18禁ヘテロ恋愛短編集「色逢い色華」-2

結局は俗物( ◠‿◠ )

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熱帯魚の鱗を剥がす(改題前) 陰険美男子モラハラ甥/姉ガチ恋美少年異母弟/穏和ストーカー美青年

熱帯魚の鱗を剥がす 39

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 糸魚川いといがわ瞳汰とうたからの慕情の打ち明けは朋夜ともよを悩ませた。人妻であり、甥がいることは彼も知っているはずだ。あの告白に返答は要るのであろうか……否、不要であろう。一瞬本気にした自身を彼女は軽蔑した。あらゆる男は年下の女を好む。それが摂理であり本能なのだ。実際、元交際相手は自分たちよりも若い女に乗り換えたではないか。
 経験の少ない若い男の哀れなさがで、業であろう。近くにいた接しやすい異性に恋心を錯覚しているのだ。何よりまだ21歳などは法的に大人であろうけれども、高齢化の進む世間ではまったくの子供だ。年上の女への興味が勘違いを起こしたに決まっているのだ。いずれは彼も年下の女に惹かれるのは決まりきっている。
 その場は礼を言って、沈黙に耐えきれず、苦しい口実をつけ、心配する彼に対し甥が迎えに来ると嘘を吐き、逃げてきてしまった。顔が火照っている。
 店の前まで回り、カーブミラーの前で熱を冷やす。
「朋ちゃん」
 そう大きくもない車道を挟んだ白線の向こう側、電柱の影に白い身形の男が立っている。その均斉のとれた体躯のために装飾がむしろ嫌味になってしまうがゆえ地味で質素にまとめた風采である。それは清潔感というか、世間の安堵に似た俗っぽさがあり、正気の人間のように思えたけれども、朋夜にとってはそうではなかった。
「やっぱり来ると思った。あの店員さんと仲良いもんね?朋ちゃん、そういう服装似合うなぁ。綺麗になったなぁ。朋ちゃん、オレ、バカだったよ。オレはバカだったんだ。朋ちゃんほどデキた女はいなかったのに……ごはんも作らないし化粧もしなくなって、女を捨てたアイツとは大違いだよ。朋ちゃん、離れてから気付いたんだよ。オレが一番好きで、大切に思っていたのは朋ちゃんだって。ねぇ、朋ちゃん」
 朋夜は店に戻るべきか、そのまま無視してしまうのがいいか迷った。瞳汰には嘘を吐いている。そもそも彼は職場のイベントで忙しい。頼る算段に入れるべきでなかった。元交際相手との関係は清算したつもりでいたけれども、まだしがらみは続いているらしい。そのことに義甥も、瞳汰も巻き込めない。
「朋ちゃん、ねぇ。親父とお袋にはオレから説明するよ。昔のことも謝るからさ……」
 朋夜は口を噤んでいる。たとえこの男の要求を呑んだとして、今の妻についてはどう説明するのだろうか。
 元交際相手はついてくる。自宅までついてくるつもりなのであろうか。
「オレ、浮気されてるんだ。それで初めて分かった。浮気されるってツラいな?里菜りなの父親だって、オレじゃないかも知れなくて……」
 朋夜は遠回りをする。赤信号になるたびに自宅とはもうまったく関係ない方向へと進んだ。元交際相手は後ろをついてきて長たらしく喋っている。
 交番に駆け込んでしまおうか。いいや、そうすれば甥に知られてしまうかも知れない。甥に知られたならば、外出を禁止されてしまう。義理の甥に逆らえずにいることも、自尊心に瑕をつけているのだった。賢く、良い保護者になれなかったのだから。
「朋ちゃん。やり直そうよ。オレには朋ちゃんしかいないよ。昔はあんなに、好き合っていたじゃないか」
 朋夜が車道に飛び出したり、もしくは大袈裟にいって断崖絶壁から飛び降りたりすれば、元交際相手もついてきそうな勢いである。
 無視をし続けるのも体力が要った。彼女は曲がる。幾度とも曲がる。赤信号を回避した。元交際相手もくどくどと華やかだった昔話を穿ほじる。しかし朋夜の中ではどれもこれも泥を塗られた出来事である。生物学的な意味では朋夜の知るところではないが、形式的には人の親であろう。その男が、そうとう家庭には余裕があるのは自らが捨てた元交際相手を追いかけ回している。
