28 / 46
5
心酔④
しおりを挟む
「あっ、あの…」
なんで僕は憂君の上に跨って、抱きしめられているんだろうか。隙間なく体が密着していて、心臓がバクバクいってる。
驚きのあまり、涙が引っ込んでしまった。この状況はそれほど理解できないけど。でも、好きな人の腕の中なんて、こんなに心地いいものはない。
「あれ…ごめん。俺…」
でも数秒ほど経ってから、憂くんは僕の肩を掴みゆっくりと体を離した。その顔は自分が何をやったのか、まるで分かっていない表情だ。
「何やってんだろ…」
でも、初めて見るその表情に胸がザワザワしてしまった僕は、離された体にしがみついて、またぎゅっと憂くんの腕の中に自ら収まった。
もう訳分からなくてもいいから、今はこの時間に浸っていたい。そう思ってしまったんだ。
「ねぇ、なんで泣いてたの?」
「…なんでかな」
「俺が傷付けた?」
この状態より、僕が泣いてた方が気になるんだ。きっと根はすごく優しいんだろうな。
「違うよ。憂くんが…」
「俺が?」
「いや、なんでもな…」
「言って」
言って…?って、僕の気持ちを?憂くんは僕が何を言うと思ってるんだろう。
今この状態で言ったってダメだ。そう思ってたのに、言わせようとするなんてずるい。
「…言えない」
「なんで?」
「一緒にいたいから…!こうやって、憂くんとずっと一緒にいたいって思うから…」
「…叶羽くん」
「…っだから、好きとか、まだ言えな……」
全部なくなるかもしれないのに…僕の口が勝手に動いたんだ。本当はずっと伝えたかったのかもしれない。
これからも一緒にいたいけど、支えられればそれでいいって言ったけど…やっぱりこの気持ちを無かったことにはしたくなかった。
自分が今どんな顔をしてるか、どんな顔を見られているだろう。
「…俺のことが?好き?」
「……っいい、今は、何も言わないで!」
そう叫んだ瞬間、僕の体は床に仰向けに倒れていて、真上には憂くんがいた。バランスを崩した訳じゃない、憂くんがそうさせた。
何も聞きたくない、でも聞きたい。何か僕のこと感じてほしい。頭の中はぐちゃぐちゃで、でもこの状況にただ胸を弾ませてる僕もいる。
でも…
「これ、何しようとしてるの…?」
「…え、あ」
「憂くんは、こういう事する女の子たくさんいたみたいだけど…僕はその子たちと一緒じゃない。そうなりたい訳じゃないよ。体だけとか嫌だ…」
「分かんない、分かんないよ…!じゃあどうしたら…」
触れたくないわけじゃない。本当は肌に、手に、体に全部に触れたい。でもそれで終わりなんて嫌だ。
「分かんないなら、もう…」
僕は憂くんの頭を引き寄せて、顔を近づける。
そして頬に触れるだけのキスを落とした。
ゆっくり顔を離すと、目を見開いて丸くしてる憂くんの顔が間近にある。驚いてるんだろうか。男にキスされたってことが。
本当は今にでもこの気持ちが爆発してしまいそうだけど、唇に触れることはできなかった。何も分からないまましたくなかったから…。
「…ごめん、これが僕の気持ち」
「え…」
「何も、思わないよね…。でも好きだ、憂くんのこと」
「俺のこと…?」
秘めてたものが弾け飛んだみたいに、ポツリと言葉が零れた。いま伝えてもどうなることも出来ないはずなのに、もう止まることができない…。
「うん…、好き、だよ…」
「…っい、」
「え…?」
「…っあ、ごめ、ごめんなさ…」
「憂くん…、?どうしたの?」
だけど僕の言葉を聞いた後、突然憂くんは頭を抱えながら「ごめんなさい」と何回も呟き始めた。僕の言葉に対してじゃない、何か取り憑かれたものに謝るように。
「憂くん!大丈夫だよ、落ち着いて…!」
「ごめん、ごめ、なさ…ごめんなさ…」
何が起きたか分からないまま、頭を抱えて震える憂くんを抱きしめて背中をさする。
「あ……っ、ごめ、なさ…」
「僕がいるよ、憂くん…、大丈夫だから」
「原崎、くん……」
「え…?」
今、名字で呼んだ…?僕のこと。聞き間違いじゃないよな。確かにそう聞こえた。
なんでずっと名前で呼んでたのに…今更名字で?
