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3章 長い雨の紫陽花と晴れ間の朝顔
8.お出かけの約束
しおりを挟むヒースクリフさんは一瞬嬉しさで目を見開いたけど、すぐに冷静な顔に戻った。
「……いいのか?
その、この見た目でも大丈夫か?」
嬉しいけれども、懸念が大きい。
マナーや文化などは、今から学んでも遅くないと思うけど、見た目に関してはこちらの世界の文化もあって不安があると、ヒースクリフさんは言う。
「いつもの軽装みたいな格好でしたら、こちらでも全く変に見えないし大丈夫です!
ツノは……」
「ツノのある者は珍しいか」
「ほとんどいないですね……むしろ、亜人さんがいないです……」
「では隠す方向でいこう。
来週までに準備しておく。」
隠せるの……⁉︎
聞けば、ツノや大きな耳といった亜人の特徴を隠すための道具があるらしく、こちらを使うという方向になった。
恐らくは魔力が薄い日本でも使えるとの事だけど、無理そうだった時のためにこっちでも帽子やパーカーを用意しておこう……
それか、ツノが目立たないような場所……取れる時間の量次第になるけど、遊園地とかに行くのも手だと思う。
(どちらにしろ、せっかくだからこっちの服は記念にプレゼント……でもいいかなぁ。
葵太さんに服のサイズをあとで聞いてみよう)
ヒースクリフさんと葵太さんは大体同じ背丈で、ヒースクリフさんの方が気持ち細い印象だ。
(いや、でも、黒い服が多いから細く見えるだけだったり?)
……大体同じサイズで、一度考えてみようと思う。
多分大丈夫なはず。
「来週とかだと急過ぎますか?」
「大丈夫だ。今からとても楽しみだ」
不安要素はさておき、楽しい事の方を考えてみよう。
(短めのお出かけだったら、最寄り駅の近くでいいかな……公園もあるし、お菓子の屋台とか喫茶店も色々ある。
ソフトクリームにクレープ、フラペチーノもいいな……甘い物とお茶中心のグルメ散歩とか……)
甘いもの好きのヒースクリフさんに食べて見て欲しいものがいっぱいある。
蒸し暑い日が続いているし、きっとアイスが美味しいだろうなと思うから、屋台に限らず色んなところでひんやりとしたお菓子を食べれたらな……
お腹が冷えたら喫茶店で紅茶やココアを楽しんでみたり……そういえばチョコレート系のお菓子をお出しした事がないし、そのあたりの反応も気になる。
……ものすごく、夢が広がっていった。
「では、今日は使いそうな日本語のおさらいと、必要最低限のマナーを教えてくれないか?」
「喜んで」
教えていくうちに、むこうの世界とこちらの世界は、案外似通った文化やマナーがあるとわかったけれども
「あ、剣とか刃物の類は持ち歩けませんね」
「それは……どうやって自衛をしているんだ?」
明確な違いも見えてきた。
携帯で調べたり、逆に向こうの文化はどうなっているのか尋ねたり、
(あぁ、知れる事が楽しいな……)
出かける前からとても楽しくなってしまった。
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