18禁ヘテロ恋愛短編集「色逢い色華」-3

結局は俗物( ◠‿◠ )

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ネイキッドと翼 ケモ耳天真爛漫長男夫/モラハラ気味クール美青年次男義弟/

ネイキッドと翼 31

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 茉世まつよは身体から力が抜けてしまった。彼女はそもそも、体調不良者であった。それを忘れ、外敵の恐ろしさに、病んで熱くなっている身体に鞭を打ったのだった。そこにおかしなクリームを塗られて、さらに気力を削がれているのだ。目の前にあるクッションにしては硬く、布団にしては気の休まらない物体に体重を寄せた。そうしたくはなかった。だが肉体はもう御せなかった。どっと疲れて、早く眠りたい。しかしそうさせてはくれない疼きに苛まれている。
「先輩……」
 粉砂糖のような蠱惑こわく的な声が、今はおぞましい毒である。暗闇でその美貌は見えない。もしかするとそこにいるのは、蓮の声を借りたドラゴンなのかもしれない。息の当たる耳殻が燃えそうなほど熱い。
「ふ………ぅ、んん」
 掻き毟りたいのとは違うむず痒さを抱えた胸を、茉世は洗濯板のように凹凸のある眼前の物体へ擦りつけた。座っている蓮の胸板か、鳩尾か、腹部であろう。彼女は自身がどういう体勢で、相手がどこにどう居るのか分からなかった。だが目の前に質量を感じる。人の体温と気配と、匂いを。
「先輩………動かな………いで、」
 刺激を待ち侘びていた乳頭が布のなかでわずかに転がり、潰される。強い眠気に似た悦びに全身を包まれる。降ってくる糖蜜のような声音に気付きもしない。それはただ鼓膜を蕩けさせるだけのものであった。人格を伴った言葉ではなかった。勉強中に集中力を高める環境音と大差のないものだったのだ。
 茉世は胎のなかの電動機に支配されていた。浮気相手に迫っている。これはもはや、正真正銘の浮気であった。認めざるを得ない。
『オネエサン、マジでどっか行った?』
 青山あおやまあいは虚空に訊ねる。だが外の様子を窺いたくても、茉世は蓮の肉体を使った乳頭自慰に耽っていた。やがて擦り付けるのには足らず、寝間着の上から硬い勃起を摘んだ。
「ふ、ああ……!」
 暗闇のなかに、白むものが見える。視界で捉えたものではなく、脳が見ているものだった。隘路に挟まったピンク色の塊が振動し、感度を高める。茉世は蓮の身体に顔面を任せていた。洗濯用洗剤のなかに汗が薫った。この男は雄蕊だ。蜜腺だ。強い牡の匂いがする。強く秀でた遺伝子の香りが、生殖本能に訴え出ている。この牡と子孫を遺すべきだ。そのために肉体はあらゆる芳馨ほうけいを搾り出し、感度を高め、淫声と収縮によってより良い子種をより多く貪り啜り飲もうとするのだろう。
 一際強く、凝り固まったしこりのような実粒を捏ねた。快楽に身を引き攣らせた。
「あ……ん、ぁぁ……」
「先輩」
 労わるような手が耳の辺りに触れた。湿気を帯びている。また官能の波が押し寄せる。口元を押さえた。
「あ!んんッ、……あああっ!」
 彼女の絶頂と同時に、管理人室で物音がした。舌打ちと、この部屋から遠ざかる足音。それから施錠の音。ここは事故物件、ゴーストハウスである。
『オネエサン!居たのかよ!』
 私室の扉が叩かれた。
『開けろ、ブス!』
 茉世は蓮の身体の上で放心していたが、彼女の肩に置かれていた手はいつのまにか冷え切っていた。そしてクローゼットから出ようとするのであった。
「は………っ、蓮さ………」
「先輩は隠れていろ」
 彼女は首を振った。
「追い返すから……」
「だめだ。危ない」
 出て行こうとする蓮を押し込めようと努めるが、平均的で世間的な男女の力量の差は埋めがたく、今の茉世は弱り果て、また体力を消耗した直後であった。抱き留められながら、蓮に押される力によって彼女はクローゼットの外へと出た。空気の境界を肌で感じる。クーラーに冷やされた室温が寒かった。
「なんだ」
