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蜜花イけ贄 不定期更新/和風/蛇姦/ケモ耳男/男喘ぎ/その他未定につき地雷注意
蜜花イけ贄 16
しおりを挟む全裸になった桔梗は凍えて震えていた。一糸纏わずいるせいだろうか。いいや、そうではない。脱衣所には彼女の他にもうひとりいる。
亜麻色の髪を結わえ、艶やかな反物で仕立てた衣を脱ぎ、男の引き締まって角張った肉体を晒すのは茉莉である。
「桔梗はさ、すごいよ。おれのことその気なら風呂場で殺せるよ?御殿じゃ無理じゃん。君がこの国の次代を左右できて、史書にも名を遺せるのかも知れない」
彼は意地の悪そうに口の端を吊り上げている。己の裸体を抱き寄せ、縮こまって戦慄く女の心情など、慮る気配もなく、彼女の傍に来て肩を叩く。
「さぁ、入ろう。背中を流してあげる」
桔梗は目蓋を伏せる。
「いや、流すのはもったいないな」
風呂場へ行くつもりの茉莉は急に顧眄する。
「おれは女の匂いが好きだよ、桔梗」
手拭いのひとつも持つことは許されなかった。彼女は胸と、腿で作られる三路を隠す。
「そんな恥ずかしがらなくてもいいだろ、桔梗。でも恥じらいを忘れない女ってのはいいな。でも生娘じゃないんだってね?山茶から聞いたよ。燃える」
茉莉は土埃と鼻血が頬についている女を引き寄せ、腕に入れてしまった。
「さっきまで男抱っこしてたんでしょ?桔梗が消毒して?君の若張り型だったんでしょう?女って、女の身形の男児が大好きだものね」
「違います……」
「いいんだよ。女の身形の若い張り型なんて、男として数えないよ」
「あの子は、そんな……」
茉莉は娶り損じた女の匂いを嗅いだ。鼻を鳴らすのはわざとであろう。羞恥心を煽り、楽しんでいるのだ。
「いやに否定するね。あ、そうだ。あの男子、おれのお茶汲みにしようかな。だとしたらすごい出世だな。鍛えてあげるよ、御殿でね。立派な剣士に育ててさ、将来はおれの護衛かな」
「片輪でございます」
「片輪?どこが」
貴人の舌が彼女の耳殻を這う。
「あ……」
「どこが?確かにちょっと軽かったけど」
「顔に火傷が……それに、生まれも……」
「やだぁ、桔梗ったら。君って残忍な人だなぁ。見た目や生まれで人を貶めるなんて、最低の極悪人だ、君は」
耳を舐めると、彼はまた汗の薫る女体に鼻腔を翳す。
「うん、とてもいい匂いだよ、桔梗。少し汗をかいた?なんで?」
「少しだけ……走り回ったものですから……」
「素晴らしいね」
茉莉は桔梗を抱擁から取り出して前に立たせた。裸体の柔らかな曲線を遠慮もなく眺める。爛々とした眼で観賞していた。しなやかな肉体は羞恥で赤みを差し、逃げようとする腰と隠そうと捻られた膝が艶冶な線を描き、異様な色香を醸し出してしまっていることを本人はまったく気付いていない様子だった。
「もっとよく観せてよ、桔梗。本当に……その辺に放っておくのが惜しい女だね、君は」
桔梗は俯き、目を逸らしている。
「葵にもう好きじゃないって言われたんでしょ。あっはっは。男ってのは好きじゃないどころか嫌いな女でも勃ってしまう、業の深い、気持ち悪くて愚かで哀れな生き物だよ」
胸を隠す腕を取り払われ、腰回りや脚の肉付きの割りには脂肪のついた乳房のすべてを見せてしまう。はりのある、瑞々しい、たわわな胸だ。その頂に実が控えめに生っている。桃の花みたいに色付き、小振りながらも驕慢な感じがある。
彼は嘲笑う。そしてぎこちなく硬直する桔梗の片方の腕を上げさせた。彼女は空いた片腕で二つの膨らみを手繰り寄せる。
「汚う、ございます……」
「いいから」
貴人は下卑た微笑を浮かべ、彼女の腋に頭を入れる。
「汗、かいたんだよね……?」
「はい……」
感覚を敏く拾う箇所で喋られると、皮膚に谺するようで擽ったくなる。桔梗は殴られて裂けた唇を引き結ぶ。
「ほら、もっと腕上げて?」
「茉莉様……っ」
「嗅がせろよ。腋の匂い、嗅がせろ」
