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彼のことを④
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あれだけ気持ちを伝え切った後に手を繋いで歩いている…何となくお互い気恥しい感じがします。しばらく無言が続き、僕が先に口を開きました。
「あの…、なんで最初僕のこと気になってたんですか?学校も違うのに…その前に話したこととかないですよね…?」
「えっ…あー…、確かにしっかり話してはないね」
「え?」
「去年…2年生の時にさ。えーくん友達とウチの学校の文化祭来たでしょ?」
「……え、あ!!!い、言われてみれば、」
そういえば、高2の時に志音に誘われて行っていました。全然忘れていましたけど…今思えば枇杷斗くんの学校でしたね。他校の文化祭に行ったのはあれが初めてでした。
「そのえーくんの友達と俺の友達が知り合いだったみたいで…俺達の出店に2人が来たんだよ。それで友達が話し込んでたから、えーくんが支払いして俺が焼きそば渡したの」
「…ちょっと思い出してきました。あ…あの時の出店の人、枇杷斗くんだったんですか!?」
「そう、マスクしてたしそりゃ分かんないと思う。で、えーくんってそれまでは他の奴らに絡まれても人見知り全開で、早く帰りたい…みたいな顔してて。友達に連れて来られたんだ、可哀想だなと思ったからちょっと量増やしてあげたの。それコソッと伝えて俺が焼きそば渡した時…」
____いいんですか!?ありがとうございます!焼きそば大好きなんです…!
「…って満面の笑みでお礼言ってくれて。真顔しか見てなかったからなんか無性にドキッてして…。出てった後も何となく目で追っちゃってた」
「…っえええ!そ、そうだったん、ですか」
「それで友達に聞いて学校とか分かって…、それからずっと気になってた。また顔見たいなって思ったけど絡みに行く勇気出なくて…。そもそも今まで男子にこんなの思ったことなかったから、動揺もしてた」
「もしかして、それで賭けの話が出た時乗り気だったんですか…?」
「うん、相手は他校なら誰でもいいってことだったし、とにかく接点欲しくて…。あの時は勢いで引き受けたけど、後から後悔したよ。俺好きな人のこと騙してるんだって」
《そんな前から、僕のこと想ってくれてたんですね…知らなかった…》
話しながら歩いていたら、あっという間です。もう枇杷斗くんの家が見えてきました。
「…あの、ありがとう…ございます。話してくれて。これからは何でも思ったこと僕に話してください!もう1人で悩んで苦しんで欲しくないですから!」
「…えーくん」
「あの時、僕はパリピというか…賑やかな集いが苦手なので、文化祭も友達に誘われて渋々行ったんですが、だから枇杷斗くんと出会えてたんですね。行ってよかったです」
「……うん!」
家の前に着いた時、ドアの少し横で僕達は立ち止まりました。もう周りは薄暗くなっています。帰らないといけないのに…名残惜しいです。
「送ってくれてありがとう」
「い、いえいえ!!」
「なんか…帰りたくないな」
「……っ!そ、それは、僕も…同じ気持ちです」
「…ふふっ、照れながらもそういう事言ってくれるようになったんだね」
「あ…、僕も気持ちは素直に伝えたいって思ったので…。まだ恥ずかしさは拭えないですが…!」
そう言って手で額の汗を拭いていると、その手を枇杷斗くんに掴まれました。「こっち見てよ」と言われましたが、恥ずかしくて顔を上げられません。
「む、むりです!今は…!」
「いいから!早く」
「い、いやいや!無理で…」
《………!!!!!!????》
い、今…唇に何か柔らかい感触が…!?一瞬だったけど…え!?え!?ま、まさか…!!!
「…チューしちゃった」
「ー!!??ちゅっ!!ちゅうううう!!?」
《キキキキス!!??いま、僕は枇杷斗くんとキスを!!?》
「はっはっはっはっ初めてで…!!ぼ、僕…!」
「あははっ、タコみたいに顔真っ赤!ごめん。照れてたの可愛くて…バイバイするの寂しいし、したくなっちゃった」
付き合ってから初めてのキスでした。沸騰するほど顔を熱くして口をパクパクさせている僕を見て、枇杷斗くんは笑いながら恥ずかしそうに口を手で覆っています。
「……っなんか、すごく、し、幸せな気分になりました」
「……うん、俺も。ねぇ、もう1回する?」
「え!!?えっ、えっとあの…!!いいんですか…?」
「いいよ。今度はえーくんからして?」
「…っえ!!!!ふぁっはい!!」
《心臓が飛び出そうです…!!うわぁ、顔を上げて目閉じてる顔も可愛い…!ど、どうしたら…!とにかく顔を近付けて…!》
と、もう少しでお互いの唇がつきそうな時でした。ガチャッ!と音が鳴り、扉が勢いよく開きました。
「枇杷ーーー!帰ったでござるか!??ふぉえーばーぽえむ殿とはどうなったでござる!!?」
「「うわーーーー!??」」
僕は驚いて思わず飛び退きました。そこには先程の枇杷斗くんのお兄さんが息を切らしながら顔を出していて…ってあれ?
