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3.手合わせ

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「最初は当ててみるところからだな、少なくとも当てさせるつもりはないけど」

「当てれるように頑張ってみるよ」

早速煽ってきてくれるじゃないか。
俄然、やる気がでてくるよ。

恐らく父さんが知らない魔法でも使ってでも勝ってやろうか。

まずは〈肉体強化〉でもしておくとしようかな。

この前見せてもらったから動きは少しくらい読める。
そして父さんの初動が…。

「踏み込む時、その膝が曲がってるところがねっ!」

普通の剣士には気付かないだろうがここから繰り出される技等が長い鍛練を積んだ俺には先読みすることが可能だ。

「なっ…!」

父さんの余裕の顔が一瞬にして消え去り、予想外の剣筋が下方向から繰り出されるのを咄嗟の判断で防ぐ。

「まだだよっ!」

「はぁっ!」

俺は〈限界突破リミットバースト〉を発動し、一時的に自身の限界を越える。
身体の底から溢れんばかりの力を感じる。
だがこれを長時間使用すると身体に影響がでて解除後には立っていられないことも少なくない。

だが〈限界突破リミットバースト〉は魔力依存の魔法で、魔力が多いほど発動可能時間は伸びる。

これは前世で確認した。

「(今の俺なら…1時間も持つのか)」

先程の不意打ちにより、父さんの重心は後ろ気味になっている。
そこをついて俺は父さんの背後へと回り、フィニッシュ……。
ではなく、ここは防御可能範囲な事位は理解している。

「〈偽りの視界トリックビジョン〉」

「やるな!アレ…ン?」

父さんは俺の剣を防いだつもりだろうが今まで見えていたはずの俺はいつの間にか見えなくなっていた。
それどころか自分の背後から首筋に木刀が突き立てられてるとは思いもしなかった。

「なっ…なにが起こった?」

「チェックメイト…でいいよね?」

丁度決着がついたというその時。


「えっ…?これはどういう事?あなた?」


庭へと繋がるドアから母さんがジュースをもって来てくれていたところ、この状況を見られた。

「あなたこけてしまったの?随分油断したのね。ふふふっ」

「………」

父さんは何も返事すらしない。

そんなに俺に負けてしまったのが悔しかったのか…?

それともなにかあるのか…?

「いや、ミランダ。俺は成す統べなく首を取られた。しかも背後からな」

「…そんなの嘘っ、どうせあなたが…」

「アレンの実力は本物だ」

父さんは思ってたより真剣な眼差して母さんへ訴えかけていた。

「でも…まだアレンちゃんは8歳になったばかりなのよ?」

「どうもこうもわからん。最初は油断していたのは事実だ。だが最後の動きは俺の目では追えない、いや…理解すら出来なかった」

「そんな…使徒様か何かかしら?」

なんだ使徒って、俺ですら知らない。

まさかこんなに真面目に俺の話をされるとはな…。
俺はてっきり「すごーい!」とかで終わるのかと思ってたんだけどな。

「アレン…お前の力は計り知れないものなんだ」

まぁ一応〔英雄〕とは呼ばれてたしな。

「う、うん」

「もしかしてなにか自分でもわかってるのか?」

「それは~…」

まだ自身がレオナルドだと打ち明ける気にはなっていなかった。
打ち明ける覚悟がなかったんだ。

だけどこうした今、やっぱり打ち明けないといけないのか…。

「いや、いいよ。自分が言いたいタイミングに言えばいいさ」

「そうよ、アレンちゃんはアレンちゃんだものね!」

心が広く優しいことは前々から分かっていたがここまで俺の事を理解してくれる親に出会えて俺は幸福だなと染々思う。

「ありがとう…母さん…父さん」

思わず涙ぐみかけてしまった。

「ところで提案なんだが、ファリオン王国にある最高峰の学園《ファリオン剣魔導学園》に興味はないか?」

ファリオン剣魔導学園…?なんだそれは。
またまた俺の知らないものが出来ているのか。
そりゃ何百年も経ってるのだから何も可笑しくはないか。

「ファリオン剣魔導学園ってなに?」

「それはだな、この王国や中には他国から集められるトップ中のトップしか入学することが出来ない学園なんだよ」

「ほぼこの世界のトップの同級生ってこと?」

「そうだ、他国にもこういう学園はあるようだがファリオン剣魔導学園より規模が多いのは他にないな」
「俺が大人になってからできたからな、できれば俺が子供の頃から出来ていてほしかったと強く思うよ」

ほほぅ、現世の子供たちの基準が計れると言うことか。
これからの未来のためにも少し俺が手を加えても良いかもしれないな。

この時点で俺の気持ちは殆ど決まっていた。

「それにな、ここは平民も貴族も同じ扱いだ。それといくら強くてもな」
「アレンに自分の異常さを知ってもらう良い機会にもなると思ってだな」

「うん、俺も行ってみようとおもうよ」

「まぁ察しているかもしれないが8歳から入学ではない、12歳からだ」

流石にそれくらいは勘づいていた。
俺の時代の学園も入学は12歳からだったしな。

「もちろん、それまで鍛練を欠かさずにな」

「これまでもこれからも、鍛練を欠かすことはないよ」

「おお、さすが俺の息子だな!俺としても剣でここまで対等、いやそれ以上の奴は居なかったからな、良い相手が出来てよかったよ」

これから相手よろしくな、という不気味な笑顔で俺の肩をポンポンしてきた。
正直嫌な予感しかしないが…。
まぁ父さんの剣筋も〔英雄〕だけあって何も言うことはないだろう。
癖やらを修正していくと更に上達できる見込みはある。

「ずっと父さんの相手はしてられないよ」

「なっ……まぁ、そうだよな」

ちょっとシュンとした顔をしたが流石に理解してくれたようだ。

だがこの2年後、実は魔法が本職と母さんと父さんにバレて母さんと勝負するのはそう遠くない話だ。
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