お題アリ掌編集。

学園・青春

お題「1+1=100」100まで恋打。

「1＋1は～100～」
　オレはなんとか慰めたかった。カレシにフられちゃったキミのコト。まだちょっと沈んだカオしてるから。数学のワーク解きながらおどけてみる。でも、
「やめてよ。あいつはウソ吐くケド、数字は裏切ったりしないんだから」　
　出たよ、理数系。彼女のカレシも理数系。別に理数系だからって、人のキモチがまったく分からないってワケもなくて。だってオレ文系だけど、別に彼女のゼンブが分かるワケでもない。
　彼女はオレのワークを指差して、ここ違うよって教えてくれた。
「いつも言い負かされるの。いつの時？それってお前が疑ってるだけだよね？なにか証拠でもあるの？ってね。わたしは何も返せなくて、そしたら、こんなに自分を疑うヤツとはもう付き合えないって」
　溜息を吐いた彼女をオレはちょっとだけ盗み見する。カレシに浮気されてたんだって。
「オレは、早く別れてくれてよかったって思ってるよ」
　ちょっと睨まれた。人の不幸は蜜の味しちゃうタイプだと思われたかな、違うよ。違うんだ、そんなんじゃないよ。
「１＋１は100ってウソじゃないよ」
　彼女はちょっと呆れて、お菓子食べ始めちゃった。水色のシュシュついてる茶色のポニーテールが揺れて、オレンジ色の唇がイチゴのポツキイをさくさく齧ってる。
「オレ、キミで、オレたちでもよく分かんないスゴイ可能性、見てみたくない？」
　イチゴでも何味でもチョコ以外、それって色と香料で誤魔化してるんでしょ。そんな感じでさ、騙されてみてよ。オレにワンチャンス、ちょうだいよ。オレ、バカでガキみたいで情けないし、お化け怖いし。
「あたしとあんたのカンケーって100までしかないの？」
「えっ、それって……」
「１＋１は1億、くらいデカいこと言ってもらわないと。あんたらしくないよ。堅実過ぎ。１＋１＝田んぼの田はガキすぎ」
　オレってそんなバカに見えてるんだ。うひぃ、元カレの存在がデカいよ。でも負けない。オレだってカレシに立候補できるなら。
「あ、あのさ、オレ……」
　頑張るからね、オレ、キミの隣に立てるような男になるからね。
「さ、ワーク終わらせるよ。それでから、ちょっと買い物付き合いなさいよ」
　ちゃんとした言葉言えないや。情けないケド、今はこれでいいのかな。１＋１はとりあえず２。少しずつ重ねていけばいいし。今のところは。着実に。