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弾丸ベルガモット 全8P/一人称×4/女性キャラあり/フィストファック/濁点喘ぎ/アヘ顔/直腸脱
弾丸ベルガモット 5
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-vlam-
姉さんが倒れて、お義兄さんはひぃひぃ言ってたのに発狂しだしてとにかく大変だった。おれも救急車呼ばなきゃってお義兄さんみたいに半狂乱になっちゃったけどハルカは貧血だって言って、ミャーなんとかさんが姉さんのこと抱き上げようとしたのに全然持ち上がらなくてしかも酒臭くて姉さんに触られるのも、臭い息で汚されるのも嫌でおれがベッドまで連れていった。おれの手にはお義兄さんの精子付いてたから姉さんの服にも付いちゃって、でもおれが脱がせていいのか分からなくなって、でも小さい頃から一緒だったし、でも姉さんとお風呂入ったことなんかないし姉さんは軽い女みたいに肩とか腹とか出さないしおれは生脚だって見たことない。とはいえ姉弟なんだし、問題ないよな。下の階ではお義兄さんがまだ発狂していて、姉さんが寝づらいったらない。ハルカとミャーなんとかさんで慰めてるみたいだけど、あれはハルカもおれも迂闊だったよな。あ、そっか、思い出しちゃったんだ、レイプされたこと。それでショックで…おれは姉さんの服を脱がせられない。やっぱりあの小学生も強姦野郎もぶっ殺しておくんだった?おれがブタ箱に入って、姉さんは強姦野郎に怯えなくて済む?無理だ。繊細な姉さんの心に入った傷が消えることなんてない。姉さんは一生怯えて暮らすんだ。克服するしかない。どうやってさ?あの強姦野郎を取っ捕まえて、姉さんの意のままにする。ペットにする。
「晴火」
姉さんのことばっか考えてると周りのこと分からなくなっちゃって声掛けられるまでハルカがおれに抱き着いてるのも分からなかった。
「ハルカぁ」
「どうした?」
真前におれがいる。言ってもいい?だっておれだもん。ハルカはおれより頭がいい。ハルカがいなきゃおれは何も出来ない。
「ハルカぁ。あのね、姉さん、暴行されたみたいなんだ」
「暴行?」
髪染めたおれが片方の眉毛上げててかっこよかった。ハルカは何でも出来るからきっと姉さんを助けてくれる。おれはあったことを話した。おれはただにやにや笑うだけなのにかっこよかった。にやにや、にやにや。おれにはおれのことがお見通し。
「安心しろ。レイプされたのは姉貴じゃない」
かっこいいおれはまだにやにやして、下の階ではお義兄さんが叫んで泣いている。おれはにやにやして、ちょっと怖いなって思った。泣いてるのか、ハルカにされてた時みたいに、
「義兄さんだよ、レイプされたのは」
ハルカが迫ってきておれは後退る。ベッドに座って姉さんが潰れちゃいそうで怖かった。すとん、すとん、って昔やった落ちてくるタイプの回転させて嵌め込むパズルの対戦するゲームみたいな気持ち良さとは違うけど、しっくりくる感じがあった。でもお義兄さんは男だったよな?メス穴とかおまんことか連呼して挿れて欲しいとか言ってたけど。
「ハルカ?何言ってんだ?なんでお義兄さんがレイプされんだよ」
それでなんでハルカはお義兄さんのケツにちんこ突っ込んだの。
「晴火には分からないと思うけどさ、」
おれの顔が近くておれは頷いた。おれこんな風貌してたっけ?
「男には支配したくて抱きたくなることがあんだよ」
鼻の先っちょがベロってした。なんでふざけてられんだろ、姉さんが大変な時だってのに。支配ってなんだよ。誰のこと?姉さんのこと?姉さんのこと支配したくて抱きたいなんて思ったこと一度もない。姉さんに支配されたくて叩かれて踏まれて怒鳴り散らされたいと思ったことはあるけど。
「…ない」
おれはにやにやしていた。姉さんの腹?胸?身体が背中に当たっちゃう。このまま倒れたら姉さんのこと潰しちゃう。絶対柔らかい。絶対気持ちいい。でもおれは姉さんを潰すより潰されたい。
「義兄さんはもう姉貴を抱けない。どうする?晴火」
「ちんこ勃たないから?」
「ちんぽを穴に挿れることに興味がないんだよ」
「なんで?」
ハルカは肩を竦める。それだけケツが悦いんだろ、って言うけど、そんなにいいの?初めて聞いたんだけど。保健の教科書には書いてなかった。エロ漫画の女じゃあるまいし。
「義兄さんが浮気して姉貴を捨ててどっかに行っちゃう前にオレたちで引き留めておいてあげなきゃな。姉貴、悲しむだろ。初めて好きになった男の人なんだしな」
「引き留めるって、縛って監禁するってこと?」
姉さんそんなことしたら怒らない?姉さんに怒られるのはいいけど嫌われるのは嫌なんだが。
「それもなかなかいい案だけどな」
「やだよ」
「あの若い男にホイホイついていっちまうかもな。姉貴を捨てて」
「おれがお義兄さんのちんこ治す」
下の階で悲鳴が上がる。
-blaze-
まるでラブホテルだ。売春宿だよ、清楚な姉貴の自宅は。酔っ払いの抵抗してるらしき手は何の意味もなかった。髪をぐしゃぐしゃに乱して姉貴の旦那は酔っ払いに乗る。姉貴の間男かと思ったら、姉貴の旦那の間男なんだもんな。姉貴の間男ならどうやって追い出そうかと思ったが旦那の愛人じゃぁな。穴兄弟なら仲良くするしかない。
「義兄さん、髪が薄くなってしまいますよ」
酔っ払いに腰を振ってヤケクソになってる姉貴の旦那の頭から手を取って抱き締めてやる。晴火は義兄さんに躍起になってくれればいい。
「義兄さん、何も怖くないですよ。安心してください。ほら、オレが抱っこしてあげます」
酔っ払いはオレを見上げた。酒臭い。姉貴の旦那はオレに腕を回して子供みたいだった。綺麗に櫛が通って固められてた髪が嘘みたいに跳ねて絡まって逆立って、惨めだな。それで男にレイプされて、間男にみっともなく腰振って、嫁の弟に甘えるんだもんな。可愛い。晴火と育てた子猫みたいだ。晴火と育てたカブトムシみたいだ。そうだ、あの猫は姉貴が拾ったのを奪っちゃったんだっけな。晴火と育てるんだ、って。それでも姉貴に懐くんだ。なんで?晴火が姉貴のところにばっかり持っていくからだ。カブトムシは?結局世話は姉貴がして、姉貴が晴火と埋めただろ。違うな、姉貴が埋めるから晴火が付いていった。
「あ…あ、ああ…」
義兄さんのぶっ壊れたケツ穴から汁が落ちていく。姉貴のカラダなんかもう要らないだろ。晴火に返してやれよ。膝裏に手を入れてガキに小便させるみたいな体勢にして、姉貴の旦那にぶっ壊されたオレの欲情を挿してやった。上手いこと言えた?男のケツ穴にちんぽ突っ込む趣味なんざなかったんだから洒落た言い回しでもない。姉貴の運命の王子様みたいなツラして現れて、姉貴とオレたちの熱血大陸を分断して、今じゃ嫁の弟の極太ちんぽ咥え込んでヨガって、現代風にいうと草生える。それっぽく言うなら片腹痛い。四字熟語なら笑止千万?
