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45.ヴィーナスパレス~女性保護法3~
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「う~ん、いいお天気」
今日はご主人さまとデート
今日は、最近できて話題のテーマパーク兼大型商業施設ヴィーナスパレスへ行ってみます。
渋滞がこわいので、久しぶりに二人で電車で移動です。
「あっ、あそこの席空いてます、ご主人さま」
あたしは素早くピンク色のシートに座ります。
女性優先席、通称レディースシートです。
女性保護法を契機に一般車両に導入されたもので、シルバーシートの女性版といったようなものです。
ご主人さまは何故かあたしの隣に座らず、あたしの前に立ったまま。
「ご主人さま、隣空いてますよ」
「いや、いい」
別に空いてたら男性だって座っていいのに。
そういえば、女性保護法ができる前、シルバーシートが空いてた時も、彼は決して座ろうとしませんでした。
彼ってこんなところがあります、男の人ってつまらないプライドでもあるのかしら。
ヴィーナスパレスに着きました。
「おおき~い」
思ったよりも大きい施設です、まるでスターランド遊園地みたい。
あたしは、彼を急かしながら入場ゲートをくぐりました。
大きな注意書きの看板があります。
お客様へ
当施設内は女性保護法に基づく特別区です。
当施設内での女性への暴力、暴言等は一切禁止されています。
通常の調教行為であっても、女性への暴力とみなされる場合がありますのでご注意ください。
×ビンタ
×スパンキング
×鞭打ち
×その他女性への暴力、暴言、侮辱的行為
<ご夫婦、カップルの方へのお願い(推奨ルール)>
女性のお客様へ
・夫や彼氏のことは、「ご主人様」や「名前+様」ではなく、「あなた」または「名前+さん」で呼んでみましょう。
・夫や彼氏の後ろではなく、一緒に並んで歩きましょう。
・立派なレディとして、上品に行動しましょう
男性のお客様へ
・妻や彼女のことは、呼びつけにせず、「名前+さん」で呼んでみましょう。
・妻や彼女の前ではなく、一緒に並んで歩きましょう。
・ナイトのように妻や彼女をやさしくエスコートしましょう
素敵!
女性保護法って女をモノ扱いするところが気に入らなかったんだけど、こんな素敵なところを作ってくれるなんて。
あたしは、ウキウキしてたまらなくなってきました。
「あなた、ちょっとお手洗い」
「なんだ、着いたらもう、トイレか」
だってしょうがないじゃない、女はトイレが近いんです。
『わぁ~、ひろ~い』
トイレもすごく広いです。
個室、洗面の他に椅子付きのパウダールームや、無料のドリンクが設置された休憩コーナーまで。
とりあえず個室に入ります。
自動的にフタが開きあたしは備え付けのシートペーパーを敷いて座ります。
音姫やサニタリーボックスもセンサー式で嬉しい配慮です。
でも個室にしては少し広すぎ、狭いところ好きなあたしとしてはちょっと落ち着きません。
パウダールームで化粧直ししてうっとりします。
ちょっとした絵画や観葉植物にも見とれます。
なんだか雰囲気に呑まれそう。
「おそい、何時間かかってるんだ」
そんな何時間なんて大げさです。せいぜい20分、いえ30分かしら。
女子ってトイレにいると時間を忘れるのかもしれせん。高校生のころ、昼休み中ずっとトイレでお喋りしたことを思い出しました。
あたしは内心「しまった」と思って、身構えました。
あれっ、いつもなら、ここでビンタ位あるのですが、ご主人さまはあたしを打ったりしませんでした。
調教禁止。
そうです、この施設内は調教禁止なんです。
うん、ヴィーナスパレスって素敵。
気を取り直して、ショップを回っていきます。
「あなた、これどっちがあたしに似合うって思いますか?」
最初はあたしの質問に付き合ってくれた彼ですが、だんだん生返事になっていきます。
「次はココがいいわ」
パンフレットでよさそうな店を探します。
「おい、見て回ってるだけでぜんぜん買わないのかよ」
もう、男の人ってもっとお買い物を楽しめないのかしら?
「まあ、素敵」
子供服コーナーにも立ち寄ってみました。
かわいい女の子向けのフリルドレス。
あたしと彼の子供ができたら、どうかしら?
「おい、いま買うもんじゃないだろ」
ちょっと不機嫌そうな彼。
「もうそろそろ、昼にしようよ・・・ミサオさん」
彼の提案。
お昼時間を確かに結構過ぎています。
何時の間にこんなに、楽しい時間ってあっという間です。
でも彼があたしを「ミサオさん」って言うのが、聞き慣れなくてちょっと可笑しい。
あたちたちは、遅めの昼食をとることにしました。
「禁煙席を頼む」
彼ったら、喫煙者なのに外食のときは吸いません。
吸わないあたしに気遣ってのことではなく、他人の吐いた汚い煙は吸いたくないんだそうです。
じゃあ普段吸わされてるあたしはなんなのよ!って思うけど。
彼って以外と自分勝手なところもあるんです。
喫煙席を見ると女性客ばっかり、最近、煙草を吸う女性って結構多いみたい。統計では女性の喫煙率って低いのにアンケート調査ではウソついてるのかしら。
お店の人に案内されて、あたしは壁側の広いフラットシート、ご主人さまは少し窮屈そうに椅子に座りました。
ちょっと女性上位って感じがして、なんだか落ち着きません。
「あなた、席を交換しましょうよ」
「いや、別にいい」
ちょっと不機嫌そうに彼は答えました。
お料理の味がしません。
彼がポツリ
「女栄えて国滅ぶ、かな」
不吉でちょっとイヤな諺です。
昔、女性が我侭になりすぎて国が傾いたっていうけど、そんなの昔のことです。
せっかくのデートだったのに、なんだか少し憂鬱な気持ちになってしまいます。
「そろそろ出ようか、ミサオさん」
「はい、あなた」
退場ゲートを抜けると広場になっており、中央にブロンズ像がありました。
それは、女の人が跪いて両手を前で交差して、立っている男の人に許しを請うようなポーズの像でした。
懺悔広場
妻は夫を主人として敬い、よく従うべし・・・・
妻の心得の一節が書かれています。
あたしはハッとしました。
彼のことを考えず、あたしったら、自分だけはしゃいじゃって、我侭だったんだわ。
あたしは彼の前に跪きました。
「あたしを罰してください、ご主人さま」
こんな女は罰を受けるべきです。
「いい女だな、お前は」
彼はあたしの手をとり、やさしく握ってくれました。
帰りの電車の中で、彼はポツリと言いました。
「また行こうか、今日行ったヴィーナスパレス」
男の人には、きっとつまらなかった筈なのに。
優しいご主人さま。
でも、いつか、今日のあたしを罰してください。
愛しています、ご主人さま。
【レディスシート】
女性保護法を契機に導入された、一般車両内のピンク色の女性優先席のことです。
女性専用席ではないため男性も座れるのですが、気後れするのかあまり座らないようです。
また、電車内だけでなく、エレベーターホール等各地にあります。
【ヴィーナスパレス】
女性向け商品がメインのテーマパーク兼大型商業施設です。
女性保護法に基づく特別区のため、女性への一切の暴力的行為が禁止されています。
そのため、女性への通常の調教行為も禁止となります。
女子トイレが豪華であることも有名です。
【女栄えて国滅ぶ】
女性が高慢になると国家が滅びるという意味の諺です。
【懺悔広場】
ヴィーナスパレスの退場ゲートにある広場です。
中央に女性がが跪いて両手を前で交差して、立っている男の人に許しを請うようなポーズのブロンズ像があり、妻の心得の一節が書かれています。
今日はご主人さまとデート
今日は、最近できて話題のテーマパーク兼大型商業施設ヴィーナスパレスへ行ってみます。
渋滞がこわいので、久しぶりに二人で電車で移動です。
「あっ、あそこの席空いてます、ご主人さま」
あたしは素早くピンク色のシートに座ります。
女性優先席、通称レディースシートです。
女性保護法を契機に一般車両に導入されたもので、シルバーシートの女性版といったようなものです。
ご主人さまは何故かあたしの隣に座らず、あたしの前に立ったまま。
「ご主人さま、隣空いてますよ」
「いや、いい」
別に空いてたら男性だって座っていいのに。
そういえば、女性保護法ができる前、シルバーシートが空いてた時も、彼は決して座ろうとしませんでした。
彼ってこんなところがあります、男の人ってつまらないプライドでもあるのかしら。
ヴィーナスパレスに着きました。
「おおき~い」
思ったよりも大きい施設です、まるでスターランド遊園地みたい。
あたしは、彼を急かしながら入場ゲートをくぐりました。
大きな注意書きの看板があります。
お客様へ
当施設内は女性保護法に基づく特別区です。
当施設内での女性への暴力、暴言等は一切禁止されています。
通常の調教行為であっても、女性への暴力とみなされる場合がありますのでご注意ください。
×ビンタ
×スパンキング
×鞭打ち
×その他女性への暴力、暴言、侮辱的行為
<ご夫婦、カップルの方へのお願い(推奨ルール)>
女性のお客様へ
・夫や彼氏のことは、「ご主人様」や「名前+様」ではなく、「あなた」または「名前+さん」で呼んでみましょう。
・夫や彼氏の後ろではなく、一緒に並んで歩きましょう。
・立派なレディとして、上品に行動しましょう
男性のお客様へ
・妻や彼女のことは、呼びつけにせず、「名前+さん」で呼んでみましょう。
・妻や彼女の前ではなく、一緒に並んで歩きましょう。
・ナイトのように妻や彼女をやさしくエスコートしましょう
素敵!
