33 / 59
3章:私だけのガラスの靴
7
しおりを挟む
(何で……? 別に魔女ってわけではなさそうだけど、しかもこの魔力は……)
元から人格面はよろしくないのかもしれないが、この盲目的な猪突猛進は異常だ。
その理由が、この魔力の気配にありそうな予感がする。
「ちょっと、待っててもらってよろしいですか?
これ、サービスです。一先ず落ち着いて、事のあらましを聞かせてください。
でないとお店側としては何もできません」
「ど、どうも……すみません」
お冷とゴマクッキーを大人しく受け取ってくれたのを見て、一応冷静になれる余地はあるのだとほっとする。
サイフォンの火をとめて、スタッフルームへ向かい、
『あの方からベリルさんの魔力の香がします』
スマホで猿投山宛てにメッセージを送った。
猿投山のスマホは年中サイレントマナーモードであり、普段は連絡がスムーズに取れず面倒だが、今の状況的にはとても良い。
そして、猿投山も今理が取るであろう行動を心得ている。
「……ふむ」
「ど、どうしたの薫くん」
「ベリル、浮気したかい?」
「は、はい?」
猿投山はスマホの画面を全員が見えるようテーブルに置いた。
「そんなわけないでしょ⁉
魔道具だろうと思うけど……でも、心当たりがないよ?
作った魔道具は全部ここに預けてるし」
内容を確認したベリルは、本当に思い当たる節がなくおろおろとし出す。
猿投山も自分が知る限りはそうだと頭を抱えるが、今理の推測は無視できない。
「これって、魔道具のせいで宇津川さんがおかしくなったって事ですか?」
幸人は身を乗り出してメッセージに食いついた。
もしもそうだとしたら、事件の時も魔道具が何か作用して、あんな事になったという可能性も出てくる。
「ん、まぁ、その可能性があるかもしれないけどね。
悪い意味で唯我独尊貫いてるってーか、ともかく人の話を聞けない子じゃなかったかい?」
「……否定はできません」
悲しきかな、その歪みが作家として面白い作品を生み出す事に繋がっている部分もある。是正してよいのかもわからない。編集部の判断としては、幸人の後任がダメなようであれば更に長い療養を進める方向でいるが、
「……もしかして、猿投山さん、いらっしゃいますか?」
カウンター席にいるはずの宇津川が、パーテーションのすぐそこまで迫ってきて、声をかけてきた。
元から人格面はよろしくないのかもしれないが、この盲目的な猪突猛進は異常だ。
その理由が、この魔力の気配にありそうな予感がする。
「ちょっと、待っててもらってよろしいですか?
これ、サービスです。一先ず落ち着いて、事のあらましを聞かせてください。
でないとお店側としては何もできません」
「ど、どうも……すみません」
お冷とゴマクッキーを大人しく受け取ってくれたのを見て、一応冷静になれる余地はあるのだとほっとする。
サイフォンの火をとめて、スタッフルームへ向かい、
『あの方からベリルさんの魔力の香がします』
スマホで猿投山宛てにメッセージを送った。
猿投山のスマホは年中サイレントマナーモードであり、普段は連絡がスムーズに取れず面倒だが、今の状況的にはとても良い。
そして、猿投山も今理が取るであろう行動を心得ている。
「……ふむ」
「ど、どうしたの薫くん」
「ベリル、浮気したかい?」
「は、はい?」
猿投山はスマホの画面を全員が見えるようテーブルに置いた。
「そんなわけないでしょ⁉
魔道具だろうと思うけど……でも、心当たりがないよ?
