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蜜花イけ贄(18話~) 不定期更新/和風/蛇姦/ケモ耳男/男喘ぎ/その他未定につき地雷注意

蜜花イけ贄 35

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 身体の調子がおかしかった。桔梗は自身を抱いて、全身を走る微妙な痺れに耐えた。撫で摩るにもおかしな感覚に陥る。風邪ではないように思えた。
 細く長い吐息が闇夜に轟く。
「どうかしましたか」
 気配も足音もなく、まるでそこにはじめからいたみたいに声がかかった。桔梗はびくりと身を震わせた。だが予期しなかった存在に驚いたのではなかった。強壮な雄を思わせる低い声に、背筋に静電気めいた戦慄が走るのだった。
「い、いいえ……」
「葵殿を呼びましょうか」
「何でも、ございません……」
 座敷牢の扉の開く音がした。そして明かりが点る。浅黒い肌の偉丈夫の姿が浮き上がる。画に描かれた獅子を思わせる野生的な逞しさを持った、彫りの深い美男子で、太い首の上に乗った強靭げな顎には髭を蓄えている。だが歳はまだ若く見えた。
「医者を呼びましょうか」
「要りません……少し喉の調子が悪いだけですから」
「失礼」
 美丈夫は大きな手で桔梗の肩を揺すった。
「あ……っ」
 ただ掌が触れただけのことだった。だが身体が跳ねた。大きな活力がそこに生まれ、一瞬思考を掻き消した。
「痛みますか」
 抑揚のない、愛想のない喋り口であった。だがそこに、彼なりのそれを打ち消したがっているような努力が感じられた。ゆえにぎこちなくなっている。
「い、いいえ……もう寝ますので……」
 桔梗はくったりしていた。声は掠れている。
「葵殿を……」
「平気です、平気です……」
 男はまた「失礼」と言って彼女の額に触れた。
「ふ、あ……」
 接した箇所からじんわりと、滲むような痺れが広がる。力が抜けた。心地良い眠気に似ていた。目の前の男のことを知りたくなる。だが、人格のことではない。その肉の厚み、温かさ、手触り、匂いのことだ。
「やはり、葵殿を……」
「風邪です。放っておいてくださいまし……」
 桔梗の目はぽわりとしていた。熱に浮かされているようによく潤んでいる。
「囚人の健康には気を遣わねばなりませんので」
 黒い髪に燈火に揺曳ようえいする。太い眉と大きな目は、どこかで見たことのある虎の剥製を思わせた。この牡に喰われることが牝の幸せなのだと直感した。この雄の庇護下に入ることが、雌の生まれ育つ最終目的なのだと。
 大きな手が、甲を使って桔梗の頬や首を確かめる。
「ぁ……っ、ひ………触らな、いで………くださ………」
 嗄れていた声は艶ばかりを抽出した。身体が震える。接触したところで起きる痺れが胸や下腹部にも作用する。
「冷たいですか」
 男の手が這う。肌理の擦れ合うのが、普段の何倍も敏く感じられる。
「ち、が…………ぁっ」
 身体が跳ねた。爛れてしまいそうな男の体温は、力尽くというわけではなかった。彼なりの善意によるものだった。女の力でも拒むことができるはずだった。だが拒もうとしながらも、力が抜け、されるがままになっていた。
 男は筋骨逞しい腕で彼女を抱き上げた。
「あ………ああ、!」
 桔梗の肉体は軋みながらがくがくと震える。全身が汗ばんだ。甘く蒸れた匂いが、剛健な男の腕の中に咲き誇った。虎のような面構えの美丈夫の大きな目がたじろいだ。あらゆる部位が大きく、絶妙な均整を保っていた。椿の山茶さんざのような華やかさ、艶やかさとは違う、野生的な雄臭さと泥臭さがあったが、不潔な感じはなかった。
 男は子猫でも持ち去るような軽快さで女一人を座敷牢から連れ出した。
「どこ、に……?」
「医者に診せます。葵殿はすでに帰りました」
 桔梗は首を振った。目眩がする。咄嗟に男の胸元の布を握ってしまう。彼女の指は男の分厚い筋肉を覆った衣を放さなかった。
「い、要りません……!必要ないのです……」
「不調のようですが」
