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熱帯魚の鱗を剥がす(改題前) 陰険美男子モラハラ甥/姉ガチ恋美少年異母弟/穏和ストーカー美青年
熱帯魚の鱗を剥がす 26
しおりを挟む堅くなっていた花祈は少しずつ慣れてきたようでそう悪くない表情を見せるようになった。京美との蟠りも解けたようである。ただ京美は人懐こい性分ではなかったし、花祈も甘え下手のようで、親しくなった感じはない。しかし食事を終えても京美がリビングに留まっているというのは珍しいことだった。
「小星くん、ハンバーグちょっと残ってるから、お持ち帰りする?」
ダイニングテーブルセットの椅子に座っている花祈が朋夜を捉え、その大きな目がわずかに震えた。小賢しさと気の強さを思わせる美しい面立ちだ。それは成長と共に消え失せていく儚さを帯びている。
「おうち、電子レンジってあるかな」
小学校高学年だと聞いている。電子レンジはひとりで使えるだろうか。
「あるけど……」
「せっかく作ったんだもの。タッパー、返さなくていいから。500Wで2分くらいかな?」
朋夜はフライパンに残っているハンバーグを3つすべてタッパーに詰める。幼い花祈がいるために、いつもより小さく作ってある。花祈はキッチンへとやってきた。
「瞳汰にいにあげたい」
「そう。瞳汰くん、喜んでくれるかもね」
あの青年ならば本当に喜びそうだった。家族以外の料理人でもない者の手作りに拒否感を示す人々は少なくない。京美も季節によっては手作りのチョコレートだのケーキだのをもらってきては捨てている。しかし糸魚川瞳汰という青年に限っては、その屈託のなさや人懐こさから、そういったことにも頓着のなさそうな感じがあった。
「うん……」
朋夜はタッパーの蓋を閉め、それからバンダナを持ってくると弁当みたいに包んで縛る。結び目に割り箸を挿してからビニール袋に入れて持たせた。それから少ししてインターホンが鳴る。
「俺が先に見てくる」
飛び出て行こうとする花祈と、後を追う朋夜を京美が阻む。この義甥には怪文書犯と叔母の元交際相手という悩みの種みたいなのが2つある。
「ごめんね、小星くん。ちょっと待ってね」
花祈は朋夜を見上げ、不思議そうではあったが素直に足を止めた。リビングで待っていると、糸魚川瞳汰が中へとやってきた。彼は花祈の姿を見てとると、腰を屈めて両手を広げた。まるで愛息子を迎えにきた父親のようだった。花祈は照れたのか、彼のほうを見ない。
「お邪魔してます、朋夜さん。小星くんを看ててくれてありがとう」
まだ花祈のために開いている腕を上げたまま、瞳汰は朋夜を向く。
「ううん。わたしのほうこそ、小星くんに送ってもらったから。ありがとうね、小星くん」
「別に……」
花祈は後ろで手を組み、顔を赤くして俯いた。
「じゃあ、帰ろっか」
瞳汰は立ち上がり、廊下を顧眄する。しかしすぐ直った。
「京美くんにもよろしくっす」
「うん」
京美は部屋に籠ったらしい。朋夜は2人を見送るために玄関ホールへと出た。
「じゃあね。夜道、気を付けて」
二言、三言やり取りがあってから瞳汰と花祈が帰っていく。手を繋ぐ後姿を朋夜は玄関扉の間から見ていた。
「子供が何時に帰ろうが、子供がどこで何をしていようが、構わない親ってのはいるんだな」
背中にほわりと温もりがあった。身動きがとれないほど近くに甥がいる。背中にぴたりとついている。彼も幼い来客を見送っていたらしい。
「京美くん……」
「俺の親も、そうだったんだろうね」
義甥が離れた。
「京美くん」
「叔父貴も叔母さんも、本来なら俺の世話に感ける必要なんてなかった。俺の両親が、俺を望んで産んで、俺を育てていたら……子捨ての遺伝子が俺にあるのなら、俺は子供は要らないよ。多少憧れはするけどね。叔母さんは、俺が20歳になったら、出て行きなよ。叔父貴のことも俺のことも全部忘れて、幸せになりな。法律のことはよく分からないから、そこは相手方と相談することになると思うけど」
