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カードマスターさくら編4
しおりを挟む「どう? あたしのマジックコンボは?」
「…………まだこれからです、ドロー!」
――――3ターン目。召喚エネルギーが3になったこの辺りからお互い強力なカードが使えるようになってきます。
攻撃力1は誤差だと思っていましたが、ダメージが蓄積されていくと結構厄介ですね。
…………ここは。
「私はてるてる仮面を召喚します」
私のフィールドに白い布を被った幽霊の様なモンスターが召喚されました。
攻撃力0 体力2のステータスだけ見たら何とも言えない微妙なカードです。
「そして、罠カードを一枚設置してターンエンドです」
テンポ重視の為このゲームの罠カードは一枚しか設置出来ないので考えて使わなければいけませんが、その分強力な効果を持っている物が多いので使い所を間違えなければかなり重要な戦力になってくれる頼もしい種類のカードです。
「私のターン、ドロー。よ~し、このターンで一気に決めるわよ! 私はコスト3の騎士王ナルティスを召喚。そして―――――――」
忍さんの場にマントの付いた重厚な鎧を身にまとい、巨大な剣を両手で持ったモンスターカードが召喚されました。攻撃力と体力は共に4の強力なカードですが、私はこの瞬間を待ってたんです!
「罠カード発動、天地反転。このカードはフィールド上にいるモンスターの攻撃力と体力を全て入れ替える事が出来ます」
景色が一瞬だけひっくり返ったような演出が入り、全てのモンスターの数値が入れ替わりました。
「続けて、てるてる仮面の効果を発動します。てるてる仮面は体力が0になった瞬間、姿を変える事が出来るのです」
てるてる仮面は空中でくるりと逆さまになると、白い布がふわりとひっくり返るように下がっていき、裏側の黒い布が表に現れました。
「攻撃力0を2にしたからってなに? そんな攻撃力じゃ私の騎士王には勝てないわよ?」
「忍さん。誰もバトルで騎士王を倒すとは言ってませんよ?」
「――――どういう事!?」
「てるてる仮面の更なる効果発動。てるてる仮面の姿が変わった事により天候も変化します」
「天候を変える? ―――――ああっ!?」
「行きます! てるてる仮面、ウェザーチェンジ!」
てるてる仮面が空を指差して指先からビームを放つと、晴天だったフィールドの天気が雷雨へと一瞬で変化しました。
「フィールドが雷雨になった事により金属。つまりナイフを持っているナイフエッジマスターと剣を持っている騎士王ナルティスに雷での攻撃が可能になりました。―――雷轟招来!」
忍さんの場に召喚されているナイフエッジマスターと騎士王ナルティスは落雷攻撃により破壊され、忍さんの場はガラ空きになって私の場にはモンスターが1体。完全に形勢逆転です。
「なあっ!?」
「さて、忍さん。どうしますか?」
「うぐっ。召喚コストも使い果たしちゃったし…………これでターンエンド」
罠カードを使ったのは忍さんのターンだったので、コストを使い果たした忍さんはそのまま何もせず私にターンを明け渡しました。
「私のターン、ドロー! 私はフィールドのてるてる仮面で忍さんに攻撃、レインレインボー!」
空から降り注ぐ虹色の雨が忍さんに2ダメージを与えました。
「そして私は罠カードを一枚セットして―――――」
あれ? なんだか忍さんが口に手を当てて考え事を始めたみたいです。
もしかして、あの事に気が付いてしまったのでしょうか。
「…………ねえ、桜?」
「おや? 忍さん、どうかしましたか?」
「さっきから思ってたんだけど、私達モンスターカード出してすぐに破壊みたいなのを繰り返してない?」
「…………はぁ。忍さん。せっかく私が言わないようにしてたのに、あまりカンがいいのは良くないと思うのですが…………」
「ど、どういう意味よ?」
仕方ないので私は真意を打ち明ける事にします。
「――――よく考えてください。今も半分くらいどうなってるのか解らないのに4体も5体も特殊効果のあるモンスターカードを並べて、文章だけで全て把握させる事なんて出来る訳ないじゃないですか。なので大味な対戦にするしか無いんです」
「な、何よそれ! それくらい頑張って何とかしなさいよ!」
「大丈夫です。そう言われると思って、対策手段も用意しておいたので安心してください。魔法カード発動、スモールシェルター!」
私は魔法カードを発動するとお互いのフィールドに小さなシェルターが1個ずつ出現して、他の場所にデンジャーの警告マークが出現しました。
「スモールシェルターの効果は1人用シェルターをお互いのフィールドに出現させて、ターンの終了時にシェルターに入っていないモンスターカードを全て破壊する効果です。これで常にお互いのフィールド上のカードが1枚になるので安心ですね」
「…………で、今回はそれでいいとして次からどうするのよ? もしかして毎回そのカードを使う気?」
「忍さん。もうこのゲームは今回限りで終わりなので安心してください。というか次のお話自体無い可能性がですね――――」
「うがああああああ~」
私は忍さんがブチ切れして机をひっくり返そうとするのを必死の思いで机を抑えてなんとか踏みとどまらせました。
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