今までも十分力尽くであったが、この貴人はまだ全力ではなかった。肩を引き千切らんばかりに腕を上げさせるその所作は、叱りつけるようでもあった。
「期待したほど濃い匂いじゃないな。もっと蒸れていてもいいのに」
落胆を口にしながら、貴人は女の腋に舌を当てた。そしてじっとりと舐る。先を尖らせ、尺取り虫の真似事をする。
「お戯れを………」
誰にも舐められたことも、嗅がれたこともない部位を蹂躙され、羞恥心だけでなく、肉体的な違和感にまで苛まれ、彼女の膝は今にも崩れ落ちそうである。
「もう好きじゃないなんて嘘だと思うな、葵は。それか男色には走ったか……獣色に行ったか……だって桔梗、君ほどの女はなかなかいないもの。君を知ったら……他の女というわけにはいかないよ。男は床で田植えをすればいいけれど、選んでいるのさ。新しければいいわけじゃない。まず君の匂いを愛して、君の曲線を愛し、それから君の肌を愛してから……やっと、君の中に入りたいものだよ。それだけでも3通りは愉しめる。いいや、まだ、愉しみ方はたくさんある」
茉莉は女の胸の膨らみと膨らみの間に顔を挟んだ。鼻をすんすん鳴らしている。
「一番寛げる匂いがするところだね。柔らかくて温かい。桔梗、嗅がれてばかりは飽きちゃった?」
貴人の指は、そのかんばせを左右から圧迫する脂肪にひとつずつ芽吹く小紅を軽く突ついた。女の腰が跳ねる。
「あ……っ、ん」
「感じやすいんだ、桔梗は」
貴人は左右の膨らみに挟まれながら愉悦にまみれた面を見せる。
「あ………あっ、」
胸の先端に触れた指は、その真上を踊る。
「おれはね、桔梗。君のことなんか好きじゃないんだよ。君のこのカラダを抱いてみたかった。それだけだよ。だから君の中身は葵にあげることにした。かわいいよね、葵って。おれは葵が好きだな。かわいくてね。山茶に話したら、男色だって揶揄われたけど……何も人を気に入るのは情欲だけが理由じゃないだろう?そう思わない?桔梗。まぁ、おれが君を気に入っているのは完全に情欲だけど……」
胸を揉みしだき、気紛れに指先が先端部を掠める。
「ん……ッ」
茉莉は息を詰め、胸の実粒を固くしていく女の肌をすんすん嗅いで、緩やかに膝を折り、下降していく。
「とてもいい匂いだよ。とっても。でも、葵にもう好きじゃないって言われたんだろ?おれは嘘だと思うけど、もし本当なら、じゃあ、桔梗を可愛がってくれる人なんて誰もいなくなっちゃうね。可哀想な桔梗。おれは君のカラダを愛撫してあげることしかできないよ?」
「まつ……り、さま………そこは………」
彼女は破れた唇を噛み締めた。
「うん……?」
貴人の鼻先が女の薄い茂みに入っていく。
「汚う、ございます………」
亜麻色の髪と同じ色の淡い瞳が虚ろになり、目元と眇め、茉莉はうっとりと桔梗を見上げた。
「桔梗のいい匂いがするよ。蒸れた牝の匂いが」
桔梗は内腿を強く閉じる。しかし何も変わらない。茉莉は彼女に嗅覚の労働を聴かせている。
「脚、開いて」
「茉莉様……汚うございます……汚うございます……ですから、」
「こんないい匂いをさせておいて?」
茉莉の辱めはまだ終わらない。彼はさらに下降し、三叉路に鼻先を挿す。
「うん。とっても、いい匂いだ。芳醇で濃厚な、女の甘い匂いだな。葵にも嗅がせてあげたいよ。もう嗅いでたりして?どうなの、桔梗。葵に抱かれたのはもう報告入ってるんだ。どう抱かれたの?ここはたくさん、舐めてもらった?」
桔梗は血のついた顔を、今度は皮下から赤く染めて目を側める。
「答えろよ」
茉莉は立ち上がった。桔梗の背後に回り、手慰みとばかりに胸を揉む。
「葵に抱かれたんだろ?」
「し、知りませ……」
「嘘吐くなよ、桔梗。カラダばっかり正直なの?葵はここもアイシテくれた?」
柔らかさばかり楽しんでいた指が伸びて、小果実を揺する。
「ん……っ、……」
じんわりと滲むような快感が広がる。そして消える前に、貴人の指に挟まれ、断続的な刺激を送られる。
「あ………あっ、」
殴られた顔が火照っていく。視界がぼやけ、頭の中が朦朧とする。
「答えろ」
別人のような低い声だった。威すような物言いでいて、凝り固まってしまった小さな部位を捏ねる手付きは優しい。
