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熱帯魚の鱗を剥がす(改題前) 陰険美男子モラハラ甥/姉ガチ恋美少年異母弟/穏和ストーカー美青年

熱帯魚の鱗を剥がす 13

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 あんな態度をとるくらいだから、僕と姉さんの関係はもう分かっているんでしょう?それでああいうことを言うんじゃないですか。僕と京美みやび兄さんは同類なんですよ。自分の嫉妬に僕を巻き込むつもりだったんでしょう。でも考えてみてください。僕は姉さんを仁実義兄さんとの結婚で奪われているんですから。物理的にも世間的にもね。だから今更です。再婚でもないなら、その辺の若造とのランデブーがなんだっていうんです?
 京美兄さんって幼稚こどもです。

 神流かんなは痛烈に姉の義甥を非難して帰っていった。去り際にこの弟が姉に向けて妖美に微笑んだのを朋夜ともよは見逃さなかった。玄関扉の閉まる音が耳障りなほど大きく感じられた。実際は大したことのない風圧に吹き飛ばされそうになる。
 朋夜の意識が自分の後ろに立つ甥へと移る。
「ごめんなさい」
「だから、何に対して謝ってんの……」
 疲れた喋り方だった。少し喉が嗄れているようでもある。
「弟が煽ったことと……人が来ていたのに嘘を吐いて黙っていたこと」
 鼻血で汚れたティッシュを拾う。わざわざ考える必要もなかったほど、すらすらと言葉が出てきた。
「別に……」
 京美は自室へと吸い込まれていく。

 チョコレートシロップでべたついた身体を洗い流し、やっと軽やかに呼吸ができたような気がした。カクテルを作り、スマートフォンで動画サイトを開いてジムノペディのピアノ演奏を聴く。相変わらずリビングに明かりは灯っていない。そのために際立つ、窓の奥で地上の人々の営みが空の代わりに輝いているのを眺める。
『もっとあるだろ、明るいやつ。パッヘルベルのカノンとか…………―あ、ああ、なんか、ゴメン』
 いつもより少し苦い酒だった。今日はウォッカである。
『クラシック、あんまし知らないんだよ。かっこよくキメたかったんだけどなぁ』
 アルコールに浸る。割っているためそう度数は高くない。酔えるほどでもないかも知れない。亡夫へ献杯している間は時の流れを忘れ、感覚が失せる。
 リビングにひとつ気配が増えたことも鈍った頭ではさとれなかった。後ろから腕が回ったことで人がいることを知る。甘えるように抱擁されている。その仕草によって腕の主が誰なのか分からなくなってしまった。今この家には自分か甥しかいないはずだった。朋夜は端末の画面を押した。ループ演奏が止まる。
「叔母さん……」
「京美くん?どうしたの?」
「ごめん」
 絞り出すような声に朋夜はぎょっとした。熱でもあるのかとグラスを置いて振り返る。首元胸元にある腕が少し重く、彼女の動作を遅くする。
「京美くん、わたしに謝るようなことなんてしたっけ」
「酷いこと言ったろ。神流おぢさんの言うとおりだと思う。叔父貴は俺に気を遣って何も言わなかったけど、薄々気付いてた。叔母さんの人生まるごと買ってるようなもんだって」
 赦されないことを恐れているのかも知れない。怯えているのであろう腕を片方ずつ剥がし、甥へと返す。
「嘘吐いて隠し通そうとしたのはわたしのほうだから。京美くんの謝ることじゃないよ」
「叔母さん……」
「アルバイトに出ようと思うの。家にいると、そういうことになるから。京美くんが帰ってくる時間には居るようにするよ。もう採用が決まってるんだ」
 今度は頭を囲んで抱き締められる。肉親をすべて失った、この少年とも青年ともいえない年頃の義甥が哀れで仕方ない。彼は寂しいのだ。孤独と戦っているのだ。
「……やだ」
 独り言と聞き紛う。朋夜は義甥を見上げた。
「家にいろよ。どこにも行くな。まだ気持ち悪い手紙だって止まってないんだろ」
「でも、家にいるよりいいんじゃない。また………………若い男の子、連れ込んじゃうかも知れないし」
