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惹かれて⑥
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「とりあえず服だけ脱いじゃった、僕もシャワー浴びてくるね」
熱いシャワー浴びてちょっと落ち着こう。そう思ってソファから立ち上がったけど。
「ねぇ、叶羽くんは…俺をどうしたいの?」
「…へ?」
お風呂の扉に手をかけた時、憂くんが背後からぽつりとそう呟いた。
「どうしたい…って?」
「なんで俺に声かけたり、庇ったり、気にかけるの?叶羽くんも俺と寝たいから?俺、男の子はさすがに経験なくて…」
「は!!?何言ってんの!」
憂くんはタオルを頭にかけたまま、伏し目がちで言葉を零す。突然の予想外な問いかけに慌てて否定したけど、動揺が隠せない。
「ちょ、ちょっと落ち着いて!!そんなこと思ってないよ!」
「でも、ただ同級生ってだけで家に呼んだり、さっきも庇って…俺に優しくしたりするから」
「そんな目的ないよ!!僕は、その、友達としてただ憂くんが心配だったし、さっきも咄嗟に体が動いて…あんな状態じゃ帰せないと思ったから…」
「そうなんだ。今まで家に呼んだり気にかけてくる人は、みんな寝る目的だったらしいから。叶羽くんもそうなのかなって思った。違ったなら変なこと聞いてごめん」
「う、うん。別に大丈夫だけど…」
そうか、憂くんは、セフレがいたりクラブで遊んでたりしてるのはやっぱり楽しんでる訳じゃないのかな。何か理由があるんじゃないか?
「…あのさ、憂くんは、なんでクラブ行ったりとかセフレと寝たりしてるの?」
「…え」
「前に断る理由ないからって言ってたけど、その、乗り気じゃなさそうなのに、なんでだろうって…何か理由があるのかなって」
憂くんは、ゆっくりと僕に目線を合わせた。ほのかに汗ばんで髪の毛から雫を垂らしながら。僕は、その頭にかかっているタオルを両手で包んで髪の毛を優しくゴシゴシと擦った。
「いや、ごめん。言いたくなかったらいいんだけど…その、やっぱりあんなの見ちゃうと、気になっちゃって」
憂くんの頭を拭きながらそう言うと、タオルの隙間から僕を不思議そうに見つめる目と視線が重なった。
「憂くん…?」
「あ、いや。ううん、別にちゃんとした理由なんかなくて…強いて言えば、俺が何も分からないから、みんな遊ぶには好都合だって言ってるらしいけど」
「え?分からないって?何が?」
「俺、嬉しいとか悲しいとか、怒る?とか…そういうの分かんなくて。何度か親に病院連れて行かれたけど、原因は分からないんだって。なんとか症ってやつ。精神の病気的な」
「…え」
分からない?要するに、喜怒哀楽が分からないってこと?
