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4章 マリーゴールドガーデンでいつまでも

閑話17.木曜日の姫と黒騎士

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「……という事で、週末にイオリがベルディグリへ遊びに来ます」

「それは良い。
 存分に楽しんでもらえ。
 私からもまた何か贈り物でもしようかな」


 会食の僅かな隙間時間でその事を伝えれば、シェラーナ様はにこやかに笑ってそう仰った。
 何を贈るつもりかは分からないが……今は置いておこう。

 思った以上に冷静かつ暖かな反応だったが……


「本来だったら神輿でパレードだったが、ここはお前に譲ろう」

「神輿」


 一気に予想を超えてきて、思わず繰り返してしまった。

(まさかイオリを王族と一緒に担ぎ上げて盛大にパレードしようとしていたとは……)

 これに関して恐ろしいのは、誰もシェラーナ様を止めなさそうな事だ……いや、周囲は止めるだろうが、実際に止める力を持つ国王陛下やエドワール様は何やかんや許可してしまいそうな気がする。
 彼女の夫であるノヴァリス様もそうだろう。あの人は普段こそ優秀で頭の切れる才人ではあるが、シェラーナ姫にベタ惚れでともかく押されると弱い。


「今度は私とも出かけて欲しいな」

「きっと誘えば喜びますよ。ただし神輿はやめてあげたほうがいいです」


 神輿の上でポカンとして動けなくなってるイオリが容易に想像できたため、そう進言すれば、


「む……なら、軍用車なら良いか?」

「それも良くないですね。
 どう足掻いてもパレードになってしまいます」

「パレードが良くないか」


 そうです。そもそもパレードがダメです。

 許可する分にはイオリの無事が確保された上で行われるだろうが、本人がきっと望まない。
 それよりも彼女が本当に喜びそうなのは……


「あくまでお忍びでお散歩程度がよろしいかと」


 穏やかで、ゆっくりとした時間を一緒に過ごす事だ。
 ただ散歩するだけ、食事をするだけで充分に楽しめる。
 それに加えて美味しいものに目がないから、お菓子屋巡りだけでも小躍りしていそうな……


「……そうだな。だったら私の屋敷に招くでも良いな」

「名案です」


 確かに、シェラーナ様とノヴァリス様のお屋敷も喜びそうだ。
 緊張もしそうだが、きっとすぐに慣れる。
 御子息や御令嬢もいる分、穏やかだが賑やかで楽しい時間になる。

 あとはノヴァリス様も楽しそうにもてなしてくれるだろうなとも思った。
 別世界のお客人ということで、特にイオリの文化について学者魂に火がつくような感じで、逆に夫婦であの庭に遊びに来るというようなキッカケにもなりそうで、こちらがほのぼのとした気持ちになってくる。


「くくく……今から色々と仕込み甲斐があるなぁ」


 悪巧みのような顔でそんな事を仰っているが、そろそろ時間だ。


「そろそろ会食用の顔を作ってください」

「お前が笑顔で護衛するなら、私も良い感じに笑う」


 いつものやり取りをした後、会食相手が到着した報が入った。
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