作った魔道具は全部ここに預けてるし」
内容を確認したベリルは、本当に思い当たる節がなくおろおろとし出す。
猿投山も自分が知る限りはそうだと頭を抱えるが、今理の推測は無視できない。
「これって、魔道具のせいで宇津川さんがおかしくなったって事ですか?」
幸人は身を乗り出してメッセージに食いついた。
もしもそうだとしたら、事件の時も魔道具が何か作用して、あんな事になったという可能性も出てくる。
「ん、まぁ、その可能性があるかもしれないけどね。
悪い意味で唯我独尊貫いてるってーか、ともかく人の話を聞けない子じゃなかったかい?」
「……否定はできません」
悲しきかな、その歪みが作家として面白い作品を生み出す事に繋がっている部分もある。是正してよいのかもわからない。編集部の判断としては、幸人の後任がダメなようであれば更に長い療養を進める方向でいるが、
「……もしかして、猿投山さん、いらっしゃいますか?」
カウンター席にいるはずの宇津川が、パーテーションのすぐそこまで迫ってきて、声をかけてきた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ツクヨミ様の人間見習い
大和撫子
キャラ文芸
よくあるラノベ展開?!「突然ですが私の秘書として働いてくださいませんか?」浮世離れした美形がある日契約書を持って現れて……
代々『霊感、霊視、透視、霊聴』という霊能力を掲げた占い師の一族、観音堂家のに生まれた妃翠。彼女には霊能力は授からず0感のままだった。だが、幼い頃から占いを好み特にタロットカードは数種類のタロットを組み合わせ独自の解釈をするようになる。対して長女、瑠璃は幼い頃から優れた霊能力を発揮。家族の誰もが妃翠には何も期待しなくなっていく。
平凡が一番平和で気楽だと開き直っていた妃翠に、ある日……この世の者とは思えない程の美形が、「私の秘書として働いてくれませんか? 報酬は弾みます」と契約書を携えて訪ねてくる。
どうして自分なんかに? 彼によると、
……ずば抜けた霊能力を誇る彼は、それを活かしてスピリチュアルカウンセラーという職業に就いているそう。ただ、その類稀なる容姿から、男女を問わず下心で近づく者が絶えず辟易しているという。そこで、自分に恋愛感情を抱かず、あくまで統計学。学業としての占いに精通している女性を探していたのだという。
待遇面であり得ないくらいに充実しているのを確認し、2つ返事で引き受ける妃翠。そう長くは続かないだろうけれど今の内にしっかり貯めて老後に備えようという目論見があったからだ。
実際働いてみると、意外にも心地良い。更に、彼は実は月読命でこの度、人間見習いにやってきたというのだが……?
男の秘密とは? 真の目的とは? そして彼の元を訪れる者は時に人間ではない時もあり……
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
和菓子屋たぬきつね
ゆきかさね
キャラ文芸
1期 少女と白狐の悪魔が和菓子屋で働く話です。 2018年4月に完結しました。
2期 死んだ女と禿鷲の悪魔の話です。 2018年10月に完結しました。
3期 妻を亡くした男性と二匹の猫の話です。 2022年6月に完結しました。
4期 魔女と口の悪い悪魔の話です。 連載中です。
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
あやかしのシッターに選ばれたことで、美形に囲まれることになりました
珠宮さくら
キャラ文芸
美形の男性と自分が知り合うことはないと花宮珠紀は思っていたが、ある日を境にして気づけば、あやかしのシッターとして奮闘しながら、美形に囲まれて生活するとは、夢にも思っていなかった。
全23話。
パパー!紳士服売り場にいた家族の男性は夫だった…子供を抱きかかえて幸せそう…なら、こちらも幸せになりましょう
白崎アイド
大衆娯楽
夫のシャツを買いに紳士服売り場で買い物をしていた私。
ネクタイも揃えてあげようと売り場へと向かえば、仲良く買い物をする男女の姿があった。
微笑ましく思うその姿を見ていると、振り向いた男性は夫だった…
霊能者のお仕事
津嶋朋靖(つしまともやす)
キャラ文芸
霊能者の仕事は、何も除霊ばかりではない。
最近では死者の霊を呼び出して、生前にネット上で使っていたパスワードを聞き出すなどの地味な仕事が多い。
そういう仕事は、霊能者協会を通じて登録霊能者のところへ割り振られている。
高校生霊能者の社(やしろ) 優樹(まさき)のところに今回来た仕事は、植物状態になっている爺さんの生霊を呼び出して、証券会社のログインパスワードを聞き出す事だった。
簡単な仕事のように思えたが、爺さんはなかなかパスワードを教えてくれない。どうやら、前日に別の霊能者が来て、爺さんを怒らせるようなことをしてしまったらしい。
優樹は、爺さんをなんとか宥めてようとするのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる