ゲームキャスターさくら

てんつゆ

文字の大きさ
上 下
74 / 128

人形列車1

しおりを挟む
 ある日の昼下がり。
 私はベッドの上で寝転びながら旅行ガイドを読んで、なんちゃって旅行気分に浸っていました。
 
 本には豪華客船でのクルーズや飛行機での世界一周旅行など、様々なプランが載っていて読んでいるだけでもかなり楽しい気分になれます。

「おおっ!? 列車の旅も載ってます!? やっぱり、のんびりとした汽車の旅も憧れますね~」
「別にそんなのに乗らなくても、地下リニアなら一瞬で目的地につけない?」

 空想の中でのんびりと汽車に揺られていた私ですが、シャンティの一言で現実へと戻されてしまい、ちょっぴり不機嫌な感じに。

「――――まったく、シャンティは分かってませんね。こういうのは移動してる時間を楽しむ物なのに」
「桜ってゲームでは効率ばっか求めてるのに、ゲーム以外だとあんまりだよね?」
「まあゲームは相手を上回って勝つ事が重要ですが、旅行は過程を楽しんだら勝ちみたいな感じですし」

 私は再びパラパラとページをめくると、途中のページに旅行券が貰えるキャンペーンの告知を発見しました。

「こ、これはっ!? シャンティ、早速キャンペーンに申し込みましょう!」
「え~と、なになに。ゲーム大会で優勝した人に、のんびり列車の旅の招待券をプレゼント? ――――ねえ、桜。これ大会で優勝しないと貰えないみたいだけど?」
「だったら優勝すればいいです! なのでシャンティ、早速ゲームの特訓を始めますよ!」
「まったく現金だなぁ~」


 ―――――数日後。
 ゲーム大会で優勝候補だった身内に泣きついて何とか辞退してもらった事で無事に優勝出来た私の元に、見事のんびり列車の旅の招待券が届けられました。

 
「やりました。ついに、あの! 念願の招待券が!」
「あ~。まあ桜がいいなら別にいんじゃない?」
「…………なんですか、そのやれやれみたいな顔は? それにあの人は仕事が忙しくて優勝しても旅行に行ってる暇がないから、優勝しても景品は辞退するって言ってたじゃないですか!」
「じゃあ何であんな事したのさ?」
「決勝以外で当たったら負けちゃう可能性がありましたからね。それより、もうそんな前の事は忘れて今は旅行の準備をしましょう!」
「そんな前って昨日だった気がするんだけど…………」
「私は現在と未来しか見てないので、過去には縛られないんです!」


 ――――――それから私は、るんるん気分で旅行の準備を始め更に数日後。
 旅客列車が出発する場所へと到着した私とシャンティは、売店巡りをしながら出発までの時間を待っていました。
 
「やっぱり旅行といえばご当地グッズやご当地グルメは外せませんね。――――そして何より忘れてはいけないのは」

 デデン。

「ご当地ガイドブック!!!!」

 現在私は早速買ったガイドブックを手に、出発地の駅前を探索中だったりします。
 
「…………でもすぐに出発するんだし、それ買った意味あった?」
「違いますよ、シャンティ。逆にすぐ出発するからこそ、おすすめスポットが載ってるガイドブックが必要なんです! っと。こんな事してる間にも時間は過ぎていくので、早く次の場所に行かないと!」
「それで、次はどこに行くの?」
「――――えっと、ちょっと待ってください」

 私はガイドブックをパラパラとめくり良さげな場所を探すことにしました。
 ここで重要な事は、良さげなお店を見つけても遠くだったら見送る事。
 列車に乗り遅れてしまったらいきなり今回の話が終わってしまうので、そこだけは注意しないといけません。

「ラーメン屋さんは…………近いけど食べるのに時間が。お土産屋さんは…………ちょっと遠いですね。だったら…………あっ!?」
 
 ガイドブックのある文字を見つけた私は、目的地を即決しました。

「ここのパン屋さんにしましょう!」
「あ~。結構いいかも」
「なんとここは去年の駅前パン屋ランキングで売上1位だったみたいです! やっぱり売上が一番信用出来るのでここしか無いです!」

 そうと決まったら即行動。
 私はパン屋さんへと急ぎ、そこで一番売れている特製クロワッサンを持ち帰りで購入すると、ちょうどいい感じの時間になっていたので、そのまま食べ歩きをしながら列車に向かうことにします。