「ぁ……ん…………」
「あっはっは。答えらんないか」
穏やかながら、的確に甘い痺れを送る指がわずかに荒々しくなる。
「あっ、あっ……」
茉莉自身か、はたまた桔梗の鼓動に合わせてか擂り潰す。鈍く重く濃密な愉楽が腰に溜まっていく。細腰が半円を描くように揺らめいた。
「乳頭で気をやるの?桔梗は?」
「茉莉さ、ま………っ」
芯を持った肉粒の上を彼の人差し指が往復する。桔梗の身体は跳ね、貴人に当たる。
下腹部に微熱を出させ、茉莉は彼女の膨らみを放してしまった。この貴人はまたもや手に入れ損じた女の下生えへ興味を示す。
「うぅ~ん………はぁ。いい」
鼻から吸い、口から吐く。細めた目の奥の陶酔を隠さない。
桔梗は目を閉じ、猛烈な羞恥心に堪える。
「いいねぇ……このまま好き放題したいけど、おれは絶倫じゃなくってね」
まるで花の香りでも堪能しているかのような素振りで彼は女臭を肺一杯に吸い込んだ。陰阜を覆う黒絹に顔面の下半分を委ね、眠りに就こうとさえしているらしき有様だった。
「茉莉様……そろそろ、お風邪を召されてしまいますから……」
「そうしたら君に看病させるよ。おれが君を蒸らしてあげる。冗談。ここの屋敷総出で看てくれるでしょ。おれをなんだと思ってるの、桔梗」
貴い立場にいる者の拇が木通を剥く。控えめな果肉が覗けた。
「ああ……っ!」
相手がどういう地位にいるのか、それを忘れる。桔梗は咄嗟に両手で隠し、後退ってしまった。恥部を至近距離で見られる羞悪と、弱い箇所を無防備に晒す不安で我を失う。
「こら。いけないよ、桔梗。こっち来て」
彼女は俯いて首を振った。
「面倒臭いな。桔梗……おれは葵と違って君に惚れてるわけじゃない。だから嫌われてもいいんだよ。君のカラダを暴ければね?だから力尽くで犯してもいい」
「何故……このような、辱めを………」
「辱め?おれを辱めた君がそれ言うのは笑っちゃうな。求婚した相手に逃げられたんだもん。いい嗤いものだよね」
茉莉は女が逃げた分の距離を一気に詰めた。
「自分の立場が分かっていないね、桔梗は。別に脅したりしないよ、脅したりは。でも桔梗の想像力の足りなさは心配になっちゃうな。君の叔父さんも、君のかわいい若張り型も、おれの一存でどうとでもなっちゃうの、分からない?考えたこともない?今まで一城の女主人気取りだったから?惚れた弱みに付け込んで、葵を傀儡みたいに操れたから?理解しなよ、桔梗。ああ、もしかして逆に理解してる?おれが桔梗のカラダに満足しちゃったら、あとは捨てられるだけって?」
貴人の情念に沸き立ついやらしい眼差しは、女の隠す腕で盛り上がった膨らみの撓みに注がれる。肥えていなければ男にはないら柔らかな膨らみが、細腕から溢れそうだ。
「いいよ、桔梗。おれはこのままでもね。魅惑的な眺めだよ。その谷間に挟まれて潰し殺される自分を沈思して、ゆったり官能に耽るのも悪くない。どうする?このままでいる?それとも、おれに貝を剥いてくれる?」
桔梗の肉体にさらに赤みが差す。負けの確定している喧嘩中のオス猫みたいに彼女は外方を向いている。悩ましく寄せられた眉根と、伏せられた睫毛が対峙する男を煽っていることにも無自覚なようである。
「君の乳を揉みしだいて、乳頭を舐め舐りたいね。腋の匂いを嗅ぎながら、おれは無様に自涜をして呆気なく精を漏らすつもりだったんだけれど、桔梗の腋は思ったより匂いがしなかったね。おれの手扱きの材料にはなってくれなかったよ。山茶は女を抱きまくって、数を誇りにはするけれど、あれじゃあ女を愛でているとはいえないね。接吻して乳揉んで指抉りをして挿れて擦ってお互い気をやってるだけでしょう。あんなのは子作りと変わらないよ。桔梗、おれは君と子供を作るつもりなんかないんだよ。君の自尊心を芥にしたいだけなんだ。君の腹から出てきた子供がまともとは思えない。君みたいな、極悪非道の人非人の腹から出てきた子畜生が」