 蓮の呟きに茉世は管理人室に通じるドアから目を逸らした。そして蓮のほうを見やれば、その手にはふやかした乾燥わかめみたいなのがこんもりとのっていた。いいや、それは傷んだ質感の長い髪の毛である。野生で斃れた黒猫の死骸にも見えた。このクローゼットの中段にはアイドル衣装らしきものが収納されているのだ。彼はかつらでも拾ったに違いない。しかしどう好く見ようとしても、それは鬘ではなかった。纏められてはいなかった。一本一本ばらけていた。痛み具合や毛質からして、茉世はそれが誰のものであるのか分かってしまった。
「ゴミ箱はそこですから、捨てておいてください……」
『おい!マツヨ!誰と喋ってんだ、このブス』
 蓮はゴミ箱へ行こうとはしなかった。青山藍のもとに行きそうである。
「蓮さん……わたしたちの問題ですから………、ここにいてください。出てこないでください。自分で解決しますから………」
 茉世は部屋の奥へと蓮を押していく。
「あの男はまずい。先輩と2人きりにさせられない」
 ろくでもない男は、ろくでもない男を見抜くのが得意らしい。同士だからこそ、己も抱える他者のろくでもなさに気付けるのだろう。
「わたしは蓮さんとも、2人きりになるのは拙いんです。お願いですから……話をややこしくさせないでください。お願いですから……」
 弱った身体はやがて情緒を蝕む。熱によって潤んでいた目が、また別の水膜を張りはじめた。また居場所が無くなってしまう!このシャンソン荘という居場所は、情けで与えられたものなのだ。次はない。次にあるのは、身売りか、斃死である。彼女は屋根もなく壁もない暮らしをしていく逞しさが、自身にあるとは思えなかった。
「お願い、ですから………」
 浮気などするつもりはなかったのだ。夫に恋し、愛していなかったとしても、不貞によって裏切るつもりはなかった。だがそのつもりはなくても、裏切ってしまった。裏切ったということになっている。それだけでなく、人違いの贖罪に巻き込まれ、またもや夫へ裏切りに裏切りを重ねている。これは夫たちの誤解なのだろうか。真っ当な判断なのか。茉世にも分からなかった。弁解の仕方が分からない。恋愛感情がなくとも、肉体の接触があったのは事実である。しかしひとつだけ分かることがあるとすれば―……
「蓮さんの、せいだ」
 感情が急に煮え返った。顔面の中心に力が集まる。ぽこ、と胸板の薄らと透けた黒いシャツに手をぶつける。それは故意だった。ハエを追い払える程度の威力しかない。蚊も逃げてしまえる。子猫を横に退かし、ケーキならばクリームが崩れる程度の甘いものだった。そういう殴打なのか些細な手振りなのか不明な行動よりも、震えて消え入る短い一言は、背の高い、筋肉質な大人の男を深い衝撃を与えたらしかった。そのときの蓮は強烈なビンタが炸裂したかのような有様であった。烈しい暴力を受けたのだと言わんばかりの顔をしていた。
 ふと思いついてしまった言葉は口に出ていたのだ。彼女は自身の声で理解する。
「すみません……」
 茉世は眼球なのか、目蓋からなのか、熱く滲み出てくる涙を拭った。欲求の遺跡と化した胸の灼熱感も、腹の中の振動も、彼女を惨めにする。
「すみません……ですが、これはわたしの問題ですから、放っておいてください」
 ここは事故物件。ゴーストハウス。蓮は金縛りにでも遭っているらしい。或いは自然発火ならぬ自然凍結していた。
『座薬代とゴム代返せよ、ババア』
 彼女はドラッグストアの買い物袋を回収すると、管理人室に繋がるドアの鍵を解いた。向こうから開く。
「誰と喋ってたん?オネエサンってヤバい人?怖いんだケド」
 長身が管理人室への出入口を塞いでいる。
「帰ってくださいませんか……」
「オネエサンって精神アタマ、ダイジョーブな人?」
 飾られた爪が、刈り込まれた自身の頭を小突く。
「今日はちょっと立て込んでいますから……」
 青山藍の手は茉世を引き掴んだ。手から、ドラッグストアの袋が落ちる。管理人室へと吸い寄せられ、足が私室から離れた途端、そこは自動ドアと化してしまった。顔面がバニラ臭さに包まれる。
「ほんなら、貸したもん返せよ。まんこのナカのモノ、返して?」
 彼女の腕は一纏めにされて、出てきたばかりの扉に縫い留められてしまった。寝間着のズボンの上から尻を撫でた。
「放し、て……」
