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夢じゃなかった

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次の日、安定に寝坊をしてから渋々学校へと向かう詩乃也。規定のネクタイをせずに、シャツに黒いカーディガンを着て髪の毛はボサボサ。大あくびを繰り返しながら校内へと入っていく。

「おい、日内!!」
「げっ、生活指導」
「お前その怪我、まーた喧嘩したな!?」
「してないっすよー。古傷です」
「うそつけ!出来たてじゃねぇか!」

校門にいた屈強な生活指導の教師に、いつものように絡まれる詩乃也。それを面倒くさそうに交わそうとすると、呆気なく肩に腕を回され捕らえられてしまった。

「お前このままだと卒業危ういぞ?出席日数もギリギリだろ」
「それはやばいっすね」
「他人事じゃねーぞ!それに問題起こしすぎると学校の印象もお前の印象も悪くなって、社会に出た時に困るぞ?」
「うっす」
「うっすじゃないだろ~まず制服をしっかり着ろ!ネクタイはどうした!ピアスも禁止だ!」

完全に自業自得だが、朝からの絡みに厄介だなとげんなりしていると、そこに1人生徒が近付いてきた。

「おはようございます」

嫌に爽やかな声が聞こえた方を見ると、そこには昨日見たばかりの波漓が立っていた。詩乃也が「げっ」と目を逸らすと、教師は明るく挨拶を返した。

「おお!内石、おはよう!今日いつもより遅いんじゃないか?」
「はい、ちょっとバタバタしてまして」
「そうか!それにしても今日も身だしなみしっかりしてて、日内とは正反対だな!コイツに制服の着方教えてやってほしいわ」
「センセー、遅れちゃうんでもう行きます」
「あっ…」

その隙に教師の拘束から抜け出すと、詩乃也はそそくさと下駄箱に向かった。その後ろを追うように波漓は小走りでついてきたようだ。

「詩乃也くん、おはようございます」
「……はよ。ついてくんな」
「僕も下駄箱に行きますから。一緒に行きましょう」
「行かねーよ」

一一一こいつ、いい所のお坊ちゃんだし素行もいいからセンコーに気に入られてんだな。目付けられてる俺とマジで正反対…。

「昨日の話、忘れてないですよね?」
「あ?何が」
「何がって…僕と付き合ってくれるって話ですよ!」
「うわあ!!でけえ声で言うんじゃねぇよそれ!」
「え?別にいいじゃないですか」
「あくまで形だけなんだから、周りに知られたら面倒だろうが!」

詩乃也がそう怒鳴ると、波漓は頭にハテナを浮かべながら後を着いていく。

「僕は別に知られてもいいですけど…そっか。詩乃也くんは困りますよね。僕と違ってノンケだし」
「えっ、あ、ああそうだよ!」
「じゃあ2人だけの秘密にしましょう。父に話すまで」
「あ、ああ…」

一一一なんだよ。急にそんな物分りよくなるとこっちが動揺するわ。

そして2人が下駄箱に着いた時、その後ろからヒソヒソと男子生徒が1人走り寄ってきていた。その生徒は勢いよく詩乃也の背中に飛び込んでいく。

「詩乃也ー!!おはよ!」
「うわっ!?あっ…ぶねぇ!!びびった!!」
「あれれ?さてはまた喧嘩したなー?」

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