「あひっあぁ…!!イぐ、奥だ、め……っ!」
オレの膝押して奥突かせてるのは姉貴の旦那。壊された。オレの欲情はぶっ壊されて、オレの気持ちはぶっトんだ。酔っ払いは姉貴の旦那を取り戻そうとするけど嫁の義弟だから?相性はオレのほうがいいんだろうな。
「みあ…みあも、挿れ……っあぁ…!壊せ……壊してく、れ…!んおぉっ」
ちんぽ突き合わせるのはオレなんだけどな。知らないちんぽと姉貴の旦那の中で隣り合わせになる。酔っ払いは愛人らしく恋人繋ぎを始めて、どう頑張ってもあんたは2番手、3番手。愛人の恋人繋ぎ、こんな可愛そうなことってある?
「おっおっおんぉぉお!」
向き合って愛人と盛り上がって下半身はオレが支えてあげなきゃならなくて、でも姉貴の旦那は暴れてオレと愛人のちんぽを締め付ける。
「あ…雪也さん、雪也さん……んっ」
酒臭い姉貴の旦那の間男は女みたいに喘いで雄叫びばっかの姉貴の旦那の口を塞いだ。くちゅくちゅ音がした。ひくんひくん緩んだケツ穴が締まっていく。
「んっ……んむ、ぁ、ん」
「くんん、ぅん…っ!」
強く繋ぎすぎてるみたいで両腕が震えていた。マジでこの愛人は姉貴の旦那のこと好きになってるんじゃないの。カラダだけで満足しとけよ。もうこの人はオレたちの輪の中にいるんだから。
「雪也さん…」
酔っ払いは姉貴の旦那の口の中をリスか何かがエサ探すみたいに漁ってた。
「んっん…ん、」
姉貴の旦那は可愛くあんあん言ったり下品に雄叫びを上げたり忙しいな。晴火にどっちを聞かせる?姉貴には?愛人にだけ可愛い子ぶるのか?姉貴の旦那を愛人のほうに押し付けて大勢を変える。酔っ払いには重いか?キスばっかりでヤる気のない姉貴の旦那の愛人を床に敷いてオレは姉貴の旦那の背中にかぶさる。ごりごりしたり半分は姉貴の旦那の愛人のちんぽにぶつかってるからだけどな。腰を打ち付ける。姉貴の旦那の愛人の亀頭に引っ掛かって抵抗感があるし少し痛いまである。
「あっあっ、あっあっああ…!」
「ハルトく…っちょ、あっ」
酔っ払いの腰もかくかく情けない感じに動いてた。猫の交尾みたい。晴火の精通は確かオス猫同士の交尾だった。あれはマウンティングっていうらしいからオス同士の交尾っていっていいんだかな。オレより早かった。それでオレは……
「あひっあっ、イぐ、くぅぅんんッ」
「んっ…ッ」
なんか姉貴の旦那の愛人まで抱いてるみたいな心地がした。酒臭い。
「あ…あぁ、壊れる、壊れ……っぁひぃ!」
「大丈夫ですよ、義兄さん。オレに身を任せて。ここが悦いんですか?」
「いいっ…!ぎもぢぃっあぁぁあっ!」
高そうなスーツに身を包んで、もうオレの両親のほうから娘を頼むだなんて頭を下げて、いい顔する相手には爽やかに笑って、オレたちの実の兄貴ぶって、姉貴には月でもダイヤモンドでも恥じらう王子様。もう白馬から高級車から乗ってくれって懇願するような。髪なんか絹で出来てんじゃないのって。
「あひ、イぐ、イぐっ!メスイキするっ!孕ませてくださぃぃぃっ!」
涎垂らして鼻水垂らして泣いて叫んで、多分フツーじゃない。でも興奮した。晴火の言う通りちゃんと治してからまた堕として、そん時はちゃんとな?ちゃんと姉貴と晴火とオレの輪の中にすっぽり収まってくれよ。
「雪也さ、」
「も、イ…あぐぁぁぁっ!」
この人といるとオレまでおかしくなるんだなってことだけ分かる。頭の中が真っ白になって、ちんぽの気持ち良さに勝てない。思い出した、晴火が姉貴の風呂の音聞きながらひとりでこそこそシコってるの見てオレも精通したんだ。晴火がオレの顔で姉貴に興奮してることに興奮した。
「あぁ…!」
姉貴の旦那の愛人はまたかくかく腰振るだけだった。イったばっかのオレのカリにもどかしくぶつかる。
-ėrable-
イっちゃうの、すごい気持ちいいけど冷静になっちゃうから雪也さんには毒だった。猛毒だよ。生の梅みたいなものだって。昔姉ちゃんと学校帰りに近くの梅の木に落ちてた梅を拾って食べようとして怒られたな。盗んだんじゃないよ、落ちてたんだよって本当だけど言い訳みたいに並べて。違う、そんな話じゃない。なんとかカブト?姉ちゃんと昔観たドラマのトリックに使われてた。違う、毒の話なんてしてない。姉ちゃんの話だってしてない。酔った頭は色々思い出す。姉ちゃんは死んだろ、もっと大事なことがあるはずなんだよな。もっと大事なことが。
雪也さんはぼくとした後も反省する。恥ずかしいことだって。いやらしいことだって。ぼくのこと優しくしてくれるけど男同士でセックスするのはいけないことで、男を受け入れて気持ち良くなるのはダメなことなんだって。ぼくのこと好きって言ってくれるけど、でも穢らわしいことなんだって。ホテルで頭を抱えて考え込んで悩んで反省して動けなくなっちゃうところ何度もみてたのに。
雪也さんのシャワーが長くてぼくは心配になって開けちゃった。シャワーのホースを首に巻いてる雪也さんを見つけてぼくは声を出してしまった。怖くなって雪也さんを何度も何度も呼んだ。怖くて怖くて仕方がなかった。雪也さんまで死んじゃう?シャワーヘッドを掴んで首を絞めようとする手を掴んだ。雪也さんのことも考えられずいっぱい腕を引っ掻いた。雪也さんが死んじゃう。怖くて怖くて泣いちゃった。止まったはずの涙がまた込み上げて、お風呂場に響いた。ぼくの声を聞いたハルトくんだかヒムラくんだかが来てくれた。雪也さんのお嫁さんの弟さんはぼくとは違って冷静に雪也さんの首からシャワーホースを外した。引っ掻き傷だらけになっちゃった両腕も綺麗に洗ってた。触り方が雪也さんのお嫁さんのことばっか話すほうじゃないほうの弟だ。顔も声も同じで見分けがつかない。確かさっきまでぼくと一緒にいた服装。ちょっと明るい色の入ったパーカー。
「姉貴には言わないほうがいいですね」
冷たい感じで雪也さんのお嫁さんにあんまり興味なさそうなほうの弟さんは言った。ぼくは雪也さんのお嫁さんにちょっと似てる目を見て迷った。言わないほうがいい?知らないほうがいい?雪也さんのお嫁さんなのに?心配させないほうがいいの?