 ふと横から伸びてきた腕が朋夜を掴んだ。
「綾鳥さん」
 糸魚川いといがわ瞳希とうきがいやらしい笑みを口元に浮かべ、涙袋をふっくらさせていた。
「奇遇ですね。あっはっは。本当ですよ。綾鳥さん。どこ行くんですか?そちらはお知り合いの方なんですか」
 瞳希の眼差しには含みがあった。厄介な人物が増えてしまった。
「どうして、糸魚川さんが……」
「綾鳥さんは、兄の店に来ると思って。好みって似るのかな。あんな歌うたったら、兄はペドフィリアだと誤解されちゃいますよね。綾鳥さん、気付いていましたか?あれって途中から綾鳥さんへの告白ラブソングだったんですよ」
 後ろで交際相手がじとりと、自ら別れを切り出し、讒誣ざんぶして回った相手を監視している。
「告白されていましたものね。綾鳥さんも気付くか。ぼくも好きです、貴方が」
 朋夜は眩暈を覚える。
「わたし、浮気する人、嫌いなの」
 口にした途端、悪寒が走る。後ろ暗いところが無いわけではない。死んだとはいえ、夫がいる。守らなければならない家庭があり、亡夫に託された愛甥がいる。だがこの肉体は夫でないものどころか血の半分繋がっている弟や、保護すると決めた甥、それから目の前の男に食い散らかされている。さらに罪深いことには、他に好きな人が……
「それは同族嫌悪ですか」
「……そうかも」
 悪怯れ、否定することに疲れてしまった。
「だから兄には甘いカオするんですか」
「してない」
「しています。あれは白痴ですよ。双子なのに、勉強ができて足が速くて、難関大学に通い、社会的にも成功して、モテるぼくをやっかむんです。何がなんでもぼくに勝とうとしてるんです。だから貴方にぼくを貶めるようなことを言うんだ。ぼくなら貴方を食わせていけます。貴方だけじゃない。貴方が望むなら、京美みやびくんのことも……」
 糸魚川瞳希はいつになく感情的になっている。以前は飄々として捉えどころのない態度であった。
「家庭のことだから色々な事情とか、見えるところが違うのかも知れないけれど、瞳汰くんはわたしにとって優しい子だわ。あなたのことだって、別に貶めていたんじゃなくて心配していたの!」
 朋夜は彼のことも無視して、通り過ぎようとした。いつのまにか空は暗くなっている。糸魚川瞳希の奥に、ぼんやりと怨霊みたいに白く浮き上がる姿を捉えてしまい、ばつの悪い思いをする。
「綾鳥さん」
 どこかで聞いたことのある、バチバチと鋭い音がした。そのあとのことが思い出せない。肉体を失った世界というものを彼女は味わった。
 何の音だったか。夜に繁盛するような飲食店の軒先に吊るされた殺虫灯に、羽虫が飛び込んでいったときの音だ。
 アスファルトに身体を打ち付け、意識が肉体へと戻った。非常に危険な状態であると、ようやく彼女は実感した。逃げなければならない。走り出した。男の脚力ではすぐに追いつかれてしまうであろう。一心不乱に彼女は大通りへと辿り着く。反対側から来た車がパッシングした。
「綾鳥さん?」
 窓から顔を出したのは北条ほうじょう奏音かのんだ。糖衣を施したような白く平たい車の、左ハンドル。
「あ……」
 焦るあまり、朋夜は言葉が出なかった。ここで止まるのは具合が悪い。
「今帰り?乗っていきなさいよ。ねぇ?ジョー」
 天条奏音は後部座席のほうへ視線を滑らせた。後ろに乗っているらしき青年も窓を開ける。
「乗っていってください」
 チョコレート色の髪が印象的な彫りの深い顔立ちの美男子の目は、辺りを見回しているようだった。
「乗りなさいよ」
 天条奏音の語気が厳しくなる。渡りに船、ひでりに雨とはこのことだった。
「すみません……お願いします」
 朋夜は亡夫の元交際相手の車に乗り込んだ。窓が閉まる。
「あの……本当に、ありがとうございます」
 運転手も同乗者も黙っている。
「あの……」
「あの男は誰?知り合いなの?」
 天条奏音の問いに、朋夜はすぐ答えることができなかった。
「ジョーが、あなたが変なのに追われてるって言ってたのよ。だからここをぐるぐる回っていたの」
 朋夜は隣に座る茶髪の青年を見遣った。心配そうな目である。
「気を付けなさいよ、あなた。頭のおかしい男に言葉は通じないんだから」
「すみません……」