「悪かった。最初から疑ってない……奏音かのんさん、いたし」
 彼はその女自体が危険であるとは思ってもみないのだろう。惚れた相手が自分の叔母を淫虐しているなど、そう容易には考え及ばないのかも知れない。
「家にいろよ。それとも、家計…………まずいの」
「え、?ううん。それは平気。そういうんじゃないんだ。でも京美くんが大人になったらわたしもちゃんと働きに出るよ」
 そういう約束であった。夫は生前、それが朋夜の負担になることを深く詫びていた。甥のために会社を辞めてほしい、専業主婦になってほしいと彼は言っていた。そして甥が成人した後は好きにしてくれていい、と。
「あと2年もしたら、俺が……………養う」
「気負わなくて大丈夫よ。わたしもちゃんと働いて、京美くんが困らないようにするから」
 唇が愛想笑いを浮かべるのを阻まれた。急遽叔母の口の中に何かしら用事ができたかの如く、京美は彼女に喰らいつく。
「だ………、め、っ………」
 抵抗もむなしく、両頬を固定されては彼の肩を押し返しても接吻を免れることはできなかった。力が抜けていくと、頬から片方ずつ腕が落ち、今度は朋夜の手首を握る。ほんのりと蒸れた義甥の掌に皮膚が爛れてしまいそうだった。疼いている。心臓が胸元から二手に分かれて左右の手首に移動したのかも知れない。このままでは癒着するのではあるまいか。
 京美は弾力を感じる間もないほどに角度を変えて詰める。だが叔母の強情に閉じた唇を抉じ開けようとしたときに、ようやく拒まれた。朋夜は首を曲げ、横面を晒す。
「どうして……」
 訊ねるまでもないことを果たして彼は理解していたのだろうか。否、京美にとって、血の繋がりがないにもかかわらず、この卑屈で気の弱い叔母の抵抗は疑問視するに値するのだろう。とはいえ無理矢理力で捩じ伏せるまでもなく嫌味を数度言ってやれば簡単に折れることも彼は分かっているはずだ。ところが今日はそうしない。
「お酒、飲んだから……」
「お酒飲んでない日ならしていいの」
 そこに詰問や揚げ足をとる響きはない。確認と許可の色を帯びているふうだった。
「わたしたちはこんなことしちゃいけないの……」
「ヤだ。する」
 京美はぴしゃりと言ってもう一度叔母の唇に執着する。
「……京美くん」
 彼女は嘆くように首を振った。
「叔母さんとキスもセックスも全部したい」
 朋夜はいつもとは違う酒を入れたことを悔いた。粗悪な品ではなかったはずだが、このように悪い酔い方をするとは思わなかった。たまに入れたアルコールで、卑しく浅ましい幻聴を聞くなどとはほぼ初めてだ。
「若くて綺麗な女が毎日朝から晩まで家にいて、俺は家にカノジョもセフレも連れ込めないんだよ。ラブホ行けっての?立派な家があるのに?ねぇ、叔母さん。責任とれよ。責任取れる?俺がその辺の女襲って裁判になったら。叔母さんがやらせてくれなくて溜まってたんだって俺、言うからね」
 やはりそこにあるのは脅しではなく懇願に似ている。彼は怯えている。今日の彼は普段から威圧している女に対して弱々しい。
「お、かしい…………おかしいよ、京美くん。熱でもある?」
 油断している掌から腕を引き抜き、額に手を伸ばしかけたが、触れる前に打ち落とされた。
「触るなよ。勘違いするだろ。それとも、いいの?」
 朋夜は目を逸らした。視界の端で甥の陰が大きく動く。そのことを認めた途端、彼女の身体は椅子から浮いた。足の裏も床を離れている。甥に軽々と持ち上げられていた。両者ともに寝間着であるけれども、それはさながら姫を奪う王子の如き構図であった。
「京美く……、何……っ!」
 膝の裏に通された右腕と上体を支える左腕がいつ飽きてしまうか分からない。そう高い位置ではないけれども転落を恐れて身が強張る。膝裏も少し窮屈だ。
「どこにも行かせない……」
 嗅ぎ慣れた洗濯用洗剤とボディーソープの匂いに混ざり危険な香りが蒸れて薫る。
「下ろ、して……」
 甥の奇行に朋夜の声はか細くなる。
「下ろして……京美くん」
「どこにも行かせない」
 朋夜はめでたいことに、自分の部屋に送られるものと思い込んでいた。ところが叔母の体重をものともせず進む足は、彼女の部屋の前を通り過ぎた。