「姉貴もあの調子ですから」
「う、うん…」
ぼく21歳。この人たち双子で20歳だって。1コ違い。でもすごく大人びてる。
「義兄さん、立てますか。もう少し温まってから出ましょう。随分冷えていますからね」
雪也さんのお嫁さんの弟さんはぼくをちらって見た。オレが一緒に居ますって言って、ぼくはヒムラくんだがツムラくんだかに任せた。大丈夫だよね?さっきは少し乱暴に見えた。雪也さんと性交した人が何人いるか、どれくらいの規模なのかぼくは知らない。でも雪也さんのお嫁さんの弟さんもだなんて。雪也さんは多分、無理矢理色んな人にいじめられてる。処理されてなかったお尻の中の精液とか、嵌められてた貞操帯とか手足に付いてた縄の跡とかいっぱい、そういうのは目にしてた。ぼくは見ておいて知らないふりをしてた。ペットの域を出たら、もう会ってくれないんじゃないかって思ったから。危ない場所に頼ったのは、雪也さんが嫌でつらい行為に慣れるためで…偶々会ったのがぼく…薄汚い場所に似合わない綺麗な人だったから、道に迷ってるんだと思った。話が弾んだ。なんとなく楽しかった。息が合う感じがした。こんな人がいるんだと思った。カラダの相性もいいと思った。約束を取り付けると思わなかった。数を重ねるなんて思わなかった。甘えて甘えて、たまに甘えてくれると嬉しくなった。ぼくのほうがのめり込んで深みにハマって、ぼくから会いに来ちゃうなんて思わなかった。反省して悩んで考えて、でも君のは他のとは違うって言ってくれて、これがセックスで、多分雪也さんがやってるのは暴力行為って言いたかった。でも言わなかった。お嫁さんがいるなんて知らずに。そんなこと思ってた。
お風呂から出てきた雪也さんに抱き付く。服が濡れるのは構わなかったけど、綺麗に洗った雪也さんの身体に触れるぼくの服は汚れてる気がした。
「湯冷めしますよ」
雪也さんのお嫁さんの弟さんが言った。ぼくは離れる。雪也さんはぼんやりして、ツムラくんだかトムラくんだかはその後ろから厚めのタオルを構えていた。
「すまない、みあ…」
「雪也さん、いいんす。雪也さんが無事で良かった…」
ぼくはまた涙が止まらなくなって手の甲で拭った。
「ほのかは…?」
「少し早めに寝ています。髪乾かして義兄さんも早く寝ましょうね」
雪也さんのお嫁さんの弟さんは雪也さんに背伸びしてわしゃわしゃ髪を拭いた。水滴が飛ぶ。雪也さんはまだぼんやりしてた。ぼくが手を引いて雪也さんを着替えさせることにした。ノムラくんだかハムラくんだかはにやにやして帰ると言った。雪也さんは恥ずかしがって嫌がるけど雪也さんのお尻は壊れておむつが必要だった。通常時でも少しだけ内部が見えちゃってて、咳とかでも、力んだりしなくたって、雪也さんの意思に関係なく雪也さんのお尻は腸が出てきちゃうことがある。そうなると腸液とかがパンツを濡らしちゃう。出来るだけ雪也さんが恥ずかしい思いしないようにぼくは雪也さんにおむつを履かせる。いつも雪也さんのお嫁さんはどうしてたんだろ。雪也さんはたまに雪也さんのお嫁さんのことも分かっていないくらいヒトリの世界に入っちゃうことがあるから、その時かな。
「い、やだ…みあ、」
雪也さんからしたらいやだよね。恥ずかしいところ丸見えだもんね。でもこれは恥ずかしいことじゃないんだよ、って雪也さんの腿を撫でる。恥ずかしくないよ。ぼくは雪也さんのどんな姿だって受け入れる。大好き。離れたくない。
「みあ、みあ……恥ず…かし、い……」
雪也さんは顔を隠した。優しい人だからぼくを蹴ったり暴れたりしない。でも膝は震えてる。垂れてた雪也さんのちんちんが硬くなってきちゃってて、早く終わらせないと抜かなきゃならなくなるし、多分そうなるとこれまでの経験からいってちんちん擦るだけじゃ済まなくなって、そしたら、負のスパイラルってやつ。雪也さんがしたいなら、きっとぼくはそのまましちゃうから。それでまた穢らわしい、賤しい、汚(きたな)らしい、恥ずべきことだって、反省して後悔して自分のこと嫌いになっちゃうんだから。あれは俺じゃない、って泣いちゃうんだから、ひとりで。ぼくには気を遣ってくれるけど。イくのは気持ちいいのに、どうしてその後は悲しいんだろ。前にスーパーのバイトで値引きシール貼ってたみたいにテープで留める。雪也さんのお嫁さんみたいに上手くいかない気がした。
「みあ……」
「髪乾かして寝よ」
パジャマのズボンを履かせる。雪也さんは小さい声でお礼を言った。抱き締めたくなった。プライドが高いって偉ぶってるとか意地を張ってるとか見下してるとかじゃない。自分の中に一本でも筋があって、どんなことになっても、どんな気分になってもきちんとそれを守れることだと思う。他のものを譲る結果になっても。だから雪也さんは誇り高い人。ぼくはそんな雪也さんが好き。ぼくは何も知らない、何も分からないカオして雪也さんのペットを演る。
「みあ…すまなかった」
目の前が暗くなって、大好きな匂いが胸いっぱいに吸い込めた。
「どうしたんすか、雪也さん」
「……悪かっ、た」
「何も、悪くないっすよ」
出会った頃より痩せちゃった。向かい合って抱き合って、力強く抱き締められながらするのが好きだった。雪也さんの中にいて、雪也さんの腕の中にいる感じが大好きだった。雪也さんとのセックスは大大大好きだけど、でも大事なことはそれだけじゃないし、ぼくが大好きなこともそれだけじゃない。欲深いな、ぼく。雪也さんに会えただけでも幸せなことなのに。
「みあ」
「深秋っす。ぼくのホントの名前」
雪也さんは出会って、本名教えてきて心配になったものだった。ぼくはほとんど本名だけどすべてを言わなかった。この人のバター犬になっても良かった。猫みたいな名前だけど、愛犬みたいに呼んで欲しい。でも予想と逆で雪也さんが猫になったみたいに、みあ、みあ、って綺麗な声でぼくを呼ぶ。
「みあき、」
ぼくの頬っぺたを触ってくれた。でもすぐ傍に来てた雪也さんのお嫁さんの真面目そうなほうの弟さんが雪也さんとぼくを引き離した。
「お義兄さんは姉さんの」
キムラくんだかシムラくんだかって子と見分けがつかないくらい同じ顔がぼくを見た。
「自覚してくださいね、お義兄さん。お義兄さんは姉さんのです。おれ以外の男に近付かないでください。っていうかおれ以外の男見ないでください」
