壊れて焦がれてそばにいて

ぱんなこった。

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再会③

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僕と俊太が座り、とりあえず2人ともドリンクのメニューを開いた。他の人達は先に注文したようで、バラバラにお酒が到着し始める。

本格的な合コンとなると、まず端から自己紹介をして、飲み食いして席を交換して…という感じだろう。でも、この集まりは俊太が言っていた通り友達同士の飲み会という感じが強い。

なのでそれぞれが自由にしていて、ただ賑やかな雰囲気を味わうためには最適だ。僕は合コンに来たかったわけではないが。

「じゃあ、僕は…レモンサワーで」

「俺はハイボール」

注文が一段落すると、各々で話をし始める。どこの大学か、とか。サークルはなにか、名前は何かとか。特に恋人を作りに来た訳ではない僕からすると、フランクに見せかけて、やはり男女の駆け引き的な所が垣間見えて面白い。

「じゃあ乾杯しようか」

「かんぱーい!」

グラスを控えめに掲げた後、レモンサワーを口にしたら爽やかな味とアルコールの重さが喉に響いた。アルコールで傷を癒すなんて、良くないとは思ってもついやってしまう。
今、ふわふわとした心地よさが、後で虚しさに変わるのは分かっているのに。

「ねぇねぇ!俊太君のお友だちは名前なんて言うんですかー?」

「あ、僕?原崎叶羽っていいます」

「叶羽!?叶羽くんって言うのー?どういう字?」

「願い事が叶うの叶に…羽っていう字」

「えー!可愛いんだけど!」

「あはは、ありがとう」

目の前にいる女の子に咄嗟に話しかけられて、応えたが…名前は何だったっけ。誤魔化すようにまたレモンサワーを喉に流しこむと、その女の子が僕の隣の男の子にも話を振る。

「最近の男の子って可愛い名前多いよねー!今日でいうと、叶羽くんと…その隣のういくんとか!」

「え…」

憂…?憂くん…?

珍しい名前のはずなのに、どこかで聞いたような懐かしさを感じる。なんでだろうか。

「ねー?憂くん!」

「…え?あ、俺?」

隣をふと見ると、ノーセットの黒い髪の毛を目にかけた男の子がこちらを向いた。その目線と、キラリと耳に光るいくつもの小さなピアスに目を奪われる。

そして表情を変えずに「そうだね」と呟いた。

「ねー!2人ともかっこいいのに、名前可愛いってギャップだね!」

僕の方へ振り返った、憂という男。自分と同い年くらいだとしたら…20歳にしては幼めの顔だなという印象。そして、耳にたくさん開いてるピアス。名前よりも、そっちのギャップに目がいく。

そして…顔を見て確信した。

「…憂、もしかして佐々木憂ささきうい?」


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