 買ったのはパンが1個だけなのですぐに食べ終わってしまいましたが、口の中がパサパサになってしまったので、何か飲み物が欲しくなりました。

「あっ!? ちょうどいい所に自動販売機があります」

 時間も無かったので、とりあえず目についた紅茶のペットボトルを1つ購入する事にします。

 ピッとボタンを押してから数秒後。
 キンキンに冷えたボトルが出てきたので、一口飲んで口の中を潤してから再び駅へと向かう事にします。
 ちなみに支払いは、私がボタンを押す瞬間にシャンティが会計用の電波を出し、自動販売機とリンクして自動お支払いモードで会計を済ませています。

「では、行きましょうか――――――わわっ!?」
「きゃッ!?」
 
 歩き出そうとした瞬間。
 前をよく見ていなかったので誰かにぶつかってしまい、ペットボトルがぶつかった相手の足元へと転がっていっちゃいました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Head or Tail ~Akashic Tennis Players~

志々尾美里
SF
テニスでは試合前にコイントスでサーブの順番を決める。 そのときコインを投げる主審が、選手に問う。 「Head or Tail?(表か、裏か)」 東京五輪で日本勢が目覚ましい活躍をみせ、政府主導のもとスポーツ研究が盛んになった近未来の日本。 テニス界では日本人男女ペアによって初のグランドスラム獲得の偉業が達成され、テニスブームが巻き起こっていた。 主人公、若槻聖(わかつきひじり)は一つ上の幼馴染、素襖春菜(すおうはるな)に誘われテニスを始める。 だが春菜の圧倒的な才能は二人がペアでいることを困難にし、聖は劣等感と“ある出来事”からテニスを辞めてしまう。 時は流れ、プロ選手として活動拠点を海外に移そうとしていた春菜の前に聖が現れる。 「今度こそ、春菜に相応しいペアになる」 そう誓った聖は、誰にも話せなかった“秘密のラケット”の封印を解く。 類稀なる才能と果てしない研鑚を重ね、鬼や怪物が棲まう世界の頂上に挑む者たち プロの世界に夢と希望を抱き、憧れに向かって日々全力で努力する追う者たち テニスに生き甲斐を見出し、プロさながらに己の限界を超えるべく戦う者たち 勝利への渇望ゆえ歪んだ執念に憑りつかれ、悪事に手を染めて足掻く者たち 夢を絶たれその道を諦め、それでもなお未だ燻り続ける彷徨う者たち 現在・過去・未来、遍く全ての記憶と事象を網羅した「アカシック・レコード」に選ばれた聖は、 現存する全ての選手の技を自在に操る能力を手に、テニスの世界に身を投じる。 そして聖を中心に、テニスに関わる全ての者たちの未来の可能性が、“撹拌”されてゆく――。

ほんわりゲームしてます I

仲村 嘉高
ファンタジー
※本作は、長編の為に分割された1話〜505話側になります。(許可済)  506話以降を読みたい方は、アプリなら作者名から登録作品へ、Webの場合は画面下へスクロールするとある……はず? ─────────────── 友人達に誘われて最先端のVRMMOの世界へ! 「好きな事して良いよ」 友人からの説明はそれだけ。 じゃあ、お言葉に甘えて好きな事して過ごしますか! そんなお話。 倒さなきゃいけない魔王もいないし、勿論デスゲームでもない。 恋愛シミュレーションでもないからフラグも立たない。 のんびりまったりと、ゲームしているだけのお話です。 R15は保険です。 下ネタがたまに入ります。 BLではありません。 ※作者が「こんなのやりたいな〜」位の軽い気持ちで書いてます。 着地点(最終回)とか、全然決めてません。

おしっこ我慢が趣味の彼女と、女子の尿意が見えるようになった僕。

赤髪命
青春
~ある日目が覚めると、なぜか周りの女子に黄色い尻尾のようなものが見えるようになっていた~ 高校一年生の小林雄太は、ある日突然女子の尿意が見えるようになった。 (特にその尿意に干渉できるわけでもないし、そんなに意味を感じないな……) そう考えていた雄太だったが、クラスのアイドル的存在の鈴木彩音が実はおしっこを我慢することが趣味だと知り……?