ハルトくんだったかハルミくんだったかって子は雪也さんの前に割って入った。
「姉さんが起きましたよ。行ってやってください」
「ほのか…?」
ぼくは雪也さんをひとりに出来なくて付き添うつもりだった。でもハルキくんとかいってたほうの弟さんがぼくを止めるみたいに見てきて雪也さんの肩に触った。
「お義兄さんを誑かすな」
ぼくはリビングにひとり残される。雪也さんはぼくを気にしてくれた。でも離れていく。そうだよ、ぼくは雪也さんのペット。雪也さんの生活を邪魔しちゃいけない。ぼくの生活が変わってもぼくから雪也さんの生活に入ることなんて許されない。雪也さんにはお嫁さんがいる。雪也さんのお嫁さんのことはぼくも大好き。ぼくは雪也さんのペット。会えなくなって連絡途絶えて、エッチしたら気が済むと思った。でもダメだ、ぼくここに何しに来たの。なんでおうちにまで来ちゃったの。ただのワンナイトで芽生えていつでも切れる関係なのに。それで雪也さんはこの遊びのことハマっちゃうの大嫌いなのに。まだ酔いが覚めてない頭だから?元々ぼくがバカだから?答えが出ない。雪也さんにはお嫁さんがいる。どうして知った瞬間に帰らなかったのさ。雪也さんを2階に送ったハルトくんとかいったほうの子が戻ってきて、買い物に行こうと誘ってきた。
「姉さんにお遣い頼まれたんだよ。あんた1人残してお義兄さんと2人きりになったら嫌だし」
「…雪也さんを1人にさせられないよ」
「首吊っちゃうから?」
あんまりな言いようにぼくは嫌な顔をしちゃう。
「なんでそれ…」
「ハルカから聞いた」
意味分かんない、この人。変な人だな。ハルトくんとかいう子はぼくにお金を差し出した。なんだか嫌だな、こういうの。
「じゃ、あんたが行ってきて。あんた含めて4人分。これ弁当代」
雪也さんのお嫁さんの弟さんだよね?なんでこうも違うかな。でもそっか、ぼくだって姉ちゃんの弟だもん。誰かをいじめる遺伝子があるってなっちゃうよね。
「でもあんた酔っ払いなんだよな。なんで酒飲んで人ン家くるのかな。酔っ払いの若い男が家に出入りしてんの見られてみろよ。姉さんが変な目で見られる。お義兄さんの品位下げんのやめろよ。姉さんにまでとばっちり食らうかも知れないだろ」
ああ、その通りだよ。その通り。ぼくだって毎日お酒入れてるわけじゃない。お酒飲まなきゃいられなかった。いいよな姉ちゃんが生きてるって。姉ちゃんが入院してなくて、姉ちゃんの意識があるっていいよな。貧血で倒れちゃったけど。姉ちゃんが死ぬかも知れないなんて毎日思わなくていいっていいよ、ほんと。姉ちゃんが人に殺されたなんて思わなくていいっていいよな。それが自業自得だったなんて思わなくていいっていいよな。そんなの言い訳にならない。だって雪也さん家には全然関係ない話なんだから。それがただのペットの家庭の事情なら尚更。
「もうほとんどお酒抜けてるよ」
ぼくはお金を受け取って近くのスーパーに行くことを告げた。外はもう暗かった。庭を抜けた頃に残ったはずのハルトくんとかいう子が追ってきた。姉さんに頼まれたのは自分だから一緒に行く、ぼくに何かあったら姉さんが気にするとかそんなことを言ってた。
「姉さんにはお義兄さんと一緒にいるよう言っておいたから大丈夫」
そんな親しいっけ、って感じでオッケーって指で作られる。ちょっと生あったかい風が吹いて、ちょっと田舎っぽい匂いがして少しだけ離れた場所にあるドラッグストアとかスーパーとか塾とか100均があるところがキラキラ光って目が染みた。姉ちゃんと昔近くのコンビニにお小遣いもらって歩いていったな、小学生の頃。姉ちゃん死ななきゃ思い出さなかった。消えてくはずだったかも知れない思い出。要らない情報は消えていくんだ、って前に雪也さんが言ってた。会ったのにナニもしないで、ご飯食べさせてもらった時。きっともっといっぱいあった。姉ちゃんとの思い出。姉ちゃんと天国に逝っちゃった。違うよ、姉ちゃんは地獄に逝くんだ。
「何泣いてんの」
「別に、泣いてない」
「お義兄さんのこと?」
「違う」
ぼくは素直に答えちゃってた。やっぱりまだお酒抜けてない。
「ふぅん」
足音がする。なんで仲良くもないよく知りもしない兄ちゃんと買い物なんてしなきゃならないんだろ。
「男が好きなん?」
イマドキの子って自由でいいよね。でも1コしか変わらないんだった。
「女の人も好きだよ」
「えっ、姉さんのこと!?」
近所中に聞こえるような声で驚いてぼくも少し酔いが覚めちゃう感じがした。
「雪也さんのお嫁さんはそういうんじゃない」
「は?何だよ、それ。デブのブス好きなん?デブでブスな女抱いて善行したって思っちゃうタイプ?は?フツーに姉さんの何が不満なんだよ!」
「え、ええ…」
多分これどっちで答えても不正解なやつだ。
「綺麗でかわいいとは思うけど…」
「なら、いい。でも絶対変な目で見るなよ。姉さんは清廉潔白で優しくて頭が良くて料理が上手くて働き者で美人でいつもいい匂いがするんだからな。惚れない男はいないよ」
自慢の姉ちゃん。後ろめたさなんかない。いいな、いいよな。雪也さんのお嫁さんが姉ちゃんなことがじゃない。後ろめたさなんか何もないってこと。何も知らなかったら泣き喚いてた。ちゃんと母ちゃんの傍にいて、父ちゃんの到着待ってた。ちゃんと葬式の準備した。葬式なんかすんの?うちの娘はいじめっ子です!ってスピーチしてるみたいだ。みっともなくない?いじめられてた子に。姉ちゃんのこと突き飛ばした女に。
「いつも心配になんだよ。あんな綺麗だとさ、変な男に乱暴されんじゃないかって。あんたもそうなのかと思ってたけど」
「するわけないよ」
男と女。雪也さんのお嫁さんの金属バットで不安なんか埋まらない。
「まさか、お義兄さんのほうだなんてな」
殴られた頬っぺたはまだ痛いよ。治ったけどさ。忘れないってイミ。
「姉さんは知ってんの?充電コードで首吊ろうとしたこと」
シャワーホースじゃないの?ぼくは確かめようとして訊けなかった。
