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4章 マリーゴールドガーデンでいつまでも
28.小さな願い事
しおりを挟むどうして私の誕生日の後のタイミングだったのか、最近来れるようになったのならもう少し早く伝えてくれても良かったとも思う。
幸せから不幸……とまではいかないけど、とても複雑な気持ちにはなった。
一応エドワールさんの事だから、きっと理由があるからだとは思うけど、会話の一つの材料として聞いておきたかった。
「……うん。一応今日というか、この時期だからこその理由もある。
あとは僕の方で仕事以外のやるべき事が終わったから、
話がてら、それに纏わるお願い事もあったし、したかったんだけど……
別の日の方がいいかなって」
なんだか打ち明けて早々だし、どこまでも自分勝手に行こうと決めていたけれども、結局踏み切れずにもやもや……そんな様子だ。
急かす意味はないけど、もしも私の態度で言いづらいとかあるのならと、私は色んな気持ちを一旦抑え込んだ。
「今日でもいいですよ?
……ダメそうでしたらちゃんとダメって言います」
「……イオリちゃん」
強いね……ってしみじみ呟やかれたのは聞かなかった事にする。
今日はきっとずっと混乱しっぱなしだろうからと、ちょっと自棄気味に言ってしまったのもある。
「えっと、ちなみに理由って長そうですか?
あと、お願いって何個かある感じですか?」
「理由はやっぱりちょっと沢山説明するかも……
お願い事は大きい事が一つ、小さい事がもう一つくらいかな」
「うーん……」
こんな、お墓参りのついでで話すような事じゃないかも……
日は照ってるし、どこか場所を移した方がいいかなとも思えてきた。
(お時間あったら喫茶店……でも、さっきのお話を聞く分だと今も忙しくはあるんだろうなぁ……)
お会いした数回とも、すっと現れてはすぐにベルディグリへ戻っていった印象だった。
誕生日の日も遅れてやって来てたし、あまり長居させてしまうのもよくないとも思う。
今日はあまり急いでいる風には見えないけれども、それでもだ。
だから、エドワールさんを汲みつつ、続きは別日に時間をしっかり設けて、という感じが良いのかもしれない。
「……あの、よければ一つ、先に小さい方のお願いだけ聞いてもらってもいい?」
すぐ終わるからと弱々しく付け加えられて、それならいいですよと、うなづいた。
「これを、買っておいてくれないかい?」
メモ一枚と、一万円札を一枚。
まさかお使いのお願いかとは思わず、びっくりしてしまったけど、なんとか受け取った。
内容は、また意外なものだったけれども、
「これだったら、買おうかなって思っていたものなので」
何の意図があるかはまだわからないけれど、当初の予定よりも多めに頼むだけだからと、お願いを聞き入れることにした。
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