未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex
SF
西暦9980年、人類は地球を飛び出し宇宙に勢力圏を広めていた。 人類は三つの陣営に別れて、何かにつけて争っていた。 死人が出ない戦争が可能となったためである。 しかし、そのシステムを使う事が出来るのは、魂の波長が合った者だけだった。 その者はこの時代には存在しなかったため、過去の時代から召喚する事になった。 …なんでこんなシステム作ったんだろ? な疑問はさておいて、この時代に召喚されて、こなす任務の数々。 そして騒動に巻き込まれていく。 何故主人公はこの時代に召喚されたのか? その謎は最後に明らかになるかも? 第一章 宇宙召喚編 未来世界に魂を召喚された主人公が、宇宙空間を戦闘機で飛び回るお話です。 掲げられた目標に対して、提示される課題をクリアして、 最終的には答え合わせのように目標をクリアします。 ストレスの無い予定調和は、暇潰しに最適デス! (´・ω・) 第二章 惑星ファンタジー迷走編 40話から とある惑星での任務。 行方不明の仲間を探して、ファンタジーなジャンルに迷走してまいます。 千年の時を超えたミステリーに、全俺が涙する! (´・ω・) 第三章 異次元からの侵略者 80話から また舞台を宇宙に戻して、未知なる侵略者と戦うお話し。 そのつもりが、停戦状態の戦線の調査だけで、終わりました。 前章のファンタジー路線を、若干引きずりました。 (´・ω・) 第四章 地球へ 167話くらいから さて、この時代の地球は、どうなっているのでしょう? この物語の中心になる基地は、月と同じ大きさの宇宙ステーションです。 その先10億光年は何もない、そんな場所に位置してます。 つまり、銀河団を遠く離れてます。 なぜ、その様な場所に基地を構えたのか? 地球には何があるのか? ついにその謎が解き明かされる! はるかな時空を超えた感動を、見逃すな! (´・ω・) 主人公が作者の思い通りに動いてくれないので、三章の途中から、好き勝手させてみました。 作者本人も、書いてみなければ分からない、そんな作品に仕上がりました。 ヽ(´▽`)/

超常戦記~世界を滅ぼすほどの愛を

赤羽こうじ
ファンタジー
 身体能力が飛躍的に進化した人類。超常的な力を手に入れ魔法が飛び交う世界でセントラルボーデン国家が覇権を握っていた。  そんなセントラルボーデンの中で軍務にあたるジョシュア・ゼフ少尉は初陣でシエラと名乗る美しい女性と出会い、『この世界を滅ぼす』と宣言する男アナベルと出会う。  圧倒的なアナベルの力の前に為す術なく敗れたジョシュアをシエラが優しく包み込む。  一方アナベルは組織を率いてセントラルボーデン国家に対して、ひいては世界に対して宣戦を布告した。  何としてももう一度再戦しリベンジを遂げたいジョシュアは、その身を戦場へと投じていく。  そんなジョシュアを傍らで見守りながら自らも戦場を駆け巡る美しき女性ウィザード、セシル・ローリエ少尉。  天才と呼ばれたジョシュアとセシルはアナベルの暴挙を阻止出来るか?そして、そんなジョシュアを見つめるシエラは何を思う?  更に繰り広げられる戦いの裏でひしめく権力闘争。  果たして裏で糸を引く者はいるのだろうか?それともこれが世界の流れなのだろうか?  時を見定めるかのようにこの戦いを見つめる者は静かに笑った。  長編異能バトル。始まりの第一章。

銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?

レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞

橋本 直
SF
地球人類が初めて地球外人類と出会った辺境惑星『遼州』の連合国家群『遼州同盟』。 その有力国のひとつ東和共和国に住むごく普通の大学生だった神前誠(しんぜんまこと)。彼は就職先に困り、母親の剣道場の師範代である嵯峨惟基を頼り軍に人型兵器『アサルト・モジュール』のパイロットの幹部候補生という待遇でなんとか入ることができた。 しかし、基礎訓練を終え、士官候補生として配属されたその嵯峨惟基が部隊長を務める部隊『遼州同盟司法局実働部隊』は巨大工場の中に仮住まいをする肩身の狭い状況の部隊だった。 さらに追い打ちをかけるのは個性的な同僚達。 直属の上司はガラは悪いが家柄が良いサイボーグ西園寺かなめと無口でぶっきらぼうな人造人間のカウラ・ベルガーの二人の女性士官。 他にもオタク趣味で意気投合するがどこか食えない女性人造人間の艦長代理アイシャ・クラウゼ、小さな元気っ子野生農業少女ナンバルゲニア・シャムラード、マイペースで人の話を聞かないサイボーグ吉田俊平、声と態度がでかい幼女にしか見えない指揮官クバルカ・ランなど個性の塊のような面々に振り回される誠。 しかも人に振り回されるばかりと思いきや自分に自分でも自覚のない不思議な力、「法術」が眠っていた。 考えがまとまらないまま初めての宇宙空間での演習に出るが、そして時を同じくして同盟の存在を揺るがしかねない同盟加盟国『胡州帝国』の国権軍権拡大を主張する独自行動派によるクーデターが画策されいるという報が届く。 誠は法術師専用アサルト・モジュール『05式乙型』を駆り戦場で何を見ることになるのか?そして彼の昇進はありうるのか?

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

処理中です...