姉さんが倒れて、お義兄さんはひぃひぃ言ってたのに発狂しだしてとにかく大変だった。おれも救急車呼ばなきゃってお義兄さんみたいに半狂乱になっちゃったけどハルカは貧血だって言って、ミャーなんとかさんが姉さんのこと抱き上げようとしたのに全然持ち上がらなくてしかも酒臭くて姉さんに触られるのも、臭い息で汚されるのも嫌でおれがベッドまで連れていった。おれの手にはお義兄さんの精子付いてたから姉さんの服にも付いちゃって、でもおれが脱がせていいのか分からなくなって、でも小さい頃から一緒だったし、でも姉さんとお風呂入ったことなんかないし姉さんは軽い女みたいに肩とか腹とか出さないしおれは生脚だって見たことない。とはいえ姉弟なんだし、問題ないよな。下の階ではお義兄さんがまだ発狂していて、姉さんが寝づらいったらない。ハルカとミャーなんとかさんで慰めてるみたいだけど、あれはハルカもおれも迂闊だったよな。あ、そっか、思い出しちゃったんだ、レイプされたこと。それでショックで…おれは姉さんの服を脱がせられない。やっぱりあの小学生も強姦野郎もぶっ殺しておくんだった?おれがブタ箱に入って、姉さんは強姦野郎に怯えなくて済む?無理だ。繊細な姉さんの心に入った傷が消えることなんてない。姉さんは一生怯えて暮らすんだ。克服するしかない。どうやってさ?あの強姦野郎を取っ捕まえて、姉さんの意のままにする。ペットにする。
「晴火」
姉さんのことばっか考えてると周りのこと分からなくなっちゃって声掛けられるまでハルカがおれに抱き着いてるのも分からなかった。
「ハルカぁ」
「どうした?」
真前におれがいる。言ってもいい?だっておれだもん。ハルカはおれより頭がいい。ハルカがいなきゃおれは何も出来ない。
「ハルカぁ。あのね、姉さん、暴行されたみたいなんだ」
「暴行?」
髪染めたおれが片方の眉毛上げててかっこよかった。ハルカは何でも出来るからきっと姉さんを助けてくれる。おれはあったことを話した。おれはただにやにや笑うだけなのにかっこよかった。にやにや、にやにや。おれにはおれのことがお見通し。
「安心しろ。レイプされたのは姉貴じゃない」
かっこいいおれはまだにやにやして、下の階ではお義兄さんが叫んで泣いている。おれはにやにやして、ちょっと怖いなって思った。泣いてるのか、ハルカにされてた時みたいに、
「義兄さんだよ、レイプされたのは」
ハルカが迫ってきておれは後退る。ベッドに座って姉さんが潰れちゃいそうで怖かった。すとん、すとん、って昔やった落ちてくるタイプの回転させて嵌め込むパズルの対戦するゲームみたいな気持ち良さとは違うけど、しっくりくる感じがあった。でもお義兄さんは男だったよな?メス穴とかおまんことか連呼して挿れて欲しいとか言ってたけど。
「ハルカ?何言ってんだ?なんでお義兄さんがレイプされんだよ」
それでなんでハルカはお義兄さんのケツにちんこ突っ込んだの。
「晴火には分からないと思うけどさ、」
おれの顔が近くておれは頷いた。おれこんな風貌してたっけ?
「男には支配したくて抱きたくなることがあんだよ」
鼻の先っちょがベロってした。なんでふざけてられんだろ、姉さんが大変な時だってのに。支配ってなんだよ。誰のこと?姉さんのこと?姉さんのこと支配したくて抱きたいなんて思ったこと一度もない。姉さんに支配されたくて叩かれて踏まれて怒鳴り散らされたいと思ったことはあるけど。
「…ない」
おれはにやにやしていた。姉さんの腹?胸?身体が背中に当たっちゃう。このまま倒れたら姉さんのこと潰しちゃう。絶対柔らかい。絶対気持ちいい。でもおれは姉さんを潰すより潰されたい。
「義兄さんはもう姉貴を抱けない。どうする?晴火」
「ちんこ勃たないから?」
「ちんぽを穴に挿れることに興味がないんだよ」
「なんで?」
ハルカは肩を竦める。それだけケツが悦いんだろ、って言うけど、そんなにいいの?初めて聞いたんだけど。保健の教科書には書いてなかった。エロ漫画の女じゃあるまいし。
「義兄さんが浮気して姉貴を捨ててどっかに行っちゃう前にオレたちで引き留めておいてあげなきゃな。姉貴、悲しむだろ。初めて好きになった男の人なんだしな」
「引き留めるって、縛って監禁するってこと?」
姉さんそんなことしたら怒らない?姉さんに怒られるのはいいけど嫌われるのは嫌なんだが。
「それもなかなかいい案だけどな」
「やだよ」
「あの若い男にホイホイついていっちまうかもな。姉貴を捨てて」
「おれがお義兄さんのちんこ治す」
下の階で悲鳴が上がる。
-blaze-
まるでラブホテルだ。売春宿だよ、清楚な姉貴の自宅は。酔っ払いの抵抗してるらしき手は何の意味もなかった。髪をぐしゃぐしゃに乱して姉貴の旦那は酔っ払いに乗る。姉貴の間男かと思ったら、姉貴の旦那の間男なんだもんな。姉貴の間男ならどうやって追い出そうかと思ったが旦那の愛人じゃぁな。穴兄弟なら仲良くするしかない。
「義兄さん、髪が薄くなってしまいますよ」
酔っ払いに腰を振ってヤケクソになってる姉貴の旦那の頭から手を取って抱き締めてやる。晴火は義兄さんに躍起になってくれればいい。
「義兄さん、何も怖くないですよ。安心してください。ほら、オレが抱っこしてあげます」
酔っ払いはオレを見上げた。酒臭い。姉貴の旦那はオレに腕を回して子供みたいだった。綺麗に櫛が通って固められてた髪が嘘みたいに跳ねて絡まって逆立って、惨めだな。それで男にレイプされて、間男にみっともなく腰振って、嫁の弟に甘えるんだもんな。可愛い。晴火と育てた子猫みたいだ。晴火と育てたカブトムシみたいだ。そうだ、あの猫は姉貴が拾ったのを奪っちゃったんだっけな。晴火と育てるんだ、って。それでも姉貴に懐くんだ。なんで?晴火が姉貴のところにばっかり持っていくからだ。カブトムシは?結局世話は姉貴がして、姉貴が晴火と埋めただろ。違うな、姉貴が埋めるから晴火が付いていった。
「あ…あ、ああ…」
義兄さんのぶっ壊れたケツ穴から汁が落ちていく。姉貴のカラダなんかもう要らないだろ。晴火に返してやれよ。膝裏に手を入れてガキに小便させるみたいな体勢にして、姉貴の旦那にぶっ壊されたオレの欲情を挿してやった。上手いこと言えた?男のケツ穴にちんぽ突っ込む趣味なんざなかったんだから洒落た言い回しでもない。姉貴の運命の王子様みたいなツラして現れて、姉貴とオレたちの熱血大陸を分断して、今じゃ嫁の弟の極太ちんぽ咥え込んでヨガって、現代風にいうと草生える。それっぽく言うなら片腹痛い。四字熟語なら笑止千万?