「別にあたし個人には関係ないことだけど、あなたは仁実ひとみの妻で、ジョーも気にしていたんじゃあねぇ……」
 あの男たちがついてきていたのか否か、朋夜は車の外を見られなかった。
 がこ、と四方から軽快な音がする。運転席にロックを委ねられたらしい。
「ジョー、次綾鳥さんにあったら、どうするんだっけ?」
 気付けば、チョコレート色の髪の青年は縮こまって座っていた。
「あ……あ………」
「ジョー?別にシートを汚してもいいわ。そろそろシートクリーニングに出そうと思っていたし」
 ジョーこと如衛龍じょえるは車内の暗さでも分かるほど顔を真っ赤にしていた。
「綾鳥さん。可哀想だなんて思わないでね。ジョーは恥ずかしいのが好きなのよ。よく観てあげて」
 天条奏音はバックミラーですら後ろを見ない。如衛龍の手が前の席の背についたポケットを探った。手にはピンク色の器物が握られていた。そして、下に身につけていたものを緩めると、彼は尻側内部に隠してしまった。
「綾鳥さん。悪いのだけれど、あたしの代わりにかわいいダックスを躾てくれない?」
 車内にモーター音が聞こえた。尻を通し、微かな振動も伝わる。
「ぉ……おお………ト、トモヨサ……ン!トモヨサン……!」
 如衛龍が情けない声で呼ぶ。漏れ出る吐息が哀れっぽくも艶冶えんやである。彼はボトムスの前をはだけさせた。パンツと思しき布地に包まれたものか突き出る。
 朋夜は驚いて、シートに座り直した。
「ぁ……、お、トモヨサン……っ」
 彼は前のめりになって、前の席のヘッドレストに寄り掛からんばかりである。ぶるぶると腰を揺らし、一見すれば体調不良者だと勘違いしてしまうだろう。
 小さなモーター音が鼓動と連携でもしているのか、朋夜を焦らせる。
「ダメよ、ジョー。自分でシコシコするなんて許さないわよ」
 天条奏音は冷静に運転している。ウィンカーの軽く断続的な音が滑稽だ。
「あ………あ、ああっ……」
 苦しそうに下肢を揺らす如衛龍は、今にも応急処置が必要なように思える。
「いつからそんななの?ジョー。おもちゃ咥え込んだだけじゃ、そうはならないわよね?」
「あ………っんぉ、」
「答えなさいよ」
「ト、トモヨサ………トモヨサ………」
 赤信号を待ちながら、彼女は冷淡に笑っている。
「トモヨサンを……見てから……です、」
「どうして?どうして綾鳥さんを見てからなの?さっきはそんなんじゃなかったでしょう?真面目なカオをして、心配していたじゃない」
「あ………ひ、っ……トモヨサンが、好きッ……だから、あ、あああ~ッ!」
 朋夜は口元に手を添えて、恐ろしいものを見るような眼差しをくれてしまったとき、視線が合ってしまった。痙攣しながら悲鳴を上げる美男子に怯む。激しい拷問を目の当たりにしたような、エキセントリックな光景は、性に溺れているはずだが猟奇的でグロテスクである。
「お尻でイくところ、綾鳥さんに見られちゃったのねぇ。恥ずかしい人。でもねぇ、綾鳥さん。さっきまでは、あなたのことをとっても心配していたのよ。あたしもあなたがジョーをいぢめるところ、観たいわ。けれど生憎、運転中なの。でも聴覚みみなら空いているわ。綾鳥さん。あたしの代わりに、勝手にお尻イきするダメな子を躾けてくださる?」
 前の座席にしがみついて尻を振動させ仰け反る青年は、獣の霊魂でも憑依したかのように正気の感じではなかった。
「そ、そんな……」
「乳頭を引っ張ってやるだけよ」
 如衛龍は蕩けた眸子でシートに腰を直した。絶頂の余韻をやり過ごしたらしい。彼はシャツを脱ぎ、絆創膏が左右に貼られた胸板を晒す。
「トモヨサン……乳首、触ってください……」
 汗ばんだ手に手を取られる。如衛龍の目付きは車に乗ったときとはうって変わって、欲情に染まりきっていた。彼は自身の胸に、朋夜の掌を這わせた。
「ん……トモヨサンの手、冷たい」
 朋夜の手は確かにかじかんでいる。寒いのかもしれない。
 動かされ掌が絆創膏を撫でた。つやのあるフィルムの下のぽつ、とした痼りを感じる。
「あ……っ、」
「だ、だめです……こんなの、」
「かりかりしてください……かりかり、して……」
 如衛龍は胸を突き出して朋夜の掌に絆創膏を当てたがる。