 おやゆびが怪しい。不審な動きをしている。落下を阻止している下着の上から異物の埋葬地を探している。
「放して、くださ………」
 リズムの外にあったピンクの塊の振動がはじまる。
「お、あった、あった。まだ動いてんだ」
「止めてくださ……い」
 ドアに押し付けられた腕の拘束が緩んだ。青山藍は、止めてくれたのだ。茉世の意思を汲んだのだ。しかし、拘束を解いた手は、彼女の尻に向かうのだった。そして先程、バニラの香りを顔面で受けたように、青山藍も顔面を茉世に押し付けた。そのシャープな顔立ちはスタンプらしかった。嫌がる女の臀部を力強く固定して、鼻頭をまろい盛り上がりのつくる僅かな筋窪へ突き入れる。
「蒸れたまんこの匂いがする」
「い、いや………ぁっ」
「振動してる」
 鼻先が振動する固形物を押した。扇風機に語りかける声よろしく震えている。
「オネエサンの濃い匂いがする」
「や……め、」
「オネエサン、薬もう飲んじゃった?飲んじゃってても、知らないケド」
 青山藍はすんすんくんくん鼻を鳴らして茉世の尻と腿裏の狭間を嗅いだ。息継ぎが聞こえる。鼻や額が敏感なところ小突き、吐息は繊維を濾して粘膜を温める。
「んあ~、すっげ。メスのえっろいかほりがする。ああ~、早くまんこジュース飲ませろ」
 下着ごと、寝間着が下げられていく。膝窩しっかまで乱雑に落とされる。
「や、だ……っ、青山さ、」 
 茉世は暴れた。尻にある手を剥がそと試みた。すると真後ろから、何か走り抜けていく。耳の横のドアが殴られる。膂力を誇示された。原始的な強さを見せつけられている。今は木板に向かっているそれが、肉体に振り下ろされたなら……
 暴れることは赦されない。暴れたならば、この拳が狙うのは肉体である。頭蓋である。顔面である。
「ダーメ。あと、アイ、ね。ア~イ。マツヨ」
 冷静に息をする茉世の顔の近くに、青山藍がやってきた。ドアを殴った直後とは思われない穏やかさと、媚びへつらったような喋り口だった。
「早く特濃まんこジュース飲ませろよ」
 露わになった陰花に、青山藍は頭を揺らしながら鼻を近付けた。
「あ………あ、あ…………」
 淫具が滑り転がる。留めておくすべを知らなかった。そこに力を入れたなら、余計に排出を促してしまう。さらには、羞恥と緊張のあまり、自身の肉体を御せなかった。
 不規則に振動する悪趣味なピンク色は内部の潤いによって落ちていっている。その様を青山藍に見ているのだろう。
「ダメだよ、オネエサン。産んじゃダメ。このままチンポ突っ込むんだから。産んじゃダメ」
 ごてごてと印台めいたシルバーのリングを嵌めた指が、彼女の秘められていたはずの花弁から現れるピンク色の卵を押し戻してしまった。
「ふ、ぁぁあ……!」
「ケツの穴がひっくひくでカワイイよ」
 青山藍は真っピンクの卵を押し戻した箇所のすぐ上に吹いた蕾を撫でた。また刺激に、小さく窄まる。
「青山さ………やめて、お願い………」
「アナルファックしたい」
 べろり、と生温いものが這った。茉世は驚きのあまり、目を見開く。知らない感触とくすぐったさ。数度続けて、光度のない光芒がひしめく。
「おね………がい…………嫌………」
「うん。いいよ。アナルファックしないであげる。ワタシはヤサシイからね」
 この肛門性交をしたがる男は、彼女の傍に落ちているビニール袋を拾った。小煩いその音が、彼女にはいつにもまして耳障りだった。ネイビーブルーにラメを散りばめ、ブラックとグラデーションのかかった爪が、重げな銀色のリュックサックを背負っている指を操って、紙箱を開けていた。
「オネエサン、薬、飲んだ?」
「飲んで、ませ………」
「アッハッハ。イイコ。イイコだねぇ、マツヨ。ウソでも飲んだって言えばイイのに」
 青山藍は真っ白な弾丸みたいなものを手にしていた。
「赦し、て………」
「何を?アナルファックしないし、生チンポは挿れないんだから、赦してるだろ?だから明日の激臭げきくさまんこ嗅がせろよ。くっさいまんこの汁飲ませろ。まんカス食わせろよな」
 茉世は顔を真っ赤にして火照らせる。
「何赤くなってんの。カワイイね」
