♥♥♥女尊男卑！！奴隷を夢見る男の子♥♥♥

王子と戦士

平日の昼下がり、ボクは時々図書館へ行きます。
 取り合えず、いつもの雑誌コーナーへ。
 週刊誌やファッション誌が読み放題です。
 雑誌代だって馬鹿になりません。勤めてた頃は、わざわざお金を出して買っていたのですから、毎月数千円の節約です。
こんなところも専業主夫って嬉しい。
それに、『夫は質素を旨とすべし』だもの。
ふと書架に目をやると、絵本の忘れ物。
 子供が忘れて行ったのでしょうか。
 懐かしくなって、ボクは手にとります。

 「王子と戦士のものがたり」
むかーし、むかし、とある国のお城に、それはそれは美しいお王子さまが住んでいました。

 「ダァー！ダァー！」
 「キンッ！、コッ、キンッ！」
 「お見事ですわ。殿下」
 毎朝の、幼い妹の朝稽古。
お相手の剣術の指南役は、ボクの幼いころ、遊び友達だった女の子。今は立派な戦士です。
 「お相手ごくろうさまでした」
ボクは、メイドさんの隙を盗んで、ティーカップにお茶を淹れて、カノジョに渡します。
 「王子さまにお茶を淹れていただくとは、身に余る光栄です」
カノジョは片ひざをついて慇懃に跪きます。
 「もう、大げさなんだから」
 二人で大笑い。
メイドさんはちょっと困ったような顔をしていますが、いつものことです。
 他に臣下がいないときは、ボクとカノジョは、昔の幼馴染にもどります。

そんな穏やかな日々が、いつまでも続いていくと思っていました。
 「ワー！ワー！ワー！」
 「キャー！、誰かー！ウグゥ」
お城の中がなにやら騒がしいです。
カノジョがボクの部屋に飛び込んで着ました。
 親しい仲とはいえ、王子であるボクの部屋に、家族以外の女性が入室するのはあってはいけないこと。
 異常事態です。
 「王子さま、直ぐ脱出のご用意を！」
クーデターです。
 大臣が城内で、突如蜂起、女王であるボクのお母さまは捕らえられたとのこと。
お母さまの信任の厚かった大臣が何故？
いえ、理由はなんとなくわかります。
 大臣はずっとボクに求婚したかったようですが、お母さまに止められていました。
 女王である母は、国家安定のため、もちろん政略結婚を考えています。
 隣国のスパン国やプロース国、その隣国を挟み撃ちにするためポルト国やルス国、あるいは少し離れた大国トルク帝国。
 国内貴族との結婚は考えていません。
 大臣は国王を適当な理由をつけて幽閉した後、取り合えず、妹の王女の摂政となり、ボクと結婚した後は、お母さまと妹を亡き者にするつもりでしょう。

 「カツッ、カツッ、カツッ」
 薄暗い地下道をカノジョと一緒に進みます。
こんな時ですが、幼いころ、この地下道に迷い込んだ事を思い出します。
その時ボクを見つけ出してくれたのはカノジョ。
 「大きくなったら、ボクをお婿さんにしてくれる？」
ボクはカノジョと結婚の約束をしました。
 今では、そんなことは無理なことは分かっています。
ボクは一国の王子、そしてカノジョは一介の戦士、しかも爵位もありません。
もし、国内貴族との結婚が許されたとしても、子爵や女爵程度ではなく、公爵や伯爵ぐらいは必要でしょう。

 裏通りの地上に出た後、ボク達は街の様子を伺います。
 街の外にでるには検問があり、見つかったら大変です。
カノジョは少し心苦しそうな顔で、とある提案をしました。
 「王子さま、ある提案がございます。それは・・・」
それは、ボクが奴隷男に化けること。
 一国の王子であるボクが、下賎な奴隷男なんかに？
 「おもしろそうだね、やってみるよ」
カノジョは街で奴隷男定番のスレーブワンピースを手に入れ、ボクに首輪をつけました。

 「そこの二人、待った！う～ん？ちょっと人相書に似てないか？］
 二人は検問の衛兵に呼び止められました。
 「あら、王子さまに似ているなんて嬉しい。今度お店にいらして～ん」
ボクはスカートをめくったり下げたりしながら衛兵に近づきます。
 「ええい、寄るな！我らが王子さまが、こんな下賎な奴隷男であるはずが無い。とっとと行け！」
 検問からしばらく離れて、ボクはカノジョに自慢げに言いました。
 「どう？ボクの名演技」

<エピローグ>
「王子さま、もう危険はありません、そろそろ城へ戻りましょう」
そういって彼はボクの首に手を回し、首輪を外そうとしました。
 「首輪を外さないで下さい。ご主女（しゅじん）さま」
ボクはカノジョの手を止めて、囁きます。
 「王子になんて戻りたくありません。ずっと、あなたのお側に置いて下さい」
カノジョは優しく言いいました。
 「奴隷ごっこはもう終わりですよ。王子さま」

 数日後、王宮にて騎士の授与式が開催されました。
ボクは王子として、カノジョの肩に剣を乗せ、騎士の称号をさずけた後、突然、カノジョの前に跪きます。
 「ボクは、貴女さまの奴隷になることを請い願います」
 城内からどよめきの声があがります。
 古から伝わる正式な請願です。城内の誰もこの請願を否定することはできません。
カノジョは優しく言いました。
 「全く貴方って人は、いつも驚かせてくれる」
 「ボクは王子であるよりも、貴女の奴隷になることを願います」
 宮中から万雷の拍手。
カノジョは古来の作法に従い、ボクの足を掴んで肩に乗せて、お城を後にしました。



 『ああ、面白かった』
 何度読んでも素敵なお話。
ボクが子供のころ大好きだったおとぎ話。
ボクは、うっとりしてしまいます。
ボクとご主女さまの子供ができたら・・・
女の子？男の子？
やっぱり最初は男の子がいいかな。
そして男の子ができたら、この絵本を読んであげるの。
 「むかーし、むかし、とある国のお城に、それはそれは美しいお王子さまが住んでいました・・・」