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花狩り移紅し 一人称視点/差別的表現/猟奇的な描写/和風モノ
【花狩り移紅し】桜霞
しおりを挟む人里離れたところに、春には見事な花をつける桜並木の土手があります。それはそれは、立派な桜で、わたしが初めてそれを見たとき、感動に打ち震えたのを覚えています。
わたしはお遣いを頼まれて、この土手を通らなければなりませんでした。すでに桜はぽつぽつと蕾をつけ、早いものでは花が開いていました。見頃まではもうすぐといったところでした。
すぐ傍を流れる川の潺や小鳥たちの声を聞き、テントウムシが可愛らしく緑の中を散歩しているのを眺め、黄色に輝くたんぽぽとすれ違いながら、わたしは土手を進んでいきます。
長閑な日和でございました。
土手を半ばほど進んでいくと、中でも特に花を開かせた桜の木の下で、凭れるように人が倒れていました。たいそう立派な身形の若い殿方で、白い面に、それそこ桜の色を帯びた白髪は人非人のようでありました。小さな頃、ばあやから聞いた鬼……いいえ、白天狗……
わたしは恐怖しました。しかし人のようであります。ですが関わってはならない人……穢ノ者であったとき、わたしは家族に禍が降り掛かることを恐れました。
だのにわたしは、すぐにそこを立ち去ることができなかったのです。
わたしはこの珍奇な殿方から目が離せませんでした。みるみるうちにこの方を覆うようにあった桜は蕾をつけ、あるいは花を開き、色付きはじめます。そのおかしな光景はまるで視界が霞むようでありました。桜色が溢れかえり、わたしは怖くなりました。けれども我に帰ると、わたしの行く手は伸びた桜の枝に塞がれていたのです。桜を無下に扱ってはならないと、わたしは昔から教わっていました。わたしはまた少し、怖くなってしまいました。先程までは疎だった桜の花が、土手の向こうまで満開に咲き誇っているのが見えてしまったのです。
「娘」
わたしはあまりの驚きに声も出ませんでした。首が引き攣るように、あの珍奇な殿方のほうを向くのがやっとでございました。
その人は、殿方でありはすれども、話に聞く雪女のようにどこも白い御仁でありました。長い髪はやはり周りの桜の色を被っているのか淡い赤みを帯びて、目はネコや月のような銀色ともいえない色をしていました。わたしはこの方を鬼のように思いました。村の春若より……いいえ、白梅千花お兄様と同じくらい背丈があって、美しいのです。わたしははしたなく見惚れてしまいました。けれども家族を禍に巻き込むことはできません。この方の素性が分からぬかぎり、わたしから話しかけることなど赦されないのです。
「娘。我主が今年の桜供物かい」
その声は咲いたばかりの花に触れたような、しっとりとしたものでありました。わたしはまたもやはしたなく、聞き惚れていたのです。
殿方は立派な着物に身を包んだ腕を伸ばし、わたしを抱き寄せました。頭でははしたなく思っていましたが、抗いきることができませんでした。その方の腕の中は、冬から春にかけての布団のようでありました。
「愛い娘だ」
わたしはその小春日和のような殿方の掌に頬を包まれて、これ以上ない幸せを感じました。この者が穢の者であったら、わたしは、わたしの家族は……けれどこの御方が穢の者であるはずはないのです。まず着る物が違います。それから手が違います。皮剥包丁を持つ手でも、鋤鍬を持つ手でもありませんでした。
「私と契らぬか」
殿方の温かな手が頬の後は髪に触れました。わたしはこのまま、「はい」と答えてしまいそうになりました。
「想い人がいるな」
わたしはぎくりとしました。わたしには許されぬ恋の相手がいます。けれど結ばれることはないのです。この気持ちには蓋をしておけばいいのです。やがて腐るでしょう。そしてわたしと共に土に還るでしょう。
「構いません」