 銀疣の生えた二又の舌が、ふたたび双丘を左右にした小さな紅渦の周りを踊った。力が抜けてしまう。膝が戦慄く。ドアについた腕と肘が、一気に肩から落ちてしまいそうだった。頭を持ち上げている余裕はなく、かろうじて額で留まっている。
「や………だ、や………っ!」
「まんこに響いちゃう?」
「青山さん………」
 泣きそうな声が漏れた。彼女はもはや、俎板まないたの鯉だった。
「マツヨ、泣かないで」
 青山藍の指に挟まれた粉っぽい純白の弾丸が、茉世の旋孔を射ち貫いた。妙な感覚が彼女の背筋を駆けていく。
「あっ、……」
 余韻の深い、異様な感覚に戸惑う。抱卵した隘路が蠕く。
「まんこ汁垂れてるよ、オネエサン。目覚めちゃった?」
 脚の間をとろとろと粘性を帯びて降りていく蜜糸は見限られた。それは落ちていく。青山藍は、それが溢水してしまった泉を啜った。じゅりゅりゅ、ずゅぞぞ、じゅびゅびゅびゅ……と、濁りきった音を出して他人の体液を吸った。余程喉が渇いていたと見える。
「ふ……ぅ、う………」
「マツヨのまんこ水オイシイよ」
 底意地の悪い銀疣は、蜜壺を漁るだけでは済まなかった。下流に向かう花筏を広げてしまう。現れた舳先へさきに鉄球が落ちた。
「ああんっ」
 口腔にあったそれは生温かったはずだ。しかしつるりとしたまろい肉芽の表面に触れたとき、冷たさに彼女は身を跳ねさせた。そして弾力を遊び、稲妻めいた鋭い快感が生まれる。
「ねとねとジュースが増えてきたよ、マツヨ」
 銀珠が縦横に動き、厚みのある雛尖が轢かれたい放題に轢かれた。断続的な快感に嬌声が止まらない。眼前の板の向こう側には蓮がいる。いくら形式的には三途賽川から義絶されたとはいえ、彼女の認識ではまだ義弟であった。それだけでなく、淫声を聞かせて無関心でいられるような人ではない。他人である。誰であろうと聞かせるものではない。
 彼女は指を噛んだ。
「あっ、あんっ……」
 毒々しい卵を孕んでいる秘路に指が入った。体外へ出ていこうとするものが奥へと戻されてしまう。
「う………うんんんんッ」
「早くチンポ挿れたいよ、オネエサン」
 女陰を掻き混ぜながら、青山藍はドラッグストアの袋のなかにもうひとつ入っている箱を取った。一見、煙草の箱と見紛う。
「は………ん、ん…………青山さん………」
 蕩けた瞳で、茉世は青山藍を捉えていた。
「早く、欲しい?」
 彼女は首を振った。
「ダメだよ。ゴムするって約束だったじゃん、オネエサン。生チンポ、ハメないからヤらせるって話だったじゃん、オネエサン。中出しデキないから明日、汗臭い激臭げきくさまんこ吸わせるって話だったじゃん」
 茉世の内腿に熱く硬いものが触れている。凶棒が、肌理きめ細かな皮膚に真珠の環を引っ掛けて遊んでいる。
「あ……あ、でも………」
「生チンポ、入っちゃうな……オネエサン……あんまり往生際が悪いと、生チンポが、オネエサンの生まんこに入っちゃう………」
 真珠の環が肌を沿っていく。そして上り詰めると、乱棒は花弧を背に乗せて、前後を往復する。
「や………ぁ、」
「ダメだよ」
 青山藍は茉世の背中に体重を乗せて紙箱のビニールを剥いた。包装の掠れる音や、破ける音が生々しい。舐め啜られて嬲られた淫沼地に、膜を被った欲熱が当てられる。
「う、うう……」
 彼女は目を閉じた。こうなってしまえばなるべく身体に負担をかけないよう、ドアへ額を据えた。腕を構え、息を整える。
「オネエサン…………スキ!」
 挿入は一息で済まされた。眼玉が星を纏って飛び出しそうであった。呼吸を整えようとしても、腹を叩かれるような衝撃に襲われる。
「かふ………ぅう、」
 青山藍のグロテスクな狂乱棒には二箇所の苦難があった。まず、ぱんと張り詰めた太々しくおぞましい、赤黒く焼け爛れた怪ミミズのようなグランスである。そして二つ目が、ミルククラウンがゾンビ化したような、腫れ物が硬化したような、性病と見間違える疣環だ。これらが容赦なく、茉世の蜜壁をかんなのごとく削り取って進んでいった。唸り声を不規則に上げる悪趣味な色合いの先客がいるとはいえ、あまりの威力と衝撃にこの肉体の持主は呼吸を乱した。
「息して、ホラ」
 青山藍はすぐには動かなかった。それはこの強姦魔にも雀の涙ほどの良心があるということなのか。それとも、不都合があるのだろうか。
「ふ、あ…………」