それは幽霊みたいであった。彼は血の繋がりもない、役にも立たない女に今すぐ出て行ってほしいのであろう。しかし法律と恩のある叔父への遠慮によって追い出せない。朋夜は当人も当人でありながら、他人事として考え、歯痒く思う。
「仁実さんは、京美くんといられて幸せだったと思う。わたしも……―」
「気休めは要らないよ。こんなふうに言ったら、そう言うしかないよな。変なこと言ってごめん」
京美は映画でみる生きた屍みたいだった。彼は彼の部屋へと引き寄せられていく。
憐れみが込み上げた。京美の小星少年を眺めていたときの眼差しが甦るのだった。彼は懐古していたのかもしれない。おそらく彼は自分を捨てた父と母について、打ちのめされていたのだ。
風呂を済ませ、寝間着に着替えた頃になっても、京美の眼差しが脳裏に留まり、気分が沈んでしまった。かといって小星少年を連れ込んだことに悔いはなかった。リビングの明かりを消して、グラスに黄褐色の酒を注いだ。そこに炭酸ジュースが半々に投入される。しゅわしゅわとそう大きない音が暗くなったリビングで数秒間弾けた。すぐには口をつけなかった。朧げな夜景を所在なく見つめる。電飾ほどの意図があるものではなかったし、結局それは人々の営みの照明であって、それを観測した者たちを含めた皮肉な芸術性はあるかも知れないが美術性はない。それでも亡夫は、この暮らしを人の幸せの象徴としたのかもしれない。彼がここで過ごしたわずかな時間を、彼が彼なりに思い描いた幸せの象徴に充てることで満足したならば、それはそれで悪くないことなのかもしれない。
朋夜はグラスに口をつける。炭酸が爽やかに鳴った。薄まった酒気がほんのりと鼻を刺す。
彼女は綾鳥夫婦なりの、番いを失くした妻の営みに浸っていた。世間的にいう夫婦の営むとは趣が異なっているけれど、そこに不満はなかったし、むしろ満ち足りていた。今でも夫の声がテーブルを隔てた隣から聞こえそうなものだった。
朋夜に忍び寄る影があった。彼女の後ろから腕が伸び、肩を包み込む。
「京美くん……?」
振り返ることは赦されないほど密着している。彼は屈んで、叔母に張り付いている。
「座ったら……?」
首を横に振ったのが髪の音で分かった。
「どうしたの?」
返事はない。子供みたいに縋りついている。だが図体が大きいあまり、腰を落としている様が大変そうである。
「泣いてるの?」
それらしき雰囲気もなかった。彼はもしかすると母親の顔も覚えていないのかもしれない。年上の女に甘えたいのだろう。たとえそれが日頃疎ましく思う居候みたいなのだとしても。夜というものが、この人嫌いな孤児を打ち拉ぐのだ。
朋夜はもう言葉を発しなかった。
「ごめん、叔母さん」
グラスの中身はすべて朋夜の喉に消えると、京美の抱擁が解かれた。体温を分け与えられていた身体はわずかに寒くなる。
「おやすみ」
彼は叔母にその姿を見せることもなくリビングを去っていった。
◇
甥が大学に行っているときである。インターホンが鳴り、朋夜はチェーンロックは繋げたまま応じた。玄関扉の隙間の奥に見えるのは背の高い男だ。まったく知らない顔で、人違いかと思われた。
「綾鳥さんのお宅ですかね」
南国帰りという印象を真っ先に抱いた。派手な柄に白抜きの麻のシャツに、襟元にはサングラスを引っ掛け、白のハーフパンツとサンダルである。朋夜が出た時に麦わら帽子を外した。一昔前に芸能人か何かが海外旅行に向かうときにテレビに撮られるときの様相を思わせる。堂々とした出立ちと、均整のとれた体型がそうさせるのかも知れない。なかなかの男振りで、全体的に見るとやはり知らない顔たが、部分部分に注目すると知った要素がないこともない。そしてある相似を認めたとき、朋夜の目は徐々に丸くなる。喉がひりついてしまった。立ち眩んで後退りかける。
「大丈夫ですか」
心なしか、その可能性を抱いたときから、声にすらも相似を探してしまう。
「ちょっと話があるんですがね?」
直感めいたものが朋夜の頭を撫でていく。寒気がした。
