上 下
96 / 182
<ヌアザの攻防>

ワシに少々策が有る

しおりを挟む
「ジム!マズイ、ヤツを止めろ!」
ジムにしか聞かれない様に、声を押し殺す。
「ん、如何どうしたんだい旦那、急に?」

「忘れたのか、お前さんの兄の事を!」
ジムの兄は、砦に救援要請が届かない様に、何者かに謀殺された。
ワシはそう睨んでる。
だとしたら……また同じ様な事が繰り返されんとも限らん。
いや、此処ここまで、あからさまな仕掛けをしてくる程だ、先ず間違いない。

ワシの言葉に、ジムが気付きハッとする。
「レナード、ちょっと待った!」
「どうした、ジム?」

「どうしたも何も、お前が砦に向かったとして、その、ハゲだか中佐殿だかが、本当に動くのか?」
「うーーん……そうだな、残念ながら確信はない。もし、本当にそのなんとか一家いっかってのに鼻薬でも嗅がされてるなら、動かん可能性が高いかもしれん」

「なら、残って、手伝ってくれ。戦力は一人でも貴重だが、指揮を取れる者は尚更な」
「フッ、分ったよ。仰せのままに従うぜ、大佐殿」
「はぁ~、オレは、もう軍人じゃ無えっての」

「しかし……どう迎え撃つ、ジム」
レナードの問いにジムは肩をすくめる。
「ともかく、いつ奴らが襲って来るか分から無え。町中を回って皆を叩き起こして、女子供は教会へ避難。男共は銃を手に持って待機って所か。オーウェンの旦那」

「分った、自警団うちの若いのに町中を回らせよう。しかし……銃と言ってもな、皆が皆持ってるわけでも無い」
「うむ、そういう事なら、ワシらがニーリーの盗賊共から奪った物が有る。確かカービン銃が二十五挺、リボルバーが三十三挺有った筈だ。そいつを使え」
ジムも頷き同意する。

「そうか、恩に着る」
「だがオーウェン、弾薬はさほど無い。トマスに至急送ってくれる様、頼んでは居たのだがな……」
「昨日中にトマスがヌーグに着いたとして、荷馬車だと此処まで一日掛かる。早くても、届くのは今日の夜か明日の昼頃か……。それ迄、奴等の襲撃が無い事を祈りたいところだな。それにだ、銃が有ったとして、如何どう迎え撃った物か……」

「うむ、その事だが、ワシに少々策が有る」
さっそく、昨日錬成した物が役立つ事に成るとはな。
そうそう後手に回ってばかりはいられんさ。

「で、旦那、その策ってのは?」
「フッ、なに、ワシらにはゲティスバーグの炎龍殿が付いておる。ならば、火責めが良かろう♪」
「だ、旦那ぁ……」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

チートな親から生まれたのは「規格外」でした

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:702pt お気に入り:529

[完結]ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:191pt お気に入り:779

転生したら死にそうな孤児だった

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:11,162pt お気に入り:112

異世界に飛ばされたおっさんは何処へ行く?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7,291pt お気に入り:18,003

追放されたおっさんは最強の精霊使いでした

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:1,647pt お気に入り:9,117

深淵の探究者

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:1

処理中です...