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キミがスチおセチ 全3話/正月モノ/鷹揚甘々カレシ/ケモ耳男
キミがスチおセチ 2
しおりを挟む家族団欒で過ごす居間に淫らな声がこもっている。小松はブラジャーから色付きを出し、龍奈の巧みな指技に咽喉を擦り切らせる。潤んだ眼が虚空を見つめ、がくがくと身をのたうたせる。この2人の間にはネコが割り込み、密着を許さない。しかしこの小さな毛物の介入が、偕老同穴の契りを結んでいるも同然の男女の貪婪な営みを妨害することなどできはしなかった。多少の隙間ができたからといってそこに冷えた風が吹き込む仲でもない。
「今日のブラジャーは何色なのかな?今夜のお楽しみだね。いっぱいして、お風呂入ってからまたしよ?」
龍奈にとって小松の耳殻は唇用のガムだった。
「んっ………ぁ、おふ、ろ………はいって、からっ………っ」
リップカラーは度重なる深いキスで落ち、また快楽に溺れ嚥下も忘れて溢水する蜜涎もさらに色を落としていく。しかし異なる色を見せるだけであって褪せることはない。
「だぁめ。こまちゃんの匂い嗅ぎたいもん」
強めに敏感な部分を撚られる。
「あっ、んや、んっ………」
身悶える小松に容赦はない。痛みにまでは至らない力加減で弱い場所が擦り潰される。下腹部に電流が走ったまま止まらない。
「り、なちゃっ、もう………っ、!」
継続的な強い刺激は彼女がこの言葉を発した途端に治まってしまった。
「あ………ぁ、」
「うん……?なぁに、こまちゃん。どうして欲しい?」
びく、びく、と小松の身体は波をうつ。両胸の先端を摘むだけ摘んでいる指に彼女は胸を揺らす。恋人の手を使った自涜みたいだ。
「こまちゃん、どうしたのかな」
「あ………んっ、ん、」
自ら痴首を引っ張られにいく。彼の指の腹の少し乾いた質感が気持ち良い。
「どうしたのかな、こまちゃん」
緩やかに前後に揺れ、乳頭自慰に励んでいた彼女のそこを、龍奈は力を入れて膨らみに押し戻す。胸全体が内部から快感に包まれる。
「あ、はんんっ」
「おっぱいキモチイイね」
龍奈は彼女の耳の裏を一舐めする。
「あ、あぁ………、り、なちゃ……ぁ」
唇が高温のチョコレートみたいに瀞んでいた。舌先で耳朶を突かれるとあらゆる感覚が脳天に集まり、そこから全身に甘く柔らかな悦びが再分配されていく。龍奈の指淫によって両胸の媚粒二つに直接与えられるものとはまた異質の、身体の芯まで痺れるような深いものに包まれている。
「イこっか」
言葉と裏腹に龍奈は一旦彼女から手を離した。下腹部内に渦巻く鈍い滾りも途絶えたかに思えた。
「龍奈ちゃ………」
このほんの停止で龍奈の指による胸の絶頂を唆される。彼と会う日でも毎度ではない、気紛れに叩き込まれる苛烈な淫楽をいやでも期待した。否、それは仕組まれた予知だったのかもしれない。
「りな、ちゃ………」
「キモチイイね。声がすっごくえっちでかわいいことになってるよ」
小松は龍奈の手が離れているのをいいことに、身動いだ。
「ん?どしたぁ?」
「りなちゃ、んの顔………見たい」
しかし叶わなかった。指と指に捏ねられ、擂り潰されても勃ったままの色付きが少し強めに抓られる。深く響く甘楽くに彼女は唇は氾濫を起こした。一筋の糖蜜に似た糸が滴り落ちる。それが激しく揺蕩うのは、龍奈の凶暴なほどの淫らな指だけのせいではなかった。小松は首を仰け反らせる。本日2度目の乳頭刺激によるオーガズムは1度目と比べものにはならなかった。肉体の持ち主本人よりもこの肌を知り尽くし、奥のほうまで繋がれてしまっている。
「あんっ、ああああっあ、っ……ッ!」
龍奈の腕の中で、しかし彼から逃げようと前のめり気味で、彼女は触られてもいない腰を揺らした。忘我のあまり嚥下も機能せず、口からの淫液が宙で躍る。
「キモチイイ?ごめんねぇ。キモチイイこまちゃんの顔みたら、夜まで我慢できなくなっちゃうよ」
彼は腰を突き上げる。背中でぐにゃりとした。にゃうん、と間の抜けた鳴き声が上がる。龍奈の股ぐらにある大きな布蛹を黒糖パンみたいな色味の腹に押し当てられたのが大変不服のようである。
