お題アリ掌編集。

その他ジャンル(架空取材、架空レポート)

お題「10分間のタイムトラベル」殺生な折衝

「タイムスリップ、タイムトラベルの話があまり好きではないんです。タイムパラドックスを気にしてしまうんです。たとえ10分でも。


死んでいたはずの人間を生かして、生きていたはずの人間が死んだとしたら、その人を遠因として現在の時間軸に大きな変化が顕れるでしょう。人間はいやでも柵しがらみを持ちますからね。まるでひげ根のよう。主根しゅこんは側根そっこんの果てまで把握していませんから、たったその10分間であらゆるものが変わりますよ。たとえ10分でも、人の往く道なんてすぐ変わる。

様々な偶然、些細な出来事、ほんの微かな行動が干渉しあって、割りと今、生きているのって誰かに仕組まれているようで、なんとなくの誰でもない誰かのいたずらみたいなものだったりして。


そういう意味で、年下って怖いんです。あの時、あのカップルを、あの夫婦を別れさせてたら存在しなかったのかもなって。まぁ、もうこの能力があれば、年下も年上も関係ないわけですけれど……10分で十分ですよ！ああ、ギャグじゃなくて。だから、正しく使わなきゃ。

ねぇ、さっき、ちょっとタイムトラベルしてきました。そろそろ効いてくる頃なんじゃないですかね。時限爆弾を仕掛けてきました。5分後に爆発するはずだったので………………

―あ、やっぱりあなた、あのバカップルの胎児こどもだったんだ。じゃああなたが轢き殺すボクのママは生きていられるんですね。ありがとう、消えてください。さようなら」

<2021.12.1>