「あひっあぁ…!!イぐ、奥だ、め……っ!」
オレの膝押して奥突かせてるのは姉貴の旦那。壊された。オレの欲情はぶっ壊されて、オレの気持ちはぶっトんだ。酔っ払いは姉貴の旦那を取り戻そうとするけど嫁の義弟だから?相性はオレのほうがいいんだろうな。
「みあ…みあも、挿れ……っあぁ…!壊せ……壊してく、れ…!んおぉっ」
ちんぽ突き合わせるのはオレなんだけどな。知らないちんぽと姉貴の旦那の中で隣り合わせになる。酔っ払いは愛人らしく恋人繋ぎを始めて、どう頑張ってもあんたは2番手、3番手。愛人の恋人繋ぎ、こんな可愛そうなことってある?
「おっおっおんぉぉお!」
向き合って愛人と盛り上がって下半身はオレが支えてあげなきゃならなくて、でも姉貴の旦那は暴れてオレと愛人のちんぽを締め付ける。
「あ…雪也さん、雪也さん……んっ」
酒臭い姉貴の旦那の間男は女みたいに喘いで雄叫びばっかの姉貴の旦那の口を塞いだ。くちゅくちゅ音がした。ひくんひくん緩んだケツ穴が締まっていく。
「んっ……んむ、ぁ、ん」
「くんん、ぅん…っ!」
強く繋ぎすぎてるみたいで両腕が震えていた。マジでこの愛人は姉貴の旦那のこと好きになってるんじゃないの。カラダだけで満足しとけよ。もうこの人はオレたちの輪の中にいるんだから。
「雪也さん…」
酔っ払いは姉貴の旦那の口の中をリスか何かがエサ探すみたいに漁ってた。
「んっん…ん、」
姉貴の旦那は可愛くあんあん言ったり下品に雄叫びを上げたり忙しいな。晴火にどっちを聞かせる?姉貴には?愛人にだけ可愛い子ぶるのか?姉貴の旦那を愛人のほうに押し付けて大勢を変える。酔っ払いには重いか?キスばっかりでヤる気のない姉貴の旦那の愛人を床に敷いてオレは姉貴の旦那の背中にかぶさる。ごりごりしたり半分は姉貴の旦那の愛人のちんぽにぶつかってるからだけどな。腰を打ち付ける。姉貴の旦那の愛人の亀頭に引っ掛かって抵抗感があるし少し痛いまである。
「あっあっ、あっあっああ…!」
「ハルトく…っちょ、あっ」
酔っ払いの腰もかくかく情けない感じに動いてた。猫の交尾みたい。晴火の精通は確かオス猫同士の交尾だった。あれはマウンティングっていうらしいからオス同士の交尾っていっていいんだかな。オレより早かった。それでオレは……
「あひっあっ、イぐ、くぅぅんんッ」
「んっ…ッ」
なんか姉貴の旦那の愛人まで抱いてるみたいな心地がした。酒臭い。
「あ…あぁ、壊れる、壊れ……っぁひぃ!」
「大丈夫ですよ、義兄さん。オレに身を任せて。ここが悦いんですか?」
「いいっ…!ぎもぢぃっあぁぁあっ!」
高そうなスーツに身を包んで、もうオレの両親のほうから娘を頼むだなんて頭を下げて、いい顔する相手には爽やかに笑って、オレたちの実の兄貴ぶって、姉貴には月でもダイヤモンドでも恥じらう王子様。もう白馬から高級車から乗ってくれって懇願するような。髪なんか絹で出来てんじゃないのって。
「あひ、イぐ、イぐっ!メスイキするっ!孕ませてくださぃぃぃっ!」
涎垂らして鼻水垂らして泣いて叫んで、多分フツーじゃない。でも興奮した。晴火の言う通りちゃんと治してからまた堕として、そん時はちゃんとな?ちゃんと姉貴と晴火とオレの輪の中にすっぽり収まってくれよ。
「雪也さ、」
「も、イ…あぐぁぁぁっ!」
この人といるとオレまでおかしくなるんだなってことだけ分かる。頭の中が真っ白になって、ちんぽの気持ち良さに勝てない。思い出した、晴火が姉貴の風呂の音聞きながらひとりでこそこそシコってるの見てオレも精通したんだ。晴火がオレの顔で姉貴に興奮してることに興奮した。
「あぁ…!」
姉貴の旦那の愛人はまたかくかく腰振るだけだった。イったばっかのオレのカリにもどかしくぶつかる。
-ėrable-
イっちゃうの、すごい気持ちいいけど冷静になっちゃうから雪也さんには毒だった。猛毒だよ。生の梅みたいなものだって。昔姉ちゃんと学校帰りに近くの梅の木に落ちてた梅を拾って食べようとして怒られたな。盗んだんじゃないよ、落ちてたんだよって本当だけど言い訳みたいに並べて。違う、そんな話じゃない。なんとかカブト?姉ちゃんと昔観たドラマのトリックに使われてた。違う、毒の話なんてしてない。姉ちゃんの話だってしてない。酔った頭は色々思い出す。姉ちゃんは死んだろ、もっと大事なことがあるはずなんだよな。もっと大事なことが。
雪也さんはぼくとした後も反省する。恥ずかしいことだって。いやらしいことだって。ぼくのこと優しくしてくれるけど男同士でセックスするのはいけないことで、男を受け入れて気持ち良くなるのはダメなことなんだって。ぼくのこと好きって言ってくれるけど、でも穢らわしいことなんだって。ホテルで頭を抱えて考え込んで悩んで反省して動けなくなっちゃうところ何度もみてたのに。
雪也さんのシャワーが長くてぼくは心配になって開けちゃった。シャワーのホースを首に巻いてる雪也さんを見つけてぼくは声を出してしまった。怖くなって雪也さんを何度も何度も呼んだ。怖くて怖くて仕方がなかった。雪也さんまで死んじゃう?シャワーヘッドを掴んで首を絞めようとする手を掴んだ。雪也さんのことも考えられずいっぱい腕を引っ掻いた。雪也さんが死んじゃう。怖くて怖くて泣いちゃった。止まったはずの涙がまた込み上げて、お風呂場に響いた。ぼくの声を聞いたハルトくんだかヒムラくんだかが来てくれた。雪也さんのお嫁さんの弟さんはぼくとは違って冷静に雪也さんの首からシャワーホースを外した。引っ掻き傷だらけになっちゃった両腕も綺麗に洗ってた。触り方が雪也さんのお嫁さんのことばっか話すほうじゃないほうの弟だ。顔も声も同じで見分けがつかない。確かさっきまでぼくと一緒にいた服装。ちょっと明るい色の入ったパーカー。
「姉貴には言わないほうがいいですね」
冷たい感じで雪也さんのお嫁さんにあんまり興味なさそうなほうの弟さんは言った。ぼくは雪也さんのお嫁さんにちょっと似てる目を見て迷った。言わないほうがいい?知らないほうがいい?雪也さんのお嫁さんなのに?心配させないほうがいいの?
「姉貴もあの調子ですから」
「う、うん…」
ぼく21歳。この人たち双子で20歳だって。1コ違い。でもすごく大人びてる。
「義兄さん、立てますか。もう少し温まってから出ましょう。随分冷えていますからね」
雪也さんのお嫁さんの弟さんはぼくをちらって見た。オレが一緒に居ますって言って、ぼくはヒムラくんだがツムラくんだかに任せた。大丈夫だよね?さっきは少し乱暴に見えた。雪也さんと性交した人が何人いるか、どれくらいの規模なのかぼくは知らない。でも雪也さんのお嫁さんの弟さんもだなんて。雪也さんは多分、無理矢理色んな人にいじめられてる。処理されてなかったお尻の中の精液とか、嵌められてた貞操帯とか手足に付いてた縄の跡とかいっぱい、そういうのは目にしてた。ぼくは見ておいて知らないふりをしてた。ペットの域を出たら、もう会ってくれないんじゃないかって思ったから。危ない場所に頼ったのは、雪也さんが嫌でつらい行為に慣れるためで…偶々会ったのがぼく…薄汚い場所に似合わない綺麗な人だったから、道に迷ってるんだと思った。話が弾んだ。なんとなく楽しかった。息が合う感じがした。こんな人がいるんだと思った。カラダの相性もいいと思った。約束を取り付けると思わなかった。数を重ねるなんて思わなかった。甘えて甘えて、たまに甘えてくれると嬉しくなった。ぼくのほうがのめり込んで深みにハマって、ぼくから会いに来ちゃうなんて思わなかった。反省して悩んで考えて、でも君のは他のとは違うって言ってくれて、これがセックスで、多分雪也さんがやってるのは暴力行為って言いたかった。でも言わなかった。お嫁さんがいるなんて知らずに。そんなこと思ってた。
お風呂から出てきた雪也さんに抱き付く。服が濡れるのは構わなかったけど、綺麗に洗った雪也さんの身体に触れるぼくの服は汚れてる気がした。
「湯冷めしますよ」
雪也さんのお嫁さんの弟さんが言った。ぼくは離れる。雪也さんはぼんやりして、ツムラくんだかトムラくんだかはその後ろから厚めのタオルを構えていた。
「すまない、みあ…」
「雪也さん、いいんす。雪也さんが無事で良かった…」
ぼくはまた涙が止まらなくなって手の甲で拭った。
「ほのかは…?」
「少し早めに寝ています。髪乾かして義兄さんも早く寝ましょうね」
雪也さんのお嫁さんの弟さんは雪也さんに背伸びしてわしゃわしゃ髪を拭いた。水滴が飛ぶ。雪也さんはまだぼんやりしてた。ぼくが手を引いて雪也さんを着替えさせることにした。ノムラくんだかハムラくんだかはにやにやして帰ると言った。雪也さんは恥ずかしがって嫌がるけど雪也さんのお尻は壊れておむつが必要だった。通常時でも少しだけ内部が見えちゃってて、咳とかでも、力んだりしなくたって、雪也さんの意思に関係なく雪也さんのお尻は腸が出てきちゃうことがある。そうなると腸液とかがパンツを濡らしちゃう。出来るだけ雪也さんが恥ずかしい思いしないようにぼくは雪也さんにおむつを履かせる。いつも雪也さんのお嫁さんはどうしてたんだろ。雪也さんはたまに雪也さんのお嫁さんのことも分かっていないくらいヒトリの世界に入っちゃうことがあるから、その時かな。
「い、やだ…みあ、」
雪也さんからしたらいやだよね。恥ずかしいところ丸見えだもんね。でもこれは恥ずかしいことじゃないんだよ、って雪也さんの腿を撫でる。恥ずかしくないよ。ぼくは雪也さんのどんな姿だって受け入れる。大好き。離れたくない。
「みあ、みあ……恥ず…かし、い……」
雪也さんは顔を隠した。優しい人だからぼくを蹴ったり暴れたりしない。でも膝は震えてる。垂れてた雪也さんのちんちんが硬くなってきちゃってて、早く終わらせないと抜かなきゃならなくなるし、多分そうなるとこれまでの経験からいってちんちん擦るだけじゃ済まなくなって、そしたら、負のスパイラルってやつ。雪也さんがしたいなら、きっとぼくはそのまましちゃうから。それでまた穢らわしい、賤しい、汚(きたな)らしい、恥ずべきことだって、反省して後悔して自分のこと嫌いになっちゃうんだから。あれは俺じゃない、って泣いちゃうんだから、ひとりで。ぼくには気を遣ってくれるけど。イくのは気持ちいいのに、どうしてその後は悲しいんだろ。前にスーパーのバイトで値引きシール貼ってたみたいにテープで留める。雪也さんのお嫁さんみたいに上手くいかない気がした。
「みあ……」
「髪乾かして寝よ」
パジャマのズボンを履かせる。雪也さんは小さい声でお礼を言った。抱き締めたくなった。プライドが高いって偉ぶってるとか意地を張ってるとか見下してるとかじゃない。自分の中に一本でも筋があって、どんなことになっても、どんな気分になってもきちんとそれを守れることだと思う。他のものを譲る結果になっても。だから雪也さんは誇り高い人。ぼくはそんな雪也さんが好き。ぼくは何も知らない、何も分からないカオして雪也さんのペットを演る。
「みあ…すまなかった」
目の前が暗くなって、大好きな匂いが胸いっぱいに吸い込めた。
「どうしたんすか、雪也さん」
「……悪かっ、た」
「何も、悪くないっすよ」
出会った頃より痩せちゃった。向かい合って抱き合って、力強く抱き締められながらするのが好きだった。雪也さんの中にいて、雪也さんの腕の中にいる感じが大好きだった。雪也さんとのセックスは大大大好きだけど、でも大事なことはそれだけじゃないし、ぼくが大好きなこともそれだけじゃない。欲深いな、ぼく。雪也さんに会えただけでも幸せなことなのに。
「みあ」
「深秋っす。ぼくのホントの名前」
雪也さんは出会って、本名教えてきて心配になったものだった。ぼくはほとんど本名だけどすべてを言わなかった。この人のバター犬になっても良かった。猫みたいな名前だけど、愛犬みたいに呼んで欲しい。でも予想と逆で雪也さんが猫になったみたいに、みあ、みあ、って綺麗な声でぼくを呼ぶ。
「みあき、」
ぼくの頬っぺたを触ってくれた。でもすぐ傍に来てた雪也さんのお嫁さんの真面目そうなほうの弟さんが雪也さんとぼくを引き離した。
「お義兄さんは姉さんの」
キムラくんだかシムラくんだかって子と見分けがつかないくらい同じ顔がぼくを見た。