その口調と、今呼んだ名前は…あれ?僕のユーザー名では…?
「…えっ!?え?枇杷斗くんのお兄さん!?い、今、確かにござるって言いましたよね…?幻聴じゃない…!?そ、それにふぉーえばーぽえむって名前…え!?」
「あ」
「はぁーーー、ったく兄貴は…」
「ああああ!!!い、一緒でござった…じゃなくて、だったんだね!ごめんごめん!邪魔しちゃって!あははは」
「いやいや!!誤魔化せないですよ!ももももしかして、あのあの!!いつも一緒に戦ってるBB男爵さん…なんですか!!?」
「…うぇ、ええええっと…、えっと、び、びわの想い人と知ったのは…聞いた内容が合致したのは…つ、つい最近でござる…」
《え!!?》
「えーくん、改めて紹介するね。俺の兄貴の宙斗。ビジュアルで誤魔化してるけど、産まれてこのかた生粋のオタクで、口調も素はこれ。ゲーム好きで、話聞いてたら仲良いゲーム仲間がえーくんだとつい最近発覚したんだよ」
《え!?なら、あの相談をしていたのは…ずっと枇杷斗くんのお兄さんだったってことですか!?》
「ま、まあ、そういうことで…!これからは仲良くしてほしいでござる!弟の彼氏となれば、リアルでもゲームやりやすくなるでござるな!」
「は!?そんな頻繁にえーくんは貸さないから!」
「なっ!?仲の良さでは拙者が先でござるよ!?」
「ちょっと待っ…、え!?えええええ!!???」
「あの…、なんで最初僕のこと気になってたんですか?学校も違うのに…その前に話したこととかないですよね…?」
「えっ…あー…、確かにしっかり話してはないね」
「え?」
「去年…2年生の時にさ。えーくん友達とウチの学校の文化祭来たでしょ?」
「……え、あ!!!い、言われてみれば、」
そういえば、高2の時に志音に誘われて行っていました。全然忘れていましたけど…今思えば枇杷斗くんの学校でしたね。他校の文化祭に行ったのはあれが初めてでした。
「そのえーくんの友達と俺の友達が知り合いだったみたいで…俺達の出店に2人が来たんだよ。それで友達が話し込んでたから、えーくんが支払いして俺が焼きそば渡したの」
「…ちょっと思い出してきました。あ…あの時の出店の人、枇杷斗くんだったんですか!?」
「そう、マスクしてたしそりゃ分かんないと思う。で、えーくんってそれまでは他の奴らに絡まれても人見知り全開で、早く帰りたい…みたいな顔してて。友達に連れて来られたんだ、可哀想だなと思ったからちょっと量増やしてあげたの。それコソッと伝えて俺が焼きそば渡した時…」