「すみません……エントランスにラウンジがありますので、そちらで……」
相手は唇を歪めた。
「弟に線香を上げたいのだが?」
「今、散らかっていますし……」
やはり彼女の直感は間違っていなかった。多少の主体と続柄の差はあれど。
「綾鳥朋夜さんだね?」
「はあ」
「私は君の義兄なのだが」
「お話は、ラウンジで」
家に上げてはならない気がした。まるで生きた人間への応対ではない。
「綾鳥さんが怒るのも、当然といえば、当然か……」
彼の言葉を素通りしてエレベーターへと案内する。
「京美はどうしてるんだい」
「大学に通っています」
「大学に進んだのか。仁実は頭が良かったからな」
懐かしむように男は言った。だが彼は弟の通夜にも葬儀にも現れなかった。
「飛髙琴美さんですか」
亡夫から聞いていた名である。
「そう」
「飛?さんは、20年近く、何をされていたのです」
彼女の物言いは露骨に詮索し、そのことによって非難しているかのような冷淡な響きがあった。朋夜は今までにどれだけ冷遇され、意地悪をされ、ぞんざいに扱われても、ここまであからさまに冷淡な振る舞いをしたことはない。
「海外にいたんだ」
「海外に」
「恵まれない子供たちに、学校や井戸を作ってあげたくて」
朋夜はもうそれ以上、自ら口を開かなかった。エレベーターの下降によるものなのか、あまりの唐突さによるものなのか分からない眩暈があった。
エントランスに着くとラウンジのソファーを勧める。
「呆れただろう」
沈黙の意味を男は察したらしい。大きく開いた膝の上に肘をついて、顔の前に橋を架けている。
「京美くんも恵まれない子だとはいいません。立派な叔父がいたわけですから……」
「こんな素敵な叔母もだね」
「肉親と一緒に居ることが一番良いことだとは一概に言えないし、思いません。様々な事情があったのだとも思います。ただ、―」
朋夜は目を合わせなかった。対面に座す男は飄々としていた。
「親がなくても子は育つもので、」
彼は他人事のように言った。
「一人では育ちませんよ。それは他人が言うことで、産んで放っておいた人が言うものではないはずです。少なくとも、京美くんと仁実さんを見てきたわたしにも、言うことではないです」
朋夜は眉を顰めた。言葉尻もきつくなる。すると相手は鼻を鳴らした。人相がみるみるうちに変わっていく。
「下手に出れば、血縁者でもないクセに言いたいこと言うじゃないの」
彼は―飛髙琴美は脚を組む。ソファーの背凭れに両腕を広げ、顎先はつんと上を向く。見下ろすような眼差しに、息子の面影が誰の由来であるかを知る。横柄な態度に朋夜は気圧された。
「正論の反対はな、曲論でも暴論でもないんだよ、お嬢さん。いいや、我が義妹くん。こっちにも考えがあった。見事に頓挫したがね」
動物のフレーメン反応みたいに飛?琴美は口角を歪めた。
「それはあなたの事情で、京美くんには関係ないことでしょう……息子を一番に考えなくて、どうするんですか」
暴力性を嗅ぎ取ってしまう。朋夜の声音は弱くなる。
「いいな、女は。被害者ぶれてな。世間からみても我が義妹よ、綾鳥さん、お前さんの言い分が正しい。どうだ?あーしが下手に出れば、強者の正論マウントがとれて、あーしが怒鳴りでもすれば、一挙に守られるべき弱者になれるご身分は」
京美の父親は冷ややかな笑みを浮かべる。
「いいです、強者でも弱者でも。あなたの匙加減で変わります、どちらにでも。ご用件はなんですか。説教をしに来たんですか」
朋夜は嘆息する。
「あーしゃ、日本に帰ってきたんでね。息子を返してほしい」
また、彼女は長く息を吐いた。そして俯く。
「義妹よ、綾鳥さん。あーたもまだ若い。甥っ子の世話をしていたんじゃ、人生を棒に振るでは」
「仁実さんとはそのことを話し合ったうえで、あとは京美くんが20歳を迎えてから本人の意向に従うと、決めて結婚したんです」
「でもねえ、あーた……結局は血も繋がらん他人で、連れ子でもなきゃ、旦那の幼い同胞でもない。京美は19か……で、いつ20になる?」