わたしは風病を患ったみたいに足の裏が地面に着いていないような心地がしました。
「いいのか、娘。我主を食ってしまうぞ」
この人は今日初めて会った人です。わたしはいずれ、機が来れば櫻雲という歳の離れた男の元へ嫁がされる身であります。顔も知らず、悪い噂の耐えない御方です。わたしは毎日、日毎、怯えていたのであります。
わたしはこの珍奇な殿方の腕におさまった途端、何も怖くなくなってしまったのです。
「はい。わたしを……」
「私は桜霞。我主の名は?」
ここで名を名乗れば、わたしとこの殿方は他人でなくなる。そうなればわたしはもう引き返せなくなると思いました。けれど……
「八重と申します」
「好い名だ、八重。私の名を呼べ」
「桜霞さま……」
名を口にするだけで、わたしは寒い日にひとり、春の木漏れ日を浴びるような贅沢な気分になりました。
「愛い娘だ」
桜霞さまはわたしの両の頬に接吻をくださいました。唇に何度も触れ、軈て舌がわたしの口腔に入り込みます。甘く、身体が溶けてしまうような心地がします。
「は………っん」
わたしは前か後ろかへ倒れてしまいそうですございました。どこを掴んでいいのか分からず、指を閉じたり開いたりしていました。
「私に縋りなさい」
一瞬だけ桜霞さまは唇を離してくださいました。昔少しだけ舐めたことのある水飴のような糸が、桜霞さまとわたしの間に紡がれ、撓んで消えていきました。はしたなく思い、同時にこのはしたなさにわたしは自ら飛び込んでいきたくなっておりました。
わたしの長年の恋心はもう叶うことはないのです。わたしももう叶えるつもりがないのです。叶えたいとも思わなくなりました。戸惑いがないことはないのです。そこに強い躊躇いのない、あまりの呆気なさに驚き、それでも甘美な思い出が甦ると、自分でもどうしたいのかすら分からなくなりました。ただその訳の分からなさにわたしは涙を溢しました。
「良からぬことを考えるな、八重。私に身を任せろ。我主の名のとおり、八重咲くのだ」
桜霞さまはふたたび唇を離してくださいました。そしてわたしの肩を掴むと、立場を換えて、わたしの背を桜の木に預けました。桜霞さまの唇と舌を受け入れ、喉奥まで弄られてしまうと、以前うっかり飲んでしまった酒の幻に取り憑かれたときのようでした。
「ん………っ、ぁ………は、」
わたしは帯が傷むのも厭わず、桜の木に背中を擦り付けて、尻餅をつきそうになりました。足の裏は消えてしまったような不思議な心地がして、膝に力が入らなかったのです。ですが、あとは地に崩れていくだけのわたしを、桜霞さまは支えてくださいました。
「鼻で息をしなくては」
桜霞さまは唇を艶やかに光らせ、麗らかに笑います。そしてわたしの首筋に顔を埋め、肌を吸いました。
「私の背に腕を回してくれ。そのほうが嬉しい」
殿方をわたしから求めるのははしたないことです。けれど、わたしも応えないわけにはいきません。
「し、失礼します……」
桜霞さまはまた微笑みをくださいました。わたしの周りに男の人はいるのです。けれど、このように近付き、触れ合ったりすることはありません。
「私は八重、我主のものになったのだ。遠慮せずともよい。私に身を委ね、私に甘えよ」
わたしの身体は震え上がるような喜びを覚えました。頑健で屈強な殿方のものになる。これが女の至上の喜びだと教わりました。それが、今、わたしの身に起きているのかもしれないのです。頑健で屈強。守り手のような丸太のような腕に切株のような腰の殿方を想像していたけれど、しかし、わたしは今、少し怖いくらいの喜悦の中にいるのです。
わたしは桜霞さまのお身体に触れました。布の奥にある殿方の硬い肉感が伝わります。
「偉いぞ、八重。私も嬉しい」