 布に引っ掛かった女の手を、大きな掌が包み込む。それは優しかった。労りがあった。だが、勝てることのない圧倒的な膂力の差、殺気に満ちた蜜蜂に蒸される雀蜂のごとき体温の差、服従するしかない屈強な骨格と肉置ししおきの差を一瞬で知らしめられる。
「んぁ……」
 手が震えた。強い雄に、弱者だと分からされてしまう淫らな悦びが駆け巡っていく。じんじんと疼く爪先が丸まった。
「葵殿のご婦人」
 低い声が耳殻や首筋を舐めていくみたいだった。
「放って、おいて………くださ、おねが………」
 鼓動が大きくなる。熱がさらに高まった感じがした。身体のおかしさが増している。風邪が悪化するように、この奇妙な感覚も強くなっている。
「放っておけませんな」
「あつ………い、」
 桔梗の肌に霧のごとき汗が浮かんだ。衣を緩める。そして彼女は下腹部の違和感を取り除かなければならなかった。昨晩貴人に嬲られ、朝昼と物好きな官吏に甚振られた粘膜が淡く痺れている。傍らの頑強な男に、動物としての圧倒的な敗北感と、雄としての畏敬を抱いた途端、彼女は弱い個体の雌として屈服していた。弱みを晒すことに躊躇いもなかった。
 彼女は己の指を舐めた。そして昨日貴人が、朝昼と病んだオウムみたいなのが出入りした箇所に指を挿れた。
「あ………ああ、」
 足りたことで、物足りなかったことを彼女は知った。しかし足りたと言ってもまだ満たされない。
「何を……」
「見、ないで………」
 だが止めることはしなかった。桔梗は手淫に耽った。好き放題に突かれ、膨張したもので叩かれた箇所を掻いた。恍惚がすべてを忘れさせる。
「あ……ああんっ」
「葵殿のご婦人」
 太い骨が組まれ、厚い肉に覆われ、血潮の漲る節榑だった手が桔梗の肩を抱き寄せる。
「あ、だめ………触っちゃ、いや………」
 雄の匂いに近付けられた途端、彼女は浅い絶頂を味わった。身を捩る。
「色情症ですか」
 逞しい腕に寄りかかり、陶酔しながら桔梗はこの状況に陥った原因について考えていた。否、目蓋の裏にそれが張り付いていた。豪奢な湯呑に入った「しょくら糖」湯だ。
 彼女は首を振った。男の腕から身を剥がす。まだ足らなかった。むしろ疼きは増している。
「ご婦人」
 はずみで、彼女の肩から緩められた衿が落ちていく。素肌は湿しとり、灯火で染まっている。
「………甘いものを………飲みました……………葵様だと、思います………」
 あの病んだオウムは薬の心得がある。このような効果を齎す薬草を煎じられたのだろう。赤みを帯びた黒檀色の甘く苦い飲物も、あの男から与えられたものと同じである。
「では葵殿を呼んできましょう」
 男が去るのは好都合であるはずだった。だが直感は惜しさを覚えていた。理性は働いているつもりで、けれど彼女の身体は違った動きをした。
「ご婦人……」
 巨木に枝切れが重なったような大きな肉体の差があったにもかかわらず、男は桔梗の嫋やかな細い手に引き止められた。そして彼女は指の周りきらない腕を掴もうとして、結局は男の袖を摘んだ。胸を押し付ける。柔らかな乳房が浅くたわむと、布団に包まれたかのような気持ち良さと落ち着きを得られた。
「何を……」
「行かないで……くださいまし………」
 湧き起こった激しい色情は、傍にいる強い男を己の庇護者とした。決めてしまった。そして一方的に認めてしまった。男の腕に柔らかな胸の膨らみを這わせ、縋りつく。簡単に薙ぎ払えるような華奢な躯体を、男のほうでも邪険にはしなかった。むしろ力の加わる方向へ自ら身体を横たえる始末であった。
 強烈な淫欲に溺れた彼女は、分厚く、凹凸のはっきりした男体を敷いて自涜に励んだ。胸板に乳房を乗せると、官能とはまた異質の安堵が巻き起こる。
「ご婦人」
 男の大きな手に頬を撫でられる。大きな目が危うげな光を秘めていた。
「は……ぁあ………」
 蕩けた隘路が己の指を食い締める。桔梗は口が寂しくなった。頬に添わる大きな手を噛む。汗の味がした。それがまた頭のなかで鐘が鳴るような情感を湧かせるのだった。
「あ………っあんっ」
 飴玉を込めたように節榑だった男の指に舌を巻きつけて彼女は果てた。だがまだ足らない。
 手を唾液まみれにされた男は、女の痙攣している腰を掴んだ。そして肩を掴み、支え起こす。その間も、彼女は立て続けに果てていた。男は寝そべりながら目の前の揺蕩う胸に手を伸ばした。予期される感覚に彼女は恐れを抱いた。逞しい両腕を制する。男は体内から引き抜かれた蜜だらけの指を厭いもしない。そしてそのような抵抗はまったくの無意味だった。
「あ………あ、ぁ………そんな、」
 ふたつの実りはすでに少し硬い指の腹に捕らえられている。
「ふ、ああ、」
 脳天から下腹部にまで熱串が突き立って、さらに燃やされているみたいだった。桔梗は首を仰け反らせ、頭を後ろへ転がした。武人なのか、硬化した皮膚に強弱をつけて摩擦され、圧迫される。
「あ、ぁんっ……あ………ぁぁ、」
 背中が戦慄いた。羽化するセミのごとくしなる。臍の下のほうで、もどかしい欲望が渦を巻く。そして男の手によって、掻き回されるのだ。彼女の絶頂はまた突然にやってくる。
「だ、め……!だめ、ああッ!」
 叫びながら深く広がる快楽に彼女は腰を揺らした。男の手はすぐに胸から離れ、今度は前後にかくついている尻を撫でた。
「からだ………おかし…………くて、………」
「一旦、身体を鎮めましょう」
 男の力強い腕は、粗雑なだけではなかった。桔梗の身体を抱き竦め、上下に場所が入れ替わる。男の野生的な顔が傍にあった。彼女は男の胸にしがみつく。野生的な面構えが妖しい憂いを帯びたように見えた。瞬間、桔梗の熱く爛れて腫れたような小孔に、己の指よりもはるかに太いものが入ってきた。締め上げてしまう。男の指だった。飴玉を込めたような関節を生々しく感じ取る。
「あ……」
 恐怖があった。生命の危機によるものではなかった。これから味わう性感に対する恐怖だった。
 男の指が動きはじめる。探るような手つきが徐々に奥を叩くものへと勢いを増していく。
「ん、あ、あ、あ、……!ああ!あああ!」
 踵が畳を蹴った。腰が持ち上がる。葵にされるよりも乱暴で、しかし快感の的を確かに射止める。大きな指に、硬い皮膚。おかしな薬の効いてしまった肉体にはどれも悦楽を与えるのだった。
「あ………ああああ!」
 彼女は男の強靭な指さえも噛み千切ってしまいそうなほど、そこを収斂させた。突き入れられる官能の恐怖と、引き抜かれる惜しさが目紛しく交互にやってくる。
「も………だめ、おかしくなる………っ、あ、んッ……おかしくなる………!いや―ぁっ!」
 視界が白く爆ぜた。彼女なりにすぐに目を覚ましたつもりではあったけれど、長いこと経っている気もした。
「落ち着きましたか」
 低い声が降る。耳に心地良かったが、すでにそれは肌を舐めるような淫らなものではなかった。
「ごめ………んなさ、………」
「夢として互いに忘れましょう」
 男は部屋を見回した。そして蜘蛛の巣を解したようなしゃを見つけると、桔梗を包んで抱き上げた。
「どちら、へ………」
「医者に診てもらいましょう。解毒できるのならしたほうがよろしかろう」
 だが、途中で天井からぽとりと人影が落ちてくる。
「んがが、春将しゅんじょう、春将……」
 |枸橘《からたち >であった。そして枸橘は男に呼びかけていた。春将ということは、やはり軍を率いる武人である。
「んが、その人をどちらへ?」
「体調不良のようだ。医者に診せる」
「んがが、んがッ、ではやつがれにお任せを」
 春将だという男は容易く枸橘へ女を引き渡した。背丈のそう変わらない身体は、この小柄な隠密には重げであった。
「葵殿への報告は私からしておこう」
「んがが!必要ありません。なずなお嬢様がすでに存じていらっしゃいます」
「葵殿に知らせねば意味がない」
「んが、薺お嬢様と葵様は仲睦まじいご夫婦。今も閨房の契りに励んでおられます。んががっそのうち薺お嬢様のお口から葵様には伝わるでしょう」
 枸橘は何度も桔梗を抱き上げ直し、笑いながら喋った。
「好きにせよ」
 春将は踵を返した。最後に一度桔梗を振り返ったが、何を言うでもなく去っていった。
 枸橘の腕の中は寒く感じられた。そして大きく揺れるのだった。落とされそうな不安が過りもした。春将の筋骨の逞しさを改めて知る。