もしかして今までの憂くんの真っ黒で光のない目は…何も感じないから?だからあまり表情も変わらなかった?まさか、病気だったなんて。
「そう、だったんだ…」
「よくこの事話すと、なら後腐れなく遊べるねって女の子に喜ばれる。一晩だけでも、急に関係切れても何も思わないよねって。それか話聞くよって優しくしてきて、結局は俺と寝たいだけみたいなこともある」
それって、憂くんのこと上手く利用してるだけなんじゃないか。
「クラブに行くのも…それで誘われるから?」
「うん、最初はセフレに誘われて、新しいこと何かしたら感情が分かるようになるのかなって思ったから行ってみた。でも何も分からないから…今は時間潰しに行くだけ」
そっか、だからさっき俺をどうしたいの?って聞いてきたのか。そこにたぶん感情はなくて、作業工程を聞く感じと変わらないんだろう。
知らなかった、憂くんがそんなこと抱えてたなんて。
でも、何か引っかかってた理由が分かった気がした。彼の見つめてくるこの目が、僕には何か訴えかけてるような気がしてたんだ。
どうしても好きで遊んでるようには思えなかったから…。
熱いシャワー浴びてちょっと落ち着こう。そう思ってソファから立ち上がったけど。
「ねぇ、叶羽くんは…俺をどうしたいの?」
「…へ?」
お風呂の扉に手をかけた時、憂くんが背後からぽつりとそう呟いた。
「どうしたい…って?」
「なんで俺に声かけたり、庇ったり、気にかけるの?叶羽くんも俺と寝たいから?俺、男の子はさすがに経験なくて…」
「は!!?何言ってんの!」
憂くんはタオルを頭にかけたまま、伏し目がちで言葉を零す。突然の予想外な問いかけに慌てて否定したけど、動揺が隠せない。
「ちょ、ちょっと落ち着いて!!そんなこと思ってないよ!」
「でも、ただ同級生ってだけで家に呼んだり、さっきも庇って…俺に優しくしたりするから」
「そんな目的ないよ!!僕は、その、友達としてただ憂くんが心配だったし、さっきも咄嗟に体が動いて…あんな状態じゃ帰せないと思ったから…」
「そうなんだ。今まで家に呼んだり気にかけてくる人は、みんな寝る目的だったらしいから。叶羽くんもそうなのかなって思った。違ったなら変なこと聞いてごめん」
「う、うん。別に大丈夫だけど…」
そうか、憂くんは、セフレがいたりクラブで遊んでたりしてるのはやっぱり楽しんでる訳じゃないのかな。何か理由があるんじゃないか?
「…あのさ、憂くんは、なんでクラブ行ったりとかセフレと寝たりしてるの?」
「…え」
「前に断る理由ないからって言ってたけど、その、乗り気じゃなさそうなのに、なんでだろうって…何か理由があるのかなって」
憂くんは、ゆっくりと僕に目線を合わせた。ほのかに汗ばんで髪の毛から雫を垂らしながら。僕は、その頭にかかっているタオルを両手で包んで髪の毛を優しくゴシゴシと擦った。
「いや、ごめん。言いたくなかったらいいんだけど…その、やっぱりあんなの見ちゃうと、気になっちゃって」
憂くんの頭を拭きながらそう言うと、タオルの隙間から僕を不思議そうに見つめる目と視線が重なった。
「憂くん…?」
「あ、いや。ううん、別にちゃんとした理由なんかなくて…強いて言えば、俺が何も分からないから、みんな遊ぶには好都合だって言ってるらしいけど」
「え?分からないって?何が?」
「俺、嬉しいとか悲しいとか、怒る?とか…そういうの分かんなくて。何度か親に病院連れて行かれたけど、原因は分からないんだって。なんとか症ってやつ。精神の病気的な」
「…え」
分からない?要するに、喜怒哀楽が分からないってこと?
もしかして今までの憂くんの真っ黒で光のない目は…何も感じないから?だからあまり表情も変わらなかった?まさか、病気だったなんて。
「そう、だったんだ…」
「よくこの事話すと、なら後腐れなく遊べるねって女の子に喜ばれる。一晩だけでも、急に関係切れても何も思わないよねって。それか話聞くよって優しくしてきて、結局は俺と寝たいだけみたいなこともある」
それって、憂くんのこと上手く利用してるだけなんじゃないか。
「クラブに行くのも…それで誘われるから?」
「うん、最初はセフレに誘われて、新しいこと何かしたら感情が分かるようになるのかなって思ったから行ってみた。でも何も分からないから…今は時間潰しに行くだけ」
そっか、だからさっき俺をどうしたいの?って聞いてきたのか。そこにたぶん感情はなくて、作業工程を聞く感じと変わらないんだろう。
知らなかった、憂くんがそんなこと抱えてたなんて。
でも、何か引っかかってた理由が分かった気がした。彼の見つめてくるこの目が、僕には何か訴えかけてるような気がしてたんだ。
どうしても好きで遊んでるようには思えなかったから…。
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