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蜜花イけ贄 不定期更新/和風/蛇姦/ケモ耳男/男喘ぎ/その他未定につき地雷注意

蜜花イけ贄 9

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「お召し物を汚してしまいました。お赦しください。弁償いたします」
 葵が立っていた。急激な興奮状態に桔梗は分別がつかず、アサガオの前に立ちはだかったまま警戒を強める。
「桔梗様。わたくしです。葵でございます」
 彼女の膝は震えていた。
「桔梗ちゃぁん」
 酒気を帯びた舌足らずな喋り方で呼ばれ、桔梗は地面に崩れ落ちる。脇に恐ろしい濡れ方をした肉塊が転がっている。それを見ないフリをして尻餅をつくアサガオの手を取る。
「何かあったの……?」
 真っ赤に染まった桔梗にアサガオは目を大きくした。
「いいえ」
 桔梗とアサガオの手が重なった瞬間、葵が口を開いた。
「灯りはありますか」
「いいえ……」
「そうですか」
 彼は真横の肉塊を一瞥して顔を背けた。
人狼ひとおおかみの目撃情報がこの近辺から出ております」
 べったりと鮮血で湿しとった身体に視線を感じる。
人狼ひとおおかみとは……?」
「人の姿をした野犬です。人を食い殺しますからご注意ください」
 葵がアサガオから目を離しさない。それが桔梗の気になるところだった。
「ご一緒します。いいですね」
「はい」
 アサガオを引き上げる。その途端、葵が彼を射抜くように捉えるのが桔梗にも分かった。そのとき彼女はまるで第三者になった。火炙りにされるのに似た険が皮膚を走る。
「歩ける?アサガオさん」
「うん……暗くなっちゃった。ごめんなひゃい、桔梗ちゃん」
 彼は桔梗に撓垂しなだれかかる。彼女が酔っ払いに寄り掛かられるのと同時に、葵は刀のに手を伸ばし、割って入った。悪寒が全身に叩きつけられるみたいな殺気である。
「薬師さま!」
 咄嗟に批難の声を上げる。何故彼が凡俗な村人に抜刀しようとしたのか。しかしまだ刀身は鞘口から動いていない。おどしであったのかも知れなかった。
「……申し訳ありません」
 葵の手が刀から落ちる。
「桔梗ちゃん、べたべた。汚れてるん?」
 彼は自分の草臥れた野良着の袖や裾を摘んで真っ赤に染まった顔を拭こうとする。
「いいの、アサガオさん」
 繊維の硬くなった生地を汚れから遠ざける。
「でもこの前も拭いてもらったから」
「大丈夫。ほら、腕を貸して」
 覚束ない足取りの筋肉質な身体を背負うようにして歩く。葵は先を歩くが忙しなく後ろの2人を顧みる。
「ごめんなさい。ついてきますから」
 農作業で鍛えられた身体が不安定に揺らぎ桔梗の身体も流されて真っ直ぐ歩けない。
「結構な量を召し上がったようですね」
 彼は空ろに言った。ただ紙面を読み上げている様子だった。なにしろ、その目は桔梗も酔っ払いも見てはいない。その奥を見ていた。叩き斬られた死骸がある地点を凝らしている。
「薬師さま……?」
「振り返らず、わたくしを通り越してくださいまし。明日までこの身が帰らなければ、椿の山茶さんざ殿に馬を連れてここへ来るようにと」
「え……?」
 葵はすんとしてもう取り合わない。桔梗は右へ寄ったり左に流されたりして葵を通り越す。途端に彼は刀を引き抜いた。地を蹴る音がする。何かを斬ったが、暗闇に紛れている。
「薬師さま……」
「野犬です。血の匂いを追ってきたのでしょう」
 何事もなかったとばかりに彼は報告した。
「お先に行ってください」
「怪我したんですか」
「いいえ。後ろからついていきます」
 振り向きもしなかった。その背中を見ながらまともに歩けないアサガオを連れ帰る。

 夜としかいえない夜という時間帯に蟄居先の屋敷に着くと玄関には椿の山茶がいた。土間で七輪をやり、魚の干物の匂いが抜けきれずに充満している。ダリアを侍らせ、酒を飲んでいる。否、小さな器に注いで舐め取っているようなものだった。
「随分と長丁場なこって。うっかり邪魔しちまったがな」
 この横に座らされたダリアというのが女物の衣類に身を包み、痛々しい傷を隠す垂れ布というのも女物の衣を引き裂いたようなようなものが使われていた。唇に紅を引いて、黒く長い毛のかつらをかぶせられている。彼は桔梗の姿に目を見開いて、腰を上げかけたが、椿の山茶に制される。
「遅くなって申し訳ありません。ダリア、お客様の前でなんて身形をしているの」
 主人として罪のない使用人の異変を叱らねばならなくなった。女子おなごに扮した哀れな下僕は合わぬ色のまゆずみで強調された眉を下げた。
「まぁまぁ、待ちなさいや。ガキでも野郎を侍らせるのは趣味じゃねぇんでね。一肌脱いでもらったっつうわけさな。この場合、一肌着てもらったんか?ンで、お嬢さんは、どうしたぃ。想い余って、とうとうっちまった?」
 萎縮しているダリアから目を逸らし、小さな酒器を舐めている椿の山茶に視線を移す。桔梗がその鍾甌ちょくを持ったときはもう少し大きく感じられた。
 彼は暗赤色をかぶった女の顔を肴にしているみたいに酒をあおった。
「おしゃかなさんのにほひ……」
 ぐったりとしたアサガオが彼女の陰から土間に踏み入った。口笛が上がる。
「まさか一服盛ったんかぃ?」 
「薬師さまから説明があると思います」
「そうけ。ンじゃあ、葵ノ君のところに行くかね」
 桔梗はすぐ傍でまだ周りを気にしている葵に声を掛けた。
「湯の用意はしてんのかぃ?」
 酒飲みが着せ替え人形にされた哀れな下僕に訊ねる。彼は女主人を気にした。
「あ……い、いいえ………」
「ほうけ。ま、あーしが付き合わせちまったからな。そろそろうちの風呂が沸くからよ、うちで入るこったな。おれぁまだ飲み足りねぇんでここに残るが、お稚児ちごさんはどうする?」
 桔梗は眉を顰めてしまった。
「ダリアはそういうのではありません」
「そうけ。彼氏のほうはどうする」
 毛物羽物の戯画でみる獅子を思わせたしっかりとした顎がアサガオを差した。
「そちらのお宅に上げるのがお嫌なら、この家で寝かせます」
「そら助かる。ま、悪いようにしねぇっすわ。ここできっちり面倒看るさ、酒飲みながらな。主に大麗たいれいがね」
 この女性装をさせられたダリアに新しく名前まで与えたらしい。
「すまない、ダーシャ。あの干柿をくれた人だよ」
 框にアサガオを座らせるが、彼は床板に背中が吸い寄せられて寝そべってしまった。
「アサガオさん。以前お話した火傷を負ったわたしの使用人です。何かあれば、これに……」
「………干柿好きな子だ?女の子なんだねぇ」
 アサガオは眠そう目を必死に開閉する。
女子おなごではないんです」
 椿の山茶が酒を舐めながら笑っている。
「女の子じゃないんだ。そかそか。火傷良くなるといいねぇ」
 身体を起こそうとするが、アサガオの背中はやはり床板に吸われている。抱え起こす。彼は赤黒いものに染まった桔梗をきょとんと見つめて野良着の袖を摘む。また彼女を拭こうとしていた。
