解せない王子のことなんか

ぱんなこった。

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また明日

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詩乃也があっけらかんとそう話すと、波漓は対照的な顔をして俯いた。その横顔は酷く落ち着いていて感情が読めない。

「毎日喧嘩っていうのもそのせいで?」
「別に家の事情のせいで喧嘩してるなんて言わねーよ。ただ喧嘩売られるから俺が好きでやってるだけ。まあ相手ボコボコにしたらスカッとするしな」
「…辛くないんですか?」
「はぁ?辛いわけねーだろ。むしろ自由にできて楽だっつーの」
「すごいですね、詩乃也くんは」
「あー同情とかいらねーし、そういうのうぜーだけだから」
「そうじゃなくて…」

一一一こいつ本当にコロコロ表情変わるな。でもバリエーションの幅広すぎてどういう気持ちなのかは分からん。

「…少し羨ましいって言ったら、怒られちゃいますね」

「……は?何が?俺が羨ましい?」 

「はい」

「はぁ?こんな豪邸に住んでて、金持ってて、迎えの車が来るお坊ちゃんが?俺のどこを見て羨ましいとか言えんだよ」

「…お金しかないですよ。こんなこと言ったら贅沢だってバチ当たるかもしれないですけど。親の言いなりで生きてきた僕とは違って、自分の意思で生きてる詩乃也くんが少し羨ましいし憧れます」

「…っな、」

一一一マジで意味わかんねぇやつ。俺が羨ましいなんて普通思わねぇよ。「かわいそう」とか「ビンボー人」とか「気の毒」しか思わないだろ。

「…じゃあ今度こそ帰る。もう用済んだろ」
「あっ、詩乃也くん!」
「…んだよ!!」
「明日学校来ますか?」
「なんでお前にそんなこと…」
「来ないですか?来ますか?」
「…行くっつーの!!」

入ってきた窓を開けて靴を履いた詩乃也。吹き抜けていく落ち着いた夜風を感じ、波漓の方を振り向いた。

「詩乃也くん、また明日」
「……はぁ、別にお前と会わねーよ」

表情こそ変わらないが、どこか照れくさそうにぎこちなく手を振る波漓を見て不覚にも詩乃也の口元もほころぶ。突っぱねた言葉とは対照的に。

一一一内石波漓…。よく分かんねーヤツに捕まった。
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