この貴人は静寂を許さない。女を侮辱し、誹謗中傷することで己を昂らせているらしい。|聳《そそ《り立つ牡の印と、獣欲に暗澹とする眸が、さらに桔梗を寄せ付けない。
「君の貝を剥いて、おれに食べさせてくれないの?桔梗。そこは女の弱いところなんでしょう。考えてみて。おれが匂いを嗅いで、君が健康かどうか調べてあげる。葵の妻に相応しい女か、診てあげるよ。葵はあれで色恋に対して不器用だからね。山茶なんていいもんさ。女から乗らなきゃ手を出さない。手は出さないね。でも乗られちゃったら、あとは田植えするだけだよ。可哀想だよねぇ、男って。健康な女の生々しい匂いを嗅がされたら、好きでもない女でも、田植えしたくなっちゃうんだから。いいや、男なんてのは一切総て悉くの女を好いているのかも知れないよ。ああ、葵は男色か獣色なんだっけ?もう君を好きじゃないだなんて信じられないもの。あいつは嘘吐きだよ。それか頭がおかしくなったんだ。でなきゃ、君みたいな淫らでいやらしい女に迫られて、もう好きじゃないなんて言えやしないよ!田植えくらいはしておくものさ。葵は田植えができないのかな。ねぇ、桔梗、どう?」
彼女は答えない。膝や脹脛が蠢き、太腿をさらに縮こませるだけだった。その小さな挙動にも、茉莉は欲望を滾らせる。
「葵は田植えができないの?葵には抱かれたんでしょう。山茶にも。石蕗くんからちゃんと報告はきているんだよ。石蕗くんはおれ直々のお茶汲みだからね。結構な下っ端だと思った?これ2人にはナイショね」
彼女は自身を抱き、木彫像然として、うんともすんとも返さなかった。
「ま、石蕗くん遣わなくても、葵はバカ正直に微に入り細に入り報告してくれるけどね。君を抱いたときのことも教えてくれたよ。君が何回気をやったのかまでは教えてくれなかったけど、自分が君に何回精を漏らしたのかは聞かせてくれたよ。どんな体位でやったのかも、娼妓を用いて、ね。君は石女かい?あれほどアイサレて気もやったなら、身籠ってもいいと思うんだけど。いい避妊法があるなら教えてよ。おれの胤だらけになっちゃう。山茶もね。おれの子か、山茶の子か、に、なっちゃうよ。この天下がね。嫌だよ、いずれおれの子孫と山茶の子孫が争うことになるなんて。君はそれを防げる偉人になれるかも知れないな。ね?桔梗」
悍ましい話を聞かされたからか、はたまた、この状況を打破する術の思いつかない絶望からか、女は固く伏せた睫毛を湿らせはじめた。眉間に刻まれた皺が濃くなっている。
「でも葵のやつは君に参っているからね。娼妓も男を歓ばせる仕事を完遂しなきゃならないのに、葵ったら君じゃなきゃ田植えができないんだから。恥を晒すことも厭わないね。君との情事を思い出して、田植え自体はできるくせに。おれが葵を気に入ってるのはね、君に惚れているのに君に素気無くされてるところが楽しいからだね。こんな喜びはないよ。おれは葵が憎らしいんだね。君と葵が早く契ってしまえばいいと思っているのに。君に台無しにされる葵が見たいんだよ。極悪非道の人非人の君に、堕落させられる葵がね。おれは葵が憎いんだな。何故だろう?桔梗、君も分かるかい?いいや、君には分からないね。君は無自覚に、根性から捻じ曲がっている巨悪なんだからね。最低最悪の女だよ、君は。律儀で品行方正な葵が無理矢理に君を犯せたの頷けるし、同時にもう好きじゃなくなったのも理解ができるよ。君は罰されるべき人間なんだよ。君には罰を受ける義務があるんだ」
相槌も反論もせず、沈黙していたためか、彼女には、冷嘲冷罵が趣味のこの貴人の言葉が真っ当で正論で、真理を突いているように感じられはじめた。
思い当たる節がそもそも彼女の中に色濃くあったのかもしれない。それかもしくは、掘り起こされてしまったのだ。
自分を守らなければならなかったはずの自身が牙を剥き、爪を立てた。
羞恥の火照りが引いていく。代わりに、訳の分からない憎悪、悲憤慷慨が漣と化して、交互にやってくる。
桔梗はうっうっと咽び、風呂場の床へ崩れ落ちていく。
「泣けよ、泣け、泣け。泣くんだ!泣いちゃえ!」
茉莉は手を打ち鳴らして喜んだ。そして自身の肩を抱き、蹲っている女を見下ろした。
