☆日本宇宙開発ヲ阻止セヨ~日本宇宙開発妨害史

みさお

文字の大きさ
上 下
5 / 15

5.アポジモーターの秘密

しおりを挟む
どうもおかしい。
 宇宙開発事業団の醍醐主任は、首を捻った。
どうしても、あやめの事故が再現できないのだ。
 宇宙空間で爆発があったのは間違いない。
だが、部品にいくら欠陥があったとしても、同じ状況が再現できない。
アポジモーターそのものに、何か問題があったとしか考えられないが、ジェットエアロ社から提供された資料を見る限り問題は無い様に思える。
もっともブラックボックスだけあって、内部構造の詳細なデータはない。
 何かがおかしい。
そうだ、固体ロケットなら日本にも専門家がいるじゃないか。
 宇宙研に相談できないか。
 宇宙開発事業団と文部省宇宙研は別組織であり、全く交流がない。
 醍醐主任の提案で、有志による初の意見交換会が開かれた。
 「固体ロケットの運用には・・・」
なるほど液体ロケットとは大分様子が違う。
 泥縄式ともいえる職人業のような世界だ。
しかし、宇宙研の技術者からひとつの可能性を指摘された。
それは・・・
意見交換会から一週間後、醍醐主任は、米国ジェットエアロ社への調査チームの一員として派遣された。
 「我社のアポジモーターにはなんの問題もない」
 「固体燃料は、製造工程で何か問題が発生することもあるはずだ」
 「我社の出荷する製品に問題はない。問題があるなら証拠を示してほしい。まあ、ムリでしょうが」
 宇宙空間から回収出来る筈はない。打ち上げ前でも秘密協定でブラックボックスだ。
 日本側の足元を見た発言だった。


 「製品ロットごとに、抜き出しチェックした断面データがあるはずだ」
 醍醐主任の発言で、渋々ながら断面データが、閲覧限定で提供されることになった。
 「やはり、クラックか」
あやめのアポジモーターと同一ロットの断面データは、やはり存在していた。
ジェットエアロ社側は日本の技術者が見ても分かるまいと高を括っていたのだろうが、オレは宇宙研で固体燃料の気泡やクラック等が発生した断面データも見せて貰って、詳細な説明も受けてる。
この断面データを見れば、今のオレには分かる。
 宇宙研の指摘した可能性ってやつは正しかったのだ。

 日本側の勝利である。
 今後のアポジモーター出荷時には、同一ロットの断面データや詳細な製品データが提供されることになった。
 事実上ブラックボックスがオープンされたのである。

だが、数年の遅れは大きい。
 既に、世界の最先端は液体アポジに移っている。
もはや固体アポジは時代遅れであり、小型衛星などに限定されつつある。
そして、日本は衛星の大型化にも少し出遅れてしまった。

 米国にしてやられたのだ。
しかも、米国政府は関知せず、一メーカーに責任を押し付けたのである。
 米国は、近々スペースシャトルも打ち上げるという。
 米国の背中はあまりにも遠い・・・
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

身体交換

廣瀬純一
SF
男と女の身体を交換する話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...