「京美く……」
 叔母を下ろし忘れたのだろうか。京美は懐いていた亡叔父の妻を抱き抱えたまま自分の部屋へと入ってしまう。扉を越えた途端にむわぁと籠りきった京美の匂いがした。部屋は暗く、電気機器の灯りがどこか無機質な不気味さを醸し出す。朋夜は室内を見渡していたが、それもベッドに下ろされるまでの話だった。徐ろに押し倒されて後頭部が枕を潰す。またほわぁと甥の匂いがそよぐ。部屋自体が少し柑橘類臭かった。洒落たグレープフルーツのような爽やかさと蜜柑に近い甘さの正体はベルガモットの香りかも知れない。
「叔母さん」
 艶冶えんやな空気を纏い、ただでさえ部屋は視界不良だというのに甥が距離を詰めて、その美貌は暗色に塗り潰される。下唇になめらかなむず痒さを覚え、朋夜は顔を横に曲げた。枕に髪が擦れる音がやたらと耳に残る。
「だめ。キスしろ」
 頭を固定され、むず痒さも感じさせない、確かな接触があった。麦藁人形に五寸釘でも打ち込むような妖異な威圧を以って、彼女は義甥に口腔を荒らされた。相手が甥であること、身の危険であることも忘れた。否、忘れたわけではないのだろう。考える余裕など彼女にはなかった。口角を盛んばかりに、女の身体の水分という水分を吸い付くさんばかりに、呼吸も許さず窒息死させることも辞さない様子で京美は叔母を舐めしゃぶり、啜り、噛みついた。技量はない。だがみなぎり昂った精力すべてを、彼は誤ったつがいに叩きつける。冷めきった主人に似つかわしくもなく、この部屋はまたたくまに蒸し風呂になってしまった。サウナ室になってしまった。頼りないながらに照明の役割を果たしていた電子機器も故障してしまいそうな温気うんきだった。
「んっ………も、ぃや………」
 熱帯夜の悪夢から覚めたみたいな有様で朋夜はスズメバチを蒸し殺すミツバチみたいになっている甥を突っ撥ねる。ところがその力はあまりにも微弱であった。しかし京美はぷるぷると戦慄いている叔母から離れる。2人分の混ざり合った口水は粘度を伴うものの、朋夜が身を起こしたことで消え失せた。
「こうなってるってことは、叔母さんも不快いやってだけじゃないんじゃない?」
 彼の指が朋夜のとろんだ口の中を遊ぶ。そして抜かれた親指と人差し指の間が糖液めいたので繋がっている。
「やめ……」
「見ろよ」
 命令口調ではあるけれどもその態度は柔らかい。ずいと前に卑猥な有様の指を差し出される。朋夜は喧嘩中の劣勢の野良猫みたいに横顔を見せる。
「いや………いや、」
「清楚なフリしていやらしいよね、叔母さん」
 彼女はこの状況に危機を確かに感じていた。感じていながらまったくこの場で考えるべき事柄とは違う記憶がその乱れて蒸れ薫る髪の下を掠めていった。

―清楚ぶりやがって。カラダも許してくれない女と、これから付き合っていける気しないんだけど。
 玄関ドアを開けた向こうで顔見知りの若い女が眉を下げていた。彼女を庇うように出た男がドアの隙間を埋める。


「なんだよ」
 そして義甥のいくらか興の削がれたような声色で我に帰る。
「傷付いた?」
 彼は叔母に唇を落とす。その情緒不安定ぶりに朋夜は戸惑う。
「そのほうが燃えるって言ってるんだけど」
 叔母の肌を啄む軌道が妖しくなる。それは接吻を狙っている。
「キスさせろよ」
「だ……め、」
 肩を揺らす手を叩き落とす。甥と目を合わせられない。纏う雰囲気が危うさを増す。
「じゃあ勝手にするから」
 力加減はなかった。もう一度彼女は熱帯夜に突き堕とされる。叔母が魘されても甥が聞き入れることはない。
「んっ、ふ………っ、」
 絡め取られ、啜られ、縺れ合わされる。病熱が生じたみたいだった。口角から溢れ出る湧き水だけが冷たい。身体が弛緩した途端に朋夜は胸元を触る体温に気付く。剥がそうとした。しかし阻止される。彼はブラジャーのない胸の柔らかさで遊んでから先端を摩った。
「んっぁ……」
 背筋を駆ける甘い感覚に一瞬彼女の身体がベッドに沈む。甥はそれを見逃さなかった。叔母の弱いところを執拗に掻く。力も入れず、爪も立てず、指の側面で掻き毟る。断続的な刺激が脳を震わせ、下腹部を痺れさせる。