「アサガオさん」
 桔梗の手が近寄る手を握って止めた。重げに持ち上げられていた目蓋が閉じていく。
「ダーシャ、わたしの部屋から布団を取ってきて。彼に掛けて差し上げて」
「一体何を見せられてんだかな」
 椿の山茶は七輪の脇に屈んでいた。魚の加減を見ている。
「……すみません」
「葵ノ君に案内してもらいやっせ。よかんべ?葵君」
 玄関前に突っ立って待っている葵が中を除いて了承した。
「ごめんなさい、お待たせしてしまって……」
「いいえ。では、ご案内いたします」
 葵は頭を下げて薬屋裏の住居に連れて行った。そう大きくない浴殿みたいなのがある。ひのきの香りがした。脱衣所に入る。
「お着替えをお持ちします」
「使用人に頼んでくださいな」
「すでにご用意しております」
 扉越しに言葉を交わした。すでに用意があると言えども、薬屋の店員にもこの住居の中でも女の姿は見たことがない。
「用意とは?」
 べったりと汚れた衣類を落とす。襦袢まで染みていた。
「……わたくしが、贈り物を用意しておりました」
「何故」
「意味はありません。ただ、桔梗様に贈り物がしたかったのです。贈る機会を見計らっているうちに……今に至ってしまいました」
 桔梗は何と返して良いのか分からなくって口を閉ざす。薄らと汚れた襦袢も肌着も脱いで一糸纏わぬ姿になると風呂場に入った。まず手桶で湯を掬い、温度を確かめてから、大きく汚れた髪と顔にぶちまける。
 身を清め、湯に浸かることもなく出ようとした。だが脱衣所とを隔てる戸が開き、桔梗は背を向け、うずくまる。
「だ、誰ですか!」
 非難の声を上げた。どういう理由か好意を寄せられているらしい薬師か、漁色ぎょしょく家で名高い椿の山茶であろう。或いは事情を汲めていないこの家の使用人か。
 覗かれていたのかも知れない。壁上部にの縦格子を睨む。
「あ、桔梗ちゃんも、お風呂~?」
 間延びして呂律の回っていない喋り方は酔っ払っている最中のアサガオだ。
「アサガオさん……」
 蟄居先の屋敷に置いてきたはずだった。
「おでもお風呂入ったほうがいいって」
 彼も頬や手の甲にわずかばかり血がついていた。直接浴びたものというよりは、桔梗を介して汚れたものらしい。
 ふらふらとした足取りが危ない。なかなかの酔い振りだ。
「アサガオさん、お風呂入って大丈夫なの?」
「桔梗ちゃんの叔父さんが、一緒に入りな、って」
「叔父さん……?」
 今にも転びそうなアサガオの元に寄った。相手は酔っ払いである。胸と股を隠すことに気が取られ、足を滑らせる。
「あっ、桔梗ちゃん」
 鍛えられた肉体を押してしまう。彼の腕が桔梗の背に回った。視界が急下降するが、大した衝撃はなかった。
「痛くない?」
 酔っ払った声が下から聞こえる。彼女は床にしては柔らかさのある質感に戸惑う。
「あ、あ、アサガオさん……」
 酔いの回っている友人を敷いている。
「気を付けてね。昔風呂場で転んで顎が切っちゃって、じ様に怒られたっけ。ば様も泣いちゃってさ」
 彼は軽快に笑った。互いに全裸であることも分かっていない様子だった。日常会話がそこにある。
「背中、流します。助けてもらったから……」
「じゃあ、洗いっこしよう。じ様とやって最後だから嬉しいな」
 相手は異性だ。しかし変わらない態度に安らいでしまう。 
 酔っ払いを座らせた途端に、彼はぐるりとこちらを向いた。
「背中向けて~」
「ア、アサガオさん……」
 アサガオは石鹸を揉みしだく。泡がたった。