わたしの首筋から桜霞さまはわたしを見上げました。臍で茶を沸かすなんて諺がありますけれど、わたしは胸の辺りで湯が沸きそうでした。普段は見上げてばかりの殿方を見下ろせることに、異様な安堵を覚えました。わたしはおそるおそる、世にも珍しい若くして白いお髪に触れてみました。すると桜霞さまは、霜柱みたいな睫毛を伏せました。陽だまりで眠るような猫のようでした。わたしの中に愛しさが込み上げ、もう少し大胆に触れてみました。桜霞さまのように赤みはないけれど、ばあややじいやも白髪でした。ですが桜霞さまの髪は、ばあややじいやよりも柔らかく、一度、二度だけ触れたことのある絹のような触り心地でありました。
「八重」
桜霞さまはわたしの唇を吸いながら、帯びを解きにかかりました。
「あ………っ」
口付けるたびに、唇が溶けそうなのです。けれど怖くはないのです。むしろ溶けてしまったさらに先に、何かあるような気がしてしまうのです。緩んだ帯から、わたしは双肌脱ぎになりました。
「珠のような肌だ」
わたしは露わになった胸を隠しました。はしたない。けれどはしたないわたしを観てほしいのです。桜の色味を借りて、わたしの肌はいつになく白く、ですがほんのりと赤く染まって見えました。ああ、自分の中でも満足なときに、この方にお逢いできてよかった……
「よく見せろ」
けれども桜霞さまは無理強いはしませんでした。わたしが胸から手を剥がすまで、桜霞さまはわたしの首元や肩を吸いました。この御方にすべてを晒したい……
わたしは胸から手を退けました。桜霞さまの霜柱のような睫毛の奥の、季節外れの満月みたいな眼が、わたしの乳房を凝らします。恥ずかしくなりました。眼差しで触れられているようです。
「ここは、桜の蕾と見紛う」
桜霞さまの掌が、わたしの乳房を包み、その先にある乳頭を舌で突つきました。
「ああ……ん」
ここはわたしの恥ずかしいところです。わたしは時折、訳の分からない切なさを夜に覚えると、布団の中でここを虐めるのです。腹の奥が熱くなって、余計に切なくなるというのにわたしはこの悪癖をやめられませんでした。夢でさえ必ず逢えるとは限らない人を、そのときばかりは思い描くことができるものですから……
「愛い。八重。可憐だ。本当に、私のものになるか……?」
「はい………」
わたしが虐めていたところを、桜霞さまは労わるように舐めてくださいました。そして吸われながら突つかれると、わたしの指ごときでは味わえなかった、火照りが腹の中で疼くのでした。
「あ……あんっ………」
左右を同時に、わたしの意ではなく突つかれ、舐められ、吸われ、わたしは自分に手加減していたことを知りました。
「ん、あっ………桜霞さま………桜霞さま…………」
目蓋を開いても閉じても桜霞さまがいらっしゃいました。
「愛いな、八重。こんな小さなところで、こんなに乱れて……」
わたしの浅ましいところを、桜霞さまは丹念に舐め舐りました。昔、村の一番大きなお屋敷で見せてもらった象牙の飾り物みたいな桜霞さまの指も、わたしのはしたなく痼ったものを捏ねました。一向に柔らかくならないのが恥ずかしくて堪らないのに、わたしは腰の中にたくさんのお湯を溜め込んだような不思議な気持ちになりました。
「桜霞さま……お赦しください、お赦しください………」
わたしはわたしの恥ずべき、はしたなく浅ましい、卑しい行いをすべて打ち明けたくなってしまったのです。
「どうした、八重。愛い顔をして。気をやりそうか」
桜霞さまは、わたしのだらしなく膨れ上がった乳頭から顔を離しました。代わりに指がやってきました。両の手が同じ動きをして、自分では知ることのなかった虐め方をするのです。
「あ………あっ、!ああ………桜霞さま……!」
「八重。我主は生娘だ。だのに、ここがこんなに感じるのは何故だ?」
「あ、あっあっあっ、やぁんっ」
桜霞さまの指がわたしの卑しい乳頭を指先で爪を立てることもなく掻くのです。乳房に小さな塊を埋め込んでも、わたしの浅ましいところはまた強情に桜霞さまを求めてしまうのです。
わたしの膝は震え続けました。口を閉じるのも忘れて、だらしなく胸へと口水が滴り落ちていきました。
「八重。答えろ」