「大丈夫だよ…」
気になりはしたけど、とりあえず今は憂くんを落ち着かせたくて、なにも聞かず背中を優しくさすった。
もしかしたら僕の告白を聞いて、何か思ったことがあったのか、何か思い出したのかもしれない。
なんで僕は憂君の上に跨って、抱きしめられているんだろうか。隙間なく体が密着していて、心臓がバクバクいってる。
驚きのあまり、涙が引っ込んでしまった。この状況はそれほど理解できないけど。でも、好きな人の腕の中なんて、こんなに心地いいものはない。
「あれ…ごめん。俺…」
でも数秒ほど経ってから、憂くんは僕の肩を掴みゆっくりと体を離した。その顔は自分が何をやったのか、まるで分かっていない表情だ。
「何やってんだろ…」
でも、初めて見るその表情に胸がザワザワしてしまった僕は、離された体にしがみついて、またぎゅっと憂くんの腕の中に自ら収まった。
もう訳分からなくてもいいから、今はこの時間に浸っていたい。そう思ってしまったんだ。
「ねぇ、なんで泣いてたの?」
「…なんでかな」
「俺が傷付けた?」
この状態より、僕が泣いてた方が気になるんだ。きっと根はすごく優しいんだろうな。
「違うよ。憂くんが…」
「俺が?」
「いや、なんでもな…」
「言って」
言って…?って、僕の気持ちを?憂くんは僕が何を言うと思ってるんだろう。
今この状態で言ったってダメだ。そう思ってたのに、言わせようとするなんてずるい。
「…言えない」
「なんで?」
「一緒にいたいから…!こうやって、憂くんとずっと一緒にいたいって思うから…」
「…叶羽くん」
「…っだから、好きとか、まだ言えな……」
全部なくなるかもしれないのに…僕の口が勝手に動いたんだ。本当はずっと伝えたかったのかもしれない。
これからも一緒にいたいけど、支えられればそれでいいって言ったけど…やっぱりこの気持ちを無かったことにはしたくなかった。
自分が今どんな顔をしてるか、どんな顔を見られているだろう。
「…俺のことが?好き?」
「……っいい、今は、何も言わないで!」
そう叫んだ瞬間、僕の体は床に仰向けに倒れていて、真上には憂くんがいた。バランスを崩した訳じゃない、憂くんがそうさせた。
何も聞きたくない、でも聞きたい。何か僕のこと感じてほしい。頭の中はぐちゃぐちゃで、でもこの状況にただ胸を弾ませてる僕もいる。
でも…
「これ、何しようとしてるの…?」
「…え、あ」
「憂くんは、こういう事する女の子たくさんいたみたいだけど…僕はその子たちと一緒じゃない。そうなりたい訳じゃないよ。体だけとか嫌だ…」
「分かんない、分かんないよ…!じゃあどうしたら…」
触れたくないわけじゃない。本当は肌に、手に、体に全部に触れたい。でもそれで終わりなんて嫌だ。
「分かんないなら、もう…」
僕は憂くんの頭を引き寄せて、顔を近づける。
そして頬に触れるだけのキスを落とした。
ゆっくり顔を離すと、目を見開いて丸くしてる憂くんの顔が間近にある。驚いてるんだろうか。男にキスされたってことが。
本当は今にでもこの気持ちが爆発してしまいそうだけど、唇に触れることはできなかった。何も分からないまましたくなかったから…。
「…ごめん、これが僕の気持ち」
「え…」
「何も、思わないよね…。でも好きだ、憂くんのこと」
「俺のこと…?」
秘めてたものが弾け飛んだみたいに、ポツリと言葉が零れた。いま伝えてもどうなることも出来ないはずなのに、もう止まることができない…。
「うん…、好き、だよ…」
「…っい、」
「え…?」
「…っあ、ごめ、ごめんなさ…」
「憂くん…、?どうしたの?」
だけど僕の言葉を聞いた後、突然憂くんは頭を抱えながら「ごめんなさい」と何回も呟き始めた。僕の言葉に対してじゃない、何か取り憑かれたものに謝るように。
「憂くん!大丈夫だよ、落ち着いて…!」
「ごめん、ごめ、なさ…ごめんなさ…」
何が起きたか分からないまま、頭を抱えて震える憂くんを抱きしめて背中をさする。
「あ……っ、ごめ、なさ…」
「僕がいるよ、憂くん…、大丈夫だから」
「原崎、くん……」
「え…?」
今、名字で呼んだ…?僕のこと。聞き間違いじゃないよな。確かにそう聞こえた。
なんでずっと名前で呼んでたのに…今更名字で?
「大丈夫だよ…」
気になりはしたけど、とりあえず今は憂くんを落ち着かせたくて、なにも聞かず背中を優しくさすった。
もしかしたら僕の告白を聞いて、何か思ったことがあったのか、何か思い出したのかもしれない。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる