります。
他はテーブルが六つほどあり、それぞれ四人から六人ほど座ってる方がいます。
「招待する人は外務局の人と相談して決めたけど、断った人もいるかな」
「聞いてねぇのか?」
「うん、俺の招待したかった人は皆さんで全部なんだ」
「この広い会場で五人はかなり少ないみたいだけど良かったの? 他の方は沢山呼んだみたいに見えるわ」
「そうかもね。今回は俺、ワガママ通したから」
何か事情があるようですが、シアン様は苦笑いをするだけで明確な回答をなさいません。
ドゥイリオ様は何かを察したのか、紅茶のカップを持ち上げて微笑みます。
「せっかくだし、この茶葉の話をもっと聞かせてよ。オランディで買うことはできるの?」
「そうね、やっぱりお高いのかしら?」
話題がお茶の話になったからか、シアン様の雰囲気が和らぎます。
他のテーブルの様子は気になりますが、ひとまずこの場を楽しむのも悪くないかもしれません。
何度かお茶のお代わりを頂いた頃、私達のテーブルへ最初に挨拶をしていたご婦人がやって来ました。
「ボイヤー侯爵、私をお客様を紹介して下さるかしら?」
扇子で口元を隠してますが、立っているせいか自然と見下すような視線になっています。
シアン様の表情が一瞬で冷えたように見えましたが、にこりと微笑んでみせます。
「あぁこれは公爵夫人。わざわざ僕のテーブルまでおいでくださるとは」
シアン様は立ち上がり、洗練された仕草でご婦人を手で指して私達に紹介なさいます。
「こちらはリュンヌ帝国貴族序列一位、公爵位ミヌレ家より、ガブリエラ・ド・ミヌレ様、公爵家の第一夫人です」
「私の事はどうぞミヌレ公妃とでもお呼びください」
テーブルに座っていた私達は小さく会釈を致します。
「それで夫人、あなたがご招待したお客様との会話はお済みですか?」
「まだだけど、こちらにどんな方がいらっしゃるのか知らないから見に来たのよ」
「それは大変なお心遣いを。こちらの皆様は夫人の事はご存知のようでしたよ、色々なお店で沢山の商品をお買い上げになったとか」
シアン様の笑顔に変化はありませんが、皮肉のように聞こえます。
「あらそう? 私はこちらのテーブルの皆様は見覚えがないわね」
「それならご令嬢ですか? 彼女も目立ちますから」
「ノリアなら、一番のお目当てが来なかったから拗ねてるわよ」
「それは残念です、せっかくの楽しいお茶会で僕の婚約者がそんな思いをしてるなんて」
シアン様の皮肉に気付いてるのか分かりませんが、ご婦人は意に介した様子もありません。
ビャンコ様くらい露骨にやらないと伝わらないのでしょうか。
「貴方のテーブルは興味がなかったんだけど」
ご婦人は扇子を閉じて、少し熱の篭った視線でミケーノ様をご覧になっています。
「あなた、お名前は?」
「俺? ミケーノ・サーラです」
「ミケーノ、ね」
そう言ってミケーノ様の背後に立ち、両肩にそっと手を置き口元を耳に寄せます。
「私ここに宿泊しておりますの、良かったら遊びにいらしてくださいね」
ミケーノ様の顔色が青くなります。
「夫人、他のお客様にご挨拶をしに戻られては? 彼は僕の客ですから」
「フン、まぁ良いわ」
そう言ってスカートを片手で小さく広げて見せ、優雅に一礼します。
「それでは皆様、ごきげんよう。楽しんでくださいませ」
そのまま綺麗な姿勢を崩さずに振り返り、違うテーブルへと移動されました。
それを見送ってから、シアン様が両手で顔を覆って俯きます。
「これ、これが嫌なの……恥ずかしい……」
「君はともかく、みんなあぁなの?」
「いや……あの人は特別にそう、かな」
「イヤミに気づかないのもすごいわねぇ」
「……久しぶりに鳥肌立ったぞ」
あのご婦人は相変わらずですね。
今日の変装は無意味と言われましたが、気付かれなかったところを見ると効果はあったようです。
お茶会が始まってから一時間ほど経ちました。
そろそろ座ってお茶を飲むだけの集まりも少し退屈になってきたような空気があります。
そろそろ閉会かと思っていた頃、同じ服を着た女性数名がトレイを持って会場に入ってきました。
そして各テーブルに新しいカップとポットを置いていきます。
配られているのを確認し、ご婦人が最初に挨拶をした場所へ立ちます。
「さぁ皆様、今回の集まりもそろそろお開きにしようかと思いますわ。最後に今お配りしたお茶をお召し上がりください、帝国の伝統的な茶葉ですのよ」
カップとポットを運んできた女性が、慣れた手つきでお茶を注いでいきます。
全員にお茶が配られてから、香りを確認し口にします。
……シアン様のお茶がとても美味しかったからでしょうか、非常に渋い物に思います。
テーブルの皆様も同じように思ったのか、砂糖壺から角砂糖を取り出し加えます。
私も同じように角砂糖を加え、再び紅茶を口にします。
今度は先程とは変わって、紅茶の香りと共に軽く滑らかな甘さが溶けるように広がります。
上質な砂糖なのでしょうか、ついもう一口と飲むうちにカップは空になりました。
「これ、砂糖か? あんまり味しねぇな」
隣でミケーノ様が感想を仰ってますが、何故か私とーー
───────
突然大きな音を立てて、招待客の一人がテーブルに倒れ込んだ。
「お、おい! キーノスどうした!?」
隣の客が声をかけるも全く反応がない。
その時テーブルから離れた位置にいた白い男が立ち上がり、テーブルに駆け寄りながら叫んだ。
「ミケさん!! テーブルの上確保! 特にキーちゃんのコップは絶対!!」
終わろうとしていたはずのお茶会の会場は、予想が出来ない混乱に包まれた。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる