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白と君と別れ

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* * *

 青く拓けた空に雲はあまりなかった。連なる山々が緑の濃淡で立体感を持ち、萌黄の田園に囲まれている。曲がり真っ直ぐ、長く伸びたアスファルトに真っ白な人型の兵器が滑走している。足の裏に内蔵された着陸装置の脚輪キャスターがしまわれ、やがて火を噴く。


 右のシフトレバーを握り込んだとき、肘にそれが当たる。ことりと音がして見ると、カーキー色の経年劣化で白みを帯びた工具箱が置かれている。整備工が置いていったらしい。強めに押してしまえば邪魔というほどのものではなかった。そして近くの山に墜落したヘリコプターの救助に向かう。ナビゲーターから乗組員は全員生存しているとのことだった。日没前に回収する。


 ヒトの胸部に当たるコックピットの甲板が上に開いた。ヘルメットを取って前髪を整える。基地局の外でならば珍しくない出待ちが、ドックの歩廊に発生していた。焦った様子で2人の者がコックピットに上体を突っ込む。腹部に相当する真下のシェルターに納めた墜落機の乗組員たちの家族と思われた。逆光し、表情はよく見えない。帽子や作業服、油に汚れたタオルの片方はメンテナンスの班長だった。同じ格好をしているもう1人が分からない。眼鏡を掛けている。覚えがない。

 

「この機体に工具箱の忘れ物をしてしまいました。ごめんなさい」


 彼の眼鏡が青や緑の反射をした。右のシフトレバーの近くに置かれた工具箱を渡す。工具箱というだけに中身は鉄の塊だらけで重さがあった。

 

* * *
(続かない)

ロボットBLまた書きたかった。→ 18禁ファンタジーBL創作短編集【ああ紙風吹、鶴が舞う電脳】

2020.12.31
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