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結局は俗物( ◠‿◠ )

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スパークルリアルイデアル 8-2

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「1人で考えんな。俺にも分けろよ」
 無言を貫いていた初音が天井を見つめて口を開く。
「別に」
「別に、なんだよ。面倒臭い女の自覚あるなら言えって」
「初音くんには…」
「関係あんだよ」
 遮られる。
「おもしろい話じゃないから」
「アンタがおもしろい話なんてしたコトあったかよ」
 不貞腐れている。
「おもしろい話なんて期待してねぇよ、分けろよ、俺にも」
 誤魔化すことを許しはしないようだ。初音が一度手を伸ばし、触れようとしたところで手を引っ込める。
「…欲張っちまった。血ももらって人間にしてもらって、アンタから生活ももらって、これ以上…」
「何言ってんの。初音くんがくれたんでしょ、今を」
 身体を背けてた初音の肩を掴んで向かい合う。
「俺は…」
 目を合わせない。突然帯びた弱気。
「前にマフラーの話したの、覚えてる?」
「面倒臭いヤツの話か」
「そう」
 色白だったため、青は顔色が悪く見えそうでワインレッドの柄の入ったマフラーを選んだのをよく覚えている。
「あの話、前付き合ってた人の話なの」
「…今もだろ」
 横目で一瞥される。
「元カレの話すんなよ、って言ってたのに、ごめんね」
「真に受けんな。聞きたい。アンタに似た元カレの話」
 どうせそのこと考えてたんだろ、と言われて逸らされた目元が少し赤い。
「どんなヤツだったんだよ」
 初音が記憶の中の「よく見知った男」に興味を示すとは思わなかった。
「どんなヤツって…」
「性格とか見た目とかだよ」
 初音を拒む意図はないが、初音には関係のない話だと思っていた。暇潰しなのだろう。
「気になるんだよ。アンタがまだ大事に想ってる元カレのこと」
 それとも言いたくないのか、と案じるような声音と表情に、一度触れてみたくなった。そのようなことをさせるくらいに頑なになるつもりはない。
「全然、かっこいい人じゃなかったよ」
 顔立ちも性格も。特に秀でていると思うところもなかった。
「分かんないな、カッコいい方が、いいだろ」
「たまにすごくかっこいいよ。ずっとかっこよかったら、疲れちゃう」
 ネガティヴなところがポジティヴに見えた。性格ばかりが明るい、情けなく考えが足りないところも、そこに巻き込まれることも、全て許せた。
「遠い」
 たった一言、終止符を打つように初音が言う。
「アンタらが遠い」
 でも近付きたい。唇の動きを読む。声は追ってこなかった。初音に掴まれ首に顔を埋められる。
「アンタの傍に居るの、俺なのに、な」
 首筋に歯が当たる。脳内で蘇るいつかの日。テーマパークでいつの間に買ってきたマスコットキャラクターのボールペン。渡しながら照れて笑っている。見上げた先にある口から見えた並びの悪い歯。目立つ八重歯。笑うと特によく見えた。懐かしいと思った。もしかしたらまだどこかで生きているのでは、などという淡い期待まで浮かんで、それから思考は途切れた。 
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