女性保護法って女をモノ扱いするところが気に入らなかったんだけど、こんな素敵なところを作ってくれるなんて。
あたしは、ウキウキしてたまらなくなってきました。
「あなた、ちょっとお手洗い」
「なんだ、着いたらもう、トイレか」
だってしょうがないじゃない、女はトイレが近いんです。
『わぁ~、ひろ~い』
トイレもすごく広いです。
個室、洗面の他に椅子付きのパウダールームや、無料のドリンクが設置された休憩コーナーまで。
とりあえず個室に入ります。
自動的にフタが開きあたしは備え付けのシートペーパーを敷いて座ります。
音姫やサニタリーボックスもセンサー式で嬉しい配慮です。
でも個室にしては少し広すぎ、狭いところ好きなあたしとしてはちょっと落ち着きません。
パウダールームで化粧直ししてうっとりします。
ちょっとした絵画や観葉植物にも見とれます。
なんだか雰囲気に呑まれそう。
「おそい、何時間かかってるんだ」
そんな何時間なんて大げさです。せいぜい20分、いえ30分かしら。
女子ってトイレにいると時間を忘れるのかもしれせん。高校生のころ、昼休み中ずっとトイレでお喋りしたことを思い出しました。
あたしは内心「しまった」と思って、身構えました。
あれっ、いつもなら、ここでビンタ位あるのですが、ご主人さまはあたしを打ったりしませんでした。
調教禁止。
そうです、この施設内は調教禁止なんです。
うん、ヴィーナスパレスって素敵。
気を取り直して、ショップを回っていきます。
「あなた、これどっちがあたしに似合うって思いますか?」
最初はあたしの質問に付き合ってくれた彼ですが、だんだん生返事になっていきます。
「次はココがいいわ」
パンフレットでよさそうな店を探します。
「おい、見て回ってるだけでぜんぜん買わないのかよ」
もう、男の人ってもっとお買い物を楽しめないのかしら?
「まあ、素敵」
子供服コーナーにも立ち寄ってみました。
かわいい女の子向けのフリルドレス。
あたしと彼の子供ができたら、どうかしら?
「おい、いま買うもんじゃないだろ」
ちょっと不機嫌そうな彼。
「もうそろそろ、昼にしようよ・・・ミサオさん」
彼の提案。
お昼時間を確かに結構過ぎています。
何時の間にこんなに、楽しい時間ってあっという間です。
でも彼があたしを「ミサオさん」って言うのが、聞き慣れなくてちょっと可笑しい。
あたちたちは、遅めの昼食をとることにしました。
「禁煙席を頼む」
彼ったら、喫煙者なのに外食のときは吸いません。
吸わないあたしに気遣ってのことではなく、他人の吐いた汚い煙は吸いたくないんだそうです。
じゃあ普段吸わされてるあたしはなんなのよ!って思うけど。
彼って以外と自分勝手なところもあるんです。
喫煙席を見ると女性客ばっかり、最近、煙草を吸う女性って結構多いみたい。統計では女性の喫煙率って低いのにアンケート調査ではウソついてるのかしら。
お店の人に案内されて、あたしは壁側の広いフラットシート、ご主人さまは少し窮屈そうに椅子に座りました。
ちょっと女性上位って感じがして、なんだか落ち着きません。
「あなた、席を交換しましょうよ」
「いや、別にいい」
ちょっと不機嫌そうに彼は答えました。
お料理の味がしません。
彼がポツリ
「女栄えて国滅ぶ、かな」
不吉でちょっとイヤな諺です。
昔、女性が我侭になりすぎて国が傾いたっていうけど、そんなの昔のことです。
せっかくのデートだったのに、なんだか少し憂鬱な気持ちになってしまいます。
「そろそろ出ようか、ミサオさん」
「はい、あなた」
退場ゲートを抜けると広場になっており、中央にブロンズ像がありました。
それは、女の人が跪いて両手を前で交差して、立っている男の人に許しを請うようなポーズの像でした。
懺悔広場
妻は夫を主人として敬い、よく従うべし・・・・
妻の心得の一節が書かれています。
あたしはハッとしました。
彼のことを考えず、あたしったら、自分だけはしゃいじゃって、我侭だったんだわ。
あたしは彼の前に跪きました。
「あたしを罰してください、ご主人さま」
こんな女は罰を受けるべきです。
「いい女だな、お前は」
彼はあたしの手をとり、やさしく握ってくれました。
帰りの電車の中で、彼はポツリと言いました。
「また行こうか、今日行ったヴィーナスパレス」
男の人には、きっとつまらなかった筈なのに。
優しいご主人さま。
でも、いつか、今日のあたしを罰してください。
愛しています、ご主人さま。
【レディスシート】
女性保護法を契機に導入された、一般車両内のピンク色の女性優先席のことです。
女性専用席ではないため男性も座れるのですが、気後れするのかあまり座らないようです。
また、電車内だけでなく、エレベーターホール等各地にあります。
【ヴィーナスパレス】
女性向け商品がメインのテーマパーク兼大型商業施設です。
女性保護法に基づく特別区のため、女性への一切の暴力的行為が禁止されています。
そのため、女性への通常の調教行為も禁止となります。
女子トイレが豪華であることも有名です。
【女栄えて国滅ぶ】
女性が高慢になると国家が滅びるという意味の諺です。
【懺悔広場】
ヴィーナスパレスの退場ゲートにある広場です。
中央に女性がが跪いて両手を前で交差して、立っている男の人に許しを請うようなポーズのブロンズ像があり、妻の心得の一節が書かれています。
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