「自覚してくださいね、お義兄さん。お義兄さんは姉さんのです。おれ以外の男に近付かないでください。っていうかおれ以外の男見ないでください」
ハルトくんだったかハルミくんだったかって子は雪也さんの前に割って入った。
「姉さんが起きましたよ。行ってやってください」
「ほのか…?」
ぼくは雪也さんをひとりに出来なくて付き添うつもりだった。でもハルキくんとかいってたほうの弟さんがぼくを止めるみたいに見てきて雪也さんの肩に触った。
「お義兄さんを誑かすな」
ぼくはリビングにひとり残される。雪也さんはぼくを気にしてくれた。でも離れていく。そうだよ、ぼくは雪也さんのペット。雪也さんの生活を邪魔しちゃいけない。ぼくの生活が変わってもぼくから雪也さんの生活に入ることなんて許されない。雪也さんにはお嫁さんがいる。雪也さんのお嫁さんのことはぼくも大好き。ぼくは雪也さんのペット。会えなくなって連絡途絶えて、エッチしたら気が済むと思った。でもダメだ、ぼくここに何しに来たの。なんでおうちにまで来ちゃったの。ただのワンナイトで芽生えていつでも切れる関係なのに。それで雪也さんはこの遊びのことハマっちゃうの大嫌いなのに。まだ酔いが覚めてない頭だから?元々ぼくがバカだから?答えが出ない。雪也さんにはお嫁さんがいる。どうして知った瞬間に帰らなかったのさ。雪也さんを2階に送ったハルトくんとかいったほうの子が戻ってきて、買い物に行こうと誘ってきた。
「姉さんにお遣い頼まれたんだよ。あんた1人残してお義兄さんと2人きりになったら嫌だし」
「…雪也さんを1人にさせられないよ」
「首吊っちゃうから?」
あんまりな言いようにぼくは嫌な顔をしちゃう。
「なんでそれ…」
「ハルカから聞いた」
意味分かんない、この人。変な人だな。ハルトくんとかいう子はぼくにお金を差し出した。なんだか嫌だな、こういうの。
「じゃ、あんたが行ってきて。あんた含めて4人分。これ弁当代」
雪也さんのお嫁さんの弟さんだよね?なんでこうも違うかな。でもそっか、ぼくだって姉ちゃんの弟だもん。誰かをいじめる遺伝子があるってなっちゃうよね。
「でもあんた酔っ払いなんだよな。なんで酒飲んで人ン家くるのかな。酔っ払いの若い男が家に出入りしてんの見られてみろよ。姉さんが変な目で見られる。お義兄さんの品位下げんのやめろよ。姉さんにまでとばっちり食らうかも知れないだろ」
ああ、その通りだよ。その通り。ぼくだって毎日お酒入れてるわけじゃない。お酒飲まなきゃいられなかった。いいよな姉ちゃんが生きてるって。姉ちゃんが入院してなくて、姉ちゃんの意識があるっていいよな。貧血で倒れちゃったけど。姉ちゃんが死ぬかも知れないなんて毎日思わなくていいっていいよ、ほんと。姉ちゃんが人に殺されたなんて思わなくていいっていいよな。それが自業自得だったなんて思わなくていいっていいよな。そんなの言い訳にならない。だって雪也さん家には全然関係ない話なんだから。それがただのペットの家庭の事情なら尚更。
「もうほとんどお酒抜けてるよ」
ぼくはお金を受け取って近くのスーパーに行くことを告げた。外はもう暗かった。庭を抜けた頃に残ったはずのハルトくんとかいう子が追ってきた。姉さんに頼まれたのは自分だから一緒に行く、ぼくに何かあったら姉さんが気にするとかそんなことを言ってた。
「姉さんにはお義兄さんと一緒にいるよう言っておいたから大丈夫」
そんな親しいっけ、って感じでオッケーって指で作られる。ちょっと生あったかい風が吹いて、ちょっと田舎っぽい匂いがして少しだけ離れた場所にあるドラッグストアとかスーパーとか塾とか100均があるところがキラキラ光って目が染みた。姉ちゃんと昔近くのコンビニにお小遣いもらって歩いていったな、小学生の頃。姉ちゃん死ななきゃ思い出さなかった。消えてくはずだったかも知れない思い出。要らない情報は消えていくんだ、って前に雪也さんが言ってた。会ったのにナニもしないで、ご飯食べさせてもらった時。きっともっといっぱいあった。姉ちゃんとの思い出。姉ちゃんと天国に逝っちゃった。違うよ、姉ちゃんは地獄に逝くんだ。
「何泣いてんの」
「別に、泣いてない」
「お義兄さんのこと?」
「違う」
ぼくは素直に答えちゃってた。やっぱりまだお酒抜けてない。
「ふぅん」
足音がする。なんで仲良くもないよく知りもしない兄ちゃんと買い物なんてしなきゃならないんだろ。
「男が好きなん?」
イマドキの子って自由でいいよね。でも1コしか変わらないんだった。
「女の人も好きだよ」
「えっ、姉さんのこと!?」
近所中に聞こえるような声で驚いてぼくも少し酔いが覚めちゃう感じがした。
「雪也さんのお嫁さんはそういうんじゃない」
「は?何だよ、それ。デブのブス好きなん?デブでブスな女抱いて善行したって思っちゃうタイプ?は?フツーに姉さんの何が不満なんだよ!」
「え、ええ…」
多分これどっちで答えても不正解なやつだ。
「綺麗でかわいいとは思うけど…」
「なら、いい。でも絶対変な目で見るなよ。姉さんは清廉潔白で優しくて頭が良くて料理が上手くて働き者で美人でいつもいい匂いがするんだからな。惚れない男はいないよ」
自慢の姉ちゃん。後ろめたさなんかない。いいな、いいよな。雪也さんのお嫁さんが姉ちゃんなことがじゃない。後ろめたさなんか何もないってこと。何も知らなかったら泣き喚いてた。ちゃんと母ちゃんの傍にいて、父ちゃんの到着待ってた。ちゃんと葬式の準備した。葬式なんかすんの?うちの娘はいじめっ子です!ってスピーチしてるみたいだ。みっともなくない?いじめられてた子に。姉ちゃんのこと突き飛ばした女に。
「いつも心配になんだよ。あんな綺麗だとさ、変な男に乱暴されんじゃないかって。あんたもそうなのかと思ってたけど」
「するわけないよ」
男と女。雪也さんのお嫁さんの金属バットで不安なんか埋まらない。
「まさか、お義兄さんのほうだなんてな」
殴られた頬っぺたはまだ痛いよ。治ったけどさ。忘れないってイミ。
「姉さんは知ってんの?充電コードで首吊ろうとしたこと」
シャワーホースじゃないの?ぼくは確かめようとして訊けなかった。
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