____いいんですか!?ありがとうございます!焼きそば大好きなんです…!
「…って満面の笑みでお礼言ってくれて。真顔しか見てなかったからなんか無性にドキッてして…。出てった後も何となく目で追っちゃってた」
「…っえええ!そ、そうだったん、ですか」
「それで友達に聞いて学校とか分かって…、それからずっと気になってた。また顔見たいなって思ったけど絡みに行く勇気出なくて…。そもそも今まで男子にこんなの思ったことなかったから、動揺もしてた」
「もしかして、それで賭けの話が出た時乗り気だったんですか…?」
「うん、相手は他校なら誰でもいいってことだったし、とにかく接点欲しくて…。あの時は勢いで引き受けたけど、後から後悔したよ。俺好きな人のこと騙してるんだって」
《そんな前から、僕のこと想ってくれてたんですね…知らなかった…》
話しながら歩いていたら、あっという間です。もう枇杷斗くんの家が見えてきました。
「…あの、ありがとう…ございます。話してくれて。これからは何でも思ったこと僕に話してください!もう1人で悩んで苦しんで欲しくないですから!」
「…えーくん」
「あの時、僕はパリピというか…賑やかな集いが苦手なので、文化祭も友達に誘われて渋々行ったんですが、だから枇杷斗くんと出会えてたんですね。行ってよかったです」
「……うん!」
家の前に着いた時、ドアの少し横で僕達は立ち止まりました。もう周りは薄暗くなっています。帰らないといけないのに…名残惜しいです。
「送ってくれてありがとう」
「い、いえいえ!!」
「なんか…帰りたくないな」
「……っ!そ、それは、僕も…同じ気持ちです」
「…ふふっ、照れながらもそういう事言ってくれるようになったんだね」
「あ…、僕も気持ちは素直に伝えたいって思ったので…。まだ恥ずかしさは拭えないですが…!」
そう言って手で額の汗を拭いていると、その手を枇杷斗くんに掴まれました。「こっち見てよ」と言われましたが、恥ずかしくて顔を上げられません。
「む、むりです!今は…!」
「いいから!早く」
「い、いやいや!無理で…」
《………!!!!!!????》
い、今…唇に何か柔らかい感触が…!?一瞬だったけど…え!?え!?ま、まさか…!!!
「…チューしちゃった」
「ー!!??ちゅっ!!ちゅうううう!!?」
《キキキキス!!??いま、僕は枇杷斗くんとキスを!!?》
「はっはっはっはっ初めてで…!!ぼ、僕…!」
「あははっ、タコみたいに顔真っ赤!ごめん。照れてたの可愛くて…バイバイするの寂しいし、したくなっちゃった」
付き合ってから初めてのキスでした。沸騰するほど顔を熱くして口をパクパクさせている僕を見て、枇杷斗くんは笑いながら恥ずかしそうに口を手で覆っています。
「……っなんか、すごく、し、幸せな気分になりました」
「……うん、俺も。ねぇ、もう1回する?」
「え!!?えっ、えっとあの…!!いいんですか…?」
「いいよ。今度はえーくんからして?」
「…っえ!!!!ふぁっはい!!」
《心臓が飛び出そうです…!!うわぁ、顔を上げて目閉じてる顔も可愛い…!ど、どうしたら…!とにかく顔を近付けて…!》
と、もう少しでお互いの唇がつきそうな時でした。ガチャッ!と音が鳴り、扉が勢いよく開きました。
「枇杷ーーー!帰ったでござるか!??ふぉえーばーぽえむ殿とはどうなったでござる!!?」
「「うわーーーー!??」」
僕は驚いて思わず飛び退きました。そこには先程の枇杷斗くんのお兄さんが息を切らしながら顔を出していて…ってあれ?
その口調と、今呼んだ名前は…あれ?僕のユーザー名では…?
「…えっ!?え?枇杷斗くんのお兄さん!?い、今、確かにござるって言いましたよね…?幻聴じゃない…!?そ、それにふぉーえばーぽえむって名前…え!?」
「あ」
「はぁーーー、ったく兄貴は…」
「ああああ!!!い、一緒でござった…じゃなくて、だったんだね!ごめんごめん!邪魔しちゃって!あははは」
「いやいや!!誤魔化せないですよ!ももももしかして、あのあの!!いつも一緒に戦ってるBB男爵さん…なんですか!!?」
「…うぇ、ええええっと…、えっと、び、びわの想い人と知ったのは…聞いた内容が合致したのは…つ、つい最近でござる…」
《え!!?》
「えーくん、改めて紹介するね。俺の兄貴の宙斗。ビジュアルで誤魔化してるけど、産まれてこのかた生粋のオタクで、口調も素はこれ。ゲーム好きで、話聞いてたら仲良いゲーム仲間がえーくんだとつい最近発覚したんだよ」
《え!?なら、あの相談をしていたのは…ずっと枇杷斗くんのお兄さんだったってことですか!?》
「ま、まあ、そういうことで…!これからは仲良くしてほしいでござる!弟の彼氏となれば、リアルでもゲームやりやすくなるでござるな!」
「は!?そんな頻繁にえーくんは貸さないから!」
「なっ!?仲の良さでは拙者が先でござるよ!?」
「ちょっと待っ…、え!?えええええ!!???」
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