「あ……」
 背を向けた途端に接した肉感に桔梗はくすぐったさを覚える。
「桔梗ちゃんの背中はほっそいね。じ様のよりも小さいから、折れそう。痛くない?」
「痛くないけど、くすぐったい」
「じゃあそろそろ終わりっ!」
 彼は彼女の背に湯を打った。なかなか容赦がない。
「もう平気!もう平気よ、アサガオさん!」
「ほぇ、流れた?ちゃんと流さないと赤くなっちゃうからって、じ様が言ってたん」
 またばしゃ、と今度は緩やかさを持って湯を打たれる。
「もう流れたから。次はアサガオさんの番」
 彼の裸身の背中を見るのは初めてではないが触れるのは初めてだった。洗ってみると見た目よりも肩幅を実感する。
「お湯、わたしもばしゃってやったほうがいい?」
 手桶に湯を掬う。
「うん」
 桔梗も湯を打った。アサガオは童子みたいにきゃはきゃは面白がった。数度湯を打った。
「ありがとう、桔梗ちゃん。お風呂入って待ってて。おでも身体洗ったら入るから!」
 もう出るつもりだったが、蟄居先の屋敷よりも広さのある湯殿に惹かれてもいた。
爪先で温度に慣らしてから入っていくと、この湯殿には座面があった。そこに腰を掛ける。髪を洗い、身体を洗っているアサガオの鼻歌に聞き入る。やがて湯殿にやってきた。目の前に晒される男体に桔梗は目を逸らす。彼女の夫は常に全裸だが、どこか生々しさがなかった。人ではないからかも知れない。あれは夢、幻に似ていたからであろう。だがアサガオは彼女の目の前に存在している。
 彼は湯殿の座面に腰掛ける桔梗と対面するように中程で沈んだ。肩まで浸かっている。酒が入っているだけに目を離せない。
「じ様とね、お風呂で語り合ったん。へ、へ、なんか懐かしいな。ば様は女の子だから一緒じゃなか―」
 長いこと喋っていたアサガオは急に口を閉じ、きょとと正面に座っている桔梗を見つめた。それから湯を鳴らし大きな波紋をたてて立ち上がった。
「桔梗ちゃんも女の子か。一緒に入っちゃいけないんだった」
「ここは公衆浴場じゃないから……」
 大きな目はあどけなく彼女を見つめる。
「そかそか」
 彼はまた湯に沈む。顔の赤みが増している。
「アサガオさん、大丈夫?長湯はあまり……」
「へーき~」
 彼はへらへらと笑っている。桔梗は根比べみたいに湯に浸かっていた。視界が白く霞むが、湯気に違いない。ここは風呂場である。水面から出たアサガオの肩から上の姿が黒ずんでいく。





 口腔が冷えていく。喉が潤う。唇が柔らかかった。厭忌感を覚えて身動ぐ。
「桔梗様」
 縛られたような指を開いた。人の肌を感じる。交わりそうにない他者の体温もある。
「目が覚めたようでよかった……」
 桔梗は鼻先のぶつかりそうなほど至近距離にいる人物を見ることもなく、首を曲げて周りの様子を窺った。部屋は暗い。後頭部は柔らかく、ここは布団の上らしい。
「アサガオさんは……?」
「別室で寝ています」
 葵はあまりにも近い距離を保ったままだ。おそるおそる手を伸ばし、彼の肩を押す。
「桔梗様……」
 葵はすぐに身を引きはしたものの、掠れた声で女を呼ぶと、彼もおそるおそる彼女に触れた。
「なん……ですか…………」
「いいえ。少し水をお飲みください。湯中ゆあたりを起こしたようですから」
 桔梗は身体を起こした。渡された湯呑みから水を飲む。
「一番風呂をいただいてしまってすみません」
「いいえ」
 布団の脇に座す葵の様子はぎこちない。何か用があるみたいなのだが、それを口に出さずにいる。桔梗なりに考えた。少し殺風景な部屋と乱雑な文机からここが彼の部屋であることに思い至る。