「ぁ、っん……ぁ……」
 腰が揺れる。密着した口元がわずかばかり解かれた。
「朋夜」
 蜜糸が紡がれる。湿った声音で彼は叔母を呼び、布を押し上げる小さな勃起を摘んだ。
「や、ぁんっ」
 胸に刻まれる快感で身体も理性も熱く潤んでいく。
乳首ここだけでイく?」
 恐ろしいことを言われた気がしたが、頭に入ることなく、彼女はベッドの上でのたうち回る。
「朋夜」 
「い、や……!」
 甥を拒むために伸ばした腕を掴まれる。
「朋夜」
 彼は叔母の擦り付け合う膝を割り開いて自ら挟まれに入った。
「いや………、だめ………京美く……っぁっ、!」
 膨らんだものが布越しに当てられる。ショーツと寝間着を隔ていてもその硬さを教えるみたいに彼は腰をさらに進める。
「だめ、京美くん……!それだけは……」
「嫌なの?俺とセックスするの、嫌?」
 朋夜は何度も頷いた。
「弟とは生でするくせに?」
 彼女はまた数度頷く。これ以上、不道徳な行いを積み重ねることはできなかった。
「俺とは嫌なんだ?」
 幾度も頷く。眼前では意地の悪い嗤いが聞こえた。鼻を鳴らしている。
「だって、京美くんは、」
「甥だもんな。旦那さんの甥っ子。叔父貴に対する裏切りだとでも思ってる?恋愛結婚じゃなかったクセに……」
 その後はさらに攻撃的で容赦のない暴力であった。朋夜は寝間着を剥がされ、下半身などは布一枚も残されていなかった。手淫を施されて彼女は呆気なく果てる。そして京美も肌を剥き出しにした。忘我の境を彷徨っていた朋夜も、そのグロテスクで猟奇的な牡の気配に寒気を催した。
「こんなの、だめ……だめなの…………京美くん…………」
「俺の指でイっておいて今更じゃない?」
「でも、これは……」
「やらせろ」
 近付く男の腰を突っ撥ねる。
「赤ちゃんできちゃうから……」
「いいよ。大学辞めて、働く。そうしたら」
 これは何のストッパーにもならなかった。何より弟との行為によって朋夜は薬を飲んでいる。そしてそのことは京美も知っている。彼はクリニックに付き添っている。
「だめ……!そんな、の……」
「叔母さん」
 朋夜はとりあえずのところ止められている恐ろしいものを凝らしていたが、改めた口調で呼ばれたことによってそこから顔を上げた。
「叔母さんからキスしてくれたら避妊ゴムしてあげる。してくれないなら生でする。赤ちゃん、できればいいじゃん。嫌なの?他に好きな人がいるわけ?誰だよ」
 朋夜は爛々とした眼差しをくれる甥を見つめる。
「も、持ってるの……?あるの?ゴ、ム………」
 おぞましさに喉がつかえた。
「あるよ」
 京美がふとベッドから身を捻ったとき、朋夜は逃げ出そうとした。ところが看破されていたらしい。彼は叔母の足首を掴んで逃亡を阻止した。
「ダメだよ、叔母さん。これがただの強姦魔だったら、殺されてたよ、叔母さん。俺だから殺さないけど」
 怒った様子はなかった。普段どおりに淡々と喋っている。
「京美くん………京美くん…………放して………」
「約束破ったじゃん。キスするのも嫌な俺にレイプされなよ。頬っぺにチュウしてくれるだけでよかったのに、それも嫌だったんだ。じゃあ生でレイプされなよ。中出しされるんだから可哀想だね、叔母さん」
 彼は大胆に脚を持ち上げ、叔母の腰を引き寄せる。下半身と下半身が密着した。牝牡ひんぼが無理矢理に番う。
「あああっ!」
 硬く熱く猛々しい楔の侵入によって身体が裂けそうだった。暗い部屋にもかかわらず、朋夜は激しい視界の明滅を覚える。
「―っはぁ、」
 牝の肉路を自ら抉じ開けて割り入った牡も苦しげに呻く。
「叔母さん……」
 汗が二粒ほど朋夜の冷汗脂汗に覆われた顔面に滴り落ちる。彼女は自分の呼吸を整えるので精一杯だった。
「叔母さん」
 壊れた機械の如く、叔母を犯す無法者はそればかり繰り返す。卑猥な水音がそこに伴う。彼はまだ抗い、この肉体を除けようとする叔母の手を片方ずつ丁寧に剥ぎ取って一紮いちからげにした。まったくの無意識のような虚ろな所作だった。甥はただ目を見開いて己の上に乗る禽獣を凝視する叔母を見つめ返して腰を打つ。やがて彼女の両手首を掴んでいることに飽きたのか、片方だけ放し、まだ捕らえているほうの手に指を組ませて握り締めた。途端に牡は牝を慮ることも忘れて抽送を速める。
