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96.親しき仲にも礼儀あり
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「お帰りなさいませ。ご主人さま」
あたしは玄関で三つ指ついて彼を出迎える。
鞄とコートを受け取って書斎に運ぶ。
食事と入浴が終わって、後片付け。
「チリン」
あっ、呼び鈴の音。
あたしは書斎に急ぐ。
「お呼びでしょうか?ご主人さま」
「ミサ、お茶を頼む」
予想どおり。彼って、朝はコーヒー派だけど、夜はお茶が多いの。
「かしこまりました。ご主人さま」
あたしは一礼して、部屋を出る。
急いでキッチンに戻り、お茶の準備ってか、実はもうほとんど用意できてる。
「あれっ?もうできたのか。早いな」
当然です。
だって、あたしってば彼の好みはわかってるんだもん。
「ふう~、美味い。お茶出しが上手くなったな、ミサ」
嬉しい。
彼って、こんな風にちょっとした気遣いが出来るんだもの。
何だか、もっともっとご奉仕したくなる。
「他に何かご用はございませんか?ご主人さま」
あたしは嬉しくなって、彼に尋ねる。
「もう、そんなに畏まるなよ。昔みたいに敬語じゃなくて、タメ口でいいんだぞ」
彼はよくそう言うけど、もちろんそんなのダメ。
だって、妻の心得にも「妻は礼儀を正しくすべし」って書いてあるでしょ。
親しき仲にも礼儀あり。
結婚してから、あたしは彼に対して敬語で話すようになった。憲法には男女平等って書いてあるけど、そんなのが通用するのなんて学生まで。
それに、夫婦は主従関係だもの、もちろんカレが主でアタシは従。
「全くもうっ、聞き分けのない女だな」
彼はちょっと不機嫌そうに呟くと、突然、あたしを膝の上に乗せた。
「きゃっ」
これはちょっと、予想外。
「お前、妻のクセに俺の言うことが聞けないのか?」
彼はあたしのメイド服のスカート捲って、パンツを下ろすと、お尻を叩き始めた。
「お許しください。ご主人さま」
あたしは決まり文句で許しを請うけど、実はちょっとドキドキする。
調教って、夫婦のスキンシップの面があると思う。
それに、調教は夫婦の大切な絆だもの。
彼に調教される度に、あたしは彼好みのオンナになるんだって思うと、何だか体が火照ってくるような気がする。
でも、今回は彼の言い分は間違ってる。
妻が夫に対して敬語を使うのは、大切な礼儀作法なんだもの。そんな簡単に止めて言い訳がない。タメ口なんてはしたなくて世間体も悪いし、大体、エレガントじゃないでしょ。
それに、目上の人の誤りを諫めるのは、下の者の大切な役目。
「もう、強情なんだから」
スパンキングの後、彼はちょっと不機嫌そうに呟くと、指であたしの鼻を弾いた。
そして、あたしの顎を持ち上げて優しくキスしてくれた。
良かった。本気じゃなかったんだ。やっぱり、不機嫌だったのはフリだけだったんだ。
それに、結局、敬語を使うのもそのまま許してくれた。
うふふっ、やっぱり、優しいご主人さま。
スキです。
暫く、調教の余韻にまどろんだ後、あたしは床に転がされたまま指先にキスする。
「愛しています。ご主人さま」
あたしは指先を首元に押し付けた。
銀色に輝く愛のしるし。
結婚首輪の金属の感触が、夫婦の絆をより一層深く感じさせてくれた。
あたしは玄関で三つ指ついて彼を出迎える。
鞄とコートを受け取って書斎に運ぶ。
食事と入浴が終わって、後片付け。
「チリン」
あっ、呼び鈴の音。
あたしは書斎に急ぐ。
「お呼びでしょうか?ご主人さま」
「ミサ、お茶を頼む」
予想どおり。彼って、朝はコーヒー派だけど、夜はお茶が多いの。
「かしこまりました。ご主人さま」
あたしは一礼して、部屋を出る。
急いでキッチンに戻り、お茶の準備ってか、実はもうほとんど用意できてる。
「あれっ?もうできたのか。早いな」
当然です。
だって、あたしってば彼の好みはわかってるんだもん。
「ふう~、美味い。お茶出しが上手くなったな、ミサ」
嬉しい。
彼って、こんな風にちょっとした気遣いが出来るんだもの。
何だか、もっともっとご奉仕したくなる。
「他に何かご用はございませんか?ご主人さま」
あたしは嬉しくなって、彼に尋ねる。
「もう、そんなに畏まるなよ。昔みたいに敬語じゃなくて、タメ口でいいんだぞ」
彼はよくそう言うけど、もちろんそんなのダメ。
だって、妻の心得にも「妻は礼儀を正しくすべし」って書いてあるでしょ。
親しき仲にも礼儀あり。
結婚してから、あたしは彼に対して敬語で話すようになった。憲法には男女平等って書いてあるけど、そんなのが通用するのなんて学生まで。
それに、夫婦は主従関係だもの、もちろんカレが主でアタシは従。
「全くもうっ、聞き分けのない女だな」
彼はちょっと不機嫌そうに呟くと、突然、あたしを膝の上に乗せた。
「きゃっ」
これはちょっと、予想外。
「お前、妻のクセに俺の言うことが聞けないのか?」
彼はあたしのメイド服のスカート捲って、パンツを下ろすと、お尻を叩き始めた。
「お許しください。ご主人さま」
あたしは決まり文句で許しを請うけど、実はちょっとドキドキする。
調教って、夫婦のスキンシップの面があると思う。
それに、調教は夫婦の大切な絆だもの。
彼に調教される度に、あたしは彼好みのオンナになるんだって思うと、何だか体が火照ってくるような気がする。
でも、今回は彼の言い分は間違ってる。
妻が夫に対して敬語を使うのは、大切な礼儀作法なんだもの。そんな簡単に止めて言い訳がない。タメ口なんてはしたなくて世間体も悪いし、大体、エレガントじゃないでしょ。
それに、目上の人の誤りを諫めるのは、下の者の大切な役目。
「もう、強情なんだから」
スパンキングの後、彼はちょっと不機嫌そうに呟くと、指であたしの鼻を弾いた。
そして、あたしの顎を持ち上げて優しくキスしてくれた。
良かった。本気じゃなかったんだ。やっぱり、不機嫌だったのはフリだけだったんだ。
それに、結局、敬語を使うのもそのまま許してくれた。
うふふっ、やっぱり、優しいご主人さま。
スキです。
暫く、調教の余韻にまどろんだ後、あたしは床に転がされたまま指先にキスする。
「愛しています。ご主人さま」
あたしは指先を首元に押し付けた。
銀色に輝く愛のしるし。
結婚首輪の金属の感触が、夫婦の絆をより一層深く感じさせてくれた。
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