 連れて行かれたのは板間の部屋であった。中心に立派な夫婦用寝台が置かれていた。そこには人が仰向けに寝ている。両手両足を各々違う方角へ括り付けられ、全裸であった。顔は見えなかった。布袋を被せらている。男である。無防備に晒された聳り立つものでそれが判る。何に興奮しているのか。果たして興奮していたのか。牡の象徴は、根元をきつく縛られて、滑稽さよりも痛々しさを顕している。苦しげな息吹が室内に篭っていた。若い男であった。肌の瑞々しさや、薄らとついた筋肉の具合からして若かった。
 桔梗は入ってすぐに落とされた。捨てるように放られたのである。受け身をとる間もなかった。
 身体を打ちつけ、彼女はすぐに立ち上がることができなかった。上体を起こすのがやっとであった。
 すぐ傍で板間が軋む。枸橘と寝台の男の他に誰かいる。
 顔を仰ぎ見た途端、拳が振り下ろされた。彼女はまた床に叩きつけられる。頬が熱く疼くが、それは先程の頑健な男に触れられたときに湧いたものとは大いに質の異なるものだった。
 彼女を殴った者は、枸橘と違う臙脂色の装束を身に纏っていた。頭巾を被り、口覆をして、目元以外に顔は分からなかった。
「んがが……んががが」
 桔梗は高らかな嘲笑を聞きながら口の端の血を拭った。
 臙脂色の隠密装束は、印籠を手にしていた。漆塗りで艶々と照っている。枸橘と連携していた。枸橘は彼女の両腕を拘束し、臙脂色の装束は馬乗りになって印籠から軟膏を指で掬った。
「ああ……!」
 彼女の胸は簡単に露出した。人の牡として優秀な男に揉みしだかれた先端はまだ赤く熟れ、硬く実っていた。軟膏はそこに触れるのである。薬草の匂いが微かに薫っていた。
 甘苦かった薬の効果は徐々に薄らいでいるようだった。効くのが早い分、解毒されるのも早いのか。軟膏にまみれた指が胸の先端に掠ろうとも、先程のような頭の中身を大いに震わせるほどの快楽ではなかった。だが、あの味を知ったがために、物足りなく感じられた。
「変に………なる、」
 軟膏は散々に捏ねられたにもかかわらず、多分に白い半固体を残して桔梗の胸に纏わりついていた。身体が重い。柔らかな胸の膨らみは色付いた箇所によって天を衝くようだった。気怠るさともどかしい快美に、彼女はぼんやりしていた。部屋にまた一人、人が増えたことにも気付かなかった。
「まぁ!まぁ!まぁ素敵!」
 桔梗はやっと、その声のほうを向いた。葵の妻が立っているものと思ったが、見覚えのある人物よりもいくら大人びて見えた。化粧からしても、葵の妻の可憐な印象とは違っている。
「うっふっふ。あたしのかわいい妹をいじめてくれたわね」
 衣装も、鮮やかながら淡い色味を身につけていた葵の妻とは違い、彩度の高いものを着ている。
「この」
 赤く塗られた艶やかな爪を嵌めた指が、桔梗の胸の実を摘んだ。
「あぁ!」
 下腹部を叩かれたような衝撃が走った。春将に擂り潰されたときと同じ、大袈裟なほどの甘い痺れが駆け巡ったのだった。
「あたしの義弟おとうとに散々可愛がられたんでしょ?なのにこんなおぼこ娘みたいな乳首をして!」
 葵の妻に似た女は、桔梗の胸の先を摘み、捏ね回し、撚って扱いた。
「あ、あ、ああ……、あんっ」
 桔梗は腰を揺らした。目は虚ろで、半開きの口から涎が溢れた。そこが彼女の把手のように持たれ、虐められている。目の前がちかちかと光るようだった。
「まだ塗ったばかりなんでしょう?」
 薺によく似た女が、臙脂色の装束に問うた。そしてその者は頷いた。
「じゃあ元々、感度がいいのねぇ。それとも、しょくら糖湯のせいかしら?」
「あ………もう………、!」
 紅を引いた唇が、意地悪く歪んだ。胸の実粒を苛んでいた指が離れる。
「あ……」
 桔梗は溜息を吐くような声を出し、その場に横たわってしまった。
「あなたの持ってるそれ、お饅腔にも塗ってあげなさい」
 薺に似た女は臙脂色の装束の者に言った。白濁色の半固体が、脚の間の粘膜にも塗られていく。
「蜜柑ちゃんだったかしら?文旦ちゃんだったかしら?指でくじってあげなさい」
「んがが、すずなお嬢様。枸橘でごぜぇますだ」
 枸橘は照れ臭そうにして桔梗へ手淫を施した。
「経過を教えてちょうだいな」