「あっひ、」
 隘路あいろを削られたことで朋夜が身動ぐ。だがそれを禁じたのか、京美は彼女を力任せに抱き締める。拘束に等しかった。番いの最奥を探っている。本能が関係性を塗り潰す。彼にとってこの牝は恩人の妻であろうと、心身共に自身の子を孕ませる最適な相手でしかなかったようだ。女体を穿つ肉杭がさらに膨らみ勢いを増していく。ベッドが軋んだ。衣擦れも凄まじい。
 まもなく、朋夜は腹の中に義甥の精を流し込まれるのを感じた。夫の兄の子の種を受けてしまった。怒涛から潺(せせらぎ)に変わった放精はまだ続く。牡の蠕動に女の肌はベッドを揺蕩う。すぐには現実を理解しきれなかった。そうしているのが彼女には良かったのかも知れない。ところが現状を知らせるパズルのピースは残酷にも自ずと嵌められていく。
「叔母さん……」
「い、や!放してっ」
 降り注ぐ雨粒に厭悪感が湧いた。朋夜は知らない男に混乱する。身体中を蒸され、全身がぐっしょりと湿しとった。
「だめ、もう放して……!」
 身を捩ってもう一度脱走を試みる。しかし腰肉に指が減り込むほど乱雑に掴まれ、腹の中の硬い芯は黙れとばかりに彼女の肉路を叱責する。
「あぁ!」
「放さないよ、叔母さん。次は叔母さんだから」
 先程とは打って変わって、普段の、日時的な、平生へいぜいの冷淡で薄情、突き放すような調子が戻っている。
「いや……っ」
「嫌いや言って、俺のこと締め付けてイかせたの誰だよ。弟ともあんなにしててこんなきついの?すごいね」
 羞悪しゅうおのあまり朋夜は顔を覆う。
「俺だけ気持ちヨくなってごめんね、叔母さん。強姦魔みたいにされるのあんまり感じないんでしょ。神流かんなおぢさんみたいのじゃ」
 京美は嫌がる叔母の手に手を合わせた。指の狭間に指を組む。空いた手が彼女の胸の膨らみを愛撫し、もう片方の胸には口で淫技を施す。
「あっ、んっ、ぃや……」
 胸の先端を甘噛みされ捏ね回される感覚に彼女は自身の腹に沈む牡釘を食い締めた。蜜腫れを起こした肉路を押し潰すかたちになる。悦びに似た痺れが頭に靄をかける。
「……叔母さん」
 胸の蕾を味わうのをやめて京美は顔を上げた。強く寄せられた眉間の皺は色香を帯びている。
「放し、て……」
 下腹部に現れた異変に朋夜は戸惑い、怯えている。
「叔母さん、気持ちいいの?」
 揶揄ではなかった。ただ機嫌を窺うように彼は問う。しかし答えさせるつもりはないらしい。甥はゆっくりと腰を引いて、一気に突き入れる。粘膜と粘膜が擦れる。
「んあっ、んっ」
 彼女は抑えきれない嬌声を上げ、咄嗟に口元を覆う。
「気持ちいい?」
 甥はまた問う。そして徐々にピストン運動を速めていく。朋夜の体内中心部で起こる疼きが間隔を狭めた。
「あ、あ、あ、っあんっ」
「イくときは言って」
「だ、め、っやだ、んゃ、あっあっ!」
 何を言われているのかも分からなかった。弟に無理矢理絶頂させられたときとはまるで違う、鋭敏で深い快感はむしろ恐ろしかった。
「だめ、もうだめ、とめ、て……っあっ、」
 彼女の意思に反して肉体は甥を求めた。奥へ奥へと促し、引き絞っている。確実に子種を得ようと番いに媚びた。
「イけ」
 臍の下で猛烈な活気が咲きそうになっている。朋夜は首を振るが、甥は意地の悪そうな笑みを浮かべて彼女に腰を打ち付ける。肌と肌のぶつかる音がうるさくなった。
「京美く、んっあああッ!」
 脳味噌が白く爆ぜる。朋夜は年下の、それも義理の甥にしがみついた。悦楽に苛まれ、男を挿された箇所が収縮する。きつく内部へ案内し、射精を促した。本能に忖度はない。おぞましさ、忌々しさが却って感覚を研ぎ澄まさせる。
「朋夜……っ!」
 掠れた唸りを聞いた。互いに互いを圧死させるつもりなのか力の限り抱き締め合う。二度目の怒涛を腹の中に感じた。悪寒に似た喜悦に混乱し、結局何も考えられなくなった。
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