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熱帯魚の鱗を剥がす(改題前) 陰険美男子モラハラ甥/姉ガチ恋美少年異母弟/穏和ストーカー美青年
熱帯魚の鱗を剥がす あとがき+α
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あとがきページまで開いてくださりありがとうございます。
今作の元のタイトルは「熱帯魚の鱗を剥がす」で、ムーンライトノベルズとその他雑記サイトに於きましては改題後の「耳鳴り鎮魂歌-レクイエム-」を使用しております。
改題前のタイトルを決めた段階ではまだ結末は決まっておりませんでした。しかしふと「耳鳴り」「鎮魂歌」というワードが思い浮かび、ヒロインが死ぬという展開になりました。とはいえ「鎮魂歌」というワードを使うといずれかのキャラクターの死亡が決定することになります。
1作目「蒸れた夏のコト」では悪役たちが、2作目「雨と無知と蜜と罰と」ではヒロインの弟が死亡したことを踏まえると、今作はヒロインが死ぬ構想が無くはなかったので、それはそれで構わなかったのですが、執筆途中でどのような感情的変化があってもヒロイン死亡というプロット変更ができなくなる躊躇いがありました。
当方はティーンズラブ(以下TL)ということで便宜上カテゴライズされているのですが、呼称の変遷や由来がどうであれティーンズ(10代)が読むものではないとの思いからヘテロ恋愛と呼んでいるのですが「TLは読者に夢を見せるカテゴリであるべきだ」という固定観念が否めずにいるので、それでいうと夢を見せきれずすまなかったというのが本音でございます。
ヒロイン死亡の終わり方ではありましたが、作者としてではなく読者側になるべく寄った視点で物をいうのならば、当方としては本懐を遂げられたならばバッドエンドではないのかな、という感想であります。
作者として完結させてみてのテーマとしても「"役目"を終えた」という感じです。京美1人にフォーカスすべき話ですがそもそも京美にしかフォーカスされていない話でした。
では、ここまで読んでくださってありがとうございました。
次回作でお会いできたらまたよろしくお願いします。
◇
淡いブルーの紙片が舞い散る。讃美歌の鼻歌がどこか不釣り合いである。
「その鼻歌……」
話しかけられ。彼は振り返った。病院内にある庭園である。人はいない。いいや、車椅子の若い男が一人いる。髪の黒い、色白の、美男子である。みたところ20代前半くらいであろうか。
「ゴミ捨てるの、よくないですよ」
「拾うよ。拾うさ」
微苦笑を浮かべ、鼻歌が止むと、今度は風が唄う。朗らか日であった。
「検査結果が良くなかったとか?」
「ううん。これは検査表じゃないよ。ただのラブレター」
「ラブレター?いいですね、昔っぽくて。モテるんだ」
紙片を拾いながら、車椅子に背を向けるが、まだそこにいる。野良猫が意外にも人慣れしていたような感じに似ている。雰囲気も懐かない猫のようである。
「ボク宛てじゃなくて、ボクの妹宛」
「え。妹さんに、見せないんですか?」
「くだらないこと書いてあったからムカついちゃって。ボクの妹はね、遠くに行っちゃったんだ」
車椅子の相手は訳が分かっていなそうであったが、補足してやる気はないらしかった。入院生活が暇なのであろう。おそらく話し相手を求めている。
「遠くに……?」
「うん、遠くに。かわいいかわいい妹の、大切な人が書いたものだから心苦しかったんだけれども、もう要らなくなったんだ。だから、お空に届け……ってね。メルヘンかな。遠い所にも届く気が、するだろう?」
車椅子の青年は冷たそうな面構えをして、意外にも人懐っこいようである。両脇の車輪を押して傍に来た。膝掛けの上に乗っている小さな動物のぬいぐるみが、この青年には不相応だが微笑ましい。
「なんてね。ボクの話はいいんだよ。君は?寒くなってきたし、部屋まで送るよ。身体を冷やしちゃいけない。大事な身体だからね。風邪をひいたら、大変だ」
先程まで讃美歌を鼻遊んでいた男にゆっくりと車椅子を押され、膝にあった小さなぬいぐるみが転がり落ちる。
「ああ。ボクが拾うよ。大切なんだろう。かわいいね。好きなのかい、モルモット」
「ハムスターですよ、それ」
「モルモットさ。しっぽがない」
車椅子の人物が項垂れる。調子が悪いのかと、顔を覗くと彼は笑っていた。
「貰いものみたいなものなんですけど、なんていうか……あの人らしいなって思って」
幼くなった顔に雫がぽとりと落ちていく。
今作の元のタイトルは「熱帯魚の鱗を剥がす」で、ムーンライトノベルズとその他雑記サイトに於きましては改題後の「耳鳴り鎮魂歌-レクイエム-」を使用しております。
改題前のタイトルを決めた段階ではまだ結末は決まっておりませんでした。しかしふと「耳鳴り」「鎮魂歌」というワードが思い浮かび、ヒロインが死ぬという展開になりました。とはいえ「鎮魂歌」というワードを使うといずれかのキャラクターの死亡が決定することになります。
1作目「蒸れた夏のコト」では悪役たちが、2作目「雨と無知と蜜と罰と」ではヒロインの弟が死亡したことを踏まえると、今作はヒロインが死ぬ構想が無くはなかったので、それはそれで構わなかったのですが、執筆途中でどのような感情的変化があってもヒロイン死亡というプロット変更ができなくなる躊躇いがありました。
当方はティーンズラブ(以下TL)ということで便宜上カテゴライズされているのですが、呼称の変遷や由来がどうであれティーンズ(10代)が読むものではないとの思いからヘテロ恋愛と呼んでいるのですが「TLは読者に夢を見せるカテゴリであるべきだ」という固定観念が否めずにいるので、それでいうと夢を見せきれずすまなかったというのが本音でございます。
ヒロイン死亡の終わり方ではありましたが、作者としてではなく読者側になるべく寄った視点で物をいうのならば、当方としては本懐を遂げられたならばバッドエンドではないのかな、という感想であります。
作者として完結させてみてのテーマとしても「"役目"を終えた」という感じです。京美1人にフォーカスすべき話ですがそもそも京美にしかフォーカスされていない話でした。
では、ここまで読んでくださってありがとうございました。
次回作でお会いできたらまたよろしくお願いします。
◇
淡いブルーの紙片が舞い散る。讃美歌の鼻歌がどこか不釣り合いである。
「その鼻歌……」
話しかけられ。彼は振り返った。病院内にある庭園である。人はいない。いいや、車椅子の若い男が一人いる。髪の黒い、色白の、美男子である。みたところ20代前半くらいであろうか。
「ゴミ捨てるの、よくないですよ」
「拾うよ。拾うさ」
微苦笑を浮かべ、鼻歌が止むと、今度は風が唄う。朗らか日であった。
「検査結果が良くなかったとか?」
「ううん。これは検査表じゃないよ。ただのラブレター」
「ラブレター?いいですね、昔っぽくて。モテるんだ」
紙片を拾いながら、車椅子に背を向けるが、まだそこにいる。野良猫が意外にも人慣れしていたような感じに似ている。雰囲気も懐かない猫のようである。
「ボク宛てじゃなくて、ボクの妹宛」
「え。妹さんに、見せないんですか?」
「くだらないこと書いてあったからムカついちゃって。ボクの妹はね、遠くに行っちゃったんだ」
車椅子の相手は訳が分かっていなそうであったが、補足してやる気はないらしかった。入院生活が暇なのであろう。おそらく話し相手を求めている。
「遠くに……?」
「うん、遠くに。かわいいかわいい妹の、大切な人が書いたものだから心苦しかったんだけれども、もう要らなくなったんだ。だから、お空に届け……ってね。メルヘンかな。遠い所にも届く気が、するだろう?」
車椅子の青年は冷たそうな面構えをして、意外にも人懐っこいようである。両脇の車輪を押して傍に来た。膝掛けの上に乗っている小さな動物のぬいぐるみが、この青年には不相応だが微笑ましい。
「なんてね。ボクの話はいいんだよ。君は?寒くなってきたし、部屋まで送るよ。身体を冷やしちゃいけない。大事な身体だからね。風邪をひいたら、大変だ」
先程まで讃美歌を鼻遊んでいた男にゆっくりと車椅子を押され、膝にあった小さなぬいぐるみが転がり落ちる。
「ああ。ボクが拾うよ。大切なんだろう。かわいいね。好きなのかい、モルモット」
「ハムスターですよ、それ」
「モルモットさ。しっぽがない」
車椅子の人物が項垂れる。調子が悪いのかと、顔を覗くと彼は笑っていた。
「貰いものみたいなものなんですけど、なんていうか……あの人らしいなって思って」
幼くなった顔に雫がぽとりと落ちていく。
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