「あんっ、ひとりで………ひとりで、虐めていたのです………!あんっ、あっああ!」
桜霞の美しい拇が、わたしの図々しいところを捏ね回しました。同時に臍の奥が掻き回されているようでした。
「いけないな、八重。私がそんなことはせぬよう躾けてやる」
拇だけでなく、人差し指が加わって、わたしの乳頭は擂られ、撚られてしまいました。腰が、わたしの意に反して前後に動きました。膝も内側に向かって戦慄きます。
「桜霞さま………桜霞さま、わたし、わたし………ぁっあ、あっああああっ」
乳頭の先を何度もすばやく弾かれると堪らなくなりました。わたしの夜の密かな悪事は、まったく矮小であったことをしりました。
臍の裏からわたしの頭の中を、光が駆け抜けました。腰が砕けて、もう歩けないのではないかと思うほどの不思議な力が働いていたのに痛みも恐怖もありません。
「八重」
わたしはわたしの身体をどうすることもできませんでした。桜霞さまに抱き締められていなければ、おかしくなった膝と、前後に動く腰によって、どこかに走り去っていきそうでした。
「桜霞さま………」
わたしは恐ろしくなって桜霞さまを見上げました。
「妻として不足のない、できた娘だ」
桜霞さまは優しくわたしを見下ろして、接吻してくださいました。
「ん…………ゃ、あ…………ッ、ふ………」
舌と舌が絡まりました。縺れ合ってしまって、どちらがわたしのものなのか分からなくってしまいそうでした。
桜霞さまはわたしの舌を構いながら、わたしの着物の裾を割り開きました。そして肌を露わにすると、桜霞さまと接吻が終わりました。桜霞さまはわたしの脚と脚の間に頭を埋めようとしました。
「汚のうございます……」
「大丈夫だ、八重。私に身を任せなさい。片脚を上げて」
わたしはぼんやりしていました。言われるがまま、片脚をあげます。すると桜霞さまは、さらに頭を近付けました。わたしの口の中を舐めても、わたしの卑しい乳頭を吸っても気高い桜霞さまの舌が、わたしの陰所に入っていきました。熱く湿った桜霞さまの舌が、だらしなく揺れるわたしの小鐘を撞くのです。
「ああッ!」
そこからは鋭い感覚が閃いていきます。桜霞さまはわたしの内腿が震えたり、桜霞さまの頭を挟んでしまうのも厭わず、わたしの恥ずかしい小鐘を撞きました。
「桜霞さま………汚のうございますから……」
そこを舐められ続けるのが恐ろしくなりました。そこから裏返しに身体を捲られてしまいそうな、上に昇っていく恐ろしさ。しかし本当に恐れているかといえば、分かりませんでした。痛くもつらくも、苦しくも、悲しくもないのです。むしろ、その先、さらにその奥を想像できない恐ろしさでした。
「あ、あんっ、ああ……」
「八重。我主の口水同様に、ここもたくさん潤っている。乳頭を折檻している間、ここは触ったのか?」
「いいえ、いいえ……わたしは………わたしは乳頭だけです……!」
わたしは泣きそうになって答えました。つびを自分で弄る女は苦獄に堕ちると、昔身体を洗われながらばあやに言われたのでした。ばあやに指を入れられて洗われるのがとても痛かったのです。
「そうか、八重……いい子だ」
桜霞さまは柔らかく微笑み、そして帯を解きました。わたしは殿方が衣を脱ぐ様を、はしたなくも眺めてしまったのです。見惚れていました。桜霞さまはあまりにもお美しくって……
「八重。これが我主の中に入るんだ」
桜霞さまが下の肌を晒したとき、カエルのように跳ねるものがありました。それは何度か揺れ動き、やっと止まっても、お臍に向かって反り返るほどの緊迫がありました。わたしはお美しい殿方の脚と脚の間に、このような大きな大きな悍ましい赤龍蟲みたいなものを飼っているだなんて思いもよりませんでした。けれど桜霞さまの肉体の一部となると意外にもそう薄気味悪いものと思えなくなったのです。
「桜霞さま……」
「ひとつになろう。いいかい?八重。我主を咲かせよう。永久に」