「あ、たいがちゃん。たいがちゃんもいたんだねぇ」
凄まじい肉情の余韻に浸っている小松には聞こえていなかった。引き攣りが治まると後ろに引き寄せられる。とうとうネコは甘たるく蒸れた2人の狭間から抜け出した。
「こまちゃん、かわいい」
龍奈は薄ぼんやりした意識の中にいる恋人へ接吻を繰り返す。
「疲れちゃった?」
「大丈夫……龍奈ちゃんは………?」
毛むくじゃらが退き、彼の腹と彼女の背中が密着したことで、腰に当たる膨張に気付く。胸を触り、痴態を聞いて龍奈も昂っているらしい。冲天の心地が冷めかけていたというのに、恋人の肉体反応に心身が各々異なった歓びを起こす。
「ボクちゃん?」
晒した胸を隠しながら身体を捻った。はたから見るとあまり想像するにも至らないが、何枚か布を隔てた彼の胸板は逞しい。そこを枕に鼓動を聞く。その硬さを感じ、腹奥が甘く疼く。
「ボクちゃんは、夜までとっとく。焦らされるの好きなん」
「ほんと……?」
膨らみに手を添える。質量が伝わった。龍奈の眉が微かに歪む。もう少しその表情を崩してみたくなる。
「ダメだよぉ、こまちゃん」
恋人の腿の狭間に当てた手を取られ、彼はまるで絵本の王子みたいに接吻する。
「でも、龍奈ちゃん………」
手の甲に唇を落とされている間、ネコはまた小松の元にやって来た。
「今おトイレ作ってあげるからね」
彼女の身体に毛を擦り寄せて喉を震わせている。立ち上がった小松に龍奈もついてくる。後ろから抱擁したまま、2人でのしのしと歩いた。その後を人間でないものが追ってきた。
「重たいからボクちゃんが持つ」
彼はひょいと持ち上げ、また纏わりついて移動した。ダンボールに砂を流し込む。その間龍奈はネコと遊んでいたが、彼は好かれていないようで、毛だらけの腕で突っ撥ねられ、蹴り上げられ、抱き上げることができないでいる。
「たいがちゃんは女の人が好きなんだ。こまちゃんは渡さないよぉ。こまちゃんはボクちゃんの~」
抱き上げることを諦めて龍奈は前足を支えてネコを二本足で立たせる。
『たいがちゃんも、こまちゃんのことすちぃ』
ネコ砂の袋を留めている小松にネコが喋りかける。それは明らかに龍奈の声であったけれども、一瞬彼女は動揺した。ネコが人間になることはない。
―はずだ。金銀歌合戦を炬燵で見ているうちに龍奈は横になって、そのままふわりと眠ってしまった。彼の呼吸を阻まんとばかりにネコが胸の上に座っている。
「龍奈ちゃん。風邪ひいちゃうよ」
炬燵布団で軽く龍奈を叩く。しかし目覚めない。
「トラちゃん。龍奈ちゃんが重いから退いてね」
抱き上げようとした瞬間に、夜になって丸くなった瞳孔と小松の瞳がぶつかった。しかしすぐに逸れた。ネコは大きな欠伸をしてピンク色の口内と質感の強い舌を見せる。
「ごめんね。わたしのお膝にいよっか」
目が合っただけでまだ触ってもいないというのに、このよく人馴れした毛むくじゃらは低い音を轟かせて振動しはじめる。柔らかな身体を両側から掬い上げる。非常に毛並みがよい。しかしそう考えていられたのも束の間、両手に持っていたものが耐えがたい重みに変わる。小松の視界が翳った。座っているというのに上半身は均衡を崩し、後ろから倒れる。背中をカーペットに打ち付ける。だが新調したばかりで厚さがあるためこれという痛みはない。翳りは人型だった。逆光によって詳細は分からない。しかしそれが龍奈でないことと、服を着ていないことは分かった。肩と腕の肌理が白く炙られている。
暗さを帯びた姿を探る。金色の虹彩にヒトよりも大きく開いた瞳孔が見下ろされている。昼間に見た全裸の男児よりも体格がしっかりしている。それでいてその顔立ちからはあの子供との相似を多分に見出せた。だがあの子供は小学校低学年といった年頃であったけれども今小松に被さっているのは高校生くらいであろうか。弟よりは大人びて見えた。ところが弟と比較してみたところで、その弟が小松から見ても他の高校2年生と比べるとあどけなく、龍奈のまったく悪意のない揶揄の対象になっている。
小松の通っていた高校でも弟の通っている高校でも校則違反になりそうな長い前髪をしていた。耳も隠れている。否、耳がない。髭はないが産毛が長年剃られず伸び続けたみたいに耳のある部分にはもっさりと長く柔らかな毛が集まっていた。人毛ではない。ファーでも貼り付けたみたいな獣毛である。それでいて特殊メイクじみたものが施されている様子はない。
頭頂に丸みのある大きな耳を生やした美少年が眼前に迫っている。
「トラちゃん……?」
小松は目を見開いた。側頭部より上側に生えた丸耳がぴん、と跳ねた。さらさらとした髪が靡く。かろうじて見える形の良い唇が開いた。何に言おうとしている。しかし次に聞こえたのは雷鳴に似た轟音である。腹を空かした時のものにも似ていた。否、迫力のあるそれは、肉食獣の咆哮に似ている。視覚と聴覚の情報が一致せず思考が停止した。
「んおっ」
横から恋人の間の抜けた声がする。
「龍奈ちゃん」
貧血として覚えのある眩暈に教わる。一瞬眠ってしまっていたみたいだった。すでに視界には見慣れた天井が占めている。小松は身体を起こす。ネコは膝の上で丸くなっている。悪趣味な転寝をしていたのだろうか。
「ごめぇん。寝ちゃった」
「いいの。どうする?龍奈ちゃん。もう寝る?」
龍奈も起き上がり、ぶるぶると首を振った。
「こまちゃんとまだえっちしてない」
無邪気に笑っている。
「お風呂上がりでいいんじゃない?」
「こまちゃんのお下着さん、まだちゃんと見てない」
彼はきょとんとした目を小松に向ける。その要求が彼女には伝わっている。
「ここで見せたら、入ってくれるの?」
「うん」
「…………もう」
小松は服のボタンを外していく。
「寒いから、こっちおいで。ボクちゃんが温めてあげる!」
手招きをされ、小松は彼と同じ場所に入った。ボタンを外す手に龍奈の大きな手が重なる。
「この下着かわいいね。透け透けだ」
キャミソールのレース部分を細長くもしっかりした指が押す。乳房が弾む。
「こまちゃんのおっぱい好き」
「おっぱいだけ?」
「こまちゃんの顔も好き。あと声とね、こまちゃんとするチッス。こまちゃんとのえっちも好き!毎日したいなぁ」
彼は首や肩を吸ってキャミソールの裾を摘んでいる。
「こまちゃんのブラジャーさぁん。出ておいでぇ~」
そして彼もすでに一度、目にしているブラジャーが現れた。膨らみと膨らみの狭間が見える小窓に指を突っ込んで喜んでいる。
「ボクちゃんが小さくなって、ここに挟まりたいなぁ。こまちゃんのおっぱいに潰されたい」
口寂しくなったのか龍奈という男は下着を晒し恥ずかしがって項垂れる恋人の無防備な耳を食んだ。
「ん……っ」
「下は?ボクちゃんまだ見てない。早く見たいな、見たいな」
リズムを刻んで横に揺れている。彼は恋人の下着姿を鑑賞する趣味がある。こういうことはこれが初めてだが慣れるものではない。
小松はいつものとおりショーツのほうもメトロノームの如く横に揺れている恋人の目に晒す。ブラジャーとセットのため同じ色合いに同じ素材だ。
「この下着さん、ボクちゃんの好きなやつなんだ。かわいい。この前のオレンジのやつもかわいかったなぁ。紫色のはセクシー系だねぇ。あの真ん中にでっかいリボン付いてたやつ」
話を聞いていていいのか、肌を辿りショーツに忍び寄る手を気に留めていいのか分からない。
「龍奈ちゃん………手が………」
「寒いからあったかくならなきゃ」
もう開き直っている。指摘した途端に様子を窺っていたような手はショーツの下に潜り込んでしまった。薄い茂みで指を遊ばせている。
「龍奈ちゃん…………」
彼の指の近くでその温もりに呼応している部分がある。
「こっち向いて、ボクのほう見て」
絶対的な命令は優しい声で下される。逆らうことはない。小松は虚ろな悦びに潤む目をして膝立ちになると半回転する。恋人も膝で立っていた。彼を見上げると布のない腰に腕が回った。抱き寄せられる。ショーツの中の腕も捻られる。淡い叢の中にあった指が下降し、秘園に割り入った。
「あっ………」
「キスして小松」
低い声で呼び捨てられる。小松もあまり出会えない龍奈が顔を出している。日常的によく知っている龍奈の二面性は蜘蛛の巣同然に小松を絡めとった。そして綿飴を眉に包まれてしまった。
「龍奈ちゃん」
彼の頬に手を添え、小松からその唇を迎えにいく。触れた瞬間、龍奈の指も彼女の粒舌を捏ねた。
「う……っんふ、」
鋭く確かな快感が走った。甘い声が漏れるのと同時に口腔に彼の微熱が入ってきた。腰を抱き寄せる腕も緩まるかと思うと彼女の背中を愛撫する。
「ぅんんっ、く、……」
敏感な尖膜を擦られ身悶えるけれども背に回った手は力強い。大きな官能を解放しきれず、喘ぐばかりになってしまう。
「ぁ、………は、ぁっ」
呼吸は奪い取られ、下からは宙に放てない淫苦がやってくる。力こそ絶妙に加減はされているが、その手淫から繰り出される艶美な衝動は叩き付けられるようだった。
龍奈を抱き締めるが絡みついた腕は弱々しい。すると彼の手がさらに奥へ進んだ。秘花を割り開き、蜜膜を通っていく。
くちゅ、と音がして、それから頻りに湿った音が続く。
「んっ、んっふ……っァ、!」
嬌声は舌ごと呑まれる。荒れた泉は湧いて止まらず、水糸は微細な動きにも紡がれる。上も下も、龍奈の入っているところは無事では済まない。体面的には水難でありながら、体内では血潮が燃え滾っている。
「イきたい?」
舌が抜かれた途端に冷たく細い鞭が顎を打つ。欲にまみれた眼差しを至近距離から浴び、低い声は耳腔から脳味噌を撫でる。蕩けきった壺肉が龍奈の指を食い締める。彼の身体ならばあらゆる形を覚えている。
「あっあっあっ、んっ、りな、ちゃ………っ」
腹の底から脳天へレーザービームを撃たれているような、快感だった。これよりも恐ろしく甘い接合がこのあと待っているのである。畏れと期待がさらに龍奈の指を食らう。咀嚼し、嚥下しようとしている。
「イきたくない?」
目を合わせたまま動きが変わる。下方で響く粘着質な音を聞かされている。深いキスをしていない今、それは小松にもよく届く。龍奈の指が体内にいること、そして彼の技巧に感じていること、リビングの炬燵前で淫行に耽っていること、訳の分かっていなそうな異種族にそれを見せつけていること。徐々に龍奈の指が鈍くなりつつあることにも気付かず、小松は彼を締め付けて、内部へと誘う。
「イきたかったら、言って」
「あっあっ………龍奈ちゃん…………」
彼女は自ら腰を上下に揺らした。彼の指先を内部で探る。真上の尖肉も、少し離れた双実も粘度の高い口腔も疼いて疼いて仕方がない。
「イきたい、りなちゃ…………イかせ、て…………」
彼の肩に手を回す。下半身が融けていきそうな、理屈ではない不安がある。
「イこうか」
低く掠れても蒸れた小声には欲情の影があった。彼の抱き寄せる力が強くなる。互いの肌と肌のぶつかるところに妖熱が生じて汗ばむ。
蕩けた肉の狭路に勢いのない彼の指が押し入り、先ほどの速さを取り戻していく。
「イけ」
彼の声は腹の中に響く。小松の眉が悩ましげに寄るのと同時に唇に噛み付かれた。小手調べのような接吻もない。彼女の舌を捉え、絡ませ合う。緩やかに衰えた埋み火はあっという間に炎と化す。
どこから奏られた水響なのかも分からない。ただ執拗で粘着質に、いやらしく鳴っている。
「んっ、ふぅ、ぅんんっ、はぁ………ぅんッ!」
やがて彼のピストン運動に小松は蜜肉を収斂させて果てた。2人の縺れ合う舌が妖しい光沢を増す。指淫とキスだけだといいうのに余韻もまた激しく粘こい。龍奈を引き絞る秘路は絶対に彼を放さないという気概があった。
「あ………っ」
宥めるように彼の関節の動きを感じる。唇が離された。力の入らない舌は彼を追う。まだ両者を繋ぐ曖昧な橋が大きく撓んで、呆気なく切れた。
「イっちゃったね、こまちゃん」
くちゃ、と今度は長めの余韻を持たせて蜜孔を掻き鳴らされる。今度は他意のない、ただ彼女の内部を楽しむような手つきで指は依然として止まらない。
「ご、ごめんなさ……」
「ううん。かわいかったよ。ボクちゃんのコト、きゅんきゅん締め付けてきて。早くこまちゃんのナカ入りたいなっ。でもお風呂入ってからね。こまちゃんのえちえちなトコいっぱい見て、汗かいちゃったから臭いの」