「悲しいんだ、桔梗。何が悲しいの?慰めてあげる」
貴人も女の傍に膝をつき、彼女を抱き寄せ、頬擦りする。
「まさしく、鬼の目にも涙だね!あれは本当だったんだ!どうして泣いてるの?何が悲しいの?魔憑きみたいに底意地の悪い、性格のひん曲がった皮肉屋の、人格破綻した君を、泣かせる何かが、この世にあったんだねぇ!」
茉莉は桔梗の腫れつつある頬をべろりと舐めた。
「枸橘くんにぶん殴られた傷が痛い?枸橘くんだって、君みたいな鬼じゃない。殴られたのには理由があるんだよ。君が言うことをきかないからさ。極悪非道の人非人に対して、義憤に駆られちゃったんだよ、枸橘くんは」
目元の傷を舌先で突く。妙な動きで、扇情的な翳りがある。
桔梗は柔らかなものとはいえ、傷を抉られる痛みに退廃的な喜びを覚える。これは逃れることのできない咎である
「君は人を殺さないし、物も盗まないし、勝手に火を点けない罪人だよ。君は!最低だ!」
彼は後ろから桔梗を引き寄せ、彼女の体勢を崩した。その細い頤を掴み、今にも首をへし折ってしまいそうな危うい捕まえ方をする。
「君みたいな罪人は処されたほうがいいのに、君を処す罪状がないんだよ。ねぇ、桔梗。君が死んだら葵は喜ぶかな。もう好きじゃない女が死んだって、悲しむわけないよね。また新しい女を充てがうよ。君のことなんかすぐに忘れて、次の女は優しくて清楚で温順で、いい嫁になると思うな。ちゃんと葵の子畜生を孕んでさ……君のことなんか、死んでも一生、思い出さないと思うな。可哀想な桔梗。おれが覚えておいてあげるよ。忘れられるはずがないね。優秀な宮仕えと一緒に逃げられて、おれは宮中の嗤いものなんだもの。おれはおれのモノを聳り立たせてばかりで、田圃に逃げられた哀れな苗だよ。おれは覚えておいてあげる。桔梗。葵はもっと可愛くてもっと綺麗で、もっと艶のある嫁をもらって、毎日田植えをして、そのうち子畜生を抱き上げて、おれの家来か側室にするのさ。そのときは葵の子畜生、ゆくゆくはおれの家来か側室に語り継いであげる。おまえさんの父親は悪い妖怪女に騙されていたんだよってね。そうしたら、きっと君を恨みに思うんだろうね」
すんすんと貴人は鼻を鳴らし、また女の匂いを嗅いでいた。彼女の身体に回っていた腕は胸を揉むために弛んでいる。彼は掌で包んでも指の間から溢れそうな乳房の弾力で遊んでいた。
「触っているだけで、おれは精を漏らしそうだよ。桔梗はどう?この極悪人。剥き貝で気をやるのは嫌なんだろう?恥ずかしい君がこれ以上、何を恥ずかしがるんだか。乳頭で逝け。乳頭で、大穢土烙苑に逝くんだ」
乳房の先端の痼実を、彼は下から親指と人差し指で摘んでしまった。
「あっ……!」
感情に伴って、感覚も奮っていた。
茉莉は目を瞠いた。狂気にた加虐性と劣情の籠った瞳が燃える。指遣いが女を甚振った。
「ぁ……ん、ん……」
「どうしてこんなところ、硬くしてるの、桔梗。腰動いてるよ。本当に、乳頭で逝く気なの?」
責め立てる声が熱かった。胸の実粒に通った芯を解すように捏ねられていく。
「あ、あ……っ」
怒りと悲しみが鬩ぎ合うなか、快楽が姿を現せば、彼女はそこに飛びついてしまった。感情を放り投げ、快感に縋りつく。
「ん……っ、ぁ……」
半開きの破れた唇から、粘度を持った唾液が滴り落ちる。小刻みに跳ねる肉体から、茉莉も何やら察したらしい。
「逝かさな~い」
頻りに凝りを撚っていた指と指の間隔が遠ざかる。
「ぅ………っ、」
茉莉の眼は残忍な欲情に潤み、口角は冷淡に吊り上がっている。
「おれは桔梗に、おれの機嫌を直す機会はたくさん与えたよね?でも君はおれに、君の貝を剥いてくれなかった。君の木通を剥いてくれなかった。君の薔薇を手向けてはくれなかったね。おれに鐘を撞いては……勘違いしないでね、桔梗。君の苦獄はいつだって君から始まっているんだ」
貴人の指が、桔梗自身で開くことのなかった肉扉を左右に割った。
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