「オネエサン、お熱上がった?ナカ、あっつい。昨日より、トロトロだ」
 ゆっくりとした抽送が始まった。
「う、あ、ああ……」
「オネエサン、息しないと。息シて?」
 尻を潰しながら、重げなリングの嵌った手が彼女の口を抉じ開ける。小指と薬指が捩じ込まれ、拇と示指が鼻先を摘んだ。歯に銀石がぶつかる。
 茉世は息を漏らした。それは合図だった。青山藍は急に容赦の心を失くした。発熱者に対する扱いとは思えまじき局所的な体当たりをする。
「あ~、スゴイ、オネエサン!お熱まんこ、トロトロの名器だよ」
「あ、あ、あ、!」
 眼前の木板の奥に義弟がいる。だが忘れてしまった。些末なことだ。今、ここで恐ろしい勇魚いさなに呑まれようとしているのだ!義弟に淫らな囀りを聞かせることに何の問題があろうか。
「ああ………」
「もっと、ゼンブ入れる……!」
 片脚を取られ、ひかがみに引っ掛かった寝間着と下着から爪先が抜けた。そのまま持ち上げられ、力尽くでさらに密着する。内臓を突き破り、喉から薄気味悪い亀頭が現れそうだった。不穏な陶酔に陥いる。破滅に向かうための自暴自棄な官能が、さざなみのようになって彼女の意識を浚おうと画策している。自堕落な肉体にとって、存在意義は強い牡との生殖であった。倫理、外聞、理屈、恐怖に縛られる彼女の魂は邪魔であった。肉体とは常に、生まれながらに持ってしまう恐ろしい獅子身中の虫だ。否、魂などというものこそが捻くれた生存戦略なのだろう。
「イけ」
 交尾に長けた牡は、牝が最も己の子種を搾り取るすべをよくよく心得ていた。そしていかに己が頑強な種をより多く噴き出すかを。牝の弱点を突き、牝の淫らな甘い声を出させ、その毒花に新たな牡の出現を予感することで競争心が強い種子を生む。青山藍は本能でそれをよく理解しているのだろう。
 二つの突起が、牝点をこそいだ。
「ぁひ、あああんっ」
 ピストンは緩やかだった。一定に保たれた速さで、ゆっくりと彼女を追い詰めるつもりらしい。
「あ、あ、あ、ああ……」
 粉の弾丸を捩じ込まれたときの水蜜孔のごとく、彼女は口水の筋を作っていた。
 片脚を上げたことで、接する面積が減った。その分、挿入感に集中してしまっていた。なかに青山藍の巨棒が入っている。花口角をぎちぎちに広げながら咥えている。
「は、あああんっ、あ………!」
「オネエサン、ふわふわ………奥ぶるぶる………スゴ………」
 幼児をあやすように、青山藍はゆっくり中へ入り、腰を引いた頃に遅れて内壁が絞られる。餅搗きに似ていた。けれども時折振動する卵によって、その蠕動もリズムを崩す。
 送り込まれる悦楽に思考がぼやけた。何の抵抗もなく、ただこの淫事に耽ってしまっていた。肉体は青山藍の技巧と真珠輪に魅了されている。穏和な夫の顔が浮かんだ。だが霞んで消える。優しい義弟の顔が浮かんだ。しかし雲散してしまう。凶悪な龍が焼け爛れたような怪茎に、身体の洞筒を穿刳ほじくられることしか考えられなかった。
 そのときになって、上体を委ねていたドアの把手が回るのだった。
「あ…………っ、ああ、…………―蓮さん…………」
 暫く名前が出てこなかった。誰かを探ろうともしなかった。ゆっくりと活塞かっそくする肉棍のことばかり考えていた。それがいつ、乱暴に快いところを削るのか。腰が肉銛を求めて揺らぐ。
『先輩……?さっきは、悪かった……もう、大丈夫なのか?』
 彼女は把手を押さえていた。それだけは忘れなかった。
「……っ、待って。待っぇ、………」
 彼女はどちらに言ったのだろう。青山藍は止まらなかった。緩やかに腰を打つ。後ろでテレビが点いていた。暇なあまり蓮が点けたのだろうか。しかし私室のテレビは人感も何も関係なく壊れたセンサーを内蔵しているらしかった。音量も大きくなっている。だが蓮は音量を下げもせず待っていたのだろう。
『分かった。待ってるから……何かあったら、言ってくれ』
 ぼそぼそと喋る蓮と、壊れたセンサー付きの暴走テレビは相性が悪かった。何を言っているのか聞き取れないまま、茉世は返事をした。己の快楽以外、考えられなくなっていた。
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