「んがッ、しょくら糖湯を飲んだ後、富貴菊ふきぎく春将とお楽しみをしたようです。そして今に至ります」
「まぁ!まぁ!まぁ!酒池肉林をなすったというのね?まぁ!義弟が散々出入りしたとは聞いていたけれど、富貴菊春将とまでも!いやらしいお饅腔!見せなさい!」
 臙脂色の装束が、桔梗の膝を左右に開いた。
「いや……!」
 彼女は顔を両手で覆った。白濁色の軟膏がべっとりと纏わりついている奥に、粘膜の色が透けていた。
「これが、義弟にあいされて、富貴菊春将に可愛がられたお饅腔だと思うと憎いわねぇ!こんな可憐な薄紅色をして、小こい孔をして!いやらしいわ。そうだ!酢橘すだちちゃんだか臭橙かぼすちゃんだか言ったわね!絵師さんを呼んできなさい。こんないやらしいお饅腔は、ちゃんと記録しておくべきだわ!」
「んがが!合点承知!」
「冗談よ、おばか。こんなかわいいお饅腔を見たら、絵師さんもお珍矛に筆を奪られてしまうわ」
 葵の妻の姉・菘は九皐で軟膏の溶けていく様をしげしげと眺めていた。手を伸ばしかけ、赤く塗られた自身の爪を見遣った。
「かわいいわねぇ。いぢめたくなっちゃう」
 菘は指を反らし、爪に気を遣っているらしかった。軟膏が色を失い、消えていっている小さな肉瘤を押す。
「あ………はぁんっ!」
 頭のなかを揺さぶる、激しく鋭い快感に、彼女は暴れた。
「かわいいわねぇ……バカな男どもに食わせておくのがもったいないわ。でもお珍矛が一番効いちゃうんでしょう?もったいないわぁ」
 今度は爪の先で、ぷっくりと膨らむ肉瘤を焦らす。
「やッ、ああ……!」
「中にも塗ってあげなさい。お饅腔が痒くなって、お珍矛で掻かないといけないわねぇ」
 臙脂色の装束が、また軟膏を掬い取り、桔梗の粘膜の内側へと塗り込んでいく。
 暫くは何もなかった。両腕は宙で枸橘に一纏めに掴まれ、膝を擦り合わせれば、臙脂色の装束に恥部を開かれる。菘は絢爛豪華な扇子の柄尻や房飾りで女の敏感な肉粒を責めた。
 そのうちに、身体の芯が燃え上がるように熱くなった。甘苦い湯を飲んだときよりも強い。痒みには至らない、疼くような掻痒感は、一目を気にする余地を与えなかった。桔梗はまた暴れた。痣ができるほど強く掴まれた腕を振り解こうとする。下腹部に秘められた一筋を触りたい。
「や……ら、!逝きたい、ぃや!」
 自涜への強い欲求が抑えられない。彼女は頭を振り乱した。泣いて懇願するのである。瞳に涙を溜めて自慰の許しを乞うた。
「逝きたい、んやぁ!」
 臙脂色の装束が膝立ちになり、桔梗の熱く疼く欲求の湧き処を指で抉る。彼女は腰を前後に跳ねさせた。
「あ、あ、あ、あああ!逝く、」
 悲鳴のような喘ぎが響く。
「かわいいわぁ……必死に腰を振っちゃって……」
 菘は身悶える桔梗の背後へ周り、胸の先端を抓った。
「や、らぁ!あああ!」
 身体中が快楽を生んでいた。桔梗は背筋を後ろへ曲げ、体内にある忍装束の指を食い締めた。
「かわいい……」
 豪壮な作りの扇子が、苛烈な絶頂に息を荒げる女の小さな顎を掬い上げた。口角から、呑み込むのを忘れた涎が落ちていく。
「逝き………たい、逝かせて………」
 涙も落ちていく。菘の目に加虐の色が燃え上がった。
「そこの寝台にお珍矛があるから、好きなだけお饅腔を掻き回しなさい」
 桔梗はしかし、忍装束の指を氾濫したような蜜壺で貪っていた。
「あ……!あああ、!」
 快いところに自ら当て、戦慄いている。
「まぁ、はしたない!お珍矛はあっちよ。お饅腔擦り付けて、逝く逝くしなさい」
 菘は桔梗の腕を鷲掴みにして、寝台へと放った。見ず知らずの若い男体がそこに広げてある。
「んがが、菘お嬢様のご命令をお聞きにならないなんて!」
 枸橘は寝台の傍で膝から崩れ落ちた桔梗に腹を立てた。そして左右の膝裏に手を入れ、股を開かせて、男体から生えた肉串に乗せてしまった。
「あ………!ああああ………」
 嘆きに似た悦びが、その喉を灼いた。彼女は男体を生き物として扱わなかった。無遠慮に体重を任せ、痛々しく縛られた肉串に熟れすぎて腫れつつある陰路を打ちつけた。
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