マリーゴールドガーデンで待ち合わせ 〜穏やか少女と黒騎士の不思議なお茶会

符多芳年

文字の大きさ
上 下
127 / 144
4章 マリーゴールドガーデンでいつまでも

28.小さな願い事

しおりを挟む

 どうして私の誕生日の後のタイミングだったのか、最近来れるようになったのならもう少し早く伝えてくれても良かったとも思う。
 幸せから不幸……とまではいかないけど、とても複雑な気持ちにはなった。

 一応エドワールさんの事だから、きっと理由があるからだとは思うけど、会話の一つの材料として聞いておきたかった。


「……うん。一応今日というか、この時期だからこその理由もある。
 あとは僕の方で仕事以外のやるべき事が終わったから、
 話がてら、それに纏わるお願い事もあったし、したかったんだけど……
 別の日の方がいいかなって」


 なんだか打ち明けて早々だし、どこまでも自分勝手に行こうと決めていたけれども、結局踏み切れずにもやもや……そんな様子だ。
 急かす意味はないけど、もしも私の態度で言いづらいとかあるのならと、私は色んな気持ちを一旦抑え込んだ。


「今日でもいいですよ?
 ……ダメそうでしたらちゃんとダメって言います」

「……イオリちゃん」


 強いね……ってしみじみ呟やかれたのは聞かなかった事にする。
 今日はきっとずっと混乱しっぱなしだろうからと、ちょっと自棄気味に言ってしまったのもある。


「えっと、ちなみに理由って長そうですか?
 あと、お願いって何個かある感じですか?」

「理由はやっぱりちょっと沢山説明するかも……
 お願い事は大きい事が一つ、小さい事がもう一つくらいかな」

「うーん……」
 

 こんな、お墓参りのついでで話すような事じゃないかも……
 日は照ってるし、どこか場所を移した方がいいかなとも思えてきた。

(お時間あったら喫茶店……でも、さっきのお話を聞く分だと今も忙しくはあるんだろうなぁ……)

 お会いした数回とも、すっと現れてはすぐにベルディグリへ戻っていった印象だった。
 誕生日の日も遅れてやって来てたし、あまり長居させてしまうのもよくないとも思う。
 今日はあまり急いでいる風には見えないけれども、それでもだ。

 だから、エドワールさんを汲みつつ、続きは別日に時間をしっかり設けて、という感じが良いのかもしれない。


「……あの、よければ一つ、先に小さい方のお願いだけ聞いてもらってもいい?」


 すぐ終わるからと弱々しく付け加えられて、それならいいですよと、うなづいた。


「これを、買っておいてくれないかい?」


 メモ一枚と、一万円札を一枚。
 まさかお使いのお願いかとは思わず、びっくりしてしまったけど、なんとか受け取った。

 内容は、また意外なものだったけれども、


「これだったら、買おうかなって思っていたものなので」


 何の意図があるかはまだわからないけれど、当初の予定よりも多めに頼むだけだからと、お願いを聞き入れることにした。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

処理中です...