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<狙われた町と黒い沼>

オーガの武術

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ともかく、悠長にしてられん。
目の前のオーガとやらも、さっきジムが仕留めたのと同様に、町を破壊して回っている。
幸いこの辺りに逃げ遅れた者は見当たらんが、サッサと始末せんと、被害が大きく成るばかりだ。

「成らば」
軍刀の鯉口こいくちを切り、右手に結んだ刀印で描いた電撃の魔法陣を、その刀身に押し当てる。
まあ、いつものヤツだ。
初手は、この手でヤツの強さを測ってみるか。

「では、参る!」
先手必勝。
屋根の上から、巨体なヤツの背後、その首筋目掛け飛び掛かる。

全身全霊を込めて、振り抜いた軍刀を、振り下ろす。
バチバチ!と刀身にまとわせた紫電が走る。

ザク!
皮膚を切り裂く感触。
そのまま、軍刀の刃を立て、首筋から背中にかけて切り裂く。
バチバチバチ!
その切り裂いた傷口から枝葉が広がる様に、リヒテンベルク図形が刻み込まれる。

だが……固い!

グオォォーーー!
切り裂かれた背中の痛みでか、オーガが絶叫を上げる。

軍刀をそのまま振り切って、オーガの背後に降り立つ。
そのオーガの背中は割れ、鮮血が飛び散るが、しかし、浅い。
皮膚は切り裂けたが、背骨を切り裂くには至ってらん。

ウオォォーー!
オーガが咆哮を上げ、背後のワシ目掛け拳を振り下ろす。
紙一重でかわすが、なかなかどうして、その巨体に見合わず、動きが速い。

更に、ヤツの連撃は続く。
その巨大な拳をかわしつつ、その手首を軍刀で切り裂くが、皮一枚切り裂くのが限界だな。
強靭な筋肉と骨を断ち切るには至らん。
そもそも、相手が巨大過ぎる。
ヤツをたおすには、小さく短いこの軍刀では、いささか役者不足か。

さて、如何どうしたモノか……ヤツは、浅手とは言え、背中に傷を負わせたワシに執着しておる様だ。
その攻撃は凄まじいく、怒涛の拳の連撃。
勿論、かわせん程では無い。
そのヤツの執着を利用して、町の外まで誘導して、バアルの槍でトドメを刺すか……。

む、ヤツめ、足払いの様な体勢から蹴りなど繰り出して来おった!
咄嗟に、飛び上がりかわす。

だが、読まれておった!
宙に浮いたワシ目掛け、ヤツの巨大な拳が迫りくる。

猫特有のしなやかな体をひねってその拳を紙一重でかわし、その振り抜かれたヤツの腕を蹴って軌道を変え、着地する。

「フッ、驚いたものだな。ジムは知性も感情も無く、ただ本能のみのバケモノと称したが。こ奴の動き、熟達した武術家のソレだ」
と成れば、ただ大技でほふるだけと言うのも、興が無い。

この近隣に住む住民には悪いが、どうせ、復興費用はワシが持つのだ、ワシのやりたい様にやらせて貰うとしよう。

ズドーン!
「フッ、ジムめ、もう次のも始末したか」
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