上 下
21 / 22

思わず

しおりを挟む
波璃は虚しく笑うと、また唇を近付けようと顔を傾けた。

「これも、親の言いなりか?」
「……え、」
「俺を拾ったのも、俺に付き合えって言ったのも、こうやってキスしてくんのも。言われたからやってんの?」
「…違いますよ」
「じゃあ人形じゃねーだろ。ゲイのこと話そうとしてんのも、婚約者阻止しようとしてんのもお前が決めたことだろ。ちゃんと自分の意志あんじゃねーか」
「…っ詩乃也くん」
「い!いや!ていうか、キスはやめろ!!何回すんだよ!ぶん殴るぞ!!」

顔を真っ赤にさせながら慌てて暴言を吐く詩乃也を見て、波璃は嬉しそうに、でも泣きそうに笑う。

「…さっき、僕が何考えてるか分かんないって言いましたよね」
「あ?それがなんだよ」
「僕、知らないうちに自分の意思で行動できてたんだ…きっと詩乃也くんと出会ったからだと思うんです。詩乃也くんといたら、感情表現ももっとできそうな気がします」
「な、なんだそれ…」
「それに、今は割と分かりやすいと思いませんか?」

壁に手をついて至近距離に来た波璃は、昨晩のような獲物を狙う目付きをしていた。それに気付き、ごくっと唾を飲む詩乃也。

あれほどに荒れ果てて恐れられている不良が、波璃の前では捕食寸前の小動物のようだ。

「…お、い、近っ…」
「今、詩乃也くんに欲情してますよ。僕」
「はっ!!?」
「ねぇ、半年の間…付き合ってくれますよね?」
「…っおい、離せ、む」

そして、また口付けられた唇。頬に手を添えられながら優しく触れたと思ったら、何度も小鳥がついばむように繰り返される。

詩乃也から熱い息が漏れた瞬間、またペロッと唇を舐め、2人の舌が混ざり合った。

「んんっ…、お、い」
「ん、は…っ、ねぇ…」
「待っ…!ぁ、ん…っ、波璃っ!!」
「え…」

そう叫んだ瞬間、波璃はピタッと動きを止めて肩を掴んだ。詩乃也を見つめながら目を大きくして驚いている。

「んだよ…!」
「名前、呼んでくれましたね」
「…っべ、別に!!!」
「もっと呼んで、詩乃也くん…」
「だっ、誰が呼ぶか…っ!」

心底嬉しそうにニヤッと口角を上げた後、波璃は詩乃也の腰を抱き寄せ、キスをした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

23時のプール

貴船きよの
BL
輸入家具会社に勤める市守和哉は、叔父が留守にする間、高級マンションの部屋に住む話を持ちかけられていた。 初めは気が進まない和哉だったが、そのマンションにプールがついていることを知り、叔父の話を承諾する。 叔父の部屋に越してからというもの、毎週のようにプールで泳いでいた和哉は、そこで、蓮見涼介という年下の男と出会う。 彼の泳ぎに惹かれた和哉は、彼自身にも関心を抱く。 二人は、プールで毎週会うようになる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

23時のプール 2

貴船きよの
BL
あらすじ 『23時のプール』の続編。 高級マンションの最上階にあるプールでの、恋人同士になった市守和哉と蓮見涼介の甘い時間。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

処理中です...