どこでもない一点を凝らす朋夜の目が燃え滾ったように見開かれる。
「来年の冬です。3月……27日」
「じゃあまだ先か」
京美の父親は綺麗に剃った顎を掻く。
「まさかとは思うが、綾鳥さん、我が義妹よ。京美と、男女の関係になっているのではあるまいな?19といったらあーしも、京美の母親と励んでいた歳ぞな。いいや、18か。そうだ、一人流れたからな。それが可哀想で拵えたのが京美よな」
軽快に彼は笑った。
「仁実は男色、ホモなんでさあね。女はダメなんだ。だから仁実とあーたに関係があったとは思えない。とすれば、若い者同士、血の滾りを慰め合う―」
「なんなんですか、さっきから。聞いていれば。人の姉に向かって?」
まったく別の声が割り込んだ。朋夜はぎょっとしてそのほうを向いた。弟の神流が佇立している。
「神流ちゃん……」
「綾鳥朋夜の弟の、綾鳥神流です」
人形じみた縹緻のいい美少年が朋夜の隣に勝手に座った。
「神流ちゃん……今ちょっと、取り込んでるから……」
「義務教育を終えて、高校も出て、ほぼほぼ成人の本人抜きで何の話をしているんだろうと思って」
「神流ちゃん!」
神流の華奢に見えて実際触れてみると高校生男子といった骨格の肩を掴む。
「京美兄さんのお父さん。僕の姉は、仁実お義兄さんの亡くなったあとも、自分が泣く暇もないくらいよく働いたんですよ。通夜も葬儀もその後のこともすべて全部やったんです。僕は高校生なのですが、歳の離れた弟のいるこの姉は、人の面倒を看ることが運命づけられているのに、さらにまた血の繋がりもない、何の養育義務もない他人の面倒を看る道を選ぶっていう、高尚な人なんですよ。もうそこに他人も身内もないんです。この人は仁実さんとだけでなく、そういう生まれの業と、覚悟と結婚したんです。いきなり来た肉親が何だというのです。すでに血縁者だ、身内だと見極める嗅覚は退化したんですよ。育ちさえしなかったんです。あとは京美兄さん本人が決めることです。ここでこの姉が、はいそうですか、と甥を差し出せるはずがない。どのような事情があったにしろ、息子を手放すというのはそういうことです。手放した先で柵が複雑に入れ組んでいるんですからね。京美兄さんが幸せになる道を選べたとき、そのときにやっと、仁実お義兄さんとこの姉が今まで惜しまず注ぎ込んだあらゆる資源が報われるんです。そこに突然父親を名乗る人間に、返せと言われてそうですか、だなんて、大損もいいところです」
神流は饒舌だった。聞いているのかいないのか、対面の男は腕を組んで、相槌とも空返事とも判じられない反応を示す。
「京美と話すか……義妹よ、綾鳥さん。京美によろしく言っといてくれや。また来るでな」
半ば忽如として現れた珍妙な美男子に引いている感じもあった。
「まぁ、どうしても京美を離し難いというのなら、あーしゃ、あーたの義父みたいなのになってもいいんだがね。だからつまり、そういうこった」
厄介そうに腰を上げた飛?琴美は意味ありげに神流へ一瞥くれてから朋夜を見下ろす。そして去っていった。朋夜は自身の膝に爪を食い込ませるほど握り込んで、その手は白くなっている。
「神流ちゃん……大事な話の途中だったの……」
「僕としては、京美兄さんのこと、さっさとあの人に渡してほしいよ」
弟のしっとりと柔らかな手が重ねられる。エントランスには離れたところに待ち合わせか何からしく端末を触っている人がいるだけだった。だが朋夜は恐ろしさに彼の手を払う。
「おうち、入ろう」
弟である。庇護していた者だ。家に上げないというわけにはいかない。エレベーターで2人きりになるときの緊張感が彼女の姉としての矜持を突つく。しかし警戒していたことは起きなかった。行き過ぎた弟の甘えはなく部屋へと着いた。玄関ホールで彼の訪問の目的を知る。
「ねぇ。鷹任さんだっけ。あの男が来たよ。郵便ポスト漁られちゃってさ。もしかしてこっち来た?」