汗をかいたのは嘘ではないらしい。確かに彼の肌の照り方が変わっている。龍奈はそういう自分の顔を手で扇ぐ。
「龍奈ちゃんの匂い、嗅ぎたい」
いつも嗅がれてばかりである。龍奈の肩を掴んで小松は首を伸ばした。
「恥ずかしいよぉ」
汗の匂いにのって龍奈の匂いが濃くなっているものの、臭さというほどではない。好いた者のであれば、妙な欲望の起爆剤にも成り得た。
「たいがちゃんはネコちゃん、こまちゃんはワンちゃんだねぇ」
「龍奈ちゃんは?」
「ウサちゃん」
小松と龍奈のネコを巻き込んだ世界観が始まった。金銀歌合戦が休憩時間に入る。ろくに観てもいなかった。
「お風呂一緒に入ろぉ。たいがちゃんもお外で待ってなよ」
しかしネコはこの仲睦まじすぎるカップルに呆れた様子で尻尾をぺちりぺちりカーペットに叩き付けている。億劫げな威嚇にも見える。
「トラちゃんはお留守番ね。ちょっと待っててね」
小松相手にはなかなか落ち着いているネコだった。頭を撫でると、誇らしげにあくびをする。
脱衣所でも彼等は満ち足りないとばかりに絡む。ランジェリー姿にさせたまま龍奈は服を脱ぐ。
「あったかぁい」
上半身を裸にした彼は縮こまっている小松を抱き竦める。
「ストーブも炬燵も大好きだけど、やっぱ冬はこまちゃんだね」
「夏は?」
「冷んやりこまちゃん」
彼はもうすっかり冷めている彼女の髪に頬を擦り寄せる。
「もうちょっとこうしてたい」
「カゼひいちゃうよ」
「うん……」
恋人の手が小松の肩や腕を摩擦する。彼女は尻に当たる熱く固いものに気付いている。
「龍奈ちゃんも、する?」
「まだ、ダメ。夜まで……」
「1回だけ」
彼の腕の中で身体の向きを変える。
「だって、ベッドでいっぱいしたい。新年はこまちゃんのナカで迎えるん」
「でも、わたしだけ気持ち良くなってる」
龍奈は情けない顔をして恋人を抱き締める。
「煽っちゃヤぁよ。おちんちん、痛くなっちゃう」
小松は劣情に濡れた龍奈の双眸を認めて、だがそのままするすると彼の腕をすり抜けて屈み込んだ。
「今年最後に、龍奈ちゃんの舐めた」
見上げる。俯き気味に影を帯びた龍奈の目が震える。
「こ、こ、こまちゃん……」
構わず龍奈の穿いているものに手を掛けた。そして下着を下ろす。布蛹に覆われていた偉容なものが跳び出す。
「こまちゃん……」
元から大きなそれが彼なりに恥ずかしいらしかった。それが血気盛んになるとさらに質量を増す。ある種、自慢にもなりかねないが、可愛いさや可憐さの欲しかった龍奈としてはこの巨物がコンプレックスであったのかも知れない。ただ彼は背が高い。肥えてはいないが華奢でもなく、程良い脂肪と筋肉がついている。そうなると、社会的にも日常生活としても支障が出るほど大きいわけでもない。彼の体格からは想定できる範囲だ。それでもやはり大きいのだろう。小松は男性として見られる異性の肉体など、龍奈しか知らない。
「いただきます」
先端部に一度唇を落とす。びき……と小さな軋みが手に伝わった。
「こまちゃん………っ」
舌を這わせる。口淫されるのが気持ち的に苦手らしい。だが舌の触れた魁偉な器官は緊迫感を持って彼の引き締まった臍まで反る。
真っ赤にした顔で口元を押さえている。泣きそうなほど困った眉と水分の多い眼が小松の保護欲をそそる。目を合わせてから、舐めている様を見せつけると龍奈は顔を両手で覆う。
「龍奈ちゃん、顔見せて」
根本を摘んで扱いた。口には収めきれない。彼もまたコンプレックスになるほどの己の豪茎を理解しているために小松の喉奥まで突っ込もうとはしなかった。
「だって………情けないカオ、しちゃ………っあっ」
扱きながら舐められるのが好きらしい。龍奈は腰をかくんと揺らした。
「こまちゃん、きもちぃ………」
彼が感じているのは硬さと剃り具合、張り具合で分かっている。何度も腹の中に受け入れた洪大な肉楔が、腹で覚えるよりもずっと太く長いことに口接するたび驚いて期待する。
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