「ここは、薬師様のお部屋ですか」
「……はい」
「ごめんなさい、枕を濡らしてしまいました」
「いいえ」
 まだ声は掠れている。低さも加わった。
「迷惑ついでにアサガオさんはこのままでもいいですか。面倒はわたしが看ますから……」
「迷惑ではありません。あの方のことは一晩こちらでお預かりいたします」
 それを聞いていくらか安堵する。布団から出た。襦袢を身に纏っていた。蟄居先の屋敷から持ってきたものらしい。裸を見られてしまったことを実感する。
「何から何まで、すみません」
「いいえ」
「また明日の朝、アサガオさんを迎えに参ります」
「はい。お召物はこちらをどうぞ」
 葵は桐箱を引き寄せた。
「それは?」
「先程申し上げた贈り物でございます」
「ですが……」
「桔梗様の丈に合わせて仕立てました。わたくしが持っていても仕方のないものでございます。お受け取りくださいまし」
 どういう折に贈ろうと思ったものなのであろうか。皆目見当がつかない。襦袢を持ってくるついでに単衣も持ってくればよかったのである。
「では頂戴します」
 何かしら返さねばならない義務感が発生が気怠い。
 葵は自身の額を叩くように頭を抱えた。
「では、失礼します。お気を付けて」
 そう言って、自分の贈ったものが役目を果たすところも見ずに退室した。桔梗も深紫か濃紺か分からない暗い色に明るい模様の散りばめられた着物を身に纏って玄関へ出た。ぬっと、玄関を隔てた奥の廊下から椿の山茶が現れた。
「あの兄ちゃんの宿代、葵ノ君はもらっていかなかったんかい」
 彼は顎を撫で、新たな着物をしげしげと眺める。
「宿代……ですか。お支払いします。ただ、屋敷に戻らないと……」
「勘違いしてもらっちゃっちゃっちゃっちゃぁ困る。金子きんすに窮してるわけじゃねぇよ」
 大きな掌が肩に乗った。
「お優しいこったな。それか童貞か。童貞はないな。あれで茉莉様がそうとう気を利かしてんだ」
 指ががっしりと肩を掴んだ。6尺をゆうに越える背丈が迫り、桔梗の身体が強張った。
「宿代、手間賃、貸衣装代、込み込みで、男が金子きんす以外に欲しいもん。な~んだ」
「身体で、お支払いすればいい……?」
「話が分かるお嬢さんだな」
 一度は帰した女が惜しくなったらしい。侮蔑の念が湧いた。
「着物まで貸しちまった葵ノ君がお代をいただかねぇんじゃあ、あーしがいただこうか。合意するかぃ?」
「…………はい」
 返事をした直後、彼女の身体は拾い上げられ足は床から離れた。
「男を見る目がねぇな。どれだけおさんが尽くしても、あの兄ちゃんはこの献身にきっと気付かねぇんだぜ」
「いいです、別に。見返りなんて求めていませんから」
 アサガオが川べりで手を振る姿が急に思い出された。歌う姿や、上唇が八重歯で滞ってから閉じられる口元、それから袖を摘んで汚れを拭おうとするところ。彼が可愛い。知らないものを見せられ、しかしどこか懐かしくもある。心地良い時間が彼の傍を流れている。
「そうけ。ま、そのうち欲しくなる」
 長い廊下を渡り、椿の山茶は襖を弾く。
「さっさと懲りて、誰が一番おさんを想ってくれているか考えるこったな。身分を考えやっせ。身分を。生憎、葵ノ君は大切な想い人が生娘でなくてもいい、人妻になっても慕っていたいって有り様だからな。童貞か?童貞なはずはないんだけどな。それでも思い悩んでるんは1人の女に対してだっつーから、甘えたらどうだぃ」