彼はカバンからゴムで束ねたハガキや封筒をよこした。絵ハガキに凝っている友人から送られたその一枚に、この地区を示す一文が載っていた。この送り主を元交際相手は知っている。探りを入れられたなら、場所が特定されていたのも無理はない。いいや、共通の友人の結婚式の事前のメッセージを送るために実行委員を買ってでた連中に住所を教えた覚えもある。そこから漏れた可能性も否定できない。
「平気よ。神流ちゃんのほうは大丈夫?ポストは、壊れてるの?」
「壊れてないよ。中開かれて封筒破られてたくらい」
「ごめんね、神流ちゃん。わたしの所為で、怖い思いしたでしょう」
神流は首を傾げる。
「怖い思いなんてしてないよ。それより、もっと早く言うべきだったかもって思って。ストーカー殺人、この前あったじゃん」
数日前にここの近くではないが、ストーカー殺人事件のニュースをテレビで観た。ニュースサイトにも見出しになっていた。
「大丈夫よ、神流ちゃん。心配してくれてありがとう。でも何も起きてないから」
彼女は平然と嘘をついた。翼を捥ぎ取られて地上に堕ちてきてしまったみたいな美麗な少年はほんの一瞬、寒気がするような表情を見せた。だが姉はそれに気付かない。
「嘘吐くなよ」
美しい獣は爪を剥いて牙を見せる。姉弟の親情を信じた朋夜の誤ちであり禍殃であった。
「姉さん、顔引き攣ってたよ。もしかして怖いんじゃないの。逃げてきなよ。さっきのだって、あんなチンピラみたいなのが姉さんの周りに今後うろつくことになるんだよね?」
鋭い爪と尖りきった牙を持った、外見ばかりはリスだのウサギだのみたいな猛獣は姉の衣類を剥ぎ取りながら言った。
「バカな男は女の選び方も分からない……ねぇ、鷹任とかいうクズ、女に捨てられたんだって」
「神流ちゃ……やめ、離れて………っ」
玄関ホールの天井でシーリングファンが呑気に回っている。羽根を毟り取られた天空の楽園の使徒みたいなのは逆光し、その悪辣に歪んだ表情も含めさながら妖美な魔のものである。
「旦那さんが同性愛者だったなら、これは問題だよ、姉さん。あの人はなんでもかんでも、時間も若さも女性性ってやつも搾取して……姉さんは奴隷じゃないんだから」
馬乗りになって、佳麗な弟は捲られたカットソーに巻き込まれ無惨に田屈まったキャミソールと、くすんだ水色のブラジャーとの狭間で揺れる乳房を両手で掬う。
「神流ちゃ……んっ」
「もっと上手くやってよ、姉さん。姉さんと京美兄さんがデキてるだって?イライラするよ。姉さん……!」
今すぐにでも捻り潰したいのであろう面持ちながら、彼は絶妙な力加減で左右の肉粒を捏ねる。指の腹の間で擂られていく。
「あ……っん」
痺れるような甘さが身体に響き渡っていく。
「嘘でも本当でも、姉さんが僕のじゃないって周りが決めてかかって!はたち手前の甥と若い叔母は散々有る事無い事言われるくせに、僕と姉さんが男と女になってるだなんて、あいつ等は思わないんだ」
「あ、あ……っ、神流ちゃ、放して……」
その指遣いを八つ当たりというにはあまりにも器用すぎた。
「人間の世に天国も地獄も無くてよかったよ。死んで終わりでよかったよ、姉さん。姉さんがこんなふうに、あんな男、こんな男、片親違いの弟にも抱かれてるのに、姉さんの旦那が同性愛者だったら鬱勃起だってしてくれないよ。それともこんなふうに、片親が同じ女相手にサカってる僕のほうに興味あるってわけ?」
身を捩る。だが弟の指はさらに朋夜の追い詰めた。淫らな悪寒に震える。
「言わないで……っ、何も………ぅんっ!」
芯を持った小さな箇所を強めに撚られ、彼女の身体が跳ねた。
「捨てちゃいなよ。捨てろよ。帰ってきてよ、姉さん……!」
美少年の悪戯は、ただの悪戯であったのだ。その尤物ぶりで女を惹き寄せ、寸刻の間も与えずに飢渇した牝に変えてしまう怪物だったのかも知れない。
「イけ」
本性を顕したとばかりの冷たい物言いだった。
「だ、め………あっ、ああ!」
それでいて冒してはいけない神聖で清らかな雰囲気の珠児の尻の下で朋夜は胸の先端を嬲られ、絶頂を迎えた。
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