ゲームキャスターさくら

てんつゆ

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飛翔せよ! アメリカンラーメン1

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 ある日の夕方。
 部活帰りの忍さんが自宅への帰り道を歩いていると――――。

「あれ? こんな所に屋台来てるんだ」

 道の外れに1件の小さなラーメン屋台を見つけたのでした。

「ちょうどお腹も空いてるし、ちょっと寄ってみよっかな」

 ラーメンを食べたいのなら私のお店に来ればいいのに、その時の忍さんは不届きにも新しく発見した屋台へと入って行きます。
 そして屋台ののれんをくぐると、かわいい店員さんが新しく来たお客さんをお出迎えしました。

「いらっしゃいませ~」
「って、桜!? こんな所で何してるの!?」
「なにって、見てわかる通り屋台ですけど?」

 ――――そう。
 この屋台は私の家がやってる拳剣軒の出張屋台なのでした。

「注文はどうしますか?」
「じゃあこのアメリカンラーメンを1つ」
「よろこんで~」
「…………って、何でこんな所で屋台やってるのか言いなさいよ!」
「じゃあ作りながらでいいですか? 実は――――」

 私はラーメンを作りながら忍さんの質問に答える事にしました。

 ――――なので、ここからは回想シーンで数日前に遡ります。
 
「桜、ちょっといいか~?」

 お父さんに呼び出された私は1階に降りていくと、開店前のお店のテーブルに1杯のラーメンが置いてありました。

「…………これは?」
「これは桜が旅行に行ってる時に、アメリカで習得してきたアメリカンラーメンだ」
「ア、アメリカンラーメン!?」

 いつの間にお父さんも旅行に行ってた!?

「…………あの。それより、その間のお店は?」
「無論休業中だ。――――なに、このラーメンが売れたらすぐに休業中の売上など取り返す事が出来るから安心するがいい」
「ええっ!?」

 と、いう訳で。
 新作ラーメン開発の為に休業していた分の売上を取り戻す為に、私は別の場所でお店を構えて営業する事になったのでした。

「ふ~ん。そんな事があったんだ」
「店舗を増やして売上げアップです!」
「…………それにしては、あたし以外のお客さんいないみたいだけど?」

 忍さんが左側を見ると、誰も座っていない座席が2つ。

「うぐっ。い、一応これから沢山来る予定です!」
 
 そんなこんなで丁度ラーメンが出来上がったので、忍さんの前に出来たて熱々のラーメンを出します。

「おまちど~さまです」
「へ~。これが桜のお父さんがアメリカに行って出来たラーメンか~」
「食べ終わったら、口コミ宣伝お願いします!」
「美味しかったらね~」

 忍さんはズズーと一気に麺をすするように食べ終え、スープを半分くらい残した状態で箸を置きました。

「…………あの。それで味はどうでしたか?」
「ん。結構美味しかったし、また食べてもいいかも」

 よしっ!
 とりあえずの高評価にホッとして胸をなでおろし、これなら行けそうって自信もゲットです。

「それじゃあもう行くわね」
「まいど~」

 忍さんはレジにカードをかざして支払いを済ませると、屋台から出て帰って行きました。



 ――それから数日後。
 
 忍さんはまたラーメンを食べに屋台に来てくれたのでした。

「あっ!? あったあった。…………って、あれ? なんかちょっと屋台が伸びてるような?」

 忍さんはそのままのれんをくぐって屋台に入ってくると、空いてる席が1つとお客さんが座っている3つの席がありました。

「いらっしゃいませ~。―――――おや? 忍さんでしたか」
「ねえ、桜。ここって座席3個じゃなかったっけ?」
「おかげさまで4つに増築出来ました!」
「ふ~ん。良かったじゃん」
「はい。――――それで注文はどうしますか?」
「えっと、じゃあ今回は大盛りにしよっかな」
「かしこまりました」

 それから私はラーメンを作って忍さんに提供し、前と同じく完食してから忍さんはお店を後にしました。



 ――――それから更に数日後。

「…………なにこれ」

 またまた私の屋台に来てくれた忍さんの前には、巨大な建物が建っていたのでした。
 扉の前に止まると自動で扉が開き、中に入ると2階へと続く階段が。

「売上が予想以上に良かったので、2階建てにしちゃいました!」
「増築しすぎでしょ!!」
 



 ――――――更に時は流れ。
 
「と、いう事でこれが最終形態です!!!!」
「てか何であたしが呼ばれてるのよ。何も無いなら帰るけど?」
「まあまあそう言わずに、とりあえずこれを見てください」

 河川敷に忍さんを呼び出した私は、目の前に覆いかぶさっている布を取ると、そこには――――。

「じゃ~ん。屋台に飛行機能をつけてみました!」
「…………いや。何に使うのよ、これ」
「屋台の屋根の部分ついてる4つのプロペラを「人力」で回すことによって、空での営業が可能になるんです!」
「ああそう…………って、人力!?」
「おおっ!? 流石忍さん。そこに気付いちゃいましたか!?」
「いや。明らかにおかしい言葉が入ってたでしょ!」
「では説明も終わったので、早速中に入りましょうか」
「えっ!? ちょ、ちょっと」

 忍さんと一緒に屋台の中に入ると真ん中に自転車が1台設置してあり、そこから屋台の四隅に向かってケーブルがいくつか伸びていました。

「それでは忍さん。お願いします」
「……………………はい?」
「いえ。だからこの自転車は忍さんの体格に合わせて調整してるので、忍さんがこぐんですけど?」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 何であたしが――――」

 ここですかさずグイッと近づいて、まくしたてます。

「忍さん。最近少し太りましたよね?」
「な、なによ急に。だ、だいたい何で桜がそんな事知ってるのよ!」
「最近注文するラーメンが大盛りになってました」
「…………うっ」
「いくら服で隠しても、私の目は誤魔化せません!」

 私は忍さんのお腹に指を差すと、忍さんも降参してくれて。

「……はぁ。分かったわよ! こうなったら自転車でも何てもやってやろうじゃない!」

 と快く引き受けてくれました。

「では、行きましょう!」

 さっそく忍さんに自転車のサドルに座ってもらって、ペダルをおもいっきり回してもらうと、屋台の上についているプロペラがゆっくりと回転していき――――。

「っとと!?」

 ガコンとちょっとだけ斜めに傾いてから部屋全体が浮いていき、ある程度上昇すると部屋の角度が水平に保たれました。
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