 桔梗は臥榻がとうの上に下ろされた。
「ま、おれぁ悪いヤツなんでね。訳の分かってねぇ娘っ子もいただくが」
 帯を解かれ、着付けたばかりの衣も剥がされていく。襦袢が開き、裸体になった。強い眼差しを感じる。胸と陰部を腕で隠した。
「湯中りしたんだんべ。あんまり無理はさせねぇよ」
 女物の華美な生地で仕立てた着物を彼も脱いだ。
「そうでなくても、無理することになるんでね」
 椿の山茶は自身の指を舐めてから桔梗の腕を投げ捨て、脚と脚の間に手を埋めた。
「……っ、」
 探っている指遣いが不快だった。腰の力が御せなくなってしまう。
「あの兄ちゃんとはしなかったんかい」
 粘膜と粘膜の間に割って入った。内部をまさぐられる。
「するわけありません!」
 彼女は胸と顔を隠して喚く。
「裸のおさんを見て?勃たなかった?そらぁ、そうとうの物好きか、男色なんしょく家なんだな。可哀想に、お嬢さん。失恋かぃ」
「違います!そんなんじゃ……」
 今度は椿の山茶の頭が彼女の股に埋まっていった。腿を開かされる。抵抗すると、叱責するように軽くはたかれた。
「ぃや………っ!」
 胸にあった腕も彼女の顔を隠す。乾いた秘所に舌が伸びる。確かな部分を避けて周りを舐めねぶられた。時折、思わせぶりな吐息が敏い箇所を掠める。内腿が震えた。膝が跳ねる。脚を閉じようとするたびに髪が当たり、頑健な指が柔肌に食い込む。
「あ………、あっ………」
 巧みな口淫によって瞬く間に潤わされる。踵が敷き布団を蹴り、やがて張った。継続的には与えられない鋭い快感が気紛れに訪れる。
「ん………ぁ、っ」
 指を噛んだ。枕に髪が擦れる。両脚を抱き寄せられ、舌戯が大胆なものに変わっていく。とうとう陰花は溢水し、下方から湿った音がたった。股に挟んだ椿の山茶の舌の動きに伴って掻き鳴らされる。
「ぅ……あ」
 椿の山茶は長いこと彼女の秘蕊を唇と舌で愛撫していた。
「ぁんっ」
 内部へ舌先が入り込み、桔梗の身体は波打った。甘い声が漏れる。
「かわいいな、お嬢さん」
 椿の山茶は口を離した。臥榻と布団の繊維を軋ませて桔梗の頭に顔を近付けた。
「さすがに舐めるのはきちぃか」
 彼女の口腔に大きな指が乱入した。蕩けた唾液を混ぜながら舌を引っ張られる。
「あ………ふ、」
「じゃあ、お嬢さんのかわいい姿で勃たせてくれや」
 凶暴な顔がそこにあった。舌の裏表の感触を確かめられている。吐気には及ばない仄かな苦しさが頭をおかしくさせた。
「葵ノ君には内緒だ」
 舌を扱かれ、指が離れた。糸を引いて繋いでいた。
「これはお嬢さんも、その気ってことけ」
「あ………っ、」
 彼は指に纏わりついた口の情液を舐め拭う。それから守り手のいない胸に大きな手が重なった。
「腹回りの割りにたわわなこって」
 その手付きは柔らかさを堪能していた。
「叔父貴も考えが甘ぇよ。こんな宝璐ほうろを外に出してちまって」
 散々に手触り、肌触りを愉しんだ後、彼の指は芯を作る色付きを摘む。
「あっ……」
「可愛い姪を見せびらかして嫁がせて、出世狙いかと思いきや、そんなつもりはなかったなんて、通じるわけなかろうが。え?桔梗お嬢さんよ。誰が悪い?叔父貴だ。恨む相手を見誤っちゃいけねぇや」
 胸の先端を甚振る手を引っ掻く。起き上がろうとすると抱き竦められ、暴れるたびに刻み込まれる悦楽が彼女を妨害する。
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