マリーゴールドガーデンで待ち合わせ 〜穏やか少女と黒騎士の不思議なお茶会

4章 マリーゴールドガーデンでいつまでも

18.本物のモヒート

　酔いが覚めるのを待つ間に、なんとか冷蔵庫にしまっておけたモヒートの元入りグラスを取り出した。
　一応レシピ通りのお酒と、元々トニックウォーターなどで割ってある缶のお酒を一緒に載せて、お庭へ戻っていくとヘクターさんの顔がそわそわとしたものになった。


「おぉ……これが本物のモヒートかい？」

「もひーと？」

「この間頂いたんだ。爽やかで美味しいよ」


　君が項垂れている間にね、と悪戯っぽくヘクターさんが言えば、ヒースクリフさんが少し悔しそうにしていた。
　……気恥ずかしいやら、嬉しいやら、私の方もちょっとにやけかけてしまう。
　

「お酒は大丈夫ですか？」

「俺は問題ない。シェラーナ様も少しなら」

「いくらでも飲めるぞ」


　ドンと胸を張るシェラーナ様だけど、ヘクターさんとヒースクリフさんは断固首を振る。


「……シェラーナは酒癖がちょっとね、すごいから、控えめにね」


　……何となく察してしまった。
　確かにお強いらしいけど、酔うと騒がしくなったり、騎士時代の血が騒いだりしてしまう……とのことで、


「では、お酒ですけど悪酔いしづらい方にしますね！」


　シェラーナ様には申し訳ないけれども、答えを待たずに缶の優しめなお酒をさっと混ぜ合わせてお渡しする。
　可愛らしく口を尖らせていたシェラーナ様だったけれども、一口飲んでみれば満足そうに笑みを浮かべてくれた。


「おぉ、飲みやすいな。
　爽やかで喉に心地よい」


　ほっとしつつ、そわそわが止まらないヘクターさんや、ジト目になってるヒースクリフさん用にもモヒートを用意する。
　レシピ通りにさっと混ぜ合わせて、お二人に渡せば、待っていましたとすぐに口にしてくれて、


「本物のモヒート……いいねこれ」

「えぇとても美味しいです」


　上々の感想を頂いた。
　少しアルコールで頬が緩んでいるようだけど、ヘクターさんは余裕そうだ。
　ヒースクリフさんの方も顔色一つ変えてない。

（……私も段々慣れればあんな感じに美味しく飲めるかな？）

　とても大人という感じがする。
　少しだけ羨ましく思いながら、私はいつものノンアルコールモヒートを口にした。

　お酒で皆さんが少しだけ明るい雰囲気になって、続けてさっと用意しておいたおつまみ類にも沢山手を伸ばしてもらえた。
　団欒としている中、きぃとドアが開く音を聞いて振り向くと、激務だったのかちょっとボロボロになったエドワール様がいて、


「いいなぁいいなぁ……」


　その場で三角座りしていじけてしまいそうな雰囲気を醸し出していた。　


「え、エドワールさん！ お疲れ様です！」

「うん、ありがとー！ イオリちゃんおめでとう。
　祝えないかと思ったけど、今日間に合ってよかったよー！」


　慌ててお出迎えすると、さっと機嫌を直してくれて、そのままテーブルの方へ案内した。