わたしは桜霞さまの為すがままになりました。桜の木に片肘までつき、横を向いて、片脚も上げました。桜霞さまがその脚を上げるのを手伝ってくださいました。そして、わたしの中へとやってきます。
「八重……怖くはないか」
「はい。桜霞さま……」
木についたほうの腕に、桜霞さまは手を重ねてくださいました。わたしは反対に、わたしの腿を支えてくださっている手に自分の手を重ねました。
桜霞さまが腰を進め、胴体が下から二つに裂かれるような圧迫感がやってきました。
「あ………あっ、ああ………」
「息を深く吸え。八重……八重…………」
まだわずかにも入っていないのではないでしょうか。触れてそのまま押しているだけの状況のように思いました。ですがそれだけで、桜霞さまはわたしを愛しそうに呼んでくださいました。痛みはあります。けれどそれ以上に、桜霞さまをわたしの中に迎え入れてしまいたくなりました。
「桜霞さま……来てください、桜霞さま………来て………あああ!」
つびが壊れてしまいそうでした。
「八重。脚を持っていろ」
桜霞さまのつらそうなお声がわたしの背筋を甘く撫で、弓形に反らせました。桜霞さまの手が下から抜けていきましたが、わたしは言われたとおりに自分の片脚を持ち上げました。
桜霞さまの手は、わたしの小鐘に触りました。突き抜けるような快美なものが起こりました。
「あんっ」
「挿れるぞ、八重」
桜霞さまはわたしの玉豆を乳頭同様に捏ねながら腰を突き入れました。痛みはありました。けれども桜霞さまに対するお慕いの情と、確かな肉の悦びに比べれば些細なことでした。
「八重……」
わたしは泣いていました。殿方のものになる……それがこんなに幸せなことだなんて思わなかったのです。
「泣くな、八重」
「違うのです。嬉しいのです。桜霞さま……嬉しいのです。わたしの中に、桜霞さ、ま……っ、あっあっあっあっ!」
桜霞さまが後ろで歯軋りをしたのが短く聞こえました。その直後、わたしは前後不覚に陥るほど、激しい揺さぶられました。わたしのつびに、桜霞さまの逞しいものが擦れているのを感じます。桜霞さまの強壮なものが、わたしの肉門の奥底を叩いているのが分かります。
「あ、あ、あ、っあっあんっ」
「八重………八重………ああ………八重!」
父上と母上が、弟の吉野を仕込んだときと、同じ音がしていました。わたしはあのときの母上と同じ声を出し、桜霞さまもあのときの父上と似た呻めき声を出していました。
「桜霞さま、桜霞さま………あ、あ、あ、気が狂いそうです!」
「ああ、狂え。狂ってしまえ。私の妻よ」
わたしのつびは言うことをききませんでした。一際強く、出入りする桜霞さまを掴もうとするのです。そうすると桜霞さまも、一回一回、強く深く、相手をしてくださいました。
「あんっ、!あんっ、!あっ、ああ!」
「八重……愛いぞ、八重………!気をやって、はやく咲け」
桜霞さまの声音にはもう余裕などありませんでした。それがまたわたしの肉門をおかしくさせます。
「あ、あ、あんっ桜霞さま………もう、あ、あ!なんだか………変です、!あんッ」
「逝くと言え。逝け、八重。先に天に昇れ!」
「逝きます、桜霞さま………逝く、逝く逝きます―!」
わたしはもう目の前のことも分かりませんでした。妖しい桜の天井の奥に見えた日輪がわたしの目を灼くようでありました。
「八重!―っ……!」
わたしはメザシにでもなった心地で、桜霞さまの全身で食われるようでした。わたしの腹の中では、大雨の日の川辺のような濁流が起こってしました。治まるまで、わたしは桜霞さまに力強く抱き締められていました。
「八重。私の妻……さ、帰ろう。私の故郷には美味い馳走も、絢爛な着物もある」
わたしは桜霞さまの腕の中で、少しの間、心地よい春の暖かさに誘われて眠ることにしました。
◇
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