「もうおちんちんでしかものを考えられなくなっちゃったのね。いやらしい子。仕方ないわね。自分でおちんちん乳首シコりなさい」
 女主人から許しが出ると、如衛龍は朋夜の手を丁寧に彼女へ返した。そして両胸の絆創膏を剥がす。腫れたような乳頭が勃ち上がっている。
「トモヨサン……、んっんっん……」
 彼は後部座席のヘッドレストへ後頭部を擦り付けた。顎は天井を剥き、喉元の曲線が張り詰める。
「ジョーはね、綾鳥さんにおちんちん踏まれるのが夢なのよ。あなたにおちんちんを齧られて、尻を叩かれて、ペニスバンドで乱暴にされるのが」
「あ、あ……イく、イく、トモヨサン……イく、」
 乳頭を引っ張っていた指は、胸板で転がす動きに変わる。荒々しい呼吸がさらに荒さを増し、彼は胸から手を離した。それから下着からぬらぬらとした巨大ミミズみたいな恐ろしい肉の火かき棒を露出する。赤黒く、膨張しきった先端部は水気を帯びていた。その間は、息切れのような音を漏らしていた。だが、悍ましい灼熱を晒し、ふたたび乳頭刺激に戻ると、呼吸も戻る。
「出る……っ」
 喉の拉げたような声を出すのと同時に、醜怪で汚穢おわいの芋虫棒から白い体液が飛び散った。ここは車の中である。
「いやだわ、ジョー。またあなたのくっさいザーメンの匂いがこびりついちゃう」
 蒸れた感じのある車内に天条奏音の声音は凛と涼やかである。
「ねぇ、綾鳥さん。せっかくだから、お線香を上げさせてくださる?」
 道は朋夜も知っているところに入っていた。そろそろ自宅マンションへ着く。
「は、はい……ぜひ……」
 隣にある精液とペニスを朋夜は極力視界に入れないようにした。
「あの、でも……」
「さっきのことは京美くんには言わないわ。うっふっふ……」
 言わんとしていることは伝わっていた。しかし彼女の笑い方に不穏な響きを覚える。
「あたし個人としては、話しておくべきだと思うけれど。あなたのためじゃぁないわよ。もしあなたに何かあったとき、何も知らなかったなら京美くんが可哀想そうだから」
「そうかも、知れないんですが……」
「でもあなたの家庭のことだものね。黙っておくわ。うっふっふ」
 天条奏音のこの笑いの意味を、朋夜は十数分後に知るはめになった。
 朋夜が帰宅したとき、京美は飛んで出迎えにきたが、天条奏音と若い男が一緒だと知ると、いくらかばつが悪そうだった。特に如衛龍に対して警戒を怠らない。彼は叔父の職場のアルバイトとしてこの青年を知っているはずだ。
「ごめんね、京美くん。帰りにばったり会って……」
「無事に帰ってきたならいいよ、別に」
 京美は部屋へと引きこもってしまった。リビングで3人である。如衛龍は隅に佇み、室内を見回している。天条奏音も線香を上げたいというのは本当だったようで、位牌も香炉もないけれど、遺影の前で膝を下ろすと手を合わせていた。
「座っていてください。コーヒーを出しますから……」
「お構いなく。押し掛けたのはこっちなのだし。それより綾鳥さん」
 天条奏音は軽やかに立ち上げると、朋夜のほうに詰め寄った。
「あ……あぁ、はい……」
 マスカラで固められた睫毛の奥の眸子は、朋夜の危機感を煽る。天条奏音という女は悪人ではないのかも知れないが、警戒心を持たずにいられるような善人ともいえないところがある。実際、彼女は朋夜の後ろに回り、紺色のワンピースのボタンを外し始めた。
「天条さん……っ」
「相変わらず大きいわねぇ。かわいいわ。あなたって、かわいい」
 耳殻に息が吹きかけられる。イヤリングが揺れた。
「あ……」
「ねぇ、パンティが欲しいわ。あなたの。ジョーもそろそろ、新しいあなたが欲しいのよ」
 前を開かれたワンピースの狭間からインナーが覗ける。ネイルの変わった指が捲り上げて淡いレモン色のブラジャーを晒した。
「かわいいわ、綾鳥さんて。本当に、かわいい」
 保湿ケアの行き届いた手が胸の大きさを確かめる。
「あ……天条さん…………義甥かぞくが、いますから……」
「じゃあ、京美くんが来たらやめてあげる。それまでは楽しみましょう?」
 天条奏音の手はブラジャーの中に入ってしまった。
「ちょっと……あの、ああ……」
「押しには弱いのかしら?好都合だけれど。かわいい」
 朋夜はやっとのことで天条奏音の目を止めた。きつい印象のある顔立ちをさらに強調させる化粧の施された目元が眇められていく。
「あら……だめ?」
 彼女はあざとく小首を捻る。しかし潔く身を引いたわけではなかった。ワンピースのシャツのボタンは腰部分までだった。それをすべて外し、双肌もろはだ脱ぎにしてしまう。暗い布地の下のインナーは長袖のピンクであった。
「会社にいた頃、夏場って他の女の子たち、ブラジャー透けていたでしょう?まぁ下品って思っていたのに、あなたってインナー着ていて……うっふっふ。それが逆に、いいのよね。奥ゆかしいっていうのかしら」
 天条奏音はブラジャーのホックも外してしまう。
「困ります……困ります!困りますから……」
 ブラジャーが緩み、カップが浮いた。天条奏音は微笑んでばかりいる。
「いつみても素敵なおっぱいね」
 彼女は部屋の隅で突っ立っている如衛龍を振り返った。
「あなたはそこで見ていなさいよ、ジョー」
 見惚れていたのか、ぼんやりしていた如衛龍は腹で手を重ねているだけでなく、前傾姿勢のように思えた。
「困ります……天条さん……………困ります……!」
 だが天条奏音という女は、朋夜の大きなバストを弄ばずにいられなかったらしい。先程の如衛龍と同様に、その胸の先端部には芯があった。ピンクを微かに帯びたベージュのネイルによって洗濯ばさみの如く摘まれてしまった。
「あ……!」
「こりこりしてるわ!おっぱいが大きいと、掌も暇しなくていいわね!」
 つんとそそり勃ってしまった小さなものを指の腹で擂りながら、掌底部分はぽよんぽよんと張りのある柔らか脂肪を弾ませる。
「あ……あっ、あっ……」
「あなたのパンティ欲しいわ。たくさん感じてね。あなたのシロップをたくさんつけて……うっふっふ。そうしたらジョーが、あなたのソレを嗅いで舐め回して、粗末なものでテンパリングするの。だから……ね?」
 大きく実りながら、他の確信的な性感帯と比べてしまうと小振りな箇所を、天条奏音は器用に扱いた。男性の手淫を思わせる。朋夜はもどかしくも深く広く上下に伝わる快感に下腹部を疼かせ脳を蕩した。彼女の手は同性愛的な接触と距離の詰め方をする客人を止めるためではなく、自身の声を抑えるために働いていた。
「ん………っあ、ぁあ……っ」
 鼓動に近いリズムで天条奏音の指が狭まる。程良い刺激を与えられるたび、朋夜の腰が跳ねた。
「ジョー。ここは綾鳥さんのおうちだからね。ここでシコシコなんてしちゃダメよ。はしたないわ」
 赤茶髪の青年は、女主人の話などろくに聞いてやしない。彼は何かに魅入られているようだった。
 朋夜の気が逸れたときだった。天条奏音は起き上がり小法師よろしく勃起して倒れない肉粒を、起き上がる間も与えないほどに指先で擦った。
「あ……っああんっ」
 腰が退ける。他者に見せられる姿ではなかった。尻を突き出して、胸はされるがまま。口元に手を当てているだけでは、まるで天条奏音と特別な関係を思わせる。閉じることを忘れた唇からは、津液が垂れている。
「気持ちいい?綾鳥さん」
「こま、ります……、こま……」
「ああん、綾鳥さん。乳搾りみたい。かわいいわ」
 天条奏音は愉快げだ。継続的な刺激に慣れそうな頃合いで、引っ張られ、撚られてしまう。
「あ、ああ!だめぇ……」
 震えたのは声だけではなかった。尻も膝もがくがく震わせ、垂れ流した涎が顎から落ちていく。
「イったわね。パンティ、ちょうだいよ。いいでしょう?」
 天条奏音は朋夜が乳頭で絶頂している間も捏ね続けていたが、放心状態になると、すぐさまワンピースの裾を捲った。
「ねぇ、あなたのパンティちょうだい」
 フットカバーもストッキングも下ろしにかかり、ブラジャーと揃いのショーツに指を掛ける。朋夜は腿を閉じた。
「いや……っ!」
「糸を引いているわね。欲しいわ。ジョーが嗅いで、舐めて、口に入れて、扱くのだわ……」
「勘弁してください」
 如衛龍のものではない、男の声が混じる。空耳だったのかも知れない。しかし京美が姿を現した。
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