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4章 マリーゴールドガーデンでいつまでも

19.花束と小さな箱

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 結構な仕事を片付けてきたらしいエドワール様は、甘いものを頬張りながらモヒートを流し込み、満たされたため息をついた。
 アルコールがすぐ回って、頬を桃色に染めながら、ゆるく笑っている。


「いやぁ美味しいねぇこれ……さっぱりして甘いものも塩辛いのもいけちゃう……」

「何疲れたフリしてんの。遅いよ」

「白々しい! オマエが押し付けてきたやつが大変だったんだよ⁉︎」


 どうやらヘクターさんとお仕事のやりとりがあったらしい。
 ちょっぴり口喧嘩に発展してたけど、難しい言葉が多く飛び交っていて、ちょっと私にはよくわからなかった……
 可愛らしくも、そこは偉い人たちの会話って感じだ。


「さて、気を取り直して……僕からはこれを」

「あ、ありがとうございます!」


 勢いに押されていた私に気付いたエドワールさんは、手品のようにぽんっと花束を一つ取り出して見せた。
 綺麗なコスモスとバラと、マリーゴールド。
 夏だけども秋の気配を感じさせるような、瑞々しい黄色の花で構成されている。

(食卓が華やぐなぁ……)

 花瓶にさして、カラフルなランチョンマットの上にきつね色に焼き上げたパイを載せたり……
 そんな想像が膨らませていたところでもう一つ、綺麗な水色の包装紙に包まれた葉書大の箱を頂いた。


「こっちは一人の時に開けてね?」


 サプライズだから。
 エドワールさんはウインクしながら、どこか深い意味を含んでいると思わせる目の光をちらつかせている。


「何? 変なもの渡してないだろうね」

「な、内緒……圧が強いよ。
 ヒース君とシェラーナも、そんな怪訝な感じでこっち見ないで……何も悪いものは入れてない……」


 この、たまにあるエドワール様への違和感は何なんだろう。
 人の良さそうな笑顔を浮かべて、冷や汗かきながらおろおろしているけど、どこか底が知れないような……

(でも不思議と、嫌な感じはしないんだよね……)

 頂いたプレゼントと交互に見比べながら、一度キッチンに戻って置いてくる。
 嫌じゃないなら今は気にしないでおこう。
 何となくだけど、大丈夫だとは思うからこの場は誕生日を楽しもう。


「モヒートのお代わりいる方いらっしゃいますか?」


 キッチンの扉を開けて尋ねれば、大人3人分の手が上がったのが見えた。
 モヒートとおつまみと、美味しいものをたくさん食べて、時間はあっという間に過ぎていき、おやつ時を過ぎたところでヘクターさんとシェラーナ様が帰り支度をはじめた。


「えー僕まだお祝いしてたーい」


 エドワール様も駄々を捏ねられていたけど、仕事残ってるからとヘクターさんに首根っこを掴まれて一緒に帰って行かれた。
 ……そして、この場に残ったのは、ヒースクリフさんと私だけ。


「さてイオリ」

「は、はい」


 思わずどもって咽せそうになってしまったところで、ヒースクリフさんは懐からまた一つ小さな箱を取り出していた。


「もう一つ、渡したいものがあってな」
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