ゲームキャスターさくら

てんつゆ

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リベンジマッチ1

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 ある日の学校の休み時間。
 私と忍さんは少し前に実施したIQテストの結果が張り出されている掲示板の前にいました。

「え~っと、私の名前は…………あ、あった。桜はどうだった?」
「もちろんバッチリです!」

 忍さんの結果は真ん中よりちょっと下で、私はと言うと――――。

「なんと! IQ180で学年2位です!!!!」
「うっそ、凄いじゃん!?」
「くふふ。まあ普段からeスポーツで頭を使っているので、当然と言えば当然ですね」
「…………って、あれ? 180で2位って事は1位は?」
「それは――――」

 その瞬間、後ろの方にある売店の方から騒がしい声が聞こえてきました。

「こっ、これはエナモンのアブソリュートゼロ味!? オバチャン、これ10個ちょうだい!!!!」
「…………あんた、そんなに飲めないでしょ?」
「ううっ。言われてみればそうだったよ。――――――じゃあ、いつものエナモンとポテチのノゾミスペシャルで頼むよ! あ、もちろんポテチはコンソメでね!!!!」
「はいはい。ちょっと待ってな――――」

 売店のオバチャンさんは苦笑いを浮かべながらトレイにジュースの缶とポテトチップスの袋を載せて少女に渡しました。
 その子はそのまま売店の横にあるベンチで今買った物を食べようと移動を始めましたが、私達の存在に気付いてこっちへと小走りでやってきました。

「あっ!? 桜ちゃんと忍ちゃんじゃん。望と一緒にポテチ食べる?」

 この子は六道 望(りくどう のぞみ)さん。
 私と忍さんのクラスメイトであり、今回のIQテストで―――――。

「…………あんた、またやったわね?」
「ふっふっふ。望のIQは53万だよ!!!!」

 そう、今回のIQテストで1位を取った人物なのでした。

「はぁ。ここまで高いと逆に凄く感じないわね…………」
「望さん、毎回そのセリフ言ってますよね?」
「うん! だって望は、これを言う為に頑張ってるからね!」

 私の「2位 風宮 桜 180」の右には「1位 六道 望 530000」と絶対に同じテスト受けてないだろ! ツッコミたくなるような数字が並んでいたのです。

「あんた。毎回この数字だけど、もしかしてわざと取ってない?」
「うん。毎回53万で止めるのって結構難しくて大変なんだよ…………」
「――――えっと、普通にもっと正解すればいいのでは?」
「それは駄目だよ。望は宇宙の帝王に憧れてるから、この数字は絶対に譲れないんだ!」
「…………ああそう。じゃあ宇宙の帝王になる為に頑張りなさい」
「うん、頑張るよ!」

 本気で頑張りを表明する望さんと打って変わり、忍さんはちょっと呆れ気味な感じです。

「まったく。何で私の周りには変なのばっかなんだか……」
「くふふ。まあ類友って言いますし、忍さんの周りにそういった人が集まるのは仕方ないでしょうね」
「あんたもでしょ!!!!」
「ええっ!?」
 
 それからも3人で会話を続けていると、午後の授業を始めるチャイムが鳴り始めました。

「あっ。そろそろ教室に戻らないと!?」
「そうですね。それじゃあ望さんも一緒に戻りましょうか」
「あ、ちょっと待って」

 望さんは残っているポテチを一気に口に放り込んでむしゃむしゃした後に、炭酸強めのエナジードリンクで一気に流し込みました。

「望パワー、フルチャージ!!!! こうなったら誰にも負けないよっ!」
「いったい何と戦うのよ…………」

 それから3人で教室に戻る時、掲示板を横目に見ると3位の人の名前が気になって一瞬足が止まりました。

 3位 仙道 和希。

 …………せんどう…………わづき?

 そういえば、どこかでこんな感じの名前を見た事があったような――――。

「あれ? どうしたの、桜?」

 急に立ち止まった私を忍さんが心配して声をかけてきました。

「あ、す、すみません。ちょっとボーッとしてました」
「……まったく。授業中に居眠りしないように気をつけなさいよ」
「あっ!? ひらめいたよっ!? 桜ちゃん、だったらバレないようにマジックで目を書けばいんじゃない?」
「おおっ!? 言われみればその手がありました!?」
「無いわよ!!!!」

 それから、ちょっと眠い午後の授業も難なく終わり、帰りの時間になりました。

「それでは、忍さん。私はお店の手伝いがあるので、もう行きますね」
「りょーかい。こっちも部活があるから、そろそろ行かないと」
「――――それにしても最近は部活頑張ってますね?」
「まねー。最近お姉ちゃんが凄いから、私も負けてられないんだから」
「えっと、お姉ちゃんって鳴海さんですか?」
「ん? あ~違う違う。もう1人の方」

 …………もう1人?
 忍さんに他のお姉ちゃんなんて居たでしょうか?

「そういや、桜は会ったこと無かったっけ? この右側がそうよ」

 そう言って忍さんは端末を取り出して、1枚の画像を見せてくれました。
 そこには忍さんと鳴海さんともう1人、私の知らない人が笑顔で並んでいます。

「し、忍さんに私の知らない人がいたなんて!?」
「あんたは私の何なのよ…………」
「それはモチロン。お店の常連さんの1人です!」
「友達でしょ!!!!」
「おや? 忍さんは私の事を友達だと思ってくれてたんですか!?」

 私はにやけ顔をすると、忍さんは少し顔を赤らめて。

「べっ、べつにそんなんじゃ…………。は、はいっ。この話は終わりっ。じゃあ私は部活があるからっ!?」

 そう言って教室を飛び出して行ってしまいました。
 ふぅ。ちょっとからかい過ぎましたか。
 まあ、もう1人のお姉ちゃんの事はまた今度にでも聞くとして、私もそろそろ帰らないと。

 ――――私は自分の机のパソコンからログアウトすると、荷物をまとめて教室から出る事にします。

 階段をゆっくりと降りて行き下駄箱に着くと、校門に見覚えのある後ろ姿が。

「あ、あれはっ!?」

 突然、私の頭にお昼にみた掲示板の文字が浮かび上がってきました。
 カズキ…………かずき…………和希!?

「もしかして、和希さん!?」

 私は室内用の靴を下駄箱に投げ入れ、スニーカーを半分